なんか思ってたよりも長くなって、あんまり進まんかった...
「なぁ、魔族を見分けるってどんな感じなんだ?」
売り子をしながら歩いていたら、荷車を引いていたアンスが急に話しかけてきた。
「特に何かしてるわけじゃないんだよな。ただ見るだけで、あっこいつ魔族だなーってわかる感じ」
「結構ぼんやりしてんだな」
「けど精度は完璧だ。現に、幻覚の能力で誤魔化してたフールの村長も見破れたわけだしな」
「へぇ...魔族を見つけたら、俺に何か言わずとも突っ走ってくれて構わないからな。自由にやってくれ」
「そいつはありがたい。けど、見つけるまではちゃんと売り子するよ...っと、すんません何が欲しいですって?」
客から言われた物を一語一句間違わずアンスに伝え、商品を受け取り、代金と引き換えに渡す。翻訳能力じゃうまく翻訳ができない物があったりして、言われた物がどれなのかまだちゃんと判別できないからアンスに手伝ってもらっている。地球に無いものとか固有名詞とかは翻訳バグりやすいからな...頑張って覚えないと。
「はい丁度、毎度ありー」
「……よし、だいぶ人はけたな。次の場所行くぞ」
「了解」
商品の売れ行きが悪くなってきたので、移動を再開することにした。今はこうやって、センフリのいろんな場所を転々としながら商品を売っているのだ。もちろん、魔族も探しながらな。
「つっても、魔族いねぇんだよな...やっぱ、あんまり表には出てきてないのかな?」
「それは無いんじゃないか?魔族もまさか見ただけで見破ってくるだなんて想像もしていないだろうし、人間社会にデカい影響力を持ちたいならそれだけ表に出る必要がある。会えてないのは偶然だろうよ」
「まぁ大通り歩いてるはずなのにってのを考えるとそんなところか。ったく、あと二日で見つけないとだってのに」
「焦っても仕方ねぇぜ。ゆっくり行こうや」
「んだけどよぉ...」
「ちょっとルミ!前見て走りなさい!」
アンスと話しながら歩いていたら、女の人の大声が聞こえてきた。
その直後、ドンっと俺の身体に何かがぶつかった。
「うおっとと...子供?」
ぶつかってきたのは少女だった。なるほど、さっき大声を出していたのはこの子の母親ってところだな?子供らしく前を見ずに走ってきちゃってぶつかっちゃったと、そういうわけだ。
「おー大丈夫か嬢ちゃん。怪我はない?」
軽くしゃがみ、少女と目線を合わせながら話しかける。
「す、すみませんうちの子が...もうルミ!このお兄さんに謝りなさい」
そこに母親がやってきて子供に謝罪を促すが、ルミと呼ばれた少女は自分の肩に置かれた母親の手を払い除けて少し離れると、しばらく俺のことをじっと見つめてから何処かへとまた走り去ってしまった。
「ちょっとルミ!どこ行くの!...本当に申し訳ありません。よく言って聞かせますので...」
「いえいえ、別に構いませんよ。それよりも、お子さんを追いかけてやってください」
俺がそう言うと、母親は軽く会釈をしてから子供を追いかけていった。
「大丈夫か?結構勢いよくぶつかってたが」
「それは問題ないんだが...問題が一つだけあってだな」
「問題?」
「この紙だよ」
「紙?」
「ああ、さっきぶつかった拍子に、少女が俺に押し付けてきたんだよ。なぜか...な」
少女から渡された紙を広げる。
「うわ、なんか書いてある」
「あ?なんも書いてなくねぇか?」
「いや、でもちゃんと文字が読めて...ん?」
おかしいな。紙を広げてから、たしかに翻訳能力が働いて、なんて書いてあるのか、その意味がハッキリとわかる...そのはずなのに、肝心の文字が書いてない。文字が書いていなかったら流石に翻訳も発動しない。俺の心の声を翻訳能力を使って届けることはできても、聞き取ったり読み取ったりする時はちゃんと言葉や文字になっていないと俺には届かないはず。じゃあ、なんで読めるんだ...?
「炙り出しってわけでもなさそうだし...あれ?なんか引っ掻き傷みたいなのがあるな...爪で引っ掻いて文字を作ったのか...?」
「うわ、本当だ。よくこんなの見つけられたな...俺には読めねぇや。なんて書いてあるんだ?」
「えーっとだな...俺一人でそこの裏路地に来い...だとよ。なんでそんなもんをあの子が?」
「あの子供と知り合いってわけでもねぇんだよな?」
「そりゃそうだ。昨日初めてここに来て、病院で起きてからずっとみわやなと一緒にいたからな。あんな子と知り合う機会なんてなかったよ」
なんで俺にこんな紙を...よくわからんが、行くべきか?
「何が何だかわっかんねぇけど、とりあえず行ってみるわ。ここ任せていいか?」
「別にいいが...たしか、あそこの路地は少し行ったら行き止まりになってたはずだ。そこで待ってみるといい。俺は予定通りのルートで巡るから、用が済んだら戻ってきてくれ」
「ありがとう。恩に着るよ」
俺は紙を握りしめながら、裏路地に入る。アンスの言うように、入ってから少ししたらちょっとした空き地に出た。なんか、龍が○くのカラの○坪みたいな場所だな...
「行き止まりんとこで待ってたら間違いはないよな...しばらく待ってるか」
壁に寄っ掛かりながら待つ。来いって伝えてきたんだから、多分誰かここに来るんだろう。それがあの少女なのか、それとも別の誰かなのかはわからんが。
「……おっ、来た来た」
息を切らした少女がやってきた。あの母親を撒いてここまでやってきた感じかな?
「えーっと、嬢ちゃん。こんな紙渡してきて、いったい何の用...へ?」
少女は俺のことを見ると、右手を前に突き出した。
次の瞬間、その手には包丁が握られていた。
「ちょ...ちょちょちょい待て⁉︎一旦その危ないもん下ろそうか嬢ちゃん⁉︎」
どうどうと少女を宥めようとするが、少女は包丁をこちらに向けたまま近づいてくる。
「ねぇ、あなた...本当に人間?」
「へ?それはどういう...?」
「かといって、魔族とも違う...何者なの?あなた」
……な、なるほど?少しずつ読めてきたぞ。
多分、この子は魔族を見破れるような、そんな類の能力を持っているのだろう。人間相手にしか発動されない能力...例えば、人を見るとその人の不調を見抜ける、みたいな能力ならば魔族を見分けることができるはずだ。見ても能力が発動しなければ、そいつは人間ではなく魔族だって感じにな。
んで、俺はこの世界の人間では無いから、魔族と同じように見られてしまったってことなのだろう。聖杖世界でも、魂に能力が宿っているという魔族との共通点があったせいで面倒なことになったからな...ってか、今は魂に魔王が巣食っていたりもするからもっとヤベェな。その魔王が何かしらの力に反応したって筋もあるか?
「あー...えっと、うん。とりあえず先に断っておくと、俺は魔族とかじゃないんだ」
「それはなんとなくわかってる。あなたは何者なの?」
ああもう包丁の持ち方危なっかしいな...手震えてて、落として怪我しちゃったりしないか心配になっちゃうよもう。
「こう言って信じてくれるかは分からんが...並行世界の人間って言えば納得してくれるか?」
「並行世界...だから他の人とは違うってこと...?」
うーん、一人で納得してないで、色々説明して欲しいんだけどなぁ...
「……じゃあ、私のお願いを聞いてくれる?」
唐突だな...何がじゃあ、なんだ?
「ちょっ...と良くわからんが、とりあえずその包丁を下ろしてくれたら考えないこともないぞ」
「……わかったよ」
少女はポイと包丁を放り捨てた。地面に刃が当たり、甲高い音を立てながら数回跳ねて地面を転がっていった。
「ふぅ...で、お願いってなんだい嬢ちゃん?そもそもどうして俺をここに呼び出したのかってところから聞きたいけどな」
まだ少し警戒されていそうなので、こっちから近づくことはせず、そのまま動かずに話しかける。
「わ、私の力で、あなたが普通の人間じゃないって気づいて、でも魔族とも違うから、もしかしたらこの人になら頼めるかもって思って...」
「最初から頼み事するつもりだったってことか。んでさっきの脅しは、一応本当に魔族じゃないかどうかの確認と、俺が何者であるかを聞くための行動と...嬢ちゃんの能力ってなんなんだ?まずそこから聞きてぇわ」
「私の力は、なんていうか...見た人の本質?みたいなのを見抜く力で...内面みたいなのを見れるの。普通ならその人の性格とか、今どんな調子なのかみたいなことしかわからないんだけど、普通の人間とは違うってこともわかっちゃうことがあって...」
「なるほどそういう感じの能力なわけね...」
対象の内面や本質を見る...ねぇ。それで俺が普通の人とは違うとわかったわけか。んで、何かしらの要素が魔族を見た時とも違ったから俺に接触してきたと...
「んじゃあ、話を戻そうか。嬢ちゃん、俺への頼み事ってなんだ?」
「……殺して欲しいの」
「……へ?」
「私のパパを...パパになりすましてる魔族を殺して欲しいの!」
魔族を...殺す⁉︎しかも、父親になりすましている...か。
「……詳しく聞かせてもらおうか」
「私のパパはね、この町の議員さんなの。それでね、いつも忙しいのに休みの日はいつも遊んでくれてて...」
「うんうん、それで?」
「でも、いつからか、遊んでくれなくなっちゃった。その時からだった。パパのことを見たら、ドス黒い何かが見えるようになったのは...」
「それが見えたから、パパが魔族に取って代わられたと思ったわけか」
「それが見えたのは初めてだったけど、直感で魔族だってわかって...あの魔族は、パパの持ってた権力を使って何かをしようとしているの。そんなの許せなくて、でも私じゃ何もできなくて...」
「それで、俺に頼ろうとしたと」
「うん...ママに言っても信じてもらえなかったし、ケーサツの人に言っても子供の言うことだからって笑われて...そんな時にあなたを見かけたの。白と黒が混ざり合ったみたいな、そんな不思議な人だったから、藁にもすがるような思いで...」
白と黒...神様に与えられた力が白で、魔王が黒ってところか?なんかすごい厨二心をくすぐられるワードだけど、実際に魔法なりなんなりを経験しちゃってるからそんなにだな。ってか、魔王が俺の中にいるってわかるんだな。それが聖杖世界で早々に判明していれば...
「……よかったな嬢ちゃん」
「よかったって、何が...?」
「魔族を殺すってのは俺の得意分野っつーか、仕事だ。俺に頼んで正解だぜ」
「魔族を殺すのが...仕事?それってどういう...」
「俺が来た平行世界は、魔族に滅ぼされたんだ。だからこうやってこの源流世界に来て、その未来を変えるために魔族を殺そうとしているんだ」
「……そっか、それなら安心...だね」
……なんか、危ういなこの子。その人間の本質を見抜く力があるとはいえ、すぐに人を信じすぎじゃないか?ちょっと心配になるぞ...
「……あっ、でもあなた、その首輪をしているってことは、外から来た人?ということは、力を使えない...忘れちゃってたぁ...」
「その心配は無用だぜ。なにせ、俺の力は...特別性だからな」
手元に小さな拳銃を生み出し、少女に見せた。当然、撃つ気はない。こうやって物を生み出せるのを見せ、能力を使えることを示せばそれでいいからな。
「わぁ...もしかして、私と同じ力?」
「同じ...?」
……そういやさっきあの子、包丁を虚空から生み出してたっけ...人の内面を見抜く力とは別の能力を持ってるということは、あの子も複数能力持ち...マルチなのか。
「ああ、物を生み出す能力だ。まぁ、生み出せるものには限りがあるがな」
「物質生成の力かぁ...じゃあ私のとは違うね」
「あれっ、違ったのか?」
「うん。私のは、自分の物を手元に引き寄せるだけの力だもん」
あっ、アポート能力だったのか。急に包丁が出てきたのは、包丁をその場で生み出したわけじゃなくて自分の家にあった物を引っ張ってきただけだったんだな...そーいや、要らなくなった包丁を消さずに放り捨てていたよな。もし物質生成系の能力で作っていたなら、放り捨てずにその場で消していただろう。
「……あー、なるほど。俺を見つけてからあの紙を用意するなんて無理じゃねとか思ってたけど、元々作ってあったものを引っ張ってきただけだったんだな」
「よ、よくわかったね...」
それにしても、魔族を見抜くこともできる能力と、物を手元に引っ張れるアポートの能力...なんか、俺の力と微妙に似てるんだよな。武器を持ち込めない場所に行っても、手荷物検査を受けて中に入ってから凶器を引き寄せればいいだけ。中に入ってから生み出せる俺とあまり変わらない。
……なんか、俺がこの世界に来ていなかったら、この子が魔族狩りをしていたんじゃないかって気がしてきた。聖杖世界でいう勇者みたいな...正史ならこの子が魔族を滅ぼして世界を救っていたんじゃないかという気がしてならない。まぁ、本当の正史だとそもそも魔族すら生まれてないんだけどな。
「それじゃあ、大船に乗ったつもりで俺に任せてくれ。つっても、俺この町にあと二日しか居られないんだけどな...なぁ嬢ちゃん。この二日のうちに、なんとかして俺の前に魔族を連れてくることってできるか?」
「それは...無理。ここ数日、仕事が立て込んでてしばらく帰ってこないってママが言ってたから...」
「そうか...」
残念だが、魔族の情報を得られただけでも十分な進歩だ。議員...魔族はこの町の政治を操って、何かをしようとしてるってわけだ。どうにかして接触しないとな...
「……あっ、そういえば何かのパーティーに出席するってママが言ってたような...」
「それ本当か?」
「うん、たしか明日だったと思う」
パーティーか...それなりに警備は厳重だろうけど、首輪のおかげで能力は使えないと周りに思ってくれるから、俺個人が警戒されることはないはず。銃をぶっ放したとしても、能力を使えるこの町の人が疑われることだろう。なんとか潜り込めさえすれば、やりようはあるな。
「明日はそこに潜入するとして...嬢ちゃん、ほかに魔族を見たりとかしてないか?俺の調べだと、この町には三人の魔族がいるはずなんだ」
「うーんと...思い出してみるね?」
うーんうーんと考え込む少女。とりあえず返答がどんなものであろうとも、今日中に拷問を受けている魔族は殺しておこうとは思っているのだが、もう一体もできるのなら今日中に片付けておきたい。
「……軍のパレードで見たような...見てないような...?」
「軍?この町軍が常駐してるのか?並行世界から来たばかりなせいで、この町のことをあまり知らないんだ」
「えっとね、この町は隣国との国境から近いところにあるから、万が一の時のために兵隊さんが集められてるの。でもいつも暇だからたまに軍主体でパレードをしたりするんだけど、その時に魔族がいたような...気がする」
軍の中に魔族か...見間違いの線は残っているが、もしそれが本当だとすると結構まずい気がする。
魔族たちはおそらく、隣国にこの町を攻め入らせようとしているのではないだろうか?
保安検査員に紛れた魔族が、隣国のスパイだとか他の魔族だとかを首輪無しで町の中に入れる。他にも、危険なものを中に持ち込ませたりとかもしているかもしれない。
議員になりすました魔族が、内側から町の政治を揺るがし混乱させる。警備が厳重だからこの町は発展しないのだ、みたいなことを言って警備を緩くしスパイ活動をさせやすくするだとか、隣国をわざと挑発して戦争の火種を作ったりだとか、色々方法は考えられる。
軍に潜り込んだ魔族が、軍を堕落させる。暇だからってパレードなんかするか?そういったことにお金を使わせたり日々の訓練を怠らせたりして軍の力を落とし、戦争になった時にすぐ負けるように仕向けているかもしれない。武器の破壊だとか隣国に横流ししたりもできるだろう。できることは山のようにある。
あくまで俺の予想が正しければの話だけど、魔族らは三方向からこの町を崩しにかかっているように思える。そのうちの一つはもう抑えてあるけど、残りの二つも早めになんとかしたほうがいいはずだ。まぁ、タイムリミットがあるから早めに対処するのは必須なんだがな。
「オーケー情報ありがとう嬢ちゃん。また何か思い出したこととかがあったら、ドンカラの事務所に来てくれ。俺...カリヤに用があるって言えば、通してくれると思う。いい?カリヤ、ね?」
「カリヤ...うん、わかった!」
「じゃあ嬢ちゃんは早くママのところに行ってやりな。多分今頃、必死になって探してると思うぜ。心配してるだろうから早く顔見せてやりな」
「うん...あの!魔族のこと、よろしくお願いします!」
「おうよ!任せな嬢ちゃん!」
「あと、私の名前はルミ!嬢ちゃんじゃないよ!」
「はは、一丁前に言うねぇ...おう、期待して待ってなルミ!」
「カリヤさんくれぐれも気をつけて!」
「そっちもなー転ぶんじゃねぇぞー」
少女...ルミは路地を駆けて行き、曲がり角の向こうへと消えていった。
「……身内に魔族が紛れ込んでいる...か。まるでステラみたいだな...」
兄と父親という違いこそあれど、家族が魔族に取って代わられているという事実は同じだ。どうしてもあの時のことを思い出してしまう。
「……多分、ルミのお父さんはもう...」
あの子はどこか、魔族を倒せばパパが戻ってくるかのように思っていそうだった。けれど、その可能性は限りなく低いだろう。わざわざ生かしておく理由はない。たとえ俺が魔族を殺したとしても、もうルミのお父さんは戻ってこない...
「……強く生きて欲しいな」
ステラは強かった。自分の手で魔族に引導を渡したのだから、それができるほどの心の強さがあった。あの子も、まだ味方になってくれるかわからない状態にも関わらず、俺に声をかけられる程度の強い心を持っていた。誰にも信じてもらえなかったのに、それでも動く意志の力があった。パパがもう戻ってこないということを知って、心が壊れてしまわないか...それだけが心配だ。なんとか乗り越えて欲しいと、切に願うばかりだ。
「……人の心配する前に、まずは有言実行してやんないとな」
顔をパンっと叩き、気合を入れる。俺が魔族を殺さなきゃ何も始まらない。あの子のためにも、しっかりきっかりやらなければ。
「……とりあえず、アンスのところに戻るか」
何が起こったのかの報告をするのと、軍とか政治家のパーティーのことについて聞いておこう。
「とりあえず大通りに行って...軽く走って配送ルートに追ってくか」
ひとまず路地裏から出て...と。
「ん?あの人は...うまい具合に入れ違いになっちゃったのか」
まだルミは母親と合流できていないようで、母親がルミの名前を呼びながら探していた。
「……まぁいっか」
俺が呼び出された側とはいえ、薄暗い空き地で少女と青年が二人きり...完全にアウトですね。変に話しかけてそのことが露見しても困るから話しかけないでおく。
「この時間ならまだそんなに遠くまで行ってないはず...」
母親の視界外にコソコソと出てから、ドンカラの配送ルートに沿うように走る。そんなに時間は経っていないから、おそらく次の場所で止まって商品を売っている最中だろう。一応魔族がいないか見落とさないような速度で走り、アンスを追いかけていく。
「クソっ、結構体力落ちてんな...!」
聖杖世界で嫌というほど走り回ったため疲れにくい走り方は熟知しているが、そもそもの基礎体力が足りない。
鍛え直さないとなぁ...と思いながら走っていると、アンスを見つけた。思ってたよりも近いところにいたな。
「よーっすアンス。戻ったぜ」
「すごい走ってきたな大丈夫か...?」
ゼェハァと息を荒げている俺を心配しながらアンスが聞いてくる。
「平気だ...あと、重要な情報ゲットだ。売り子しながら何があったか話すわ」
アンスからタオルを受け取り、汗を拭い取ってから売り子に戻る。作業をこなしながら、俺の頭の中ではこれからのチャートをどんどん作り上げていた。
町を出るまで残り二日...魔族は残り三人。
本来ならサクッと少女とのやりとりを終わらせて、次の場面に行くはずだったんすよ。
でもいつの間にかもう八千字超えてて...なんか、変な方向に文章力が成長してしまっている気がする。