神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8499字。

ちょっとだけカリヤくん無双回です。


独創性なき創造神

「俺は...この世界の真理を見たのかも知れねぇなァ」

 

「この世界の...真理?」

 

思わず口から声が漏れていた。魔力を流し込まれて...何を見たんだ?

 

「さて、俺の予想が正しければ...」

 

そう言いながら幸希は、一つに集まろうとするスライムに掌を向けていた。

 

「閃光...流石にスキル宣言じゃ無理か。詠唱なんだっけな...覚えてる奴から使ってみるか」

 

そうして地面に手を付けた幸希は、続けて言葉を紡いだ。

 

「土よ、流動しその形を変えよ」

 

その瞬間、地面が流体化して動き出し、スライムの脚を地面がガッチリと掴んだ。

 

「魔法...⁉︎」

 

私との魔力接続はどういうわけか切れている。だから私の魔法ではない...そして、幸希が持っていた魔物の魔力器官にはあの魔法を使えるものは無かったはずだ。

 

魔物に流し込まれた魔力を使って魔法を使った...というのが一番可能性として高いが、問題は幸希が魔法の発動方法を知らないことだ。私はこれまで、幸希に魔法を教えていない。模倣の傷があれば発動法を知らなくとも魔法を使えたため教える必要がなかったからだ。こうして魔力を得ることになるとは思っていなかったのもある。

 

「……ちゃんと使えるな。なら、土流...って、スキル発動じゃやっぱ無理か。経験の力が無いから...」

 

「何をぶつぶつと呟いている...!ミセラ!サック!さっさと黙らせろ!」

 

男が叫ぶと、魔物二体が動き出す。スライムは自身を分解して地面の拘束から逃れて幸希に近づき、鳥は羽ばたいて上から攻撃を仕掛けにいく。

 

「まだ試してる途中だろうが...邪魔すんな」

 

二体が近づいてくるのを見た幸希は、槍を鳥の腹に叩き込んだ。反射が発動して幸希は後ろに弾き飛ばされる...が、そうなることを見越しての行動だったのだろう。反射を利用して魔物から距離を取ったのだ。

 

「イッテェな...えーっと、回復魔法は...呪文覚えてねぇわ、これで良いか」

 

幸希は自分で魔力を操り体外に取り出すと、指で空中に魔力を使って何かの紋様を描き始めた。

 

……すると、その紋様は光り出して幸希の傷を癒やし始めた。

 

「これも出来るのね。そんじゃ...まずはお前を消し飛ばすか」

 

今度は別の紋様を幸希は描き出した。

 

すると紋様から光線が飛び出してスライムを貫いた。スライムは蒸発し、塵となって消えていく。

 

「次だ。お前は...これで行こうか。魔力が足りるかは知らんが...な!」

 

またしても幸希は紋様を描き出す...が、今度はとても複雑な形をしている。

 

「何をする気か知らんが...先に潰せ!サック!」

 

男が鳥の魔物に指示を出した。

 

……しかし、魔物は動かなかった。

 

「おい...?どうした?なぜ俺の言うことを聞かない⁉︎」

 

「……なるほど、傀儡魔法は操りたい魔物に印を刻むことで発動するみたいだが、接続を一度断つともう一度刻まなきゃ操れないようだな」

 

「お前...サックに何をした⁉︎」

 

「何かをしていたのはお前の方だぜ?俺はそれを全て無効化しただけ。こいつが言うことを聞かねぇのは、お前が魔法無しで信頼関係を築くことをしてなかったせいだろうな」

 

「何をふざけたことを...!サック!お前の力であいつをぶちのめせ!敵となるならば殺しても構わん!!」

 

男がそう叫ぶと、魔物はキョロキョロと辺りを見渡した。男と幸希を見比べ...幸希の方に飛びかかった。

 

「ハッ、鳥頭にも仲間を判別できたか!だが...この状況で俺に突っ込むのは、ちと周りが見えてねぇな」

 

幸希は魔力を取り出すと、背中側に紋様を描く。これまでのように指で書くのでは無く、直接魔力を操って紋様を描き出していた。なんという魔力操作の精度...クルイガのそれと同程度ではないか?

 

「この魔法を使うのも懐かしいな。久しいからあん時みたいには扱えねぇだろうが...やるしかねぇなァ!」

 

幸希の背中から水で出来た触手のようなものが数本生えてきた。水を生み出し操る魔法...?どんな魔法を複合させればあんな現象を引き起こせるんだ?

 

「オラァッ!」

 

近づいてきた魔物を、槍を大きく振り回して殴り飛ばす。そのまま幸希は回転すると、背中に生えた触手で続け様に殴打の応酬を魔物に与えた。

 

「……雷装無しじゃ威力低いな。ただの水の塊だし仕方ないか...けど、身を守るには十分!」

 

体勢を立て直した魔物は再度幸希に突撃し、蹴りを加えようとする。しかし、飛びながら連続で放たれた蹴りは全て水の触手で弾かれていた。

 

「さて、トドメを...」

 

魔物の攻撃を弾きながらそう言った幸希は、槍を手放すと妙な動きをし出した。まるで、何かを持っているかのような...あれは、弓矢の構え?

 

「……変だな。あの動きと精神状態をちゃんと再現したはずなんだが...動きを発動条件とする古代の魔法はこの世界には無いのか...?それとも、全て呪文か魔法陣が必要なのか...」

 

ぶつぶつと呟く幸希であったが、魔物の攻撃は的確に防いでいる。それどころか、攻撃を弾くたびに魔物に追加で打撃を加えていた。

 

「なぜだ...なぜ反射が機能していない...!」

 

「そりゃ俺が無効化しちまったからな。俺の前で魔法を使えると思うなよ...?」

 

幸希はあの男に傷を負わせていない。よって、あの男の魔法を操って魔物にかけられた魔法を解除したわけではない。幸希は無効化したと言っているが、まさか本当に...?

 

「そんじゃっ、そろそろこいつ殺すか」

 

空中に紋様を描き出す幸希。それを見た魔物は何かが起こる前に幸希を倒そうとするも、水の触手が接近を許さない。それどころか、翼や脚をガッチリと絡め取り身動きを封じた。

 

「消えな。閃光」

 

紋様からスライムを消しとばした光線が放たれた。身動きを封じられた魔物は回避できず直撃し、胴体に風穴を開けた。そんな状態で生きていけるわけもなく、魔物は塵となって消えていった...魔力器官を残して。

 

「おっ、今度は傷つけずに回収できたか。まぁコイツは魔法持ってないし模倣の傷には使えねぇけど」

 

そう言いながら幸希は魔力器官を拾い上げた。魔力器官が落ちたということは、あれは確かに魔法なのだろう。しかし、あんな魔法を私は知らない。いったいどこで知った魔法なんだ...?まさか、異世界の...⁉︎

 

「くっ...サック...!」

 

「お前のお仲間は全員消えたぜ。大人しく降伏することだな」

 

身を守る魔物が全滅した男に幸希が近づく。

 

「く...そが!!」

 

男は懐からナイフを取り出して幸希に向かって走り出した。

 

「自暴自棄になったか」

 

紋様を描きながら幸希はそう言った。

 

そして...紋様を描き終えてからほんの数瞬後、幸希の姿が消えた。そのせいで男のナイフは空を切った。

 

「消え...⁉︎」

 

「後ろさ」

 

いつのまにか幸希は男の後ろに立っており、男の背中を蹴り飛ばした。

 

「ぐっ⁉︎」

 

「うおっ...と。自分にも反射をかけてるのね」

 

背中を蹴られたことで男は前に倒れ込んだ。その瞬間、幸希は前につんのめったかと思えば後ろにのけぞった。反射の魔法によって、背中を蹴られた衝撃と地面に倒れ込んだ時の衝撃の一部が幸希の身にも跳ね返ってきたのだろう。

 

「そんじゃあ...!」

 

倒れ込んだ男の上に跨ると、幸希はその背中に紋様を描き始めた。

 

「これで良し!それっ!」

 

ドスっ...と背中を殴り飛ばす幸希。しかし、そのダメージが幸希に返ってきたようには見えなかった。

 

「な...俺の魔法が...⁉︎」

 

「ほらよっと!」

 

服を掴んでグイッと持ち上げ、男を遠くに投げ飛ばす幸希。またしても反射は機能していない。完全に使えなくなっている...?

 

「さて、クルイガをどこに連れて行ったのかを教えてもらおうか。さもなきゃこのまま殴り続けるぜ」

 

先程手放した槍を回収して、幸希は男のもとに戻ってくる。

 

「誰が教えるか...!」

 

「なかなか強情だな。それなら...まず一発!」

 

「ぐああッ!!」

 

槍が男の脚に振り下ろされて深くめり込んだ。あれは...遠目から見てもわかる。骨が折れている。

 

「魔力を飲ませたのはお前の指示だろ?そんで、他者の魔力を得ると人格が攻撃的になる...ってことは、これは自業自得だな。このまま心を痛めずに殴り続けてやるが、どうだ?教える気にはならないか?」

 

「っ...ホック!来い!」

 

男は叫ぶものの、ホックと呼ばれた者は現れない。

 

「ま、魔法さえ使えれば...!」

 

「言わねぇってんならもう一発...!」

 

幸希は槍を振り上げ、男のもう片方の足めがけて振り下ろし...

 

「……チッ」

 

当たる直前でその手を止めた。

 

「魔力が...!」

 

幸希の身体から魔力が消えていた。スライムに注入された分の魔力を全て使い切ったのか...?

 

「っ、魔法使える...!」

 

男は幸希を押し飛ばすと、足を引きずって幸希から離れながら叫んだ。

 

「ホック!!今すぐに来い!!!俺を逃せッ!!!」

 

その直後だった。男のすぐ側に魔物が現れた。

 

「っ!さっきの転移の...!」

 

気付いた幸希は走って男に近づこうとした...が、遅かった。近寄る前に男と魔物は消えてしまった。

 

「クソッ!あともうちょい近づけてれば傀儡魔法の主導権を握れていたのに...!」

 

なるほど、模倣の傷で傀儡魔法を使うことで魔物の転移魔法の行使を防ごうとしたが、距離が離れていたために無理だったと...いや、そんなことよりもだ。

 

「幸希...身体は大丈夫なのか...?」

 

器が全くない人間だというのに魔力を流し込まれても無事どころか、魔法を行使して魔力を使い切ってしまったのだ。前代未聞すぎる出来事に、幸希の身が心配でならない。

 

「俺は平気だ。なんなら、湊のほうが辛そうだぞ?早くこの洞穴を出た方が良さそうだな」

 

「えっ...あ、ああ。そうだな...」

 

逆に心配させてしまった。たしかに他者の魔力が充満しているここに居続けるのは辛いけれど...本当に幸希は平気なのか?どう考えても普通ではないことが起こっているのだが...

 

「……仕方ない。ひとまずここを出よう。話はそれからだ...」

 

「肩貸すぜ」

 

「ああ、助かる...」

 

まるで平気そうな幸希の肩を借り、洞穴を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……本当に身体に異常が見られない...」

 

湊の工房に戻ってきたのだが、なんともないと言っているというのに精密検査を受けさせられていた。

 

「だから言ったろ。平気だって」

 

「そんなわけ無いのだが...仕方ない。そこは後でもう少し調べるとして...」

 

まだ調べんのかよ...

 

「私は魔法の使い方を教えていない。魔力を得たとしても魔法を使うなんてことできるわけがない...だというのに使って見せたな。あれはなんだ?」

 

「ああ、あれか...あれは聖杖世界の魔法だ。魔力を流し込まれた時、妙な懐かしさがあった。懐かしい異物感...見知った感覚だった。どうやらこの世界の魔力は聖杖世界の魔力と非常に似ているらしい」

 

「……だから、聖杖世界の魔法を使うことが出来たと?他の世界の魔法を使えるだなんて、そんなことあり得るのか...?」

 

「そもそも少し前から既視感は感じてたんだよな。土流や未来跳躍といった、聖杖世界の魔法によく似た魔法がこの世界にはあった。魔力切れ後の魔法の扱いが違うから偶然かと思っていたが、魔力を得た時に確信を得た。だから試してみたら聖杖世界の魔法を使うことができた。スキルや動作では発動出来なくて、呪文や魔法陣での発動に限られてはいたけどな」

 

「……この世界では、魔法を発動させるには呪文を脳内で紡ぐか、刻んだ紋様に魔力を流し込む必要がある。同じ方式を用いていれば、他の世界の魔法も発動出来るのか...?」

 

「そうなんだろうな...」

 

『それは少し違うのう。どんな魔法でも使えるわけではない』

 

「……っと、どうやらちょっと事情があるみたいだ。神様がなんか言ってるわ。ちょっと待っててくれ聞いてみる」

 

『魔力が似ていることや同じ魔法が使えるのは、この世界を作った神が聖杖世界のシステムを真似したからじゃ』

 

……真似?

 

『全ての神が独創性を持ち合わせているわけではない。他の神が開発したシステムを真似し、少し手を加えて自らの世界に導入するといったことをする神も多いんじゃ』

 

あー...だから聖杖世界の魔法と同じものがあるってことか?そんで、魔力切れを起こした後でも魔法を使えたり、スキルが無かったりってのが手を加えた部分ってわけか...

 

『そういうことじゃ』

 

「なるほどね...どうやら、この世界を構築した神が聖杖世界の魔法システムをパクったらしい。だから聖杖世界の魔法も使えるらしい。完全にパクったわけじゃなくて手を加えた部分があるせいで全部が全部使えるわけじゃないようだが、大体は使えるみたいだな」

 

「そう...なのか。つまり、聖杖世界の魔法がこの世界の魔法の原型だと...ということは、聖杖世界の魔法を解析すればまだ未発見の魔法を見つけられるのでは...?」

 

「まぁ、そうなるだろうな。実際、魔法拡散は使えたわけだし」

 

これって逆はどうなんだろうな。この世界には、聖杖世界にはない転移魔法がある。この世界にある魔法をあっちで試したら、ちゃんと使えるんだろうか...この世界の神が手を加えたために生まれた魔法だとしたら無理かな。

 

「どんだけの魔法がこの世界で使えんのかは知らんが...かなり便利だな。模倣の傷とかもういらんかもしれん。湊を傷つけずとも簡単に魔法を使えるわけだし、これからは魔力供給さえあれば良い...そうだ、魔法使いなら魔丸を作れるんだろ?作ってくれよ。そうすりゃ離れていても魔法を使える。模倣の傷の距離制限を無視できるのはかなりの利点だぞ」

 

なんなら魔物の魔力器官から魔力を得ても良いのか。まぁ、どうやって魔力を抽出するかっていう問題はあるけど...飲み込んだらいけたりするのかな?

 

「それは...あまりお勧めしないな。今回はたまたま何も起こらなかったが、二度目はどうなるかわからん。それに、魔力過剰症こそ起こっていなかったものの、若干の精神の凶暴化は見られた。直前まで攻撃を躊躇していた相手に対して何の躊躇いもなく攻撃が出来たり、あの男に対しても殺すつもりはなかったとはいえこちらも躊躇い無しに攻撃できていた。普段の君なら無理な行為だろう」

 

「うっ...それは、そうだな...」

 

たしかに、魔力を流し込まれてから少しばかり精神が不安定になっていたかもしれない。偶然ミセラと同じ名前を持ったスライムに攻撃出来なかったはずだったのに、魔力を得たらすぐに消し飛ばすことができたからな...

 

ってか、俺大丈夫かな...ミセラのことを思い出したせいで、芋づる的に法術世界の魔物たちのことを思い出しちまった。良い奴らばっかだったな...魔王代理という立場になって、魔物にも人間らしい心があることを知ってしまった。

 

この世界の魔物は聖霊みたいなもんで、魂が無いから心も無いと思っていたけれど、あの男が言うには良い奴らだって話だし心を持っている可能性もある。そうした場合、仲間として過ごしたあの魔物たちのことを知っている俺が、これまで通り魔物を倒すことができるのか少し心配になる。

 

今回は相棒の名前が原因だったけど、今後も似たようなことが起こるかもそれない。名前が同じであったり、容姿が似ていたり...そうした場合でもちゃんと倒せるのかな...

 

「……けど、試してみないことには何もわからないだろ?もしかしたら、今後も魔力過剰症は起こらないかもしれない。精神の凶暴化も軽微なものなんだし、そんなに心配することでもないはずだ。もう一回試してみて、ダメそうならやめる...それでいいだろ?」

 

「出来ればやりたくはないのだが...その顔を見るに、拒否しても無駄なようだな...仕方がない。ひとまず、魔力服用中の状態を調べることで安全性を確認するところから始めるとしよう」

 

そう言うと湊は魔力を取り出して魔力の丸薬を作り出した。

 

「飲んでくれ」

 

「りょーかい」

 

渡されたその魔丸を口に含み、ごくんと飲み込む。

 

しばらくすると、魔丸に含まれていた魔力が体内を駆け巡るような感覚が走った。魔力を持ち合わせていない自分は、魔力への知覚が過敏になっている。聖杖世界じゃそんな人誰もいなかったから俺が一番魔力操作が得意になっていたけど、今のこの世界じゃ同じような感覚になる人多そうだな...まぁ、俺以上に上手い奴なんているとは思えないが。

 

「飲んだぞ。どうだ?なんか変なとこあるか?」

 

「うーむ...見たところ、今回も魔力過剰症は起きていないようだな...だが、なぜだ?他者の魔力を得ることによる精神変化は誰にでも起こることだから問題ない。しかし、魔力過剰症が起こらないとなると、相当量の魔力の器を持っていなければおかしいのだが...」

 

「へー、そんなおかしいことが起こってんのか。異世界人だからかねぇ...」

 

「その説明で思考を止めるのはよろしくないだろう。検証できることではないからな。たしかに理由としてはあり得そうだが、だからこその最終手段だ。他の可能性を排除して、もう他にないのならそう結論付けよう。もっと他にあり得そうな理由...幸希だけが抱えている問題...」

 

「俺にしかない何かが原因ねぇ...あ、魔王、とか?」

 

「聖杖世界の魔王...か。たしか幸希の魂に寄生しているのだったな。その魔王が魔力の器の代わりを担っている...あり得るな。魂を調べてみるか」

 

湊はそう言いながら近づいてきて、俺の胸に触れた。

 

「……っ⁉︎」

 

とても慌てた様子で湊は俺の胸から手を離した。手を押さえながら冷や汗をかいている。

 

「見えた...今のが魔王か」

 

「どうだった?」

 

「……たしかに、魔王が魔力の器の代わりを担っているようだ。そのおかげで魔力過剰症を起こさなかったのだろう」

 

「魔王は寄生生物であると同時に、魔力の塊だ。器の代わりになっていてもおかしくはない...か」

 

「だが...今のはなんだ?」

 

「ん?どうかしたのか?」

 

「いや...幸希、君が寄生されているのは魔王だけなんだよな?」

 

「そのはずだが?」

 

「……君の魂の中に、他にも魂が読み取れた。魔王以外のだ。君の魂を含めて、七つ見えた」

 

「七ぁ⁉︎俺と魔王以外に五つも魂があるってのか⁉︎」

 

どういうこと⁉︎魂に寄生する魔物が他にいたとしても多すぎんだろ⁉︎

 

「五つ...五つか...ん?」

 

そういや、俺が神からもらった能力って空の魂に埋め込んだものだったよな?能力を込めた魂を俺の魂に取り込ませることで、能力を使えるようになっているという話をこの世界に来るちょうど前に聞いた気がする。そして、過去にもらった能力は魔王に取り込まれてしまい回収できていなかったはずだ。

 

速度操作、創造の銃、衝撃の剣、模倣の傷...これまでに貰った四つの能力が、その魂だとしたら...いやでも一個足りないよな。じゃあ違う...?

 

……翻訳能力も含めれば五つにはなるか。いやでも、それを含めたら俺にとって都合の良いことが起こる幸運能力も含まれてなきゃおかしいか?...ああでも、あれは魔王に寄生された時にはすでに乗っ取られてたんだっけ?だから数には含まれていない...でもそれだと奪われた三つの能力もカウントされないことになるし...

 

「あー...矛盾点もそこそこあるけど、ひとまず説明はつけられる...か?魂の数云々は気にしなくて良いと思う。これまで得てきた能力が魂としてカウントされてるだけだ」

 

「そうか、幸希の中で解決しているのなら良いのだが...にしても、魔王か。だとすると、魔力を持つことは危険かもしれないな...」

 

「というと?」

 

「この世界の魔力と聖杖世界の魔力は似ているのだろう?となれば、魔力を得るとその魔力は魔王のもとにも流れ込むことになる。今は平気でも、何度も繰り返すうちに魔王が力を取り戻していき、幸希の身体を乗っ取る...といったことが起こりうるかもしれない」

 

「っ...それはまずいな」

 

魔王に乗っ取られてしまったら、魔王はこの世界で自分勝手に暴れ回るだろう。そうなった時、止めることができるのは...湊だけか。もしその時が来たら殺してもらうしかない...が、俺がその頼みをするとお前が言うなって言われそうだな...

 

「……私と別行動をしている時など、やむを得ない非常時のみに使用は止めてくれ。私がいるときはこれまで通り模倣の傷を使って私の魔法を使う...それでいいな?」

 

「ああ、それで良い」

 

正直、非常時にも使うなと言われそうだなと思っていたので、内心ビックリしながら了承する。ここで下手なことを言えばやっぱダメと言われそうなので、ここは触れずにスルーだ。

 

「おそらく、魔丸と模倣の傷は両立できない。魔力を得ている間は模倣の傷による接続が切れてしまうからな。模倣の傷を使いたい時はすぐに魔力を放出するようにしなさい」

 

「了解」

 

「……よし、では旅を再開しよう。クルイガの治める町に戻るぞ。魔力を追跡し、クルイガを必ず見つけ出す」

 

「おう!」

 

そういえば結局どうしてクルイガを攫ったのか聞けなかったな...と思いながら、湊の転移魔法に乗り込むのだった。




魔力と魔法が似ているというこの設定、自分目線ではかなり設定や物語に則したものなのですが、読者目線だと突発的に生えてきたご都合設定に見えてしまうのかな...
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