神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8063字。

リスタート後からです。


再挑戦せし模倣者

「っ、ぐああッッ!!」

 

その声を聞いた瞬間、発生源に向かって走り出す。そこには身体が燃えていて、悲鳴を上げながら地面を転がり懸命に火を消そうとしている男がいた。雨が降っているにも関わらず消えないその炎は、その男の近くにいる魔物が放った魔法だろう...もう見た景色だ。

 

魔物の近くには燃やされていない人がまだ二人いて、魔物はそいつらを標的として炎の槍のようなものを空中に生み出してロックオンしている。二人は銃を魔物に向けて引き金を引いているが、弾切れだ。持ってるんだからさっさとリロードすりゃあ良いのに、馬鹿だよなぁと思いながら走って近づく。

 

槍で二人を薙ぎ払うようなことはせず、それどころか全力を出さずにそこそこの速度に留めて走る。

 

……当然、間に合うわけもない。炎の槍は二人に命中し、炎が全身を包む。

 

「……燃やされろよ、クソが」

 

俺は誰にも聞こえない声量でそう呟くと、炎に呑まれて地面に倒れ込んだ二人の上をジャンプで飛び越え、手にしていた拳銃で魔物の脚を撃ち抜く。

 

模倣の傷発動...魔物の魔力と接続し、魔法『引火の槍』の発動権を手にする。

 

しかし、馬鹿正直に魔法を使えばまたさっきと同じ道のりを辿るだけだ。俺が使っているとバレずに魔法を発動させるか、魔法無しであの魔物を倒す必要がある...が、先程銃弾を打ち込めたのは不意打ちだったからだ。二度目は通用しない。魔法に頼る他ないってわけだ。

 

魔物は足を引き摺りながらこちらを向き、警戒心を顕にしている。俺は魔物に銃を向けて魔物の警戒を銃に向けるが、俺の意識は別の事に集中させる。魔物の魔力の動きに意識を集中させ、少しの動きも見逃さない...!

 

「っ...!」

 

魔物が魔法を発動させようとして、必要量の魔力を動かし始めた。その瞬間に、模倣の傷を使い引火の槍を発動させる。その結果、魔物が使おうとしていた魔力を奪い取る形で俺の魔法が先に発動した。相手の魔力を奪って魔法を発動させるがためにできる芸当だ。これで、魔物の魔法発動を封じてしまう。

 

「クギャッ...⁉︎」

 

魔物は二重の驚きによって声を漏らす。一つは、自分の魔法が発動しなかったことによるもの。急に魔力が異常な動きを示したのだから、不発になったことに気付けないわけないだろうな。

 

そしてもう一つは、不発になったはずの引火の槍が魔物の側に浮いていることに気づいたことによる驚きだ。

 

槍の穂先は俺の方を向いている。だが、それこそが俺の作戦だ。こうしていれば、側からみれば今まさに魔物に襲われようとしているようにしか見えないだろう。

 

「……無駄だぜ」

 

魔物が再度魔法を発動させようとしていたので、その魔力を奪い取り魔物の周囲に槍を生み出す。その槍を目にしながら、俺は銃口を魔物から浮いている槍へと向け直す。

 

「自分の魔法で...死ぬんだな!」

 

引き金を引き、銃弾が放たれる。弾丸は俺が生み出した槍へとまっすぐ空気を引き裂きながら突き進み、槍に命中する。

 

その瞬間、槍が爆散し四方八方に炎を撒き散らす。撒き散らされた炎は別の槍を覆い尽くすと、爆発を誘発してさらに火の勢いを強める。そうして魔物の周囲に浮いていた槍全てが爆散し、魔物は炎に包まれた。

 

……実は、あの槍にあんな爆発を引き起こす機能は無い。弾丸が命中したとしても、炎としてでしか形を持たない槍を銃弾は貫通してしまい、引火の槍に触れたことによって弾丸が燃え出すだけで槍が形を崩すことはあり得ない。

 

しかし、そんなことを周りで見ている人間らは知っているか?否、知るはずがない。魔法の知識が一切無いこの世界の現代人は、目の前で起きた現象をそういう魔法だったんだと解釈するしかないのだ。

 

だから、誤認させることができる。弾丸が着弾したその瞬間に俺が槍を操って炎を辺りに撒き散らすことで、あたかも弾丸が命中したことで爆散したように見せかけたのだ。

 

俺が魔法を使ったなどと考える者なんていない。魔物の魔法を利用して見事に反撃した強者がその目に映るだけだ。

 

「おい、大丈夫かアンタら」

 

炎に包まれて身動きが取れなくなっている魔物に対して何発が鉛玉を叩き込み、絶命したことを炎が消えたことで確認した俺は魔物に攻撃されていた男たちに声をかける。

 

「あ...ああ、助かった...」

 

「無理そうならさっさと逃げるんだな。足手まといはここにはいらねぇ」

 

俺のことを殺しにかかったコイツらのことは普通に嫌いになっているので、俺は男たちに目もくれずに前に歩き、魔物がいた場所にしゃがみ込む。

 

直接の死因は銃撃によるかもしれないが、魔法によるダメージもあったために魔物は魔力器官をドロップしていた。それを誰かに見られる前に回収しておくのだ。かなり使いやすそうな魔法を手に入れられたの、結構嬉しいな...

 

「……さて、次だ」

 

槍を真横に突き出し、近づいてきていた魔物の頭を打ちのめす。

 

「始まってそこそこ経ったが...だいぶ劣勢寄りか?」

 

気絶した魔物の頭に槍を振り下ろして殺しながら周囲を見渡す。雨と暗さで視界はやや不良だが、そこそこ状況が悪そうだとわかる。

 

「魔物の数は減ってるが、それ以上に退場者が多いのか...命優先はいいことだが、抜けられるとそれはそれで困るぞ...!」

 

集まった人たちは所詮ボランティアだ。死に瀕するまで戦うようなことはしなくて良いと俺も思っているが、ちょいと傷ついたくらいで離脱してる人間はなんなんだ?それくらいなら最初からいないでくれた方が、その人数に応じた戦い方を選べたし嬉しかったんだが...

 

「一人で何人分やれば良いのやら...流石にちょいと疲れてきたぞ」

 

襲いかかってくる魔物を槍で薙ぎ払いながら不満をこぼす。

 

『それでも周りの有象無象に比べれば良い動きをしているんだがね』

 

「褒めてくれてあんがとよ!」

 

「ヅッ...!」

 

「ああもうまた負傷者か⁉︎」

 

雨音や銃声、魔物の魔法による破壊音に紛れて聴こえてくる小さな声に反応して俺はその方向に向かって走る...って、さっきの奴らじゃねぇか!気が進まねぇ...けど、目の前で死なれる方が嫌!助けるっきゃねぇ!

 

狼のような魔物は男の影から顔だけ出して脚に噛み付いている。影に潜る魔法か...?とりあえずぶっ飛ばす!

 

「オラァッ!」

 

「ゴハッ...⁉︎」

 

は...?槍で魔物をぶっ叩いたのにびくともしないし、なんなら代わりに男が頭を叩かれたかのように真横に倒れていった...⁉︎受けた攻撃を影の主に肩代わりさせる魔法かなにかか?なんであれ、こいつに攻撃するのはまずい...!

 

「……っ、俺の影にも...!」

 

魔物が俺の影から顔を出す。俺の脚に噛みつこうとしてきたので避けるが、魔物の頭は俺の影についてくるため距離を取ることはできなかった。噛み付いてくるのを紙一重のところで回避することが限界だ。

 

おそらく、こいつに攻撃したら俺にダメージが跳ね返ってくるだろう。こいつの弱点はなんなんだ...?

 

「湊!この魔法はなんなんだ⁉︎」

 

『対象の影を狼の像で実体化させ攻撃を行う魔法だ。自らの影なのだから、攻撃すれば自身を傷つけることに繋がる...魔法を発動させている魔物を探して叩け。像が狼だからといって魔物も狼とは限らないのに注意するんだ』

 

「サンキュー湊...!そんで相当ヤバめの魔法じゃねぇか!」

 

下手すりゃこの魔法だけで俺たち全滅しかねないぞ⁉︎このままだと全員自分の影を攻撃してしまって自滅させられてしまう。俺が倒さないと...!

 

「クソッ、本体どいつだよ...!お前か⁉︎」

 

影の攻撃を飛び跳ねるようにして回避しながら、目に映る範囲にいる中で一番近くにいた魔物の近くまで移動し、槍で薙ぎ払う。

 

「こいつじゃない...!」

 

模倣の傷を発動したが、該当する魔法は持っていないようだ。放置するのもアレなのでさっさと頭を潰し、急いで次へと向かう。

 

「というか、諦めろよさっさと...!しつこい!」

 

影は執拗に俺を攻撃してくる。こんなに避けられてるんだから、諦めて別の奴を攻撃しに行ったほうが効率的だろうに、固執しやがって...!

 

「……っ、消えた⁉︎」

 

俺を追う影が消えた。諦めたのか...?いや、ここから少し離れたところで魔物が一体人間に倒されているな。あいつが魔法を発動させていたのならば、死んだことで解除されたとも考えられる...どっちか判別つかないな。後者なら良いが、前者だった場合のことを考えると警戒を解くわけにはいかない...どっちにしても面倒極まりない!自分で始末出来ないとここまで不確定要素が出てくるのか...!

 

「ひとまず魔物は死んだと結論づけるしかねぇか...うだうだ考え込んでる暇もねぇしな!」

 

ひとまず狙いを定めていた魔物を横から槍で突き、倒れたところに喉元めがけて槍を突き出して貫き殺す。

 

「よし次!」

 

『待て幸希!そいつはまだ生きている!』

 

「っ...⁉︎」

 

湊に言われて魔物を横目で見ると、倒れた姿勢から足を突き出して俺の横っ腹を蹴ろうとしていた。慌てて槍を間に噛ませるものの、受け切ることはできずそのまま蹴り飛ばされる。

 

「いっつぅ...けど、まだマシ...!」

 

直接蹴られなかったおかげで、爪先の鋭利な爪からは逃れることができた。あれで蹴られていたら腹を抉られていたな。

 

「にしても、なんで生きてやがんだ...喉貫いたはずだろ」

 

何かの魔法か?と思い、先程の傷をもとにして模倣の傷を...

 

「……発動できない...治癒の魔法か」

 

模倣の傷が発動しないのは、おそらく傷が無くなってしまったからだ。実際、魔物の首元を見ると完全に傷が埋まっていた。治癒の魔法によってつけた傷を治されてしまうと、俺の能力はキャンセルされてしまう...この魔物とは相性が悪いな。

 

「だが、傷はつけられる。治される前に接続して、魔法の弱点を探る...!」

 

致命傷すらも治せてしまうほどの治癒魔法。けれど、それが万能であるとは限らない。何か必ず欠点があるはずだ。魔法の知識を得ることで、突破口を探ってやる...!

 

「オラァッ!!」

 

元気になって魔物が立ち上がってきたところを、槍の届く範囲ギリギリの距離まで一歩で近づき、槍を振り回して先端で魔物の頬を叩く。肉を引き裂いた感触が手に伝わってくると同時に模倣の傷を発動させる。

 

「……チクショウ消費激しいだけで無敵じゃねぇか!」

 

模倣の傷で分かったことは、この魔法は魔力さえあればどんな傷でもたちまち治ってしまうというトンデモ魔法だった。即死さえ免れてしまえば必ず治癒して立ち上がれるようだが、魔力消費が激しい以外の弱点持っとけよ...!

 

「クソッ、攻撃しまくって何度も治させて、魔力削っていくしかねぇか...!」

 

『いいや、それではダメだ』

 

「っ、どうしてだ?」

 

魔物を槍で突きながら湊に聞く。

 

『この雨は魔力を含んでいる。ゆえにこの雨を浴びている限り永遠と魔力は補給されていく。もちろん魔法を使わせ続ければいずれ魔力も尽きるだろうが、そうなる前に宵闇は町に到達するだろう』

 

「じゃあどうすりゃ良い!」

 

『魔力を溜め込み全身に供給している魔力器官を引き抜くのが一番だ。それさえ無ければすぐに魔力切れを起こす』

 

「そいつはどこにある!」

 

『胴体のどこかとしか言いようがない。個体によってバラバラだからね。魔法を使えば特定ができるのだが...ならば次点の策だ。頭を完全に胴体から切り離せ。魔法を使うと考える頭と魔力を抱える胴体を切り離せば魔法は使えなくなる』

 

「クソッ、それならもっと鋭利な得物も買っておくべきだったか...!」

 

この槍じゃ押し潰したり貫いたりはできるが、首ほどの大きさのものを切断することはできない。どうしたものか...

 

「……とりあえず、攻撃しまくるっきゃねぇか!」

 

治されはするものの攻撃は続ける。傷がついている間はあの魔物がどれだけ魔力を抱えているかもわかるし、この魔物の習性なのかはわからないが傷ついている最中は治すことに集中してくれるため、永遠と攻撃し続ければこちらが攻撃を喰らうこともないからだ。

 

「そこそこ魔力使ってるけど、それと同じくらい回復もしてるな...本来なら数回治したら尽きるだろうに、このままじゃマジでずっと尽きないな」

 

湊の言う通りだ。このままだといつまで経っても魔力切れにはならない...というか、俺の体力の方が先に尽きる。流石にずっと攻撃を浴びせ続けるのは辛い。

 

……というか、もし何かの間違いで魔力切れになっても、すぐに魔力は雨で補給されるからまた治されるのでは?ここは聖杖世界じゃない。魔力切れを起こしたら全回復するまで魔法を使えなくなるわけでは無い...はずだ。となると、ここで魔力切れを狙ってもあまり意味はない...?

 

「……なら、アレをするしかないか」

 

魔物を勢いよく蹴り飛ばし、後ろへと吹き飛ばす。

 

「宵闇の外まで吹っ飛ばす!!」

 

起きあがろうとする魔物を槍で薙ぎ払い、また遠くへと転がす。こうして少しずつ宵闇の外へと向かっていき、魔力を帯びた雨の外へと出してしまえば魔力供給は断たれる。そうなれば、数発殴れば魔力が尽きて傷を治せなくなる!

 

「オラァッ!...っ、クソッ雑魚は寄ってくんな!」

 

移動するということは、移動先にいる魔物に狙われるということを意味する。今はまだなんとか来た側から一撃で殺せているが、無駄に耐久力があったり回避されたりだとか、魔法が面倒な奴が来てしまって対処に手間取ると、治癒魔法を持つ魔物への攻撃が止まってしまい、少量でも魔力を減らそうと頑張った努力が無駄になってしまう。

 

外まで出すのは難しいか...?いやでも、これ以外に方法は...

 

「うぐっ⁉︎...この野郎ッ!」

 

思考に意識が回ってしまったためか、横から割り込んできた魔物の攻撃を喰らってしまう。爪で左腕の皮膚を切り裂かれ、血が滴り落ちる。

 

傷は浅い。あの魔物の魔法を使えば一瞬で治癒できるだろう。問題は、少し離れたところに人がいることだが...こちらを見てはいないな。攻撃を受けた瞬間も見ていないようだし...今のうちに治す!

 

模倣の傷で魔物の魔力を奪い取り、受けた傷を跡形もなく治癒する。この治癒魔法を無駄撃ちさせることができればあっという間に魔力を無駄遣い出来たものを...ちゃんと傷ついていないと発動すらできないのだから面倒だ。

 

「……いや、待てよ...?」

 

攻撃してきた魔物を銃で撃ち抜いて殺し、治癒の魔物が自身の傷を治してくる前に攻撃を加えて完全治癒を防ぎながら俺は呟く。そして、思考を巡らせて...

 

「いや、やっぱダメか...」

 

そう結論づけようとしたその時だった。空が暗くなり始める。放たれた閃光弾の効力が切れ始めたのだろう。周囲もどんどん暗くなり始め、周りを見渡すことができなくなる。

 

これは...行ける。

 

すぐに行動に移した。槍で魔物の足を払い、地面に転ばせるとすぐさま馬乗りになる。そして槍を右手で持ち、魔物の頭めがけてひたすら振り下ろす。何度も、何度も。

 

それと同時に、左手で拳銃を持ち...自らの腹を撃ち抜いた。

 

「ッ゛...!!」

 

自身の腹に風穴が開く。しかし、すぐさま魔物の魔法によって完全に治癒される。

 

「我慢くらべと行こうか...!!」

 

槍で魔物を殴りつけながら拳銃で自傷を重ねる。そして治癒魔法で傷を即座に治す...これにより、二倍の速さで魔物の魔力を消費して行く。

 

やろうと思えば、引火の槍の魔物に対してやったような、使おうとしている魔力を奪い取ることで魔法発動を封じることも出来た。しかし、その方法はあまりにもリスキーだ。なにせ、魔物が傷を治せずに死んだ瞬間俺も治癒魔法が使えなくなってしまうからな。その時に腹に風穴が開いていたら死亡確定だ。

 

魔法で殺さなければ魔力器官はドロップせず、魔物の死後も模倣の傷を発動させることはできない。手持ちの魔法は炎系しか無いため魔物を即死させることは難しいから、このまま物理で攻撃する他ない。よって魔法発動を封じる方法は取れず、この方法を取ることにした。

 

一回の傷を治すのに必要な魔力量は把握した。魔力切れが近くなったら魔物にだけ攻撃することで自死は避けられる。そして、魔物に馬乗りになり覆いかぶさることで、少しでも魔物に雨が当たらないようにし魔力の補給を僅かながら遅れさせる。

 

これを、また宵闇の中が閃光弾によって光に包まれて俺が魔法を使っているところを見られてしまうギリギリのところまで続け、魔物を完全に殺す...!

 

「……っ」

 

断続的に銃弾を腹に浴びせたためか痛覚がもう機能していない。アドレナリンがドバドバなのか、もう躊躇はない。弾数の多いグロックにして正解だったなと冷静に考えている脳に感動しながら、最後の一発を放つ。

 

「これで...!」

 

俺の腹の傷が全て塞がり、同じように魔物の傷も塞がって行く。そこに槍で追撃をかまし、頬の骨を砕く。

 

じわじわと傷が治癒されていく...が、途中でそれは止まった。不恰好でへこんだ形の頬が形成されている。魔力切れ...模倣の傷の接続が途切れたことからもそれは明らかだった。

 

「終わりだ!!」

 

へこんだ頬にもう一度槍を突き刺し、陥没させる。すぐさまもう一発、今度は頭蓋を狙って槍を振り下ろし同様に砕く。

 

……魔物はそれ以上動くことはなかった。塵となって消えていく。

 

「ようやく、倒せたぜ...」

 

立ち上がり、打ち切ったマガジンを取り出して別のマガジンを差し込む。もちろん真っ暗な状態なので手探りだけで...っと、次の閃光弾が上がったか。眩しい...

 

……とその時だった。

 

『総員に伝達!!直ちに宵闇から離脱しろ!!』

 

スピーカーを通した爆音の声が響いた。

 

「うっるっさ!!なに⁉︎」

 

『どうやら町の民間人の避難が完了したようだな。宵闇の魔物を食い止めるのは終わり。だから離脱しろということだろう』

 

通信機越しに湊の解説が聞こえてくる。

 

パッと外を見ると、宵闇の外で何台か車が走っていた。あれに回収してもらって離脱しろということなのだろう。

 

『……といっても、幸希は離脱したがらないだろうな』

 

「よくわかってんじゃねぇか。このまま逃げりゃ人的被害は無いが町はめちゃくちゃだ。多くの人が帰る故郷を失うことになる...あれと同じ光景はもう二度とごめんだ」

 

魔物に襲われて崩壊した聖杖世界のカリスの村を思い出す。なんとか復興できたが、それまでにかかった苦労を間近で見てきた身として、もう二度とあんなことは起こってほしくは無い。

 

「ここの魔物は全て俺が倒す...そのためにも、俺は残るぜ。何があろうとな」

 

『その意気やよし。宵闇の外に出た人間には暗示をかけておいてやろう。そうしなければ、君が離脱するまでいつまでも軍の奴らが残り続けてしまうからな』

 

「サンキュー湊。人の目が無くなってからが本番だ。使える魔法全て使って魔物全員ぶっ殺してやる!目指せハッピーエンドだ!」

 

『それは良いが、先のような無理はやめてくれよ。死なれては困る』

 

「それはすまんな。咄嗟にはあれしか思いつかなかったもんで...っと!」

 

離脱しようとする人を魔物が追いかけているのを見かけたので、その魔物に向かってダッシュして槍を思い切り振り回して横から薙ぎ払う。

 

「湊!雲が町に到達するまであとどれくらいだ?」

 

『長く見積もって15分程度といったところだ』

 

「なるほど...そこまで時間はねぇな。けど...」

 

ざっと周りを見渡す。ぱっと見魔物の数は残り数十体...50には満たないくらいだな。一人でこれだけの数を相手するのは本来ならば自殺行為もいいところなのだろうが、魔法が使えれば話は別だ。

 

「……にしても、皆さん逃げ足は早いことで」

 

『元々足止めのための戦いなのだから、中心まで突っ走って戦う幸希の方が異常なのであって、普通の人は外縁部分でいつでも離脱できるようにしているんだよ』

 

「あ、そっかぁ...まぁ、さっさといなくなってくれてありがたい限りだ」

 

少し息を整えてから、また戦闘モードのスイッチを入れる。今度は魔法アリの全力だ。

 

「さぁ、行こうか!!」




能力あまり使えてないじゃんということで、しっかり場を整えてやりました。
この能力の真骨頂を見せられたら良いな...
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