模倣の傷をふんだんに使っていきますよ〜
「もう暴れちまって良いよなぁ?」
『ああ。君を認識している人間はいない。思う存分魔法を使うと良い』
「そんじゃっ、挨拶代わりに喰らわせてやるぜ!燃えちまいな!!」
模倣の傷を発動し、手に入れた魔力器官の魔力を消費して引火の槍を放つ。放たれた引火の槍は少し先にいるスライムっぽい形状の魔物に向かって飛んでいき...
「えっ、すり抜けた。そういう魔法か?」
『その魔法は固体しか燃やせられない。雨粒にあたっても燃えないのはそのせいだ』
「液体状の魔物には効かないってことか。なんか出鼻くじかれてちょっとテンション下がる...というか、固体だったらなんでも燃やせるのか。金属も燃えてたしな...ってことは氷も燃やせられるのか。面白っ」
『溶けた瞬間効果対象で無くなるから鎮火してしまうけれどね』
「はは、そいつは面白い...な!」
しょうがないのであの魔物は直接叩きにいくことにした。槍を振り回し、真上から魔物に叩きつける...が
「硬っ⁉︎」
槍で叩いた衝撃がそのまま手まで流れてくる。金属を叩いたみたいだ...なんにせよ、液体を叩いた感触では決して無い。
「クソッ、ダイラタンシーみたいなもんか⁉︎」
魔物は液状の触手を伸ばしてきたのでそれを槍で叩き弾こうとするも、またしても金属のように硬くなり弾くことはできなかった。その瞬間に引火の槍を触手に向けて放ったものの、燃えることはなく素通りする。組成はあくまで液体ってわけか...攻撃を受けた瞬間だけ硬くなり耐久性を発揮するような魔法だとひとまず結論づけ、魔物の触手をバックステップで回避する。
「それならこれはどうだ?」
手のひらを魔物に向け、魔法を発動させる。爪の先に火を灯し、可燃性の液体をばら撒くことで火炎放射を放ち魔物に攻撃する...が。
「チッ、炎じゃ水には勝てないか!」
火力が弱くて蒸発すらしないな。燃えているのは可燃性の液体だから、魔物に液体が取り込まれてしまって鎮火してしまっているというのも考えられるが...どっちにしろ効かないか。
「……銃も効かないってか」
今度は銃を試してみるものの、命中と同時に弾丸は潰れた。硬いものにぶち当たったために、貫くことができず弾丸の方が耐えきれなかったのだろう。
「今の手札じゃこいつには勝てねぇ...それなら!」
一瞬後ろを見て、その方向に魔物がいるのを確認してからバック走をする。魔物の攻撃を喰らわないように、そして俺を狙うのを諦めてしまわないように適度に距離を保ちながら逃げる。そして...
「もらうぜお前の魔法!」
逃げた先にいた魔物に向けて引火の槍を放つ。今度はちゃんと命中し、魔物は炎に包まれる。魔物は急いで炎を消そうと地面に身を投げて転がりだしたので、バック走のまま踏みつけ、追い越すと同時に槍を前に振り下ろして魔物に打撃を加える。
その一連の動作によって傷を生み出し、模倣の傷を発動させる。哀れにも燃え続ける魔物の魔力と接続し、得た魔法は...
「良い魔法じゃねぇか!」
その手に光の剣を生み出す。それを地面に倒れている魔物に向けて振ると、その身体は最も容易く切断することができた。切断面は溶けており、どろりと肉片が溶け出す...が、それは一瞬だけ、すぐに塵となり魔力器官を残して消失する。
「クソッ、魔力器官が...!」
どうやら切断した箇所に魔力器官もあったらしく。傷つけてしまったようで魔力が漏れ出していた。この魔法自体の魔力消費も激しいため、持続時間はもって数秒だ。
「けど、十分!!」
一歩前へと踏み込み、前からやってくる魔物を迎え撃つ。伸ばしてきた触手を切り裂き、すぐさま大元を切り刻むことで魔物を絶命させる。
光の剣の正体は圧倒的な熱量。発動者以外に牙を剥くその熱は、触れたものを否応なしに溶かし尽くしてしまう。その圧倒的な火力によって液体の身体を蒸発させてやったのだ。いくら硬くなろうとも、硬くさせる大元の水分を飛ばしてしまえば無意味だからな...っと、こいつからは何もドロップしなかったな。こりゃ魔力器官を消し飛ばしちまったか...
「手札が増えなかったのは辛いが、まぁ仕方ない。次だ」
魔力を使い切ったことで光の剣が消失する。新たに得た魔法は結局ゼロ...しかし、魔物の数はちゃんと減らせている。このまま行くぞ。
「狙うべきは町に近い方...!」
町の方向に向かって走る。そこにいる魔物を一掃してしまえば、あとは町に近づいてくる魔物らを迎え撃つだけになる。移動の手間を省くために今全力で移動するのだ。
「お前もーらい!」
進行方向にいた小さな恐竜のような魔物を横から槍で殴り飛ばす。吹き飛ばされていく魔物の魔力と急いで接続し、使えそうな魔法か判断を...
「よーしお前いる!」
走るのをやめて踵を返し、さっき殴り飛ばした魔物の方を向く。持っていた魔法は身体強化と二重衝撃...前者は説明不要だろう。後者は、物理的な攻撃を加えた際、そこから3秒以内の任意のタイミングでまったく同じ威力を同じ場所に叩き込むことができるというものだ。わかっていても回避のしようがない確定攻撃...是非とも欲しいところだ。
このまま離れると模倣の傷の効果範囲から外れてしまい魔法を使うことができなくなってしまうため、魔法を使ってこいつを殺し、魔力器官を奪い取ってやらねば...!
「っ、速いっ!」
身体能力強化によるものだろう。吹き飛ばされた魔物は空中で身を翻して綺麗に着地を決めると、そのまま結構な速さでこちらに突っ込んできた。
だが、ただ速いだけならば余裕で対処できる。高速戦闘の経験は伊達に積んでいないからな。そのまま頭突きをしてこようとしていると見抜き、こちらも身体強化を発動させて突っ込んでくる頭を槍で受け止める。
「さっ、反撃ぃっ⁉︎」
頭突き攻撃を受け止めた俺は槍で殴り飛ばそうとしたのだが、その瞬間魔物の二重衝撃の魔法が発動した。槍で受け止めた際に生じた側面を叩く衝撃が再度叩き込まれたことにより、槍の軌道は大きくずれて魔物のすぐそばを薙ぎ払う。
「ハッ、面白い!」
すぐさま俺は蹴りに意識を切り替え、槍の遠心力を利用しての後ろ回し蹴りを魔物に叩き込む。
「そーれもう一回!」
二重衝撃を発動すると、回し蹴りによってよろけていた魔物はさらに横へとつんのめり、地面に倒れこまんとする。その隙を見逃さず、俺は魔物の倒れる方向から槍を振り回して頭に叩き込む。
「今度は...!」
槍を俺の背中側を回す形で反対の手に持ち替え、もう一発槍を頭に叩き込む。そして...
「両側から!」
二回二重衝撃を発動し、魔物の頭の両側から再度打撃の衝撃を加える。身体強化によって多少肉体強度は上がっているだろうが、これほどの衝撃を両側から頭に撃ち込まれれば誰だって脳は揺れる。最低でも脳震盪、もっとうまく行けば、内側で両側から来た衝撃がかちあって脳がシェイクされているかもしれないな。
「一応魔法を...!」
引火の槍を撃ち込み魔物の身体を炎上させる。一応魔法ではあるが、二重衝撃で与えているダメージは物理に近い。そのせいで魔力器官が落ちませんでしたじゃ洒落にならないからな。
「……良し、死亡確認」
魔物の身体が塵になって消えた。さっきの魔法の打撃の後から動かなくなっていたし、既に死に絶えていたのかな...?
「魔力器官も...落ちてるな。そんじゃ加速!」
身体強化を発動して町の方面へとひたすら走る。あの頃の速さとは比べ物にならないくらい遅いが、この速度でも本来なら十分速い。想定の倍以上の速さで魔物たちを追い越し、宵闇の領域の端まで辿り着く。
……と、そこで面倒なことが起こる。
「うわっ、閃光弾の効力切れてきやがった...!」
軍が打ち上げた閃光弾は三発目だったが、その前二つよりも早く消えそうになっている。おそらく、宵闇から脱出するまでの時間さえ明るくできれば問題ないと考えていたために持続時間が短いものを打ち上げていたのだろう。こっちとしてはめちゃくちゃ困る...!
「湊!暗視魔法とか付けられないか⁉︎」
『出来るが、一旦宵闇の外に出てくれ。出ないと魔力の雨に遮られて魔法が上手くかけられん』
「おう了解!」
ちょうど端にきていたところだったため、完全に閃光弾の効力が切れて暗闇に包まれる前に宵闇の外に脱する。
「ってかさっきリスタートとやら使ってたよな?あれはなんで中でも使えたんだ?」
『それはあらかじめ君の中に魔法を仕込んでいたからだ。そのおかげで乱されずに使えたが、本来なら宵闇の外から内側には魔法で干渉することはできん。暗示も宵闇の外に出た人にしかかけなかっただろう?』
「そういやそうだったな...っと暗視サンキュー!これで見える!」
『引火の槍は良いが、火炎放射はやめておくといい。眩しさに目がやられても構わないなら止めはしないが』
「光には十分気をつけるさ。暗視ゴーグルと一緒だろ?」
そう言いながら俺は宵闇の中に飛び込む。閃光弾の効力が切れて真っ暗なはずなのに、ちゃんと周囲を見渡し魔物の位置を捕捉することができている。ほんの僅かながらに存在している光を集めて見えるようにしているのだろう。そのため、普通の明るさの光でも俺の目は潰れてしまう。絶対に気をつけなければならない。
「……なるほど、目を閉じてもちょびっとだけ見えるのね...やばそうな時はこれで光遮断するか」
目を閉じると明るさだけなんとなくわかるというのが通常時の視界だが、今の暗視状態では手を閉じていても多少周りを認識することができている。魔物が光関連の魔法を使ってきたら、これで目が焼き付いてしまうのを防ぐことに決める。
「……殲滅開始!」
近づいてきた魔物に向けて引火の槍を放つ。それを見た魔物は地面に腕を突っ込み、無理矢理土砂を巻き上げた。引火の槍は土砂に飲まれてしまい魔物まで届かない。そのまま魔物は炎に包まれた土の上を飛び越えて俺に襲い掛かる。
「ハァッ!!」
身体強化の魔法をかけることで敏捷性を上げ、魔物の突き出してきた爪を紙一重で回避しながら顎に蹴りを叩き込む。魔物は上に向かって跳ね上げられ...
「落ちな!」
二重衝撃が発動し、再度魔物の顎に衝撃が叩き込まれる。上に蹴り上げられていたために顎が上を向いていたので、二度目の衝撃は魔物を地面に向けて吹き飛ばした。
魔物が落ちた先は引火の槍によって燃えている地面だ。そこに落ちた魔物の身体がじんわり焼かれていく。火力不足ではあるが、これで少しでもダメージを稼いで...
「っと!退きな雑魚!」
横から魔物が飛びかかってきたので、放ってきた拳を槍を使って軌道を逸らしながら拳銃で腹を撃ち抜く。そして腹を蹴り飛ばして傷を抉る。
「……チッ、良さげな魔法持ってやがった」
消費魔力は激しいが空気中の水分を操る魔法を持っていたらしい。この場では有用な魔法であったが、どうやら打たれ弱い魔物だったようでもう死んでしまったために魔力器官を獲得することはできなかった。
「まぁいい。こいつの力をもらうだけだ」
俺は燃え盛る地面に焼かれて行く魔物の魔力と繋がり魔法を発動させる。地面に右手を突っ込むと、手は地面を透過してスルッと入って行く。その状態で手を実体化させると、手が土を圧縮しながら押し退ける。その状態で手を動かせば...!
バサァッ!!と土が捲れ上がり宙をまう。物質透過魔法の、実体化時に重なっていたものを押し退ける作用を使った現象だ。さっき魔物がやっていたのもこれと同じ...決してパワーで叶えた現象ではない。
「火葬と土葬両方してやるぜ」
巻き上げた土に引火の槍を放ち炎で包む。炎に包まれた土は魔物の上に降り注ぎ生き埋めにしてしまう。
「……よし、回収!」
魔物が死んだことを、模倣の傷の魔力接続が魔物の傷から魔力器官へと移る際の僅かな違和感で感じ取った俺は、引火の槍の効果を切ってから土を掘り起こしてこの魔物の魔力器官である骨を回収する。
「魔力量から見て数回が限度か...強すぎるから致し方なし!」
そう言いながら迫ってきた次の魔物を観察する。四足歩行で、この歩幅...引火の槍を放って回避行動の癖を確認する。
「ここっ!」
引火の槍を避け切り、飛びかかろうとしてきた瞬間に前に踏み込む。間合いの計算を誤ららせ、動きが鈍ったところを狙って魔法を発動させる。物質透過を発動させた右手を魔物の頭に突っ込み、その後実体化...その結果、押し退けられた頭が吹き飛び魔物は絶命する。
「ははっ、どんどんインスピレーションが湧いてきやがる!」
殺した側から次の魔物が襲いかかってくるが、魔物の魔力を奪って魔法を使いながら一体ずつ着実に倒して行く。次々に手札が増え、出来ることが増していく。俺の頭もどんどん活性化していった。
「おらよっ!」
一度地面にコンっと槍の端を叩きつけ、その後魔物に向けて振り回す。打撃の瞬間、二重衝撃を発動させて槍を地面に叩きつけた際の衝撃を再度打ち込むことで槍の勢いを増させる。加速した槍が魔物の頭蓋を叩き割るが、その直後に今与えた衝撃を二重衝撃でもう一度叩き込むことで完全に頭部を破壊する。
「よっしゃ次ィ!」
地面の中から飛び出してきて、頭部のドリルのような部位で俺の足を抉り取ろうとしていた魔物の顔に一瞬手を触れる。
手を触れた箇所を固定する魔法...それにより魔物の顔はその空間に縫いとめられた。前に進むことは当然出来ず、魔物の下半身が慣性によって持ち上げられた後、プランと垂れ下がる。
そして俺は右手を手刀の形にすると、一つの魔法を発動させる。疑似性質の付与...この手刀に剣としての切る性質を与えることで切断を可能にさせ、手刀を空間に縫い止められている魔物の首めがけて振り下ろす。
ザクッ...と手刀が本物の剣のように肉を引き裂く。だがしかし、所詮は擬似性質。切れ味は本物には及ばず、骨の切断は叶わない。けれども、肉さえ断てば骨が切れずとも十分致命傷だ。魔物は首から大量に血を噴き出させてそのまま絶命する。
「えっ、これ物理判定なんだ...まぁ良いや」
魔力器官がドロップしなかったことに若干驚きながらも戦闘を続ける。
「あと...もうちょっと!」
俺から距離をとって横を通り抜けていこうとした魔物に向けて魔法を発動し、地面から鎖を呼び出して足に巻き付ける。鎖が巻き付いたことでバランスを崩して魔物は転倒し擦り傷を作る...が、この距離だとその程度の傷では模倣の傷を発動させられないので近づく。
「これで後...九!」
倒れている魔物から魔力を奪い取り魔法を起動、空気中の魔力を帯びていない水分を操って氷の杭を作り魔物の頭に突き刺して殺す。
あれだけいた魔物ももう両手で数えられるほどしかいない。あと九体なら、時間的にも余裕で間に合う!
「っ、そこか!」
魔力器官を回収した俺は、周囲の動くものを探知する魔法を発動させて地中を進む魔物を発見する。さっき魔物の数を数えた時は地上にいたはずだが、いつのまにか地面に潜っていたようだ。
「そこまで届く魔法は...!」
俺は地面を強く蹴りつけた。しかし、ドンッというその衝撃音はこちらには聞こえない。全て魔物のいる場所一点を目指して流れていったからだ。
「そんでもういっ..」
二重衝撃を発動させる....地面に対してではなく俺の足に対してだ。衝撃を叩き込む直前にジャンプをし最高点で足裏を叩くことで無理矢理跳躍力を上げる。そして...
「ちょ!!」
その足で再度地面を踏み鳴らす。三重の衝撃が地面に流れ込む。一度目の二重衝撃に、二度目の蹴り、そして蹴りと同時に二重衝撃を再度発動させることで一度の蹴りのタイミングで三重の衝撃を叩き込んだのだ。
流れ込んだ衝撃は地面を通して魔物の身体に流れ込み、動きを封じさせる。さらに揺れによって地面が押し固められ、身動きが取れなくなった魔物はそのまま地の中で圧死する。
「どんな魔法で地に潜っていたのかは気にはなるが...これであと八!」
魔物の方に目をやる。どうやら残り八体は協力して俺のことを襲い掛かることに決めたようだ。バラバラに散らばって俺の横を抜けようとするとかよりもありがたい。
「まずは...!」
地面に手を触れる。植物を生やす魔法でイバラを魔物の進行方向に生やし、魔物の足裏を傷つける。
「チッ、半分か...」
イバラで傷つけられたのは半数の四体のみ。残りの四体は皮膚が硬くて傷つけられなかったりジャンプで躱されてしまった。ひとまず四体と魔力を繋いでおく。
物質の接合、金属を腐食させる毒、触れたものを吹き飛ばす、刺さると魔法解除以外では外せない針の射出...めぼしい魔法はこんなところか。
魔法の知識を頭に叩き込みながら俺は拳銃を手にし、傷つけられなかった魔物に銃撃を浴びせる...が、途中で弾切れをしてしまい三発しか撃てなかった。一発は魔物の足に当たり、一発は回避される。もう一発は、既に攻撃できている魔物が急に横に飛び出してきたためそいつに当たった。頭に当たったからもうあいつはダメだろう。消えたのは...金属腐食の毒の奴か。
「庇った...よりも、庇わせたか」
リロードしている暇はないので、拳銃をホルスターにしまいもう片方の拳銃を取り出す。こちらに込められた弾丸は非殺傷弾...しかし、疑似性質の付与によって銃弾の貫通力を付与させれば...!
「貫ける!!...って、避けんじゃねぇ!」
放たれた弾丸は...すでに傷を負った魔物にしか当たらなかった。一体はさっきと同じように避け、一体は最後尾の奴だったのでそもそも狙えず、もう一体はまたしても別の魔物が間に割り込んで庇ったため被害ゼロだ。
後ろのやつはともかく、銃弾を避け続けているあの二体は確実に強い。そのことを頭に入れながら発動させる魔法を考える。
「これだ...!」
俺は手を地面に透過させ突っ込む。そして実体化させた手で土砂を巻き上げた。
「押しつぶせ!」
巻き上げられた土砂が空中で接合し巨大な板を形成する。雨をたっぷり含んで重くなり、魔法によってガチガチに結合して強度を得た土砂が一枚壁となって魔物の頭上から落ちてくる。
「っ!」
一体、土砂が落ちてくる前に驚異的な加速でこちらに突っ込んできた奴がいた。先ほどから銃弾を避け続けていた個体だ。おそらく身体強化の魔法...なら策はある。
俺は一歩後退った。その一歩を魔物は俺に攻撃するために詰める。
またもう一歩下がる。魔物は拳を目にも止まらぬ速さで振り抜くが...その攻撃は届かなかった。
物質の接合魔法。それは、俺が触れたものが次に接触した固体と接合させる魔法。先ほどの土砂は、接合が付与された土砂同士が巻き上げられた後、空中で互いに触れ合ったため壁が形成された。今回は、触れた地面から一歩下がることで魔物にその地面を踏ませ、地面に縫い止めて動けなくしてやったのだ。
「次...!」
空気中の水分から氷の杭を生み出し、動けない魔物の頭に突き刺して殺害する。
「……はは、面白いね」
他の魔物はどうなったかと思い目をやると、五体の魔物が落ちてきた土砂の壁を受け止めて支えており、残りの一体は悠々自適に歩いてそこから脱出していた。
「どう見ても、他者に災難を押し付けるような類の魔法だよな...」
俺は物質接合の魔法を解除することで土砂の壁を崩し、土砂支えていた魔物たちを埋めてやりながら銃を手にする。
「なら、お前を守る盾はもう無い」
引き金を引き、非殺傷のゴム弾を放つ。しかし、ゴム弾には疑似性質付与により銃弾の貫通力が与えられている。避ける手段のない魔物はなすすべもなく殺傷力を持ったゴム弾を...
「なっ、雨で弾いた⁉︎」
ゴム弾は降り注ぐ雨に当たると、それに弾かれるようにしてあらぬ方向へと吹き飛んでいった。まさか、魔力を溜め込んでいる雨を一つの生命として見なし自らを守らせているのか...?
「……クソッ、何か手立ては...」
魔物が近づいてくるのでバックステップで距離をとりながら突破口を模索する。よく見ると、魔物の周りには薄らぼんやりと雨でできたドームのようなものが見える。魔物の一定距離にある雨を操って纏っているのか...突破するには、非実体のもので攻撃する必要があるか...?
……と、そんなことを考えていたその時だった。
何か、強い光源が視界の端...頭上の雲にあるのが見えた。暗視で光が強められている状態だから本当はそこまで強い光では無いのだろうと一瞬考えたが、その光は少しずつ強さを増し、雲の中を行き来していた。
この光の正体...
「ま、さか...っっ!」
俺は持っていた槍を遠くに放り捨て雲から背を向けて地面に蹲り目をぎゅっと閉じた。
次の瞬間だった。
空気を引き裂く雷鳴が鳴り響き、背後に着弾したと理解した瞬間熱で膨張した空気と爆音の衝撃波によって俺は吹き飛ばされ、地面に投げ出されるのだった。
あまりに強い力でも魔力消費という回数制限をつけることである程度バランスを保てるのが結構良い設定だと思っていたり...
さて、次回で宵闇を終わらせることはできるかな...?