懐かしい敵との再戦です。
「これは...」
「おっ、ようやく見つけたか?」
クルイガの治めていた町で魔力の情報を得た私たちは、あれからしばらくいくつかの町を転々としていた。広域魔力探知を発動して、何も反応が無ければ次の町へ向かう退屈な日々であった...が、ようやく成果が現れた。まぁ、予想外の出来事ではあったが。
「見つけたは見つけたのだが...まさか、こっちとはな」
「こっち?」
「ワーウルフだよ。最初に私たちが取り逃した魔丸製作者さ」
「あっ、そんな奴いたなぁ。すっかり忘れてたわ」
「念のためクルイガの魔力と同時に魔力探知をしていたのだが、この町で反応があった。それも、複数な」
「複数...なるほど、魔丸の反応か。また懲りずに魔丸を作って広めてるってわけだな...」
ワーウルフ自身の魔力に探知をかけているため、ワーウルフが作り出した魔丸を服用した者も同じ反応を返すのだ。
「同じ反応だからワーウルフ本人はどの反応なのか、そもそも本人がこの中にいるのかすらもわからないな。ひとまず一人ずつ対応していくしかないが...」
「別行動は無理そうだな。聖杖世界の魔力探知ってそこまで広い範囲の探知は出来ないし、模倣の傷はまだあまり離れられないし...」
「これでも伸びた方ではあるがな。まぁまだ無理なのも事実か」
事あるごとに幸希を説き伏せて私に対して模倣の傷を使わせたことにより、少しずつ模倣の傷を発動できる範囲は広がっていっている。だが、流石に町一つをカバーできるほどではないので、今回は共に行動する他ないな。
「ひとまず、近くにある反応に接触しにいくぞ。ワーウルフ本人かもしれないし、そうでなくとも魔丸によって多少凶暴化した人間だ。出会い頭に襲われるかもしれないことに注意しておけ」
「わかってるさ」
「一番近くにいるのは...この通りを歩いてすぐだな。人ごみの中に紛れているのは厄介だな...」
「人の多い通りに魔丸使用者がいるってかなり違和感だけど、もしかしてワーウルフ本人だったりする?」
「ふむ、たしかに魔丸使用者が表通りに出るとはあまり思えないが...本人かはわからないな。どの反応も魔力の量に大差ないから識別は無理だ」
「魔力量が同じ...それほどまでに多くの量を込めた魔丸を流通させてるってことか」
「そうなるな...っと、こっち側に歩いてきているようだ。横をすれ違うように歩くとしよう。一瞬でも近づけられれば、ワーウルフかどうかわかるし魔力に印をつけて見分けがつくようにできる」
「りょーかい」
右前の方からこちら側に向かって歩いてきていたので、バレるリスクはあるが真横を通り抜けることにする。もし何かあっても、間に幸希を歩かせているから対処してくれるだろう。
そう思って動き出したその時だった。人混みの中からぬうっと抜け出してきた子供がいた。そいつから魔力の反応があった。
子供が魔丸服用者...?と、疑問符を浮かべる暇は無かった。子供は私を見てハッとしたような表情を浮かべ、手のひらをコチラに向けると...
「燃えろ!フォルス!!」
「っ、危ない!」
幸希が咄嗟に私を地面に押し倒したおかげで、子供が放った火球は私たちには当たらなかった。しかし、背後にあった建物には命中し、火の手を上げる。
「白昼堂々ぶっ放してきやがった...!」
「まさか本当に出会い頭で攻撃してくるとは...しかしあの子供、衆人環視の中魔法を使う危険性を知らないのか?」
突然起こった炎に、周囲にいた人々は慌てふためく。魔法自体は私たちを狙ったものだが、それによって被害を受ける恐れがあるのだからそうなることは分かり切っているだろう。
そして、これから起こることもまた、前もって予想できる事柄であった。
「魔物だ!!」
「殺せ!撃ち殺せ!!」
近くにいた人たちは皆腰の辺りに手を伸ばしていた。そこにあるのは実銃。
人前で魔法を使えば、魔物だと断定されて襲われるのが今のこの世界の常識だ。そして、それは分かっているはずだが...子供はこちらに手を向けたまま再度火球の魔法を発動させようとしていた。防御系の魔法で身を守る素振りは一切ない...というか、銃を向けられていることに気がついていない...⁉︎
「っ、借りるぞ湊!」
それに気づいた幸希は私の腕を引っ掻いた。それによって小さな傷をつけると、模倣の傷を発動させて私から魔力を抜き取る。そして、周りにはバレないように魔法を発動させ、子供の周囲に透明な壁を作り出した。
周りの大人らが放った銃弾は、子供を貫くことなく透明な壁に阻まれる。子供が放とうとした火球も同じく壁に阻まれた。
「くっ、守りやがった!」
「囲め囲め!逃すな!」
どうやら大人たちは子供が壁を作り出して攻撃を防いだと勘違いしたらしく、壁が消えたらすぐに取り押さえられるようにと子供を取り囲んだ。
若干理性的な行動を示した大人とは対照的に、子供は壁に拳をガンガンと叩きつけ、早くここから出せと叫んでいた。目線が常にこちらを向いている...もしや、周りの大人が見えていないのか?
「チッ...殺させるかよ!」
幸希は立ち上がると、私から魔力を吸い出して魔法を発動させる。
「見たものを全て忘れて散れ!!」
軽度の暗示...言ってしまえば洗脳魔法を幸希は発動させた。すると、子供を取り囲んでいた大人たちは急にキョロキョロと辺りを見渡し、銃を持っていることに気がついて魔物がいる⁉︎と騒ぎ出し、火球の命中によって燃えている建物を見つけると慌ててそちらの方に駆け出していった。
記憶を失ったことによって子供が火を放った事実を忘れ、銃を抜けたことから魔物がいるという認識と燃えている建物が結びついたことにより完全に注目が子供から逸れた。もう誰も子供が魔物だとは思っていない。
「さて、今のうちに...!」
幸希は槍を手にすると、子供を守っていた壁を消してすぐさま側頭部を殴り飛ばした。そして模倣の傷によって子供から魔力を吸い出し、おそらく子供が使えたのであろう風の魔法を威力を強めて真上に撃ち出すことで、あっという間に子供の中に溜まっていた魔力を使い切ってしまった。
「ふぅ...これでひとまず解決...」
「……そのようだな」
幸希によって付けられた私と子供の傷を治す。特に、子供の方は少し強めに頭を殴られていたから念入りに...と。
「あの様子だと...この子供はワーウルフによって訓練されていたのだろうな。魔丸を摂取したからといって使い方を知らなければ魔法は使えない。それに、私たち以外見えていないかのような仕草をしていた。多くの魔力を与えることでフォルスの強制認知を誘発させ、殺すように仕向けていたのだろう」
「っ...俺たち専用の殺し屋とするために魔丸を与えたってことか...?」
「予想があっていればの話だがな。他の反応も子供ならばそれで確定するだろう。子供を使うのは、魔法を使うと魔物だと勘違いされて殺されるという常識が身につく前で、躊躇せずに魔法を使ってくれるから...か?」
「なんだよそれ...使い捨ての駒にする気満々じゃねぇか。成功するしないに関わらず殺されるの確定だし...」
子供は私たちしか見えていなかった。よって、もし仮に襲撃に成功したとしても、銃を持った大人たちを認識することはできない。そのまま撃ち殺されて終わりだ。
「……許せねぇ。子供を駒として扱って死にに行かせるワーウルフの奴を、絶対に見つけ出して殺してやる...!」
「……そうだな。早く見つけなければ、同じような子供たちが何人も作り出されてしまう。更なる犠牲者が出る前に見つけて止めないとな」
「あと...たとえ子供でも魔法を使っただけで魔物扱いする大人たちも許せん!絶対に魔法の認識も変えてやる!!」
「そ、そうだな...声大きいから少し落ち着け...」
少し興奮気味の幸希を諌める。
にしても...私たちを襲おうとした人でも咄嗟に守るところは相変わらずだな。そこは前から変わっていない...いや、もしかしたら子供だからだとかワーウルフの被害者だから優しかっただけで、自分の意思で悪意を持って襲い掛かってきた相手には容赦しない可能性もあるけれど...
「こほん。ひとまず、怪我は治したし魔力も抜き取ったから、この子供は放置しても問題ないだろう。次の反応に向かうぞ」
「了解!」
子供をそこらを歩いていた適当な人に引き渡し、私たちは近くの魔力の反応を追う。
「……どの反応もこちらに向かってきているな。ワーウルフに町に入った私たちを襲うように命令されたのだろう」
「それならとりあえず人通りの少ないところに出ようぜ。周囲にバレないようにしなきゃまた一般人が横槍を入れてくるからな」
「そうだな。それならこの道を進むぞ。探知によればほぼ人がいない裏道がある」
幸希の手を引っ張って道を駆け抜ける。道を進むごとにだんだん人通りが減ってきて、ついには人っ子一人いなくなる。
「ここなら安全に戦えるはずだ...おや?この反応は...一人だけ動いていない者がいるな」
「もしやその反応がワーウルフか?...いやでも、そんなわかりやすいことするか?罠の可能性もあるな...」
「ふむ...このままここで待ち構えていても、ワーウルフには逃げられてしまうだろう。しかし、追いかけようものなら大通りで戦闘が始まってしまう恐れがあるし、少し進んでは戦いに巻き込まれてしまい一向に距離を縮めることもできないはずだ。となると...二手に分かれるのが効率が良い...か?」
「二手に分かれるだと?出来るか...?」
「幸希はワーウルフを追ってくれ。魔力探知の結果を常に送りつけるからそれで追えるはずだ。私はここで向かってくる反応を迎え撃つ」
「そんなことせずとも湊が追う方が早くねぇか?」
「刺客はおそらく私の魔力を頼りにしてここまで迫ってきている。私が追えば追跡されるし、ワーウルフにも接近を気取られてしまう。だから、幸希が適任なんだ」
「なるほどな...だが、模倣の傷は距離的に使えないぞ。戦うなら魔力を取り込むことになるが、それで良いのか?」
「……仕方あるまい。必要ならば魔物の魔力を取り込むと良い。やり方は以前教えたな?」
「ああ」
「じゃあ行ってこい。ワーウルフをとっ捕まえるか、その場で仕留めてくるんだ。ここは任せてくれ」
「わかった...行ってくる」
幸希はそう言うと、地面を蹴って一瞬で最高速度に到達しそのまま町を駆けていった。
魔力探知で幸希の持つ魔物の魔力器官の魔力を探りあて、その位置を頼りにして幸希の頭にワーウルフの魔力探知の結果を送りつける。
「さて...来たか」
自然な装いで曲がり角を曲がってくる少女が来た。その少女は私のことを見ると、目の色を変えてこちらに手を向けてくる。
手を向けて魔法を発動するのは、子供相手に初めて魔法を教える際によーく教え込むためにやる方法だ。手を照準器として使い、意識が周りに振り回されやすい子供でも狙いを定めやすくするための方法である。魔法を教えたであろうワーウルフは意外と教え上手のようだな。それを刺客を育てるために使ったのは少々いただけないがな。
「それ、出来ることなら早めに忘れてしまったほうがいい。習慣付いてしまった魔法使いはいつまで経っても一人前にはなれんからな」
初めて魔法を使うのならそれでもいい。だが、この方法は発射方向が魔法を発動させる前からバレてしまうという致命的な問題がある。このままでは避けることが容易いため、手を無くしても狙った場所に魔法を撃てるようにして狙いがバレないようにしなければならないのだ。それが出来なければ一生半人前だな。
「やるならこのように...だ」
少女の手の向きから魔法の発射角を予想して放たれる前から回避し、すぐさま魔法を撃ち返す。当たればビリッと痺れて倒れ込む、そんな魔法だ。それを少女に目線をやることも無く放ったため、少女は回避行動を取る間も無く被弾した。膝から崩れ落ち、顔を地面に打ちつけそうになっていたので魔法をクッション代わりにすることで怪我を防ぐ。
「……魔丸のおかげとはいえ、魔法を習い実際に使ってみせた...魔力過剰症があるから無闇に取れる方法ではないが、案外魔法への認識を変えて魔法を取り戻すためには良い方法なのかもな...」
数秒かけて少女から魔力を抜き取り、魔丸を作った後に砕いて霧散させながら呟く。以前、クルイガの思想に対して異を唱えさせてもらったが、こうして魔法を使った実例を目の当たりにすると考えが揺らぐな...だが、やはり同意は必要だろう。多分この子供たちは洗脳を受けている。そこに正当な同意はない。無理矢理魔法を使わせたのでは魔法の復活はなし得ないだろう。
だが、その準備段階。魔法は魔物が使うものという認識を変えるためだけならば、魔力を与えて魔法を使わせてみるという一時的な手段も必要なのかもしれない。
「幸希の一件が終わったら、この子供たちを集めて魔法を教えるというのも良いかもしれんな...そのためにも、全員五体満足の状態で生かさなければな」
魔力の反応たちがどんどんこちらに近づいてくる。先程はあっという間に方が付いたが、複数人が同時に来たらそうはいかないだろうな...
けれど、将来私の教え子になるかもしれない者たちだ。手厚く歓迎してやるとしよう。
そんなことを考えながら、私は待ち構えるのだった。
「動かない魔力の反応はこの辺...か」
だいぶ長い距離を走り続けたため、休むために少しずつ速度を落として歩きへと移行させる。息を整えながら、湊の魔法によって頭の中に送り付けられてくる魔力探知の反応を確認する。
「ワーウルフ本人の反応なら助かるんだがな...」
罠であったり囮である可能性は大いにある。そもそも、この町の中にワーウルフがいるかどうかも分かっていないからな。もし違った場合は骨折り損になるわけだが、まぁなんにせよ確認しないことには始まらないな。
「多分俺は魔力探知には引っかかっていない...はずなんだよな。大丈夫かな...」
ワーウルフはフォルスの魔力を探るのに集中していて、魔物の魔力器官という小さな魔力反応は見落とすだろうと湊は予想していた。それが正しければ、おそらく実際に目の前に立つまで俺のことを気取られることはないだろう。
そして、俺を見たからといってすぐに逃げ出すこともないだろう。なぜなら、今の俺は湊からもらったローブを着ているからだ。以前戦った時にバッチリ顔を見られたものの、このローブを着ていれば、認識阻害によって俺がフォルスと一緒にいた男だとバレることはない。
誰が来たのかと思い、逃げるよりも前に警戒が出たところで瞬時に叩きのめしてしまえば、逃げられる前に捕まえることができるはずだ。
そのためにも、ここから先は順番を間違えてはいけない。全てを最適解で潜り抜けろ。一瞬で終わらせてやる...!
「……行くか」
魔力を吸い出したことによって中身が空になった魔物の魔力器官を放り捨てながら魔力反応のある路地裏へと入っていく。手のひらには、吸い出して固めた魔物の魔力の塊がある。これを飲み込めば即座に戦闘モードだ。心の中で覚悟を決め...それを外には一切見せずに平然と歩みを進める。
……いた。あの姿には見覚えがある。最初の町で出会ったワーウルフの人間態だ。
「……ん?」
ワーウルフが俺の方を見た。一瞬、ただの通りすがりの人間かと思ったことだろう。しかし、俺の持つ魔力器官の魔力を見たのか、その目に警戒心が宿った。
「お前...何者だ?」
ワーウルフが一歩後ずさった。その瞬間、俺は持っていた魔力の塊を飲み込んだ。
「魔丸服用者⁉︎誰の魔力だ...⁉︎」
そう言いながらワーウルフは走り出した。それを見ながら俺は手で魔法陣を描き、頭の中で別の魔法の呪文を唱え出す。
「あだっ...⁉︎」
呪文で発動した障壁が先に起動し、ワーウルフの進行方向を塞ぐ。移動距離を稼げていないため、移動距離に任意の係数を掛けた距離を転移するあの移動魔法はこれで使えなくなった。
「壁...⁉︎クソッ!」
舌打ちをしながらワーウルフがこちらを向くと、周囲に光の球が浮き出す。前に使っていた光線を放つ魔法だろう。
「無駄だ」
光線が放たれるよりも前に魔法陣が完成する。描いた魔法は魔法拡散。この世界では未だ見つかっていない、魔法を無効化する最強の魔法だ。
「なっ...⁉︎」
光線が掻き消えたことに驚愕の表情を隠せないワーウルフを尻目に、俺は脳内で呪文を紡いだ。
「報いを受けろ」
俺の手から閃光が放たれた。魔法を使えないワーウルフには避ける手段が無く、為す術もなく被弾した。頭を撃ち抜かれ、魔力器官を落としながら消滅していく。
「……呆気ねぇな...出来ることがわかっていて、対処する手段があるならこんなものか」
前に相対した時に模倣の傷を発動させていたため、ワーウルフが使える魔法は全て頭に入っていた。移動魔法を障壁で潰し、光線での攻撃は魔法拡散で完全に無効化してしまう...事前に組み立てた通りの戦闘ができたな。俺から二度も逃げ切れると思ったら大間違いだぜ。
「にしても、魔法拡散無法級の強さだな...」
聖杖世界だと魔法拡散はそこそこの魔法使いなら扱える程度のメジャーな魔法だった。魔物も使ってくることがあるため、対処する方法を常に持っている必要があることが半ば常識だった。実際に対処できるかどうかは別問題ではあるが、魔法を使えない状況を全員が念頭に置いていた。
しかし、この世界にはまだ魔法拡散は存在しない。魔法の対処は防御か避けるかの二択であり、打ち消すといった選択肢は存在せず、そんなことが起こるとは一切考えていない。そのため、実際に魔法が散らされたのを目撃した者はひどく混乱する。それは大きな隙であり、続けて放たれる閃光を避けることは叶わない。
……なんなら、閃光も無法級な強さかもな。閃光がこの世界でも同じ性質を持っているとするならば、魔力で出来たものはことごとく貫通してしまうため魔法による防御が意味をなさない。出会い頭に閃光を放つだけで、回避では無く防御を選んだ魔物は消し飛ぶことだろう。そして、回避を選んだのなら続けて魔法拡散を使って魔法を封じてしまえばそれで終わりだ。あまりにも強すぎる。
「聖杖世界って実はヤベー世界だったのかな...魔法を封じられて呆気なく死んだこいつを見ると、対処できるあの世界の人らが凄く見えてくるぜ...」
そう呟きながらワーウルフの魔力器官を拾い上げる。
「……よし、湊のとこ戻るか」
体内に残る魔力を全て放出しながら湊のいる場所まで戻る。
「……ん?なにこの感覚...」
ある程度近づいたところで、なんとなくこの道には入らないでおこうという思考が頭をよぎった。この先に湊がいるはずだが...なるほど、魔法で一般人を近寄らせないようにしているのか。目的を持ってそこに行こうとする刺客たちは無視して進むだろうが、ただの一般人は入ろうとしなくなる。そうして無意識の範疇で人を遠ざけて魔法をバレないようにしているのだろう。
「……うおっ、まだ戦ってる。ワーウルフに対して魔法拡散使ったし、フォルスと戦えという洗脳も解除されてないかなとか思ってたけど流石に無理か」
俺も無理矢理挿入される無意識に逆らって道を進むと、湊と子供が戦っている光景を目撃した。見た感じでは余裕そうに見えるが、一応湊に加勢しに行こう。
「そーっと...それっ!」
横から子供に飛びかかって腕を掴み、足を払って地面に組み伏せる。そして子供の中にあるワーウルフの魔力を、魔力器官から魔力を抜き取る要領で抜き出せば...!
「ほいっと無力化完了」
「……驚いた。もう戻ってきていたのか」
「魔法拡散使えばあんな奴一瞬だったわ。そっちは?」
「ちょうど今ので最後の一人さ。眠らせて、記憶をほんの少しだけ弄ってしまえばそれで全て解決だ」
「そっか...意外とあっという間だったな。ワーウルフとはもっと長い付き合いになると思っていたよ」
「こんなこともあるさ。さぁ、次の町へ向かうぞ。今の目的はクルイガを探すことなのだから、これ以上ここに留まる意味はない」
「それもそうだな...行くか」
毎回のように劇的な結末を迎えるわけでは決してない。久しぶりにいい運動ができたなと、そんな感想を持ちながらこの町を去るのであった。
まさかの一話完結...!
まぁ聖杖世界の魔法が使えればこうなるのも無理ないですよね...