神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8473字。

ついに第二章 衝撃の剣 完です。

後書きがめちゃ長くなってますが許して...
というわけで先に書きます。
次回の投稿は1月28日になります。
年末年始が忙しいのと、年が明けると試験前になるので執筆に時間を取れない可能性が高く、ストックも減りつつあったので、章が変わるこのタイミングで休載することにしました。
一ヶ月も間が空きますが、また読みにきてくださると嬉しいです...

では、本編をどうぞ!


最終決戦と最後の気迫

「……魔王は実は二人いた...というのは流石にないか。サザミ、どちらが本物かわかるか?」

 

勇者とサザミは一旦様子見をしていた。まぁ、俺が二人に増えてるんだから警戒して一度見に徹するのも当然か。

 

「……多分、こっち!」

 

サザミが飛び出した...ミセラの方に⁉︎

 

まずい事前想定が崩壊した⁉︎またミセラが謎の勘を発揮して、半信半疑ながらも俺の方を本物だと考えて攻撃してくるもんだと思ってた...!サザミが俺と戦って、ミセラがアルトの元に向かおうとしたところを勇者が妨害する...そう考えていたから、ミセラにやった試練は勇者を想定したものにしたのに...!

 

け、けど、ちゃんと作戦を詰める前にやった訓練では対サザミ想定の訓練もしていたから、一応なんとかなるはず...!

 

ミセラと目配せをして、二人同時に前に出る。ミセラの方にサザミが向かって行くのを見ながら俺はアルトめがけて走ると、勇者が立ちはだかる。

 

「ここは通さない」

 

俺は不敵な笑みを浮かべながら短剣を構える。そして服から衝撃の剣を伸ばして勇者を牽制しながら短剣で切り掛かる。

 

「この力は...こっちが本物...?」

 

勇者は異能無効化を付与した剣で衝撃の剣を弾き飛ばし、短剣は身を捩って回避する。サザミが偽物だと判断した奴が衝撃の剣を使ったことに驚く勇者だったが、一瞬サザミの方を見て困惑する。

 

「あっちも...⁉︎」

 

サザミがミセラに攻撃を仕掛けるが、服から衝撃の剣が伸びてサザミの剣を受け止める。

 

「どちらもあの力を使える...分身の魔法か?」

 

勇者は困惑しながらも俺に攻撃を仕掛ける。多分勇者は、サザミが本物だと主張しているあっちを狙いに行きたいんだろう。だけど俺を野放しにするとアルトを狙われるから仕方なしに攻撃している感じだな。攻撃に気迫があまりない。体力を温存しているような、そんな攻撃だ。

 

こちらとしてはありがたい。俺の視界内にいないと衝撃の剣の防御は正確には出来ないから、あまり動かずに済むこの勇者の攻撃はありがたすぎる。ミセラのサポートに集中できるしな。

 

それに、俺があまり動かないのは作戦的にアリなのでは?俺の動きが微妙になるほど、ミセラが本物であるように見せかけることができる。あっちが本物である可能性が高まれば、衝撃の剣を弾くことができる勇者がミセラと戦おうとするはず。サザミとスイッチしてくれれば、練習通りの盤面になるしそうなることを願って一旦ミセラの援護に集中...!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この...魔王が!!」

 

サザミが長い剣で切り掛かってくる。みんなから奪った身体強化魔術を使っているから、めちゃくちゃ速い...けど、今の私なら避けられる...!

 

地面を蹴って跳ぶのではなく、地を駆けてサザミの剣を回避する。跳んだら着地まで身動きが制限されてしまって、その隙を狙われるリスクが高まるから出来るだけ地面に止まって攻撃は避ける...

 

「仲間を、人を...殺して!そんなお前を許さない!!」

 

凄い気迫...

 

けど、許さない?それはこっちのセリフだよ。

 

人間だって私の仲間をたくさん殺した。一緒に食堂でご飯を食べながら笑い話をしていたあの子が、上司がひどいんだよと愚痴を言い合っていたあの子が、みんなみんな人間の手で殺されてしまった。そして、魔術の研究のために全身を切り刻まれて解剖されて、死後の安寧も乱された。

 

誰かが死んだという話を聞くたびに、悲しい気持ちになる。私はこんな身体だから、なかなか死なない。しぶとく生き残って、とうとう最後の一人になるまで訃報を聞き続けた。

 

もちろん、死印付きだから死ななきゃいけないのはわかってる。この戦いで死ぬというのも理解してるし、納得はしてる。だから、だからこそ、あの人間が生き残ろうとしているのが許せない!

 

仲間を殺されて許せない?それはこっちもだ!あんなの、随分と酷い自分勝手な物言いだ!もしも死印付きだったなら、この手で絶対に殺している...それくらい許せない物言いだ!

 

そんな言葉を声に出したいけど、声を出したらバレるから言えない...だから、この熱を、怒りを、伽藍堂の体内に溜め込み、全て燃やす!

 

私は魔王軍最後の生き残り!最高の相棒(カリヤ)と一緒に!最後まで戦い抜く!!それが死んでいったみんなへの手向けだッ!!!

 

「っ、さらに強く...!」

 

サザミが何を言っていようが関係ない!攻撃は全て避け、カリヤに衝撃の剣で守ってもらいながら虎視眈々と狙いを定める...!

 

そこっ!!

 

「づっ⁉︎」

 

突き出してきた剣をあわや頬を掠めるギリギリのところで回避しながらサザミに近づく。そして必要以上に傷つけないように短剣を逆手に持ち替えて、短剣のグリップ部分で腹を殴る!

 

「く、この...い゛ッ!!」

 

腹に打撃を喰らったサザミは取り回しのしやすい別の武器に持ち替えようとしていたので、新しい武器に変えられる前に右足で地面を蹴飛ばし、足を高く上げながら勢いよくブンッ!と振り回して側頭部に蹴りを叩き込む。サザミは大きく横によろめいて地面にそのまま倒れ込む。

 

近い距離から無理矢理足を上げて叩き込んだため、私もバランスを崩して地面に倒れ込んでしまう。左腕を動かせば転ぶことなく立て直せたけど使ったら偽物だとバレてしまうから、腕は使わずにそのまま身を投げ出し、転がることで転倒の衝撃を緩和しながら体勢を立て直す。

 

……勢いよく地面にぶつかってた方が、カリヤのエネルギーを溜めることを考えるとよかったかな?けどまぁ、体勢を相手より早く立て直して次の攻撃に移る方が何倍も良いはず!

 

「……っ!!」

 

立ち上がると同時にサザミに接近するが、そこで私はサザミが三叉の槍を持っていることに気がついた。あれを地面に突き刺したら、下から黒い槍が生えてくるはず...!

 

地面を蹴り、高く跳び上がる。これは、サザミが三叉の槍を使った攻撃をしてくるから足元に衝撃の剣を展開して守って、という合図だ。もし私がサザミと戦うことになった場合に備えて、カリヤが勇者との戦闘中に一目見て状況を理解できる合図をいくつか作っていたのだけどそれが功を奏した。

 

カリヤもしっかり気付いてくれたようで、私の履いてるズボンから衝撃の剣が伸びて私の足元を広範囲でガードする。これで下からの攻撃は防げる...

 

「あは、引っかかった!」

 

っ、フェイント⁉︎あの槍を持つことで下に注意を向かせて、実際は槍で直接...!

 

「……声も出さずに受け止めるか。クール過ぎて気味悪い...!」

 

短剣を前に突き出して、なんとか三叉の槍を受け止める。普通の槍だったらこの方法じゃ無理だったけど、先が分かれてるおかげで上手く引っ掛かってくれたね...っと!

 

足を振り上げて槍を下から蹴り飛ばす。あのままだと槍をくるんと回転させるだけで私の持つ短剣を弾き飛ばせたから、そんなことをされる前に槍を跳ね除けたのだ。

 

そして...カリヤとのコンビ技!足元に張られた衝撃の剣を足場にして空中で着地し、衝撃解放をしてもらって推進力を得て...!

 

「あがッ...」

 

サザミの顔面に飛び蹴りが炸裂する。鼻の骨が折れたような感触を一瞬感じたけど、私に跳ね返ってくる衝撃は全て靴に仕込まれた衝撃の剣に吸い込まれて行くから気のせいかな...?

 

とりあえず、サザミは倒した。カリヤもいる。二人で同時に飛び出せば、勇者はアルトを守りきれないはず...!

 

「んっ⁉︎」

 

ビクッ、と身体に衝撃が走る。今のは...カリヤが私に送る、危険を知らせる合図!

 

進行方向に斜めに衝撃の剣で作られた土台が出来上がる。そこに足をつけ、衝撃解放で真横に吹っ飛ばされる。次の瞬間、私がさっきまでいた場所に剣が振り下ろされた。勇者が倒れたサザミを起点にして転移してきていたのか...

 

「今がチャンスだ。俺がアルトを叩きに行くから足止め頼む。勇者はミセラを本物だと思ってるから、サザミ起こすのが間に合ったらスイッチすると思うその後は練習通りに頼むぜ」

 

衝撃の剣を通じてカリヤの声が聞こえてくる。勇者たちと距離が離れたから小声で直接連絡してきたね。ここで勇者を足止めできれば、カリヤは目的を達成できる...けど、衝撃の剣のサポートは期待できないから私の実力で頑張らないと...!

 

カリヤが走って行くのを見届け、私は勇者に向かって走る。もうサザミに触れてる...回復は止められないか。それなら...!

 

「ぐっ...⁉︎」

 

勇者の死角から短剣を投擲し、勇者の足に突き刺す。痛みで一瞬動きが鈍ったところを近づいて刺さった短剣を掴み、引き抜いて出血を...んぐっ!

 

「ふっかーつ...」

 

サザミが目覚めると同時に蹴りを叩き込んできた。後ろに軽く吹き飛ばされるが、訓練の時と同じようにがっちり剣を掴んでいたおかげで目的であった勇者の足を傷つけることには成功する。

 

「勇者くんそいつお願い!偽物止めてくる!」

 

足を回復するタイムロスがあるから、代わりにサザミがカリヤを追いかける...よし、カリヤが言ってた通りの展開にできた!足止めはあまり出来なかったけど、勇者との戦闘に切り替えられたからオッケー!

 

さーて、こっちを見てないからちゃんと操作することはできないけど、牽制をするために服から衝撃の剣を出して動かしてはくれてはいる。いつでもこれで攻撃できるそぶりをしていれば、勇者は異能無効化の力を使い続けるしかない。魔術さえ封じれば、カリヤのサポート無しでも戦える...!

 

短剣一本とカリヤの技術で、勇者に勝ってやる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チッ、もう来たか...!」

 

サザミの復活が思いのほか早かった...そして、偽物感を強調するために衝撃解放の加速を使わなかったからか、あっという間に追い越されてしまった。

 

だが、サザミが立ち塞がるその向こう側にはアルトがいる。ワンチャンを狙ってここから狙うか...!

 

手を掲げる。ミセラが力を使っているように見せかけながら、手の中に衝撃エネルギーを込めた球体を生み出し、それを斜め上に向かって投擲する。

 

「させない!」

 

サザミは持っていた武器を投擲し、球体を弾こうとする。

 

「なっ、すり抜け...」

 

しかし、衝撃吸収による物質透過によってその試みは失敗する。勇者が投擲した武器で弾くことができたのは、異能無効化の付与があったおかげだ。普通の武器なら止められない。そして、自分の体で球体を止めることも透過によって不可能...止める方法は一つしかない。

 

「っ...!」

 

サザミは急いでアルトのもとに走り、勢いよく蹴り飛ばしてその場から無理矢理距離を取らせる。アルトを遠ざけながら、自身が間に入って放たれた衝撃波を受け止める...それしか取れる方法はない。

 

元々そう動くだろうと思って、衝撃エネルギーはあまり込めていない。起爆してやっても良いが、ここは起爆せずに衝撃の剣で球体に触れて取り込み、そのまま走ってサザミたちに接近する。エネルギー消費無しで角まで追い込むことができたのは僥倖...そのまま攻め切る!

 

「くっ、逃げ場を...!」

 

衝撃の剣を広く展開して壁に突き刺し、ここら一帯を外から区切る。逃げ場は封じた。勇者の転移でしか内と外の出入りは不可能だ。

 

「勇者くん!!」

 

サザミが叫ぶも、声は衝撃吸収によって届かない。

 

「っ...けど、視界を遮られたのはアンタも同じ。本物からのサポートは受けられないはず...!」

 

たしかにサザミ視点からだと、分断したは良いもののこっちも攻撃手段があまりないように見えるのか。視界を遮っているから、正確に衝撃の剣で攻撃することができず、殺してはいけないサザミを巻き込んだり、仲間の俺を巻き込んでしまう恐れがある...と。

 

実際のところは違うわけだが、どうする?ここで決め切るなら、俺が普通に衝撃の剣を使ってサザミを切り捨て、アルトを殺せば良い。しかし仮にここで決めきれなかった場合、完全に俺が本物だとバレてしまう。ここは...

 

「剣一本で勝てると思うな!」

 

短剣一本で戦うことにした。勇者がいつ転移してくるかわからないこの状況で攻めるのはあまりにもリスキーだからだ。

 

サザミに近づきながら短剣を逆手に持ち替える。それを見たサザミはトライデントを手にして地面に突き刺した。下から...じゃないな?

 

「っ、勘のいい奴...!」

 

槍は右にある壁から生えてきた。それを逆手で持った短剣で弾き、さらに前へと走る。壁に突き刺して地面から槍を生やすのを前に見ていたから、逆も出来るのではと思っていたが勘が当たったな。そろそろ搦手を使ってくると思ったぜ。

 

「けど、甘い!」

 

肉薄して短剣で斬りかかろうとすると、その手を狙ってサザミの拳が飛んできた。手首を叩かれ、バチンッと弾かれて短剣が手からこぼれ落ちる。

 

俺はそれを見てニヤリと笑うと、落ちてきた短剣の持ち手を蹴り飛ばしてサザミの太ももに突き刺す。

 

「ッ゛ッッーー!!!」

 

痛みに悶絶してサザミが屈んだので、顔面に膝蹴りを叩き込む。完全にノックアウトして後ろに倒れ込んだので、突き刺した短剣を引き抜いてアルトのもとに向か...えないか。

 

サザミがダメージを負ったのを察知したのか、勇者が転移してきた。それも、剣を振り下ろしながら。ギリギリのところで短剣を突き出すことに成功してなんとか受け流し、バックステップで勇者から距離を取る。

 

……お?勇者も負傷してる?だいぶ傷は治ってはいるものの、即席で治療したからなのか脚に傷がまだ残っていた。あれでは魔術を使って高速移動をしようとしても体の方がもたないはず...回復される前に決め切る!

 

この一連の流れで全てを決め切る...そのために超高速で頭を回して、最後の作戦を組み立てて行く。

 

パーツは揃っている。あとはミセラがどれだけ頑張ってくれるかだ...!

 

まず、ここら一帯を隔離していた衝撃の剣を取り外す。パッと後ろを見ると、ミセラがこっちに走り込んでいるのが見えた。作戦の概要を伝える暇は無い。完璧に会わせてくれることを祈って、俺も動き始める。

 

短剣片手に走り、サザミを治そうとしている勇者に接近する。そしてすぐさま短剣を投擲し、剣で弾かせて時間を稼ぎながら蹴りを...!

 

「またまた復活!」

 

っ、サザミ起きんの早っ...んぐっ⁉︎

 

サザミに蹴り飛ばされ、後方に吹っ飛ばされる。衝撃の剣で肉体へのダメージは抑えたけど、体勢が...しかも追撃してきてるし!早々に予定がちと崩れたがここでやるしかない!

 

サザミは剣を左側から振り下ろしてきた。俺はそれを、衝撃解放で無理くり動かした左腕で弾き飛ばした。そして目をパチクリとさせて驚くサザミの腹に右の拳を叩き込む。

 

「がはぁっ...!」

 

続けて放った蹴りはすんでのところで回避されてしまったが、これで回復無しではしばらく動けまい。

 

「左腕が動いた...!やはりあっちが本物か!!」

 

勇者が叫ぶ。本物の俺は左腕が動かせない障害を負っているため、これによりサザミが本物であると誤認させることができた。お膳立てはしたぞ...行け!ミセラ!!

 

ミセラの足裏から衝撃解放をして加速させる。ミセラが近づいてくるのに合わせて勇者が剣を振り下ろすが、加速したミセラは直前で跳躍した。訓練と同じように勇者の頭を踏みつけ、さらに跳躍、アルトに飛びかかり...

 

「っ!!」

 

勇者がサザミの足を掴んだ。マズイ。反対の手で持ってる剣でミセラが切られれば、全て終わりだ。俺がなんとかしなきゃ...っ⁉︎

 

勇者に掴まれていたミセラの足が潰れた。勇者に握り潰された...のではなかった。自ら足を切り離し、切り離した部位の表面の固体化を止めたのだ。

 

「スラ...イム...⁉︎」

 

「と、ど...け!!!」

 

短剣片手にアルトに飛びかかるミセラ。自身をスライムであると明かす最大のデメリットを抱えた最後の攻撃...

 

それが、突如として生まれた壁のようなものに遮られた。

 

アルトが手を前にかざしていた。魔術...アルトが発動させ、この壁を生み出したのか...!

 

「っ...こんな、急拵えの壁なんか!!」

 

ミセラは背後から迫る勇者に向けて短剣を投擲すると、自身をバラバラに分離させ、急拵えゆえに小さな亀裂が出来てしまっている壁に潜り込んでいく。身体が液体であるためにできる突入...そうしてミセラは壁を通り抜けると、そのままアルトに飛びかかった。

 

「もがっ...⁉︎」

 

「なっ...窒息させる気か!」

 

サザミはアルトの口の中から体内に潜り込んだ。おそらくそのまま肺の中に潜り込んだようで、アルトは胸や喉を押さえながら悶える。

 

「助けないと...!けど、あっちが本物の魔王...!」

 

「サザミは魔王を!私が助ける!」

 

勇者はアルトを助けるために走る...が、アルトが作った壁によって遮られてしまう。

 

「くっ...間に合え!」

 

しかし勇者は止まらない。壁は異能無効化を付与した剣で切り裂き打ち破る。

 

「クソッ、間に合わねぇ...!」

 

勇者が早すぎる。あれじゃ窒息する前に魔術で回復されてしまう...手助けしてやりたいが、サザミが動けないにも関わらずトライデントを使って俺に攻撃してくるせいで俺も思うように動けん...!

 

「衝撃の銃なら...!」

 

ここから攻撃するならこれしかない。衝撃の剣で銃と銃弾を作って...

 

と、その時だった。

 

「カリヤ!!」

 

アルトの中にいるミセラが叫んだ。

 

「お願いやって!!」

 

やって?何を?

 

「……なる、ほど...」

 

理解した。そして、躊躇している暇はなかった。それが何を意味していようとも、この場ではこれが最善手で、今すぐにすべきことだった。

 

ミセラの体内には、衝撃の剣を仕込んであった。軽い衝撃解放を通じてミセラに指示を飛ばすためのものだったが、それはまだミセラの体内に残っていた。

 

「衝撃...解放...!」

 

込められていた衝撃エネルギーを全て撒き散らす。

 

つぎの瞬間、アルトの全身が内側から弾け飛び、血肉が飛散した。その中にはおそらくミセラも混じっていたのだろうが、アルトの血の色が混ざってしまっていたため判別は出来なかった。

 

「ミセラ...ありがとう...」

 

まさか...まさかこんなお別れになってしまうだなんて、思ってもいなかった。俺の手で殺したのか...やりたく、なかったな...

 

「な、仲間ごと殺しやがった...」

 

サザミがポツリと呟いた。

 

……そうだった。まだ俺にはやるべきことが残っている。最後まで、ちゃんと終わらせなければ...

 

胸に湧き上がる気持ちを封じ込めながら、俺は後ろに歩いてサザミと勇者から距離を取る。

 

「……これで、俺を除いた全ての死印付きが死亡した」

 

死印名簿を開いて、アルトとミセラが死亡していることを確認しながら話す。

 

「こっちの目的は達成だ。お前ら人類の勝利として、この戦争を終わらせることにしよう」

 

俺はそう言いながら、先ほど作った衝撃の銃を斜め上に向けて放った。銃弾は天井に突き刺さり、衝撃エネルギーが流れ込んで天井の一部が崩落する。

 

「見ろ、この青空を。人類勝利の証だ...一時的の、な。この短い時間を存分に享受するといい」

 

おそらく俺が死んでしばらく経ったら、全戦力をあげて魔王軍が魔王城を取り返そうと攻め込んでくるだろう。本来の歴史通りに進むなら、すぐに世界の支配権を奪うことができるはずだ。そうはならない未来にも、少し興味はあるがな。

 

「ではお二人とも。永久に、さようなら」

 

衝撃の剣を全て集めて凝縮させ、一本の短剣を作り出す。

 

「おい待て!お前はこの手で...!」

 

サザミが叫ぶ。勇者は走り出す。

 

しかし、もう遅い。

 

短剣は俺の頭に突き刺さり、溜め込んでいた全ての衝撃エネルギーを頭に流し込んだ。

 

ああ、こんな感触なのか。

 

頭が吹き飛ぶその直前、俺はようやく人間たちに与えてきた痛みを知った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よくぞ使命を成し遂げて戻ってきたな仮谷よ」

 

死亡したことにより、俺は神様のいる空間に戻ってきた。

 

「……人を殺すとか、仲間を死なせるとか、もう二度としたくねぇや...」

 

「そこまでなのか?ワシには平気そうに殺していたように見えたのじゃが...」

 

「わからん。平気なのかそうじゃないのかすらな。だからこそ、もうしたくないと言っているんだ。自分が何も感じないヤベェ奴だって分かりたくないんだ」

 

「そうか...なら、人を殺すのはやめにしよう。そんなことをしなくて済む世界に送り込むことにする」

 

「帰ってきてまたすぐ次の世界の話か...聖杖世界にはまだ行けないんだな?」

 

「そうじゃな。もうしばらくはかかるじゃろう」

 

「そっか。じゃあ、魔王は今どんな様子だ?」

 

「うむ...一つ言えることがあるとするならば、衝撃の剣の能力の主導権奪われておるのう」

 

「創造の銃と同じか...あれ?ヤバいか?万能の防御能力を魔王に与えてしまったのでは...」

 

ちょっ、どうしよう。次もらう能力のこと少し考えないとだな...単体で強すぎる能力だと魔王に奪われた時にヤバいことになるから...

 

「……神様少しだけ待っていてくれ!次持ってく能力考えるから!」

 

「了解じゃ。待つのは慣れておる」

 

法術世界の余韻など一切なく、俺の冒険は次へと進むのだった...




余韻が無くて本当に申し訳ない...第二章 衝撃の剣はこれで終わりです。
今回事前に書くと確定していたことは、勇者が異能無効化を使うこと、どこかの町で大規模な戦闘を起こして勇者たちと一般人のふりをしながら接近すること、魔王城内で最後の一人を殺すことの三つのみでした。
ミセラは途中で相棒ポジが欲しくなったので作ったのですが、終盤まで活躍させることができて満足...そのままヒロイン枠も担ってくれて嬉しい誤算です。

さて、次回の説明...の前に、前回予告していたサザミの勘の正体について解説。
サザミのアレは、強者を見抜く勘です。強者を見抜き、それに対抗するための方法がなんとなくわかる...といった魔術です。
本来は弱い魔物が持つような魔法であり、強い人間に出会った時に安全に逃げ出しながら情報を盗み取れるといったものでした。有効打を知ってそれを的確に撃ちながら逃げ、仲間に情報をもたらすための魔法です。
それをサザミは逃げるためではなくより強い強者を探し求めるために使っていました。強者の弱点を見抜けるこの魔術は、戦闘狂であるサザミにはうってつけだったわけです。
しかし、誤算が一つ。それは、カリヤくんよりもミセラが強者だと判定されたこと。ミセラの実力が上がっていたことと彼女のうちに燃やす闘志が熱かったこと、そしえカリヤくんがサポートに回ると初めから決めていたため力の差が逆転さてミセラが強者認定され、魔王だと思い込んでしまいました。
それが無ければ、カリヤくんを狙って攻撃することができ、話の流れは大きく変わっていたかもしれませんね...

さて、長文はここまで。
次回からは第三章 模倣の傷をお送りします。
前書きに書いた通り、次回は1月28日投稿です。
今後ともよろしくお願いします...

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