追跡パートです。
「警察に突き出しちゃったけど、もうあいつから調べられることはないのか?」
俺たちを襲ってきた不審者を警察に突き出し終わり、歩いて行く湊に着いていきながら聞いてみる。
「終わってから言われても困るんだがね...まぁその心配は必要ない。余すことなく調べ切ったさ」
「そっか、そんで今どこに向かってるんだ?」
「ひとまず、あの男が魔丸を受け取った場所に移動しようと思っている。その場所の記憶を読み取れば、魔丸を渡した相手を追うことができる」
「なるほどなぁ...俺もついてくだけじゃなくて、手分けして探せたら良いんだけど」
「いつかは出来るかもしれないが、私の魔法知識量に耐えられない今じゃ絶対に無理だろうな。それに、幸希は私の用心棒なんだ。きちんとついてきてくれたまえ」
「しゃーないか...まぁどうせ使ったところで、あまり離れられないしな」
大きな傷をつけない限り、近距離でしか模倣の傷を発動させることが出来ないからな。一応、同じ対象に何度も傷をつけることで、小さな傷でも多くの魔力を扱えながら遠くからでも発動できるようにはなるけど、どっちみち今は無理だ。大人しく湊についていくしかない。
「そういやなんだが、湊って前にも魔丸使用者に襲われたことあるのか?ようやく調べられる、とか言ってたけど」
「数回ね。魔法で攻撃するわけにもいかないし、ライオットガンで応戦しようにも魔丸使用者は少し肉体もタフになるから倒しきれなくて、バレない程度の幻覚をかけて逃げるのが精一杯だった。だから、きちんと調べられたのは初めてなんだ」
「そっか、じゃあ今回で突き止められれば良いな」
「それが出来れば良いのだが...こっちの道だ」
大通りから脇道に逸れる。やっぱ、薬の受け渡しってこういうアングラそうな小道だよなぁ...
「ここ、だな。普通の人はまず立ち入らない裏通り...取り引きにはもってこいだ。魔法で調べるから、怪しい奴が来ないか見張っていてくれ」
「了解」
湊が屈み、地面に手をつける。魔法で周囲を見張ってはいるだろうが、言われた通り周囲を見張り、誰か来ないか監視をする。
「……完了だ。ただまぁ、ある程度予想はついていたことだが、魔物が直接渡しているわけではなかったな。仲介役の人間に受け渡しを任せているようだ」
「その仲介役とやらは追えそうか?」
「ああ、可能だ。だが、少し待ってくれ」
「りょーか...湊、角から顔だけ出してこっちを見てる奴がいる」
「……魔力は無い。少なくとも、魔丸使用者ではないな」
「けど、こんなところに来る人はいない...そのはずだろ?だから関係者の可能性が高い。俺は追うぜ?湊は大通りに出て待ってな」
「……わかった。魔物の魔力器官を探知してゆっくり追いかけるから、行ってらっしゃい」
「おう、行ってくる!」
一瞬で最高速に達し、裏路地を駆け抜ける。それに驚いたようで、こっちを見ていた誰かは急いでその場から逃げ出した。
「逃すかよ...!」
曲がり角を駆け抜け、逃げている男の後ろ姿を視認する。服装も覚えた。人混みに紛れようとも追えるだろう。
「……うおっ、撃って来やがった⁉︎」
逃げる男が腰に手を伸ばしたかと思えば、銃を引き抜いてこちらに向けて撃ってきた。銃口の向きから当たらないことは分かっていたが、流石に心臓が跳ねる。
「そうくるならこっちも...!」
右腰のホルスターに入っているライオットガンを取り出し、男の足を狙って引き金を引く。ゴム製の丸い弾丸が放たれ、吸い込まれるようにして男の足に命中する。
「あだっ...!!」
男は前にどさっと倒れ込む。俺は銃を構えながら男に近づき...こちらに向けてきた拳銃を撃ち抜いて手から弾き飛ばす。
「大人しくするんだな」
ゴム弾で撃たれた足を押さえて蹲る男に近づく。
「クソ...なんなんだよいったい!急に追いかけてきやがって!」
「ならこっちはこう言うぜ?なぜあの場所にいた?そして、なぜ俺らのことを見ていた?」
「それは...あ、あそこを通ったのはただの偶然で!」
「じゃあなんで逃げたりした?なぜ銃で撃ってきた?何か後ろめたいことがあるから...そうだろ?」
「ぐっ...」
「おお、スピード解決じゃないか。見事だね」
後ろから湊が近づいてくる。
「にしても、まさか路地を抜ける前に捕まえるなんてね...銃声がしたが、大丈夫か?」
「俺には擦りもしてない。反撃で足は撃たせてもらったがな」
「そうか...ん?この顔は...おい幸希、お手柄だ」
「え、なに?もしかしてマジでこいつが売人だった?」
「その通りだ」
「ラッキー♪」
どうやらこの男が、湊があの場所の記憶から読み出して見つけた魔丸の受け渡し役だったようだ。
「マジで...そう言うってことは、幸希はこいつが売人では無いかと疑って追いかけたということか?」
「ああ、考えてもみろよ。魔丸使って凶暴化してる奴に受け渡し役が成立すると思うか?魔丸を撃ってる仲介役は、絶対シラフの奴だろうなと思ってたんだよ。んで、受け渡し場所だったあの場所に来ていて魔力が無いってことは、本人である可能性が高い...逃げ出したところでほぼ九割方確信に変わったな。普通の人は逃げる理由無いし」
「もしも突然走ってこっちにくる人がいたら、怖がって逃げるとは思うけどね」
「驚いてはいたようだけど、怯えるそぶりはなかった。すぐに逃げ出したのが怪しいのさ。大方、俺らのことを警察かなんかだと思って逃げ出したんだろうけどな」
「なっ...違うのか?」
「そうだぜ?俺らは客さ」
「そ、そうなのかよ...なら、早く言ってくれよ。こんな思いする必要なかったじゃ無いか...悪いが、今は在庫切れだ。また今度来てくれ...」
……俺と湊は顔を合わせて、一度頷く。まさか、こんな単純な嘘に引っかかって売人であることを明かしてくれるとは思わなかったな。
「ありがとう。ちゃんと売ってくれてな」
「は...?何を言って...」
「ちゃんと情報を売ってくれたじゃないか。じゃあな」
ゴスッ...と男の側頭部をぶん殴り、脳震盪を起こしてそのまま気絶させる。
「……君、人を傷つけることに躊躇いがなさ過ぎないか?」
「……ひとまず、ノーコメントで。気絶させたから記憶を読み取ってくれ」
「まぁ、良いだろう。だが、君の精神性については魔丸騒動が終わった後で色々聞き取りをするから、そのつもりで」
そう言いながら湊は気絶した男の頭に触れて記憶を読み取り始める。
「……よし、繋がった」
「手がかり手に入ったか?」
「ああ。どうやら、魔丸を作り出しこいつを仲介して売り捌いていた魔物はワーウルフらしい」
「ワーウルフ...人狼ってことか?」
「人間の姿に変身ができる特殊な狼の魔物だ。そして、どうもこの町の中に潜んでいるようだね」
「人に紛れてる人狼を探せってわけか...どこにいるか特定はできているのか?」
「今はまだ。そもそも、こいつから接触する手段や連絡手段が無いようだ。こいつが誰もいない裏路地に入ると、ワーウルフの方から来るらしい。当然ではあるが、ワーウルフの方が立場は上のようだな」
「待ち合わせをしているわけじゃ無いってわけか...けど、今はってことは時期にわかるということか?」
「こいつにかけられている魔法を解析すればね。こいつには居場所を特定する魔法が仕掛けられている。だから落ち合うことができるのだろう。その魔法を解析して、少し弄ってやれば...」
「逆探知みたいなことが出来るってわけか」
「ああ。けれど、逆探知をした瞬間にワーウルフにも気付かれるだろう。それゆえ、急いで捕まえに行く必要がある。そこで...だ」
湊は手をパーにしてその場で手刀をすると、そこに空間の裂け目が生まれる。そして、その穴に身につけているものをぽいぽいと放り込んでいく。次元収納みたいな魔法かな?
「幸希、私を抱えて走れ。私が道案内をする」
「なるほどだから荷物を...抱えるのは良いけど、バレない程度の身体強化は頼むぞ」
「了解した。必要に応じてかけるとしよう。では、抱えてくれ」
「ちょい待て...よいしょっと」
湊を背中に背負う。子供だから軽いな...こういうとなんかあれだが、ステラを背負った時よりも軽く感じる。まぁ、多分ステラよりも年下だから軽いのは当然ではあるが。にしても...
「……なんか硬いの当たってるんだけど、なにこれ?服の下になんか着てる?」
「防弾チョッキさ。周りに人がいるといざという時でも魔法を使うことは出来ないからね。両親が心配しているというのも理由ではあるが、身を守るためにつけているのさ」
「なるほどね。それなら外すわけにはいかないな...こっちは準備完了だ。いつでも行けるぜ?」
「じゃあ、逆探知を開始するぞ...くっ、追える距離ではあるが少し遠いな。南東2キロの位置...これは、門のあたりか?ならまずはあっちだ、走れ!」
「あいよ!」
地面を蹴り、その場で出せる最高速度を叩き出して駆け抜ける。
「次右、突き当たりを左で大通りに出る!信号があるが...このペースなら止まらずに行けるはずだ!」
「了解!」
路地裏を駆け抜けて大通りに出る。湊の言う通り信号は青だったのでそのまま横断歩道を走り抜ける。
「今度は右!そのまま南下して...え?移動してない...?」
「どうした?このまま走ってて良いのか?」
道行く人にぶつからないように細心の注意を払い、そして速度を落とさないようにギリギリを攻めながら走る。
「このままでいいんだが...おかしいんだ。逆探知されたことはわかっているはず。それなのにワーウルフが動く気配が無いんだ。敵に居場所を特定されたのだから、その場を逃げ出すのが普通のはず...」
「俺らを待ち構えようってか?逃げないってんなら逆に好都合じゃねぇか」
じゃあこのまま走る必要も無くね?とは思ったけど、いつ気が変わるかわからないし一応体力が尽きない程度には急ぐか...って、待てよ?
「ちょっと待て。ワーウルフ目線だと逃げる必要ってあまり無い...のか?」
「どういうことだ?」
「考えてもみろよ。逆探知なんてのが出来るのは魔法が使える奴だけ。そして普通の人間には魔法は使えない。つまり、逆探知をしてきたのは魔丸を服用した輩か魔物だけ...どちらにせよ、わざわざ逃げる必要はないんだ」
「なるほど...それなら確かに、逃げはしないか...だが、私の存在は魔物の視界を通じて魔王に伝わっているだろう。魔法が使える私のことを待ち構えている可能性も大いにある...仮に逆探知が魔丸服用者だとか魔物の仕業だと思い込んでいて動いていないだけだとしても、視界に入った瞬間に魔丸服用者か否かはわかるだろう。見つかったら即座に攻撃してくると思って良いだろうな」
「じゃあ見られる前に出来るだけ近づく必要があるな...どんな攻撃をしてくるかは分からんが、一発でも攻撃を当てりゃ俺の勝ちだ。罠だろうがこのまま行くぜ」
「そうか、幸希の能力があれば...じゃあこのまま行くぞ。後もう少しだ...そこの交差点は斜めに横断して良い!そこから少し走って右の道に入って道なりに進んでいけばそこに居る!」
湊に言われた通りに走って右にあった路地に入り、何度か角を曲がる。
「次の角を曲がったところだ!銃を構えておけ!」
「りょーかい...っ⁉︎」
角に差し掛かろうとしたその瞬間、光線のようなものが飛んできた。その光線は直角に曲がり、こちらに迫ってくる。
「くっ、魔力量が多すぎて私だとバレてたか...!」
湊はそう叫びながら前に半透明な壁を張り、飛んできた光線を受け止める。
「逃げられる前にやるぞ!壁は私が張る!このまま突き進め!」
「おう!」
湊に壁を張ってもらい攻撃を防ぎながら角を曲がる。そこには、こちらに背中を向けて走って行く男の姿が...あいつがワーウルフか!
「はは、遅い遅い!」
全速力で走り、ワーウルフとの距離を縮めて行く。ワーウルフは魔法も使わなければならないため全力で走ることができていない...魔法を湊に任せているおかげで生まれた差だ。このまま詰める...!
「凄い、人間態とはいえ狼の速度を上回るか...!」
「再誕の魔法使い...!ただの人間を味方につけたか!」
「ただの人間で悪かった...な!」
実銃を抜き、ワーウルフの脚を狙って引き金を引く。放たれた弾丸は湊が張っていた壁をすり抜け、脚に向かって飛んでいき...
「チッ、魔法で弾かれたか...!」
光線が弾丸を撃ち抜き消失させる。その後も引き金を引くが、放たれる光線が全てを消し去っていく。
「こっちも魔法で対抗するしか無い。目が慣れたから光線も避けれる...防御せずに撃ち抜いちまえ湊!」
「……いいや、それは幸希がやってくれ」
湊は俺の首の横から手を伸ばすと、右手で俺の銃を持つ手を掴み、引き金を引かせて自身の左手を撃ち抜かせた...⁉︎
「ちょっ、もっと自分の身体大事にしやがれ馬鹿ッ!!」
「ほら、早く繋がれ」
「っ...わかったよもう!」
模倣の傷を発動させて湊の魔力と繋がる。膨大な魔法知識に脳みその中が押し潰されそうだが、なんとか必要な魔法を見つけ出して発動させる。
「撃ち...抜け...!」
あのワーウルフが使っている光線の魔法を放つ。
「なっ...ヅッ⁉︎」
ワーウルフは光線で飛翔物を撃ち落とそうとしたものの、同質の魔法は互いに干渉することなく通り抜けたため光線が脚を撃ち抜いた。
「お前、なぜ魔法を...!」
ワーウルフはそう叫びながら、片足だけで器用に前へと飛び跳ねるようにして進んでいく。しかし、先程よりも速度が落ちている。このまま走ればすぐに追いつける...が、今なら奴の魔法を扱える...!
湊の魔力を使い、治療の魔法を発動させて湊の左手の銃創を完全に治す。湊との魔力接続が切れるが問題は無い。ワーウルフと繋がっていれば、この場は十分...!
「使える魔法は...っ、まずいコイツ⁉︎」
ワーウルフの使える魔法の情報が頭に流れてきて、俺は途端に焦る。急いでワーウルフの光線魔法を発動させ、飛び跳ねるようにして逃げて行くその背中を撃ち抜きにかかる...が、透明な壁のようなものが作られて光線が遮られてしまう。
「あの野郎、俺の魔力を...あいつも再誕と同じ異端児か?」
走りながら叫ぶワーウルフに向けて再度光線を放つが、壁に阻まれ続ける。それならばと実銃の引き金を引くものの、そちらも同様に防がれてしまう。
「早くあの壁を崩さねぇと...逃げられる!」
「それなら私が崩してやる」
湊が一発だけ魔法を前に放つ。放たれた魔法が壁に当たった瞬間、ワーウルフが張った壁はボロボロに崩れ落ちて消失する。魔法の壁を打ち崩す専用魔法か...湊が作ったこのチャンス、逃すわけにはいかない!
最速で魔力を奪い取り、光線魔法を発動させる。無防備なその背中に、ドデカい風穴を...!
「……クソッ、一足遅かったか...!」
ワーウルフの背中を光線が貫かんとしたその瞬間、その姿が消失した。何もない空間を光線が通り抜けたため、透明化の魔法では無い...そんな魔法は使えないと知っているから、そんな気付きは無意味なわけだが。
「今のは...転移の魔法か」
「似たようなものだな。発動したその瞬間に居た位置から発動終了時の位置までの直線距離に、任意の係数を掛けた距離を転移する魔法...だってさ」
ワーウルフとの魔力接続が断たれてしまったため、模倣の傷の効果範囲内から脱したのは確定。奴の使える魔法も併せて考えると、この魔法を使ってあの場から逃れた可能性が高いだろう。
「多分、俺らが奴に見つかった瞬間にはもう、魔法を発動させていたんだろうな。あんなに必死こいて走っていたのはこれをするためか...」
「逃げられたのはなかなかに面倒だな。幸希の力も、異様な魔力の流れでなんとなく把握されてしまうだろうからな...まぁ、仕方ないか。初めての連携にしてはそこそこ上手く行った方だと思っておこう」
「にしても、いったいどこまで飛んだのやら...あっちの方向だよな?町の外まで飛んだかな...」
「そうとは限らないぞ。掛ける係数は負の数でも良いからな。全くの反対方向に飛んでいる可能性もある」
「そっか、その可能性もあんのか...方角も真逆だし、追うのは難しいか」
「念の為、幸希がワーウルフの魔力と繋がっている最中にその性質を調べておいた。この魔力に絞って広域魔力探知を発動させれば、どれだけ遠くとも方角だけはわかるはずだ。近づくごとに精度も上がる。いずれは見つけ出せるさ」
「そっか...何はともあれ、この町での魔丸騒動は収まると思って良い...よな?」
「そうだな。魔丸を作っていたワーウルフがこの町から去ったから、時期に収まるだろう。あの仲介役も在庫切れと言っていたから、既に売られた分が使用されたらそれで終わりだな」
もちろん、他にも仲介役が居たり、魔丸製作者がワーウルフ以外にもいたら話は変わるが、魔物たちもしばらくは俺たちを警戒して鳴りを潜めるだろう。何事もなく収束してくれれば良いが...
「……っと、反省会は後にしよう。出来るだけ魔法で外に漏れないようにはしていたが、何かの拍子にバレる可能性はある。早急にこの場を離れるぞ」
「りょーかい」
周りをよく見ると、あんなに光線が飛び交っていたというのに建物や道には何一つとして傷がなかった。そりゃ、攻撃は俺に任せようとするわけだ...いや、だからといって俺に左手を撃ち抜かせたことは許さないが。
「……というか、そろそろ降ろして良いよな?これでもそこそこ疲れてるからあとは自分で歩いてくれ」
湊を下ろして歩き出す...
「どうした?早く離れないとなんじゃ?」
下ろしたはいいが、なぜか湊は動かなかった。
「これは...なかなかまずいことになったな」
「あの、説明をして?何がまずいことになったの?怖いんだが?」
「……一度、見晴らしの良い場所に出よう。空を見れば、幸希もわかるはずだ」
「そう...?なら一旦外出るか」
路地を歩き、大通りに出る。
「空って言ってたけど、どの方角...?」
そう言いながら辺りを見渡す。若干東側の空が暗いような気がするが、それのこと?それとも夜になりかけてるだけ?
「東だ。あの空が見えるだろう?」
「あれ異変なのか。ただの夜じゃ無いんだな」
「なるほど、幸希の世界じゃ似たような現象があるのか...あれは、宵闇という暗闇を産む現象だ。高濃度の魔力を溜め込んだ雲が光を遮ることでその周囲が暗闇に包まれるわけだ」
「へー、よく見えないけど雲がかかってんのか...で、それの何がまずいんだ?」
「あの雲は、魔力を含んだ雨を降らす。ゆえに、その雲の下には大量の魔物が集まる。そして、その雲はこの町に向かって移動をしている...何が起こるか、わかるな?」
「魔物がこの町に雪崩れ込む...ってことか。たしかにまずそうだけど、倒せば良いじゃん。戦車とかの現代兵器使えば余裕でしょ」
「実際、少し前に来た宵闇ではそうだった。十分な弾薬が確保できていれば今回も対処出来るだろう...しかし、前回から間があまり空いていない。まだ弾薬の調達が来ていなかったはずだ。軍だけで対処することは不可能に近いだろうな」
「補給来てないのか...ってか、そんなに頻繁に来るもんなのか?」
「かなり珍しい。というより、私のせいなのだろうな...このタイミングだ、魔王が狙って引き起こした可能性が高い」
「魔法を使える湊を狙ってこの町を襲わせようってことか...嫌なことしやがる」
「ここで取れる選択肢は二つに一つ。私を狙っていることを逆手に取り、この町を離れることで宵闇の軌道を変える。もしくは、戦力不足ではあるが町の総力を上げて魔物を迎え撃つか...どちらにする?」
「後者だ。前者は俺たちが動いても宵闇の軌道が変わらない可能性があるという裏目がある。そうなるくらいなら、迎え撃ってやるよ」
「そうか...ならば、武器を買いに行こう。魔法は人には見せられず、銃弾には限りがある。常に使える近接武器が必要だ。必要なものを早急に取り揃えるぞ」
「了解。案内は任せた」
そうして歩き出した時、町中にアラームが鳴り響く。宵闇が接近していることを伝えるもののようだ。
ここが戦場になる...その時間が迫りつつあった。
聖杖世界でもあったような町防衛イベントが始まります。
少しの準備パートを挟み、すぐ戦闘になるはずです。