神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

60 / 92
8191字。

いよいよ此度の戦いは終わりです。


宵闇に巣食いし龍

「いっっ...てぇ」

 

俺は地面に手をつき立ちあがろうとした...が、すぐに思い直して低姿勢を取る。

 

「雷...だと?クソが、あの雲の中に何かいやがるな?」

 

先程爆音と共に落ちてきたのは紛れもなく雷であろう。宵闇の中で雷が降るのが当たり前ならば、事前に湊から伝えられているはずだろう。伝えられてないということは、あの雷は本来は無いイレギュラーな存在...何かしらの魔物による仕業と考えて良い。

 

そこで、一つの記憶が呼び起こされる。二度目の閃光弾が打ち上がった際、眩い光の向こう側で何かが動いたような気がしていたのだ。閃光弾が放たれたのは空。その向こう側にあるのは宵闇の雲。そこで何かが動いたということは、そこに何かがいることを意味している。

 

「稲光が走ってるおかげで何かがいるのが今はよくわかるぜ...さて、あの雲...どうしたものか。つーか、あの魔物雷に撃たれて死んだのか?」

 

上を見て雲の状態を確認した俺は、そのまま周囲を見渡す。そして、雨で身を守っていた魔物の姿がないことに気がついた。身を守るための雨が雷を呼び寄せてしまい、雷に撃たれて死んでしまいそのまま消滅してしまったのだろうな。

 

「……兎にも角にも、湊のアドバイスを...」

 

状況を整理するためにも、この状況を外から見ている湊のアドバイスが欲しい。これから俺は何をすれば良い?どうすればあの雷から逃れられる?

 

「……って、湊?おーい、湊?聞こえるか?湊⁉︎」

 

いくら呼び掛けても返事は返ってこなかった。

 

「まさか、あの雷で通信機が壊れた...?それとも、帯電してるあの雲のせいで通信機の電波が妨害されちゃってるのか...?」

 

どちらにせよ、湊と通信を取ることができないのはかなり辛い。この状況、一体どうすれば...

 

「……宵闇の外に出て、湊と魔法による通信をするしかねぇか」

 

通信機を通して連絡をしていたのは、宵闇の中では魔力を溜め込んだ雲や雨によって外からの魔法が乱されてしまうためだ。外に出てしまえばい問題なく魔法で連絡を取れる。

 

どうせ俺に魔法を付与するなどしてこちらの状況自体は湊に伝わっているのだろう。リトライの魔法も俺にあらかじめ埋め込むことで発動できるようにしていたから、前もって俺の五感を共有するような魔法を発動させておけば湊もこの状況を知ることができるはずだ。実際、的確にアドバイスをしてきたからこちらを見ているのは明白。外に出て通信可能になれば即座に連絡を取ってくることだろう。

 

「つっても、雷を回避しねぇとならないのが最難関なんだが...!」

 

とりあえず低姿勢状態のまま宵闇の外に向けて歩き出すが...雲がゴロゴロと音を立て始めていて今にも雷が降りそう...っ!!

 

「っ!!」

 

雷が落ちた。俺以外に周囲に物がなかったため、背を低くしていようが無駄だった。雷は俺に直撃し、眩い光と衝撃を浴びせてくる。

 

……が、それだけだった。

 

「生きて...る?」

 

痛みはない。全身に電流が流れるような感覚が一切無い。明らかに雷は俺に直撃したというのにだ。

 

「なに...?雷装の時の経験がなぜか生きてて雷耐性を得てたりするの...?わ、わからんが今のうちに!!」

 

なぜ雷を耐えれたのかわからないので、とにかく耐えれるうちに外に出ることにした。全力で地を駆け、宵闇の外へと向かう。

 

その最中何度か雷が落ち、進行方向であったり横であったり、また俺に降り注いだりもしたがなぜか俺自身にダメージは無く、そのまま宵闇の外に出ることができた。

 

「ようわからんが脱出完了!湊!!」

 

『はいはい様子は見ていたよ。まさか、龍が潜んでいただなんてね...探知で探ることができないから、そんなものが潜んでいただなんてビックリさ』

 

「龍⁉︎そんなもんがあの雲の中に...」

 

『雷を操ることができるが、消費魔力が尋常でないため多くの個体は微弱な電流を放出ことしかできない...だが、あの個体は宵闇の雲に巣食うことで成長巨大化を果たし、膨大な魔力を行使して雷をいくらでも降らせられるようになったようだな』

 

「……あいつ、倒さないと確実に町を襲うよな?」

 

『当然だ。だから倒さなければならない...が、今の君の手札ではそれは叶わないだろう』

 

「だろうな。流石に俺もそれは理解しているよ...けど、それでもやらなくちゃならない。せめて奴の注意を逸らして軌道を町から逸らせれば...」

 

『おいおい。私がいることを忘れたか...?なんとかして龍の頭を雲の中から引き摺り出せ。そこまでお膳立てしてくれれば、あとは仕留めてやる』

 

「そいつはありがたいが...それも結構無理ゲーなんだよな。まぁ、俺単独で倒すよりかは何倍も楽!」

 

勝利条件が変わった。まぁ、魔物の一掃という点ではやってることは変わらないが...あの雲の中にいる龍の頭を外に出す、それだけで俺らの勝ちだ。やってやるしかない。

 

『あの竜を倒しても宵闇は消えないが、魔物が居なくなれば町が破壊されることはないだろう。最後の辛抱だ、頑張れ』

 

「おう!」

 

『っと、伝え忘れていた。また宵闇の中に入る前に聞いてくれ』

 

「なんだ?」

 

いざ入ろうとしたら湊に止められた。

 

『あの雷は魔力を導体として流れる代物だ。よって、魔力の無い今の人類の体に流れることはない。もっとも、魔物の魔力器官をいくつも保持している今の幸希には流れてしまうかもしれないが...それも問題はない。魔力を弾くカッパを着ているおかげだ』

 

「なるほど、だから雷を喰らっても平気だったのか...」

 

『だが、それも長くは持たないだろう。すでに数回雷を受けてしまったため、カッパの生地が痛み始めている。いずれ魔力を弾く特殊加工が剥がれてしまうだろう。そうなれば雷を喰らうようになってしまうし、そもそも魔力を含んだ雨を浴びてしまうから魔力過剰症を引き起こして倒れてしまうはずだ。無防備に雷を浴び続けてしまうのは危険だとろう』

 

「……じゃあどうすればいい」

 

『雷は魔力に流れる。そして、あの雨は魔力を含んでいる...雨さえ弾くことができれば雷をそらすこともできるはずだ。魔法を使えば可能なはずだが...それが出来そうな魔法を持っているか?』

 

「……無いな。だが、別の方法は思いついた。問題はない」

 

『それなら良かった...これから私は龍を殺す魔法を発動する準備に入る。サポートは何一つしてやれない...それでも大丈夫かい?」

 

「ああ、いいぜ。なんなら暗視ももう消して良い。雷のおかげで灯りは足りてるからな」

 

『了解した。幸運を祈る』

 

「幸運なら任せておけ。神様からもらった幸運は魔王に取られちまったが、これでも自前の運もいい方だと自負している!」

 

走って宵闇の中に再入場する。宵闇の中はさっきとは打って変わっており、降り注ぐ雷によって地は揺れ雷音が空気を叩き光に包まれていた。

 

「ハッ、これじゃ宵闇とはとても言えねぇなァ!」

 

叫んで無理矢理テンションを上げ、雷に打たれながらも走る。まだ雷を回避する手段は無い。あれを手にするまで、カッパが持ち堪えてくれることを願うしかないが...間に合った!

 

「これで...!」

 

俺は落ちていた槍を拾い上げた。雷が落ちてくるとわかってから、金属製はまずいと思い反射的に投げた槍だったが、あの雷が魔力を伝って落ちてくるものならば捨てる理由はない。金属だろうが持っていても雷が流れる心配はないだろう。だが、一応振り回して付着していた雨を弾き飛ばしてはおく。

 

「弾けるはず!」

 

俺は槍を振り回し雨を弾き始めた。水のピラニアを射出してくる魔物と戦った時とやっていることは同じだ。しかし、今度はそれに一手間加える。

 

「模倣の傷...発動!」

 

無理矢理ではある。その発想は直前に戦った魔物からアイデアをもらったものだ。周囲に自身を庇わせる魔法...それを使い、魔物は雨で銃弾を弾いていた。おそらく、魔力を含んでいる雨を一個体の生命と定義することで魔法発動の対象としていたのだろう。

 

それと全く同じことをする。槍で雨を叩いて弾き、傷をつけたことにしてしまう。もちろん、雨が魔法を使えるわけがないので、その魔力を使って魔法を発動させることは叶わない。けれども、その魔力を操ることはできる。そうして魔物とは別の方法で雨の魔力のドームを作り出す。魔物と違うのは、含んでいる魔力を完璧に操って俺に雷が届かないようにしている点だ。

 

「……来る!」

 

雷が俺に向かって降り注ぐ。

 

しかし、魔力を通る雷は俺が作り出した雨の魔力のドームに沿うように流れて地面へと逸れていった。

 

「ははっ、これで負けはねぇ!悔しかったらこっち来るんだな引きこもりの龍さんよォ!」

 

そう、負けは無い。しかし、こちらから攻める方法も同じく無い。一応あるにはあるが、龍の方から行動を起こしてくれなければ出来ない方法だから今すぐには実行に移せない。よって、魔物が痺れを切らして別の行動に移すのをこうやって雷を逸らし続けて待つしか無いのだ。

 

「……ハッ、まずは逃げ道を無くすってか。無駄さ、俺は逃げないぜ」

 

宵闇の境目付近に永遠と雷が落ち続けていた。俺を宵闇の中から出さないための行動だろう。もしくは、外から増援がやってくるのを防ごうとしているのか?こうやって耐えているのを、仲間が来るまでの時間稼ぎとでも考えたのだろうか。

 

……あの魔物、そこそこちゃんとした知能を持っているな?なら、煽りまくれば雲の中から顔を出してくれるのでは?

 

「来なよ龍!こっちはこうやってまた来てやったんだ!タイマンしようぜ?」

 

……まぁ、流石に聞く耳持たないよな。龍は雲の中から出てくることはなかった。こうなったら少し無理をするしか無いか...?

 

「……っ⁉︎そっか、ちゃんと殺し切っては無いんだった...!」

 

物音がしたのでその方向を見てみたら、五体の魔物が迫ってきていた。土砂で押し潰したはずだが、しぶとく生き残っていたらしい。死亡確認をちゃんとしなかった自分に苛立ちを覚えながら俺は魔法を起動させる。雨を弾かなければならないため槍は使えないためだ。

 

「ほら燃えろ!」

 

引火の槍を牽制として放つ。回避されたなら、雨を弾くついでに生み出した氷の杭を槍で弾き飛ばして魔物に突き刺してやる。

 

……そのつもりだったのだが...

 

「なっ、消え...」

 

魔物五体が姿を消した。まだどんな魔法を使えるのかわかっていない奴が二体いるが、そいつらが魔法で何かをしたのか?

 

雨が弾かれているような様子はないから透明化では無い。ではなんだ?なぜ姿は消えた?

 

「……っ、そういうことか!」

 

姿が消えたその一秒後、五体の魔物が俺を包囲する形で現れた。戦闘中に一回だけ使われた、未来跳躍に似た魔法だ。一瞬消えて一メートル弱移動する、だったか。それを連続発動させて移動してきたのだろう。消えたカラクリがわかったな...

 

「俺の周りに出たのは失敗だぜ」

 

空から雷が降り注ぐ。雷は俺が生み出した雨の魔力のドームに落ち、壁に沿うようにして流れていく。そして、近くにいた魔力を抱えている魔物たちに向かって雷は流れていき感電する。

 

「……うおっ、一撃...そんだけ威力ヤベェってことよな。まともに喰らいたくねぇな」

 

魔物たちは雷を喰らった瞬間に消し飛んだ。あの雷は魔法による代物ではあるものの、魔力に流れるその特質上魔力器官に雷が流れないわけがなく、完全に破損してしまったようでドロップすることはなかった。

 

ドロップしなかったのは何気に辛い。便利であった物質の接合魔法を失ってしまったのもそうだし、刺さると抜けない針の射出とか物を吹き飛ばすだとか、有用な魔法も一緒に消えてしまった。

 

そしてなによりも、残り二体の魔物がどんな魔法を持っていたのか分からずじまいで終わってしまったのが困る。一瞬消える転移魔法はどっちが持っていた魔法なのだろうか?それとも、あの雲の中にいる龍がそれを持っており、魔物たちを援護していたのか...手札が増えなかったのもそうだが、そういった情報を手に入れることができなかったのが痛い。

 

「……なんにせよ、これで一対一だ。勝負に乗ってもらうぜ」

 

空に向かってそう言う。乗ってくれるかは賭けだが、やるしかない。

 

「……んお?雲が...」

 

何か違和感がある。雲が...近づいてきている?結構な高さにあった雲だが、少しずつ下に降りてきているようだ。それに真っ先に気づくことができなかったのは、同じペースで雲の範囲が狭まっているからか?横を見ると確かに範囲が狭まっている。それによって、見かけ上の雲の大きさがあまり変化しなかったためにすぐに気付くことができなかったのだろう。

 

「雲の範囲を減らして単位面積あたりの雷の密度を高め、高度を下げることで途中のロスを減らしつつ命中までのタイムラグも減らそうってわけか。そんで...それがお前の顔ってわけだ」

 

雲の中から龍が顔を出してきた。翼を生やしたトカゲのような西洋の龍、いわゆるドラゴンではなく、どちらかといえばでっかい蛇のような東洋の龍に近い姿をしているな。まぁ、ドラゴンではなく龍と翻訳されたのだから当然なのかもしれないが...

 

「じゃあ今からその顔ぶち抜いてやるわ。覚悟しな!」

 

そう叫びながら引火の槍を生み出し龍の顔に向かって放つ...が、龍は顔を雲の中に隠した。放たれた槍はそのまま宙を進み続けるが、宵闇の雲に当たった瞬間霧散してしまう。

 

「雲に魔法をぶつけても魔力として吸収されておしまいか...なら、なんとかして物理で殴るしか方法はないってわけだな」

 

さて、問題はどうやってあそこまで辿り着くかって話だが...覚悟を決めるしか無いな。ミスってそのまま落ちれば終わり。カッパが耐えきれずに壊れても終わり。もしたどり着くところまで成功したとしても、龍を雲の外に出せなければ終わり...成功確率は低いが、今の手札ではこれが最適解だろう。物質接合の魔法があればもう少しいい方法があったかもしれないが...腹を括るしか無い。

 

「そんじゃ...今からお前のとこに行ってやるぜ」

 

槍を振り回し、降ってくる雨水を弾く。その行為で魔力を持つ水を傷つけたものだとすることで模倣の傷の発動条件を無理矢理満たし、抱えている魔力を操り雨水を間接的に操作する。その状態で魔力を凝縮させれば...弾丸を弾き飛ばせるくらいの強度を持たせることができ、それはもはや固体と言っても良いほどの強度を持っていた。

 

俺はそれを踏みつけ足場とした。だが、もちろんそれだけで足場にできるはずもない。そもそも空間に固定されているわけでも無いので、そのまま落下するのが自然の摂理だ。

 

それを、二重衝撃によって無理矢理解決する。雨水を槍で弾いた際の衝撃をもう一度叩き込むことで上へと弾き飛ばし、俺を上へと打ち上げたのだ。魔力を操る段階で叩きつけた箇所を下側に固定することで、どのように槍を当てても上に打ち上げられるようにすれば失敗はない。

 

ひどく無理矢理な方法だ。固めた水に打ち上げてもらうなんて正気の沙汰では無い。だがこれしか方法はなく、それを実行に移すための条件、姿勢を崩さない体幹やひたすら雨を弾き続けるための腕力、そして模倣の傷を制御し続ける思考力を持っているのだからやるしかないのだ。

 

「このまま...あと少し!!」

 

雨で足場を作ることに集中しなければならないため、雷を防ぐドームは作ってられない。一応弾いた雨の魔力を足場として集めているから雷も優先的にそちらに流れようとするため直撃することは少ないものの、少しずつ魔力を弾くカッパも損傷していく。これが壊れれば一発アウト。そうなる前に有効射程に入らなければ...!

 

「あと...一回!」

 

魔力の足場を作り出し、二重衝撃で打ち上げる。その跳躍による最高地点に到達した瞬間、俺は銃を取り出す。さっき外に出た時にリロードしておいた実銃だ。それを雲の中にいる龍に向けて...放つ!

 

放たれた銃弾は真っ直ぐ龍に向かって飛んでいき、胴体を貫いた。磁力で逸らされたりするかもと思っていたが、雷は操れても磁力までは操れないようだな。

 

「傷は浅いが十分!」

 

身体の大きさに比べれば、今与えた銃創なんて龍にとって微々たるものだろう。だが、確かにそこに傷はある。模倣の傷が発動できる。

 

「っ...!!」

 

龍の使える魔法の情報が頭に流れ込む。雷を操る魔法と、未来跳躍に似た消失転移魔法...こいつが持っていたのか!計算違いだがそれは好都合...!これならもっと確実に龍の顔を出させられる!!

 

「まずは飛ぶ!」

 

消失転移魔法を発動させる。一瞬別次元に移動し、一メートル弱の転移を行う魔法だが、こいつの良いところはその移動が本来なら実現不可能でも良いことだ。

 

未来跳躍では、実際にその秒数で行ける場所にしか飛べない。物理的に行くことが不可能な場所には行けないのだ。つまり、このまま落ちることしかできないこの状況で未来跳躍を使っても下方向にしか移動できない。しかしこの魔法は違う。上方向にも移動が出来る...!

 

連続で魔法を使用して上方向に飛び、さらに龍に近づく。この距離なら...!

 

「魔力を奪い取れる!!」

 

模倣の傷で龍の魔力を奪い、雷を生み出す。落下しながら雷を生み出して生み出して生み出して...生み出し生み出し生み出す!!

 

永遠と雷を生成し続け、手のひらに保持し続ける。まだ放たない。龍に向けて放つのは、ひたすら魔力を貪り続けた後だ。

 

龍の魔力は、宵闇の雲の魔力と実質的にイコールである。宵闇に巣食っている龍は永遠と雲から魔力を吸収することができるからな。しかし、魔力も無限では無い。どれだけ容量がデカくともいずれ枯渇する。

 

こうして俺が龍の魔力を奪い取れば、龍は失った魔力を取り戻そうとして雲から魔力を吸い上げる。すると魔力を帯びた雲は勢力を弱めて縮小する。そのまま縮小を続ければ、デカく成長してしまった龍の身体は収まりがつかなくなって顔を出すはずだ。

 

「なっ...下に出てきやがったか...!」

 

龍ははみ出た身体を雲の下に出し、顔もこちらに向けてきた。上側に出たらまずいことに気づいたわけではあるまい。単純に、魔力を奪い取っている俺を倒そうとしてこちら側にきたのだろう。

 

「なら...お前も浴びてもらうぜ!俺の雷装をなァ!!」

 

そろそろ龍の魔力と繋がっていられる限界の距離に達する。模倣の傷が解除されて雷が制御不能になる前に、溜め込んだ雷を龍に向けて打ち出した。

 

音を超える光の速さの一閃が龍の胴体を貫く。

 

……それだけだ。

 

「クソッ、貫通力高過ぎたか!」

 

本当は雷を直撃させて龍を上方向に吹き飛ばし雲の外へと追いやろうとしていたのだが、威力が高過ぎて吹き飛ばすことなく消し飛ばしてしまった。ダメージを与えられたのは良いことだが、やりたかったのはそうじゃない...!

 

「こうなったら、最後は物理で...!」

 

雷が胴体を貫いたことにより模倣の傷の接続可能範囲はさらに広がった。消失転移魔法を再び発動して上方向に飛ぶ。

 

「これで...」

 

迫ってくる俺を見て龍は雲の中に隠れようとする。俺は迷わずその後を追い雲の中に突入する。雲の中は雷が走っているが、カッパの効果によって俺の身体を流れることはない。もうすぐ限界を迎えるだろう。しかし、それよりも早く決着はつく。

 

「終わりだッッ!!」

 

龍の顎を槍でぶん殴る。そのインパクトの瞬間に二重衝撃を発動することで威力を倍にし、上へと勢いよく打ち上げた。

 

龍の頭が雲の上に出る。それを追って俺も同じように雲の上に出る。雲の中に止まっていたらカッパが壊れた瞬間に死んでしまうかr

 

「なぁっッッ‼︎⁇」

 

勢いよく真横に叩き飛ばされた。龍の尻尾に横から叩かれたのか?クソ痛ぇ...!

 

「けど...雲から出したぞ!あとは頼むぜ湊!!」

 

吹き飛ばされながらも俺は叫ぶ...と、急に空中で俺の身体が固定された。

 

『随分とまぁ、無茶なことをするな幸希は...』

 

湊の声が頭の中に流れ込んでくる。

 

『だが、上出来だ。あとは任せてくれ』

 

湊がそう言った瞬間だった。

 

雲から出ていた龍の頭に、空から降ってきた何かが命中して穴が空いた。

 

「今、のは...隕石...?」

 

『伝承の語り手─悪龍を穿つ星─読了』

 

絶命した龍は塵となって消えていき、残された魔力器官は重力に引かれて落ちて行く。

 

そこには、ただ魔力の雨を降らす宵闇の雲のみが残ったのだった。




久しぶりにカリヤくんが雷を使いましたね...自分で書いていてなんですが、カリヤくんのテンションも心なしか上がっていたような気がしますね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。