神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8210字。

今までにも何回かやった、町防衛イベント開始です。


宵闇覆いし戦場

「そんな武器で良いのかい?」

 

「ああ、これで良い。今回は身を守る手段が無いから、長物の方がいいと思ってね」

 

俺が買ったのは刃の付いていない槍だ。もはやただの長い棒と言っても良いが、先端に取り付けられた金属部をぶつけてしまえばそこそこのダメージを期待できるだろう。

 

魔法だったり衝撃の剣だったりといった防御手段が無いため、剣よりも攻撃範囲の広い槍の方が向いているだろう。そして、切断ではなく殴打の方が傷の付け方をコントロール出来る。半分だけ刃が食い込んでしまい、取り回しが効かなくなって反撃を喰らうといったリスクを考えて刃の無い槍を選んだのだ。

 

「ふむ...殴打なら出血させずに傷を負わせることが出来るね。それで私を殴れば失血死というタイムリミットを考えずに私の魔法を...すまない、今のは無しだ」

 

「傷をコントロール出来るってのは合ってるが、あんまり自分を傷つけるようなこと言わないでくれ...いざという時以外はそれ、禁止な。やる時は覚悟決めて、俺から言うから...」

 

「わかった。覚悟を決めたその時には、遠慮なく言ってくれ...さて、武器は手に入れたな。ここからは別行動を取るぞ」

 

「別行動?一緒には行かないのか」

 

「魔法を見せるわけにはいけないが、魔法無しでは私は無力だからな。宿に戻り、通信で幸希のサポートをするよ」

 

「なるほど了解。俺が前線に出て、湊が魔法でサポートするってわけね」

 

「あ、そうそう。宵闇の中は魔力を含んだ雨が含んでいる影響で、魔法による通信が乱れやすい。だから、これを渡しておく」

 

「これは...トランシーバーか。これで連絡を取れってわけね...」

 

無線機を受け取り、イヤホンを片耳に取り付ける。

 

「テストのために、これから指示はこれを通して行う。無事に戻って来ることを祈っているよ」

 

そう言って湊はこの場を去っていった。そして、イヤホンから声が聞こえてくる。

 

『あー、聞こえるな?』

 

「聞こえてるぜ」

 

『まずは東の門に向かえ。そこに向かえば、ボランティアの募集をやっているはずだ。それに混ざり戦闘に参加しろ』

 

「ボランティアねぇ...冒険者ってのが居ないからそういう扱いになんのか」

 

銃は大体の人が持っているけど、多くの場合は自衛のためだ。自ら魔物を倒しに出向くような人は少数だろうし、集まる人は少ないだろうぁ...

 

「俺一人でどんだけ変わるかわからんが、頑張らねぇとな」

 

『あれだけ大口を叩いておいて、負けましたでは許さないからな』

 

「大丈夫さ。町の防衛なんて何度もやってきたしな」

 

っと、ここだな?

 

「あのー、ボランティアの募集ってここであってます?」

 

東の門の近くにやってきた俺は、人が多く集まっている場所にいた書類を持って右往左往している軍服を着ている人に声をかける。

 

「あっ、はい。ここであってますよ。おーい、カッパ持ってきてー!」

 

カッパ...?と思っていたら、別の軍人がやってきて何かを渡してきた。

 

「動きづらいと思いますがこれを着て戦闘に当たってくださいね。それと、銃は延長線上に人がいないことを確認してから撃つことを徹底してください。良いですね?」

 

「はい、注意します」

 

他にもあれこれと注意事項を説明すると、あそこの集団の中にいるようにと言ってきたので言われた通りにボランティア集団の中に混じる。屈強な人が多いな...命の危険がある以上、本当に自信のある人しかいないようだな。覚悟キマった眼をしてる奴しかいないや。

 

『そのカッパは魔力の雨から身を守るためのものだ。あの雨をまともに浴びれば、魔力容量の小さい現代人は即座に魔力過剰症を起こしてしまうからな。魔力を弾くカッパは必須なんだよ』

 

おぉ、質問しようとしたら言う前に回答が飛んできた。

 

『見たところ、幸希の魂も魔力容量はゼロに等しい。それを着なければ、宵闇の中では身動きも取れないだろう』

 

「なるほどなぁ...ちなみに聞くが、魔法を弾くことはできるか?」

 

『それは無理だな』

 

そっか...たしかに、そこまで出来たら宵闇以外でも使うか。

 

『準備運動をしておくと良い。重火器が切れる頃だから、そろそろ出番が回ってくるだろう』

 

そうなのか?と思い、背伸びをして門の向こう側を覗く。さっきから爆音が響いていたけど、戦車が砲撃してるんだよな多分...あっ、戦車が動き出した。弾切れで撤退し出したのか...?

 

「やっぱり足りなかったか...」

 

近くにいた軍人が舌打ちをしながらボソッとつぶやいた。

 

「勇気ある諸君!今こそ出番だ!前線に赴き、魔物どもを殲滅するぞ!」

 

どこからか聞こえてきた、おそらくは軍人のものであろうその声を聞き、周囲にいた人たちが雄叫びをあげた。自身を鼓舞する声...なのだろうが少し震えているな。内なる恐怖を隠せていない。戦闘慣れしていないことが見てわかるな。

 

「ここは俺が先陣を切ってやらないとだなぁ...」

 

人の隙間を縫って前へ前へと進み、最前列に出る。そのタイミングで前に進み始めたので、そのまま先頭で前を歩く軍人について行く。

 

「っと、これ着ないとだな」

 

軍人から受け取っていたカッパを着込み、フードを被る。

 

「……君、なかなか良い目をしているな」

 

先頭を歩いていたせいで注目されてしまったのか、軍人が声をかけてきた。

 

「その佇まい...休暇中の軍人か?」

 

「いいや、違う。ただちょっと、何度か修羅場を乗り越えてきたことがあるってだけさ」

 

「そうか...ここだけの話だが、今回ばかりは町を守り切ることは難しいと上は考えていてな。町では今、ピストン輸送による他の町への避難が行われているはずだ。つまり俺たちは、その避難が完了するまでの時間稼ぎ...下手すれば捨て駒だ」

 

……なんか、エグい話をしてきたんだが?

 

「内心それを覚悟して来ている人が多数だろうが、生きて帰ることは難しい...そう思っているのならそれは間違いだ。一般の協力者に過ぎない君たちは必ず守り切る。最後の最後の殿は俺たち軍人だ。無理だと考えたなら、すぐに俺たちを頼って逃げ出してくれて構わない」

 

「……大丈夫だ。この戦い、逃げで終わらせない。勝ちで終わらせるさ」

 

「それが出来れば、最高なんだがな...さて、そろそろ宵闇圏内だ。決めた覚悟を、もう一段階引き締めてくれ」

 

そう言いながら軍人は、信号拳銃のようなものを取り出して宵闇の暗黒に向ける。

 

「総員!!作戦開始ッ!!!」

 

パパンッ!!と軍人たちの持つ信号拳銃から破裂音が鳴り、宵闇の暗黒に向けて何かが飛び...次の瞬間、眩い光が暗闇を晴らした。暗闇に身を隠していた魔物たちの姿が露わとなる。

 

「かかれ!!魔物どもを殲滅しろ!!」

 

全員で走り出し、宵闇の雲の領域内へと侵入する。中にいる魔物はまばら...だが、おそらく本来はもっと数がいたのだろう。戦車による砲撃でここまで減らしたのだと考えるとすごいが、それでも数はまだまだ残っている。こっちの戦力を考えると、絶望的な差だと言わざるを得ないだろうな。こりゃ、負けると思っても仕方ないかもしれない。

 

走りながら周りを見ると、軍人らはそうでもないがボランティアの奴らは少し顔がこわばっているのが見えた。不安なのだろう...その不安、俺が晴らしてやる!

 

「まずは...一人!」

 

槍を手に持ち、一番近くにいた小鬼っぽい魔物に突撃する。槍の端を持ち、走っている勢いそのままに槍を振り回して先端を魔物の側頭部に直撃させ、真横に殴り飛ばす。

 

出来た傷をもとに模倣の傷を発動し、魔物の使える魔法を理解、脅威となりそうな魔法がないことを確認してから倒れた魔物の頭めがけて槍を振り下ろし、頭蓋を砕く。頭蓋を破壊された魔物は塵となって消え、跡形もなく消え去る。

 

「よっしゃ次ィ!」

 

わざとらしく大声を張り上げ、俺に続けと言わんばかりに周りを鼓舞する。だが、その成果を確認できるほどの余裕はないためそのまま次の標的に向かって走り出す。

 

「次はお前だ!」

 

降りしきる雨の中を駆け抜け、人間大の大きさをしたアメンボっぽい魔物に接敵する。その魔物は背中の上に小さな水の球を大量に抱えており、けれどもそれらを一つも落とすことなく、まるで水面を滑るかのように地を滑って移動して俺から少し距離を取った。

 

そして、距離を取ったところで魔物は止まると、背中に抱えていた水の球が蠢き出して形を変えていく。それらは小さなピラニアのような姿に変わると、降っている雨の中を泳いでこちら側に飛んできた。雨から雨へと飛び移っているようだな...ならば!

 

「こうしてしまえば近づけまい!」

 

槍を持ち上げ、真上でぐるぐると振り回して降ってくる雨を全て弾き飛ばす。そうして雨の降らない箇所を作り出したその数瞬後、水のピラニアが迫ってくるが、俺の目算通り水のない場所に移動することはできないようで、水のピラニアは俺の周りを旋回し出す。

 

……よし、魔物は背中の球を全て消費したな。やるならここ...!

 

「そこは俺の間合いだぜ!」

 

すぐさま槍を振り回し、旋回していた水のピラニアを一掃する。迫ってくる敵を各個撃破するよりも、こうして引き寄せてからまとめて打ち倒すほうが手っ取り早いな。

 

「……チッ、再チャージ早いな。けどそれならこれで...!」

 

魔物の背中に水の球が溜まりつつあるのを確認した俺は、拳銃を引き抜いて魔物に向けて放つ。魔物は地を滑って弾丸を避けようとするも、体の中心を狙って放たれた弾丸を完全に避け切ることは叶わず足に命中する。魔物はバランスを崩し、生み出していた水の球を地面にこぼす。

 

模倣の傷発動...あの魔法は、魔力をチャージして水の生命体を生み出し、それで攻撃させる魔法か。そして、地を滑っているのは水の摩擦係数を変化させる魔法によるもの。滑る時は摩擦を減らし、止まる時は摩擦を増やして急停止するって寸法か。それなら...

 

「これで終わりだ」

 

もう一発銃弾を放つ。魔物は避けようとするが...一切滑ることができず直撃を喰らい、そのまま消滅した。

 

摩擦を操る魔法を使い、魔物の足元の水の摩擦を増やして動けなくしたのだ。この魔法は側から見ても使っていることがわからない。こういうバレない魔法はどんどん使っていこう。

 

『右、来てるぞ』

 

「っ...!」

 

湊の声を聞いて俺は体を捩りながら左に跳ぶ。銃をホルスターにしまい、槍を構えながら近づいてくる魔物を視界に捉える。

 

「せいっ!」

 

槍を突き出し、先端を魔物に突き刺して傷を...っ⁉︎

 

「消えっ...っぶねぇ!」

 

魔物の姿が掻き消えたかと思えば、斜め上から飛びかかってきていた。俺はすぐさま槍を動かして魔物が噛み付いてくるのをなんとか受け止め、その顎めがけて左の拳を突き出す。

 

顎を殴られ、ぐぎゃんっ!と魔物は鳴き声を出しながら槍から口を剥がす。その瞬間に槍から手を離し、開いた口を掴んで上下に引っ張り顎を外す。

 

模倣の傷発動...こいつの魔法は口を使うものしかないな。もう脅威じゃ無い。口から手を離して落下させたところに膝蹴りを叩き込み、上に弾いたところで手放した槍を手に取り、再度落下してきた魔物の口に槍を叩き込む。顎が外れていて口がガン開きだったため、槍は体内奥深くまで突き刺さる。

 

「……ん?じゃああの魔法は...?」

 

魔物が消滅したのを見てから、ようやく異変に気が付いた。この魔物の使える魔法じゃ、一瞬姿が消えたことの理由がつかない...!

 

周りを見渡すが、こちらに向けて魔法を使えるような距離に魔物はいない。そこそこの距離にいる魔物も、人間と戦っているから魔法で仲間の魔物をサポートする余裕もないだろう。じゃあどこから...!

 

「湊!あの魔法なに⁉︎」

 

『一瞬別次元に移動し、一メートル弱の移動ができる魔法だ。他者に対しても発動でき、視界に入っていれば発動させられるからどいつが発動させたか特定するのは難しいだろうな』

 

「未来跳躍みたいなもんか...どんな魔物が使うことが多いとかあるか?」

 

『この魔法は肉体や魔力の特性に関係なく使える。だが、消費魔力は多い。魔力を多く溜め込んだ、比較的体躯が大きい魔物が使い手だろう』

 

「なるほど...戦いながらの特定は無理か。ひたすら倒して行く他ない...!」

 

とりあえず、未来跳躍っぽい魔法を使える魔物がいるということを頭の片隅に入れておくことにして、次の獲物を探しに移動を開始する。ざっと周りを見て、苦戦していそうなところに突撃...!

 

「せいやッ!」

 

走りながら槍を振り回し、今まさに人に飛びかかろうとしていた魔物の顔面をぶん殴る。

 

「おおっ...助かった感謝する!」

 

「礼してる暇あるなら戦いな!まだまだ来るぞ!」

 

今はまだなんとかなっているが、宵闇はもっと奥まで広がっている。その下にいる魔物がどんどん押し寄せてくれば、魔物の波に押されてそのまま死ぬだろう。そうならないためにも、近くにいる魔物は速攻で倒してこちら側が多勢の状態を崩さないようにしなければならない。休んでいる暇はないのだ。

 

と、その時だった。火薬の弾ける音が聞こえて、上から眩い光が放たれる。二度目の閃光弾だろう。

 

「……今の...は?」

 

眩い光の向こう側で、何かが動いていたような...

 

「気のせい...か?ってか、気にしてる余裕ねぇか...!」

 

宵闇の雲を見て錯覚を起こしただけだろうと一旦結論付けながら、俺は近くに迫ってきていた虫の魔物を槍で押しつぶす。おちおちと考え事をしている暇すらないな。

 

「っ、ぐああッッ!!」

 

「っ⁉︎クソッ!」

 

叫び声がしたので発生源を見ると、そこには身体が燃えていて、悲鳴を上げながら地面を転がり懸命に火を消そうとしている男がいた。雨が降っているにも関わらず消えないその炎は、その男の近くにいる魔物が放った魔法だろう。

 

魔物を倒さないと消えないのか?という疑問を抱く前に俺は走り出す。魔物の近くには燃やされていない人がまだ二人いて、魔物はそいつらを標的として炎の槍のようなものを空中に生み出してロックオンしていた。二人は銃を魔物に向けて引き金を引いているが、どうやら弾切れ...俺が魔物を殺らないと三人死ぬ!

 

「間に...合え...!」

 

魔物の炎の槍が放たれる。この距離では炎の槍を打ち落とせない...だから、狙われてる二人を槍で薙ぎ払う...!

 

「ゴフッ...⁉︎」

 

少々強引だが、二人を薙ぎ払い炎の槍の軌道から逸らすことに成功する。あとは俺が避けるだけ...っと。

 

「っ、次早いなオイ...!」

 

炎の槍を避けたその次の瞬間には、また別の炎の槍が飛んできていた。すぐには避けれそうになかったため槍で弾き飛ばして...

 

「クソッ、触れるだけで即引火かよ⁉︎」

 

俺の持つ槍が炎に包まれ、俺は熱さで手放す...やべぇ、次避けられねぇ!

 

「ッ...」

 

炎の槍が俺の左肩に着弾する。

 

痛みは無かった。

 

しかし、着弾点から炎が湧き出し、俺の全身を包む...!

 

「ぐッ...!」

 

思っていたよりも炎の温度は高くない...けれど、数分包まれてたら余裕で死ねる!自分の命最優先だ!魔法でもなんでも使ってあの魔物を倒し、魔法を解除させる!

 

拳銃を取り出し、熱さに耐えながら狙いを定める。どうやら魔物は、こちらに一発叩き込んだだけで俺を標的から外したようだ。注意を向けられていないのは好都合...鉛玉をぶち込む!

 

「着弾...接続!」

 

魔物の胴体に銃弾が命中したことを確認した瞬間に模倣の傷を発動させる。炎の槍の知識を盗み見、術者の解除意思か死、大量の魔力で炎を押し流すことでしか炎が消えないことを知る。

 

「死に晒せ...!」

 

炎の槍を魔物の周囲に生成、魔物に向けて一斉射撃する。

 

「耐久勝負だこの野郎...!」

 

火は灯した。あとは、どちらが先に燃え死ぬかという我慢比べ...だが、魔物には一切の勝機をも与えん!奴の魔力をさらに使って炎の槍を生成し、さらに打ち込み引火させる!奴が魔法を発動させようとしたその瞬間に割り込んで、使おうとしていた魔力を横取りし永久に魔法を発動させない!

 

お前が死ぬのが先だ...!

 

「……燃え尽きたか」

 

炎が消え、魔物は魔力器官らしきものを残して跡形もなく消え去った。俺の体を包んでいた炎も同時に消える。

 

さて、急いでこの場を離れなければ。顔は見られていない。負傷も比較的軽微。この場を逃げ切ってしまえば、俺が魔法を使っていた奴だと特定することは不可能...

 

パパンッ!!

 

「なっ...」

 

痛みが走る。炎の熱で感覚が麻痺しているのか、具体的にどこが痛いのかはわからなかったが、確かに痛みが走った。

 

目を横にやる。そこには、先程槍で薙ぎ払った男たちが拳銃を持っており、硝煙が銃口から出ているのが、この雨の中でも不思議と見えた。撃たれた...?

 

何か叫んでいるようだが、頭の中にキーンと音が響いていて聞き取れなかった...はずだが、どうやら翻訳能力が働いて、口の動きから俺に発していた言葉の内容を伝えてきた。

 

その内容は罵倒。そして、魔物というワード...

 

助けたってのに、そして目の前で魔物に攻撃されて、その魔物を倒したってのに、魔法を使ったのを見たから魔物扱いして殺す...?義理ってもんはねぇのかよ。リロードして俺に撃つのが出来るってんなら弾切れした瞬間に装填して魔物撃てよ...

 

ああ、ダメだ。意識が持ってかれる...助けようとした人間に撃たれて終わりって、そんなのアリかよ。何も出来ずに、初日で終わり...だと...ふざけ、るな...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『リトライだ』

 

そんな声が、通信機越しにハッキリと聞こえた。

 

気がつけば、俺の意識ははっきりとしていて、全身の痛みも消え去っていた。

 

何がどうなって...と思い辺りを見渡そうとするが、身体が動かない。目に見える範囲のものも、全て止まっていた。

 

『死なれては困るのでな、リトライだ』

 

通信機越しの湊の声だけが、動いていた。

 

『莫大な魔力を消費して死を巻き戻す、そんな魔法だ。記憶はそのままだ。次は死なないよううまく立ち回ってくれ』

 

死を巻き戻す...過去に戻すってことは、炎の槍の魔物を倒す前に戻ってるってことか...

 

『記憶があるのは発動者の私と対象の幸希だけ。魔力消費が激しいため、使うのはもう一度が限度...君の援護も難しくなるから出来ないも同然だ。対象の魔力がゼロになるというデメリットは君には無問題だろうから、再リトライは難しいということだけ理解してくれ』

 

二度目はない。次は死なずにあの魔物を倒す必要がある...か。

 

『リトライによる認知時間停止もそろそろ終わる。あと三十秒で対策を考えて、最良の動きをするんだ。出来るな?』

 

動けないので返答をすることは出来ない。一方的に、湊は情報だけを投げ渡してくる。

 

『魔法を使える奴は魔物だという認識が、現代の人間には広まっている。魔法を使っている場面を絶対に見られるな。たとえ自身の身を守るためだとしても、使ってはいけない。ほぼ脊髄反射のように銃を向けてくるぞ』

 

そうだな、それは身をもって理解したよ。自分を助けてくれた、もしかしたら味方をしてくれたのかもしれない相手ですら銃を向けて即座に引き金を引けるような連中だ。ありえねぇよクソッタレ。

 

……正直、生き残るだけなら簡単だ。あの魔物に襲われている奴らを助けに行かなければいい。

 

それでも...それでも良い。自分さえ生き残れれば、ひとまずの問題は解決できるのだから。

 

自分を助けた奴を容赦なく撃ち殺せるような奴、助ける意味あるか?

 

『一応言っておくと、先程撃たれたのは、攻撃を回避させるためとはいえ槍で薙ぎ払ったからだと思うぞ。なんで攻撃してきたんだという不信感を持っていたところで、魔法を使ったのを見てしまったのだから撃たれてしまうのも無理はないな。人間でも魔法を使えることくらい知っておけよとは思うが』

 

はは、なるほど。奴らからしたら、俺が悪いってわけだ。はは...魔王でも解放してやろうかな?なりふり構わず暴れてやろうか?

 

……良いことを思いついた。今ちょっとダークな気分だから、やることも悪っぽくいこう。どうせ俺は人殺しなんだし、今更取り繕っても意味ないしな...

 

『準備はいいな?そろそろだ』

 

ああ、準備は出来てる。

 

『では...リスタートだ』

 

世界が動き出す。どうやら俺の身体は動いている最中だったようで、ほんの少しだが身体がつんのめる。

 

「っ、ぐああッッ!!」

 

声が響く。この瞬間からか...そう思いながら、俺はニヤリと笑って動き出すのだった。




死んでもやり直せる魔法を出してしまうとヌルゲー化してしまいそうですが、そこはうまく調剤するのでご安心を...
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