ようやく日常回に戻ります。
「よっ...と、ありがとな湊」
湊に遠隔で魔法を使ってもらい、空中に固定された状態から安全に地面まで下ろしてもらった。
「うむ、宵闇自体は残ってるが、龍が魔力を吸い取ってくれたおかげでだいぶ小さくなってるな...魔物もいないし、これで町は平気だろ」
宵闇から町を守ることには成功した。色々と困難はあったが、なんとか達成できてよかったぜ。
「さーて、戦利品を回収して早いとこ逃げますか」
一瞬だけ宵闇の中に入り、龍の落とした魔力器官を回収してすぐに外に出る。雷も消失転移も消費魔力が大きいからどれだけ使えるかはわからないが、だいぶ有用な魔法だ。取らずに放置する選択なぞ存在しない。
「おーい湊、俺これからどうすれば良い?そっち行って合流する?」
もう要らないカッパを脱ぎ捨てながら湊に呼びかける。
『……そうしたかったところだが、少々まずいことになった』
「どうしたんだ?」
『雲の中から君が飛び出して、龍に弾き飛ばされた後に空中で静止した姿が、軍部の観測機器に見つかったのだろう。今軍が君のところに向かっている』
「……マジで?」
『ああ。君自身が魔法を使った場面を見られたわけではないが、魔法に関わっていることは明白だ。魔物だと勘違いされて殺されるか、拘束されるかの二択だろう』
「おいおいマジかよ...とりあえず逃げるか?」
『私が転移で逃す。だが、先の魔法で魔力を消耗しているから回復を待たねばならない。遠隔での転移発動にも時間がかかる...軍が到着する前に飛ばすことは無理だろう。だが、そこを動かれては転移の座標を定めることもできない』
「じゃあどうすりゃいい。口八丁でうまく誤魔化しつつ時間を稼ぐか?」
『それでも構わないが...最悪魔法を使っている場面を見られても構わない。その場から動かずに攻撃や追及を凌ぎ時間を稼いでくれ。降りしきる雨を弾き操作できるんだ、今持っている手札なら銃弾を弾くこともできるだろう?』
「そりゃ随分とまぁ無理難題をふっかけてきやがる...しゃーねぇ、転移は任せた。信じるからな」
『ああ、信じてくれたまえ』
テレパスの通信が切れる...それからしばらく経った時だった。
遠くから車が何台か走ってきていた。どれもこれも軍用車のような見た目をしている。どう見ても一般車両じゃないから、あれに軍の奴らが乗っているのだろう。
その車らは俺の前に一斉に止まると、車内からゾロゾロと銃を持った軍人が飛び出してきて俺に銃を向けた。
「うおっ、なんだなんだ?騒々しいな」
「武器を置き両手を上げろ」
一切の無感情で一人の軍人がそう言った。ひとまず信用を得るために指示に従い、槍を足下に置いて両手を上げる。
「上げたけど、これはどういう状況なんだ?いまいち飲み込めないんだが」
「隊長!セーフティが解除されてます!間違いありません!」
チッ...実銃は周囲に魔力を持つ者がいるときにセーフティが外れるから、魔物の魔力器官を幾つも持っている俺の近くでは銃を使えてしまう。龍の魔力器官を拾った後横方向に抜けたから、今この場所は宵闇が通っていないため雨の魔力に反応したと言い逃れをすることもできない。カッパも脱いじゃったから付着した雨にのせいって言うこともできない。このままじゃ、実銃を使えるという事実だけで俺が魔物だと断定されかねない...!
「あーちょい待て。さっきこんなもん拾ったんだよ。興味本位で野次馬してたら雲の中にいた魔物の頭に空から降ってきた何かがぶち当たって消えたのを見たんだが、そん時にこれが落ちてきてな。見てくれよ」
ポケットの中から魔物の魔力器官を一つ取り出して軍人らの方に放り投げる。馬鹿正直に龍のを渡すなんてことはしない。適当に使わなさそうなものを選んだが、これで済めばいいんだけど...
「……分析に回せ。こいつに銃が反応しているのは本当のようだ。魔物の一部か?塵になって一片も残らないはずだが...奇跡で死んだからか?」
奇跡?なんのこと...って、龍を殺した湊の魔法のことか?あの時魔法の名前らしきことを呟いていたけど、後で聞いてみるか...っと、そんなことは今はどうでも良い。今のでこの場を切り抜けることはできたか...?
「一つ問うぞ。あの奇跡を起こしたのは貴様か?」
「奇跡は起こらないから奇跡なんだろ?俺みたいな奴に起こせるわけない」
「……ならばなぜあの場所にいた?」
「野次馬してたってさっき言ったろ?町や宵闇の進路からも離れて様子を伺っていたら、まだ残って戦ってる奴がいたから興味本位で見届けていたのさ」
おそらく、観測機器とやらに写っている俺の姿はカッパを被った状態のものなはず。カッパを脱いでいたおかげで、そいつと俺は別人だという説明が通る可能性が出てきたな。
真っ先に俺の元に来たのは、単純にあの場所にいたっていうのと、実銃を抜くことができたからだ。実銃が抜けた理由はさっきの魔力器官で説明をつけ、この場所にいた理由も今説明した。これでどうなる...?
「……なら、見たものを全て話してもらおう。ご同行願おうか」
こうなるか...疑われないためには同行すべきだが、あいにくこの場を離れることはできないからな...
「すまないが、それは出来ない。ここで人と待ち合わせをしていてだな。この場を離れるわけにはいかないんだ」
「待ち合わせか...それなら我々の隊員をこの場に残しておく。待ち人が来たら事情を説明し、君のもとに連れて行こう。これでここを動けぬ理由はないはずだ」
そう来たか...もう、仕方ないかな。
「悪いが、本当に急ぎの用なんだ。動くわけにはいかない」
「こちらとしては来てもらわないわけにはいかない。君は重要参考人だ。君に権利はない。問答無用で来てもらうぞ」
軍人らから銃を向けられる。あれは実銃?それともゴム弾か...?
「ゴム弾だが、命の保障はできない。このまま拒否を続けるのならば発砲も辞さないが、どうするかな?」
「ここを動くわけにはいかないんだ。俺はてこでも動かないぞ」
「……そうか、ならばしばらく眠ってもらおうか」
軍人がそう言い切る直前に魔法を起動し、身体能力を大幅に強化する。まずは反射神経を強化して銃を持った軍人の指と銃口をよく見て、ゴム弾の発射タイミングと発射角度を見切る。
指がトリガーにかかり、引き金を引く...その刹那、俺は足で足元の槍を弾いて手元に引き寄せて掴み、槍を振り回す。俺の腹目がけて放たれたゴム弾は振り回された槍に弾かれてすぐ近くの地面を貫いた。
「なっ...⁉︎」
「人間業じゃ無い!魔物だ!」
「実銃用意!撃てぇー!!」
軍人らはもう一つの銃を手にして引き金を引いた。だが、焦っているのだろう。最初から俺に当たる軌道の弾丸は片手で数えられるほどしか無い。俺に当たる弾丸も完璧に見切れているため、槍でしっかり弾き飛ばして凌ぐ。
「銃弾を弾き飛ばした...だと⁉︎」
「身体強化の魔法か...?」
魔法を使うことに躊躇はない。そもそも、顔はとっくに見られているからな。銃で撃たれるよりも前に転移が間に合っていたとしても、目の前で姿が消えたことから俺が魔物判定されて指名手配されることには変わりない。それならこうやって魔法を使って身を守ろうが問題は無いないわけだ。
「お前らに危害を加えるつもりはない。だからその矛を収めてくれやしないか?」
「魔物が何を言う...!」
「そもそも魔物じゃねぇってんだ」
飛んでくる銃弾を槍で弾きながら俺は言う。
「俺は魔法使い。現代にも魔法を使える人間は存在する。魔力があり魔法が使えるからといって無条件で魔物扱いは困るぜ?」
「魔法使いだぁ?戯言を!」
「証明してやりたいとこだが、こっちも急いでいてね。また会う時があれば、今度は銃を向けるのではなく手を差し出して欲しいものだ」
最後に飛んできた銃弾を横に弾いた瞬間、俺の足元に魔法陣のような図形の集合体が現れる。俺は即座にしゃがんでその図形に触れる。
すると...だ。一瞬にして景色は一変し、俺は森の中にいた。
「よく持ち堪えてくれたね」
「ヒヤヒヤしたぜ。二度目はないと信じたいな...っと、なにこれ?」
立ち上がり湊の方を向いたタイミングで何かを差し出された。
「認識阻害の魔法をかけたローブだ。幸希は顔を見られてしまったからな。これからはこれを身につけて過ごすと良い」
「おう、ありがとな」
フード付きのローブを着て、目深にフードを被る。
「被りたいならそれで良いが、別にフードは被らなくとも認識阻害は発動するぞ。その方が動きやすいだろう?」
「あっ、そうなのね。そいつはありがたいが...どういう原理だ?」
「ローブに特殊な紋様が刻まれていてだな。それを目にすることで顔を見た際に抱く印象を変えてしまえるんだ。顔の真横に写真を置かれてじっくり見比べたとしても、無意識のうちに別人だと思い込んでしまう。そして顔から目を離せば、どのような顔をしていたのか記憶が曖昧になり時期に忘却する、といった感じだ」
「無意識の領域に干渉することで、違和感を持たせずに認識阻害をしているってわけね...これなら安心だな」
「着終わったのなら次の町に向かうぞ。あの町にはもう居れないからな。すぐ近くの森の中に飛んだからこのまま歩くぞ」
「お、おう」
歩き出した湊の後ろをついて行く。
「次の町ってどんなとこなんだ?」
「さぁな。地図を見ながらまだこの時代では行ったことのない場所に飛んだから詳しくは知らん。五百年前の記憶も参考にはならんしな」
「そっか、それもそうだな」
「まずは一泊してから町の調査をするぞ。この前の魔丸のようなものが出回っていないか調べるんだ。何もなければまた次の町に向かうし、何かあれば解決するまで止まるぞ」
「了解。湊について行くぜ...っとそうだ。歩きながらで良いんだが、質問をしても良いか?魔法についてなんだが、周りに人いないし良いよな?」
「……そうだな、誰もいないし良いぞ」
おそらく探知魔法を使って確認をしたのだろう。少ししてから湊は了承した。
「じゃあ質問なんだが、あの龍を倒した魔法ってどんな奴なんだ?軍の奴らが奇跡だとか言ってたけど、魔法とは別種のものだったりする?」
「それなら幸希の力を使えば早く理解ができ...るだろうけど口頭で説明するよ。だから睨むのはやめてくれ」
こんなことのために能力を使うわけがないだろと軽く目で湊を脅す。ほんと、自分の身体のことを軽視しがちなんだから...
「この魔法は、伝承の語り手という魔法でな。ざっくり言うと、知っている物語を再現する魔法だ」
「物語を再現?」
「ああ。今回使ったのは、悪龍を穿つ星という神話だ。その神話の結末は、散々悪事を働いた悪龍を滅するために大いなる存在が天から星を呼び寄せその頭を穿ち討伐するといったものだ。その結末を抽出して現実に置き換え、悪龍をあの龍として配置することで天から星を呼び寄せて殺したというわけさ」
「なる...ほど?まぁ大体理解した。その物語ってなんでも良いのか?その場で創作してしまえば、どんな事象でも起こせそうだけど」
「発動させるにはその物語に対する深い理解と、その物語を知っている者が発動者以外にも二人以上いることが条件だ。単なる個人の妄想を具現化することはできない」
「流石にそうか...」
なんでも出来るじゃんと思ったけど、一応条件はあるわけね。まぁ、二人以上なんて上手くやれば簡単に満たせそうではあるが、その場に応じたものを作るのは無理だな。事前に作っておくことは出来そうだけれど...
「……あ、そっか。だからあいつら奇跡って言ってたのか」
「奇跡?何の話だい?」
「ありゃ、あの時は聞いてなかったのか。軍の奴らがあの魔法のことを奇跡って呼んでたんだよ。んで、神話の再現が起こったから奇跡だって言ってたんだなって納得しただけの話さ」
「まぁ、そう思われることを見越してあの魔法を選んだからね。他にも龍を滅する手段はいくらでもあったが、魔法が使われたことを隠すには大いなる存在による奇跡を匂わせることが一番楽だった」
「なるほどな...あ、あともう一つ質問いいか?前にサラッとそんなことを聞いたような気がするが、この世界には夜...あの太陽が沈んで暗くなるような現象はあるのか?」
「ほう、そんなことが幸希の世界では起こるのか。面白いな...答えはノーだ。太陽は空を回ってはいるものの、同じ高さで円状に周回するのみで沈んだり登ったりと高さを変えることはない」
「へー、白夜の時の太陽みたいな動きを高い位置でやってるようなもんか。面白いな...」
ずっと真上に太陽があった源流世界とも違うな。ずっと昼なことには変わりないが、こっちの世界では時間帯によって太陽の位置が変わり影の向きが変わる。それの一周をもって一日を定めているのだろう。
「……ん?でもホテルの人は夜がどうとか言ってたような...?この世界における夜ってなに?」
「夜は夜だろう?仕事を終わらせて休息をとることが法律で定められている時間帯のことだが...」
「あー、単純に翻訳がガバってただけか。役割が似てるからって適当に当てはめて翻訳するんじゃ無いよ全く...」
一応固有の概念ではあるんだから、一般名詞を当てはめるのはダメだろ。その言葉があるってことは...みたいな考え方良くするから困るんよ...
「……ここで知れて良かったってことにしておくか」
「もう質問は大丈夫かい?」
「ああ、もう無いよ。答えてくれてありがとう」
「どういたしまして。代わりといってはなんだが、ホテルに入ってからで良いから幸希の話を聞かせてくれ」
「お安い御用よ」
と、話しているうちにそこそこの距離を歩いており、ちょうど森を出ようといったところだった。
「到着だ」
「へー、森からゼロ距離なんだな...って、そういうことね」
俺たちは森の外に出た。
……いや、正確には違う。
「森の内側を切り開いて町にしているのか。そりゃゼロ距離なわけだ」
目の前に町が広がっているが、その周囲を覆うように木が生い茂っている。森の中に現代的なコンクリート調の建物があるこのアンバランス感よ...普通こういう町って木組みで出来るもんじゃない?切り倒した木は何に使っているのやら...
「ってか、こんな森の中に町作ったりとかしたら魔物に襲われ放題じゃね?森に防衛機構でも取り付けてるのかな...」
「いいや、そもそもこの町を覆う森には魔物は寄り付かない。適度に人の手が加えられて整備された森を魔物は好まないからな」
「なるほど、森全体が里山みたいな役割をしてるってわけね...不確定ではあるがそこそこ安全ってわけだ」
「地図を見る限り、五百年前から森は拡大しているようだ。植林をして魔物の立ち入らない領域を増やすとは...魔法無しの純粋な科学でここまで森を成長させるのはさぞ大変だったろうな」
「苗木を植える方法は時間かかるし、木を持ってくるのも魔法無しじゃ重機が必要になるからどっちみち大変だもんな」
「その努力は認めるが...建材を他の町と同じにする必要はあったのか?以前の木組みの方が温かみがあって良かったものを...」
「あ、前はそうだったんだ。やっぱ森ん中なら木を使ってこそだよなぁ?」
「その通り!同じ感性を持っているのはなかなか嬉しいな。これから共に旅をするわけだが、ここを違えては話にならん」
「だよなぁ...ってか、なんか色々あったからもうこんな関係性だが、俺らまだ会って一日も経ってないんだよな」
「それもそうだな。軽くシャワーを浴びて、幸希の話を少し聞いたら早めに寝ようと考えていたのだが、それなら互いの親睦を深めるためにももう少し対話の時間を増やそうか。寝る時間遅くなるが構わないか?」
「大丈夫だ。俺がこの世界に来たタイミングのせいなんだろうが、まだ眠くないからな」
「わかった。じゃあ適当にホテルを取って入るとしよう」
二手に分かれて町を散策し、今夜泊まるホテルを探す...が、どうやらもう夜が近いそうで、俺が見つけたホテルはだいたい満室であった。あの太陽がどの位置になったら夜だと判定されるんだ...?これ、後で聞いておくか。
「うーむ、なかなか見つけらんないな...ホテルの人に聞いても、競合他社のことだから何も教えてくれないし...空いてるかどうかはまぁわからないだろうから良いとしても、せめて場所だけでも教えてくれよ。いちいち人に聞いて場所見つけないといけないの面倒すぎる...っと、湊が先に見つけたか」
テレパスの魔法で湊がホテルを見つけたことを報告してきた。ナビゲートしてもらい、合流する。
「野宿にならなくて良かったな」
「だな。野宿はもうあまりしたくない...」
野宿は源流世界で何度か経験したことがあるが、いつ魔族に襲われるか分からないという緊張と、いつ魔王が勝手なことをしだすかわからないというもう一つの緊張があったせいで満足に寝れなかったからな...それらを差し引いても、地面の上で寝ること自体があまり心地のいいものでは無いから嫌なことには変わりないが。
「さて、部屋はもう取っておいた。飯の時間が決まっているようだから、早めに部屋に入って荷物を整理し、とっととシャワーを浴びるとしよう」
「りょーかい...つっても、俺の荷物はほぼ無いようなもんだけどな。武器しか持ってないや」
「そういえば、買い物をしている間に魔丸騒動に巻き込まれたのだったか...明日、町を調べるついでに買い物も済ませるとしよう」
「助かる...っとと、その部屋ね」
鍵は湊が持っていたので少し通り過ぎてしまった。この部屋ね...
「おぉ〜良い部屋じゃないか。普通に現代のホテルと同じだな」
湊に鍵を開けてもらい中に入ると、よくあるホテルっぽい内装の部屋が広がっていた。なんだか懐かしい...そしてツインベッドとかいつぶりだ?聖杖世界じゃ一人一部屋取ってたから、二人部屋なの新鮮だな。
「あ、部屋にシャワー付いてるのね。そんじゃ俺が先に入ってくるわ。湊は荷物の整理で時間かかるだろうし」
「わかった、そうしてくれ」
「あー、着替えどうしよ。今日のところは明日も同じの着るしか無いか...?」
俺はそう呟きながら服を脱いでいく。
「……あー、服は魔法で私が綺麗にしておく。それと...」
「ん?どうした?」
「……そうか、気づいていないのか。まぁ、この容姿ではどちらか判別するのは無理か。まだ若い、未発達の身体だし」
「……え、あっ...」
「察したか?そう、三枝湊は女だ。まぁ、転生前は男だったし、八十まで生きた老人だから欲など枯れているし羞恥心も無い。それゆえに見ようが見られようが私自身は何も感じないが...これからのこともある。今のうちから私のことを、齢十の少女であると意識した行動を取った方がいいかもしれないな」
「十歳...完全に事案だなこれから気をつけるわ」
「そうしてくれ。だから...着替えるのなら脱衣所で、だ」
「おっとすまない」
脱ぎかけの服を持って脱衣所に入る。
「……十歳かぁ。ステラよりも若いのか...中身はまぁ老人だけど、そんなこと知らないであろう親御さん方はよく一人旅を許したなぁ」
服を脱いで軽く畳みながらつぶやく。魔法で綺麗にするのなら畳んである状態でも構わないだろう。一応下着は服の内側に挟み込んで見えないようにして...と。
「……にしても、欲が枯れてる、ねぇ...それは俺も同じか?」
聖杖世界で速度操作の能力を持っていたがために起きてしまった不可抗力を思い出す。意識しないようにしていたというのもあるが、感じ取れてもそういった欲はあまり出てこなかった記憶がある。異世界人だからそういうことができないように、そもそもそういった欲が出ないようにされているのだろうか?
「まぁどうでも良いか。雑念が入らないのはありがたい」
俺の役目はこの世界の歪みを取り除くこと。それだけに集中すべきなのだから、そういった雑念から解放されているのはなんともありがたい。
「シャワー浴びよ〜」
パッと意識を切り替え、風呂場に入るのだった。
これまで口調で湊の性別をわざと曖昧にしていたのですが、身体は女の子です。
でも湊は中身老人だし、カリヤくんもそこそこ大人で察しがいい方なので、よくあるテンプレラッキースケベは当然回避するよなぁ...と思いこんな展開になりました。
まぁこの二人ならこうなるでしょ...