魔族殺し開始です。
「まさか、仕事のうちに入ってたとはな...」
議員になりすましている魔族がパーティーを開くということをアンスに話したのだが、どうやらドンカラもそのパーティーに招かれていたということが判明した。この町で商業を営んでいるところにはどこも招待状が届いているらしく、一つの店につき一人出席できるらしい。誰が行くのかまだ決めかねていたようで、その枠に俺を入れてくれることになった。これで潜入のことは考えなくて良くなったわけだ。
「そこが問題なくなったとなると、問題はどうやって残りの二人を殺すかか...」
ぐるっとこの町を巡る移動販売が終わり、今は事務所で休憩をしているところだ。新人ということと、魔族殺しの件も考慮してくれたおかげで休憩時間はかなり多めにとってもらえている。次の仕事の時間までに一人ぐらいはなんとかしておきたいところだ。
「……とりあえず、拷問されてる方に行くか」
保安検査官をしていた魔族は、今この町の拘置所の奥底に捕らえられており、情報を引き出すために拷問を受けているらしい。ここであれこれ考えて時間を浪費するくらいなら、居場所がわかっているところに行ってしまおうというわけだ。
ドンカラの事務所を出て、その足で拘置所へと向かう。
「面会...とかは無理だよなぁ。どうやって魔族のところに向かおうか...」
拘置所に捕らえられている魔族を殺す上で、障害となるものがいくつかある。
一つは、そもそも中に入ることが難しいこと。犯罪者たちが勾留されているところまで、一般人である俺が足を踏み入れられるはずがない。魔族を捕らえるのに一役買ったとはいえ、中に入れるほどの功績では無いだろう。
もう一つの障壁、それはもし中に入れたとしても魔族を殺すのが難しいこと。俺が中に入って、出てきた後に確認したら魔族の死体がある...間違いなく俺が疑われるだろう。魔族殺しが罪になるのかはわからないが、なるにせよならないにせよ取り調べに時間がかかってしまうことは間違いない。そうしたらパーティーに出席することも、もう一人の魔族を探すことも難しくなってしまう。
それを避けるには、なんらかの形で俺が中に入ったことを知られずに潜入し、魔族を殺してそのまま出ることが最低限必要だ。誰も中に入っていないのに何故か魔族が死んでいる...そんな状況を作らなければならない。
「魔力銃を使うしかないか...」
当然、普通にやってもそんな状況を作ることは無理だろう。魔法の力を借りるしかないだろうな...姿を完全に消せるほどのものはなかったけど、たしか記憶を弄る魔法弾があったはずだ。他にも色々と使えそうな魔法弾はあるし、それでなんとかすることにしよう。
「そーいや、魔法拡散ってこの世界の能力を無効化できんのかな...?」
魔法拡散...聖杖世界の魔法を、魔力に分解し無効化してしまう魔法だ。もしこの世界の能力も無効化できたなら、対魔族戦で大いに役立つのだけれど...流石にこの世界の能力とは仕組みが違うから無理かな?この世界の能力を封じる首輪も、俺の能力は無効化できなかったしそれと似たような感じになりそうだ。
「まぁ一応後で試してみるか...っと、着いたな」
事前に拘置所の場所は聞いていたので、特に迷うことなくたどり着くことができた。さて、中に入るとしよう。
「へー中こんな感じなんだな」
初めて拘置所というものの中に入ったが、入ってすぐに受付ってあるものなのか?面会したい時はここで話を通したりするんだろうか...
「面会希望っすか?」
キョロキョロと拘置所の中を見渡していると、受付の若い男の人が声をかけてきた。
「まぁそんなところで...昨日捕えられてきた魔族いるでしょう?面会できたりはしないか?」
「……なんで魔族と面会なんてするんすか?」
「んあ?もしかして俺魔族だって疑われてる?」
「いやいやそんなまさか...記者かなんかだったりするんすか?」
「違う。上から聞いてたりしないか?その魔族を捕らえるのに一役買ったやつがいるって話。あれ自分でさ。ちょーっとお礼参りがしたいのと、あと俺がいた方が何か都合が良かったりするかなと思ってな」
「あーたしかにそんな話聞いたような気が...ん?でもたしかその人、左腕が折れてるって話じゃ...」
「そ、それは治療ができる人に頼んで治してもらったんだ。仕事しないといけないから、二軒目の病院で完璧に治したんだよ」
「そんなことまでして働かないといけないんすか相当ブラックっすね...ちょっと首輪の型番見せてもらえないっすか?本人か確認するんで」
へー型番なんて付いてたんだと思いながら俺は受付の男に首輪の型番とやらを見せつける。
「ちゃんと本人っすね...せっかく来てもらったところ悪いんすけど、面会は多分無理っすね。今軍の人が来てて、情報を聞き出してるところなんで」
軍の...人?いや、まさか...いやでもあり得るのか?
三人目の魔族は軍の中にいるとルミの話からわかっている。もし拷問している軍の人ってのが、その魔族だったら...魔族を逃してしまうか、もしくは拷問中の不運な事故という形で口封じをしてしまうかの二択だ。
ただの考えすぎならばそれで良いのだが...一応、早く確認しにいったほうがよさそうだ。
「ああでも、せっかく来てもらったんすから事情聴取もやっておきますか。ちょっと着いてきてもらっていいっすか?」
受付の男が奥へと消えていく...そして、俺から見て右奥の方にあった扉が開き、そこから受付の男が出てきた。
「こっちっす。担当の者を呼んでくるんで、先に部屋で待ってて欲しいっす」
そう言って受付の男が手招きしてきたので、その後ろについていき廊下を共に歩く。
「この奥って犯罪者がゴロゴロといるんですか?」
「そっすね。まぁ、刑務官の持つ鍵がないとその区画には行けないっすし、犯罪者どもはみんな首輪つけられてるからこの区画に入れば安全っすよ」
刑務官の鍵か...この人は持ってないだろうし、俺に事情聴取をしに来る人が持っていることを願うしかないか。
「それじゃあここで待っててほしいっす」
やってきたのは小さな小部屋だった。よく再現ドラマで見るような取り調べ室だな。ガラス一枚隔てた感じの部屋じゃないのは助かった。これなら鍵を奪えるだろう。
「自分は刑務官を呼んだら受付に戻ってるんで、終わったら一人で戻ってきてほしいっす。では〜」
そう言って受付の男は部屋を出て行った。あいつの記憶を誤魔化すのは全てが終わったあとだ。今やったら、待てど暮らせど誰もやってこなくなってしまう。最後に拘置所から出る時に記憶を消してしまおう。
「……監視カメラがないのは助かるな」
監視カメラの類があったら、記憶の消去だけでは俺の痕跡を消すことができなくなってしまう。監視カメラに代わる能力があったらもうお手上げだが、無いことを祈ろう。
「君が話にあった魔族と戦ったっていうドンカラの人か」
刑務官が中に入ってきた。
「はい、そうです」
「そうか。なら、いくつか質問を...ん?なんだそれ」
俺は予め作っておき机の下に隠していた魔力銃を刑務官に向けた。この世界に銃は存在しないから、取り出しても不審には思われるが即座に取り押さえられることはない。なんなら、何かしらの証拠品なのかと思ってくれたかもしれないな。
だから、無防備な刑務官に魔法弾を浴びせることができた。
「な...お前、なに、を...」
刑務官はバタンッと机に突っ伏した。魔法弾を受けて、眠りについたのだ。
「よし、あとは鍵を拝借して、記憶も一応消しておくか」
ガサゴソと物色し、刑務官の持つ鍵を奪い取る。そして別の魔力銃を作り出し刑務官の俺に関する記憶を消去した。
「よし、これで奥まで入れるな」
流石に刑務官の服を奪い取るまではしなくていいだろう。どうせ服を着替えたところで顔を見られたらバレるだろうし、顔を隠しても首輪で一瞬でバレるからな。もし見つかったら即座に記憶を消すまでだ。
「……やってること完全に犯罪だなぁ...」
冷静になって考えてみると結構やばいことやってんだよな俺。もし捕まったらすぐに拘置所にぶち込めるから楽だなハッハッハ...そうならないように気をつけよう。
「たしか一番下にいるって話けど...ここか?」
おそらくここだろうという場所に辿り着いた。多分この鍵があれば中に入れるだろうけど...中から話し声のようなものが聞こえる。一応声をかけてから中に入るとしよう。
「すみませーん」
数回ノックをしてから扉越しに声をかける。
「っ...⁉︎一人でやるから拷問中は誰も近づかせるなと言っておいたはずだが、何の用だ!」
慌てたような声が中から帰ってきた。これは...だいぶ怪しいな。ここはうまく取り繕って...
「先程、魔族と一悶着あった男が訪れまして、自分には魔族を見分けることができると申し上げておりました」
「魔族を見分ける...だと?それはそういう力を持っているということか?」
「いえ、どうも第三の目以外に魔族を見分ける特徴があるらしく、服の上の見えている場所を見れば魔族かどうかわかるそうです。その証言の確認を取りに参りました」
「……そんなもの、後でにしろ」
「その男が言うには、生きている魔族にしか現れないそうで、不慮の事故で死んでしまうことがある以上早めに確認をと思いまして」
「……ならば、しばし待て。見るに堪えないこの惨状を一刑務官には見せられん。少し整理する」
声の主はそう言うと、部屋の中からドタバタと慌ただしい音が聞こえてきた。声も少し聞こえるが...足音もそうだ、どう考えても二人分の音がしている。
さっき、声の主はこう言っていた。一人で拷問をやる...と。つまり、二人で拷問をしているわけではない。ならば、もう一人は誰なのか...もちろん拷問対象の魔族なのだろうが、拷問対象がこんな自由に動き回れるはずがない。二人分の足音はとても不自然だ。
となると、やはり拷問をしに来た軍の人とやらは魔族で、捕まった魔族を逃そうと拘束を解いたところに俺が来たため急いで拘束し直している...といったところか。
それなら先手必勝だ。ここまで来れる人は刑務官しかいないから、扉を開けた瞬間に攻撃されることはないはず。この服を見られ、刑務官ではないとバレる前に決着をつけてしまおう。
「……よし、入っていいぞ」
「では、失礼する」
両手に能力で作り出した拳銃を持ち、すぐに二人を狙えるようにしながら扉を開ける。
服を見られる前に、開いた扉の隙間から頭を出して中にいる二人を視認する。
……確定だ。椅子に手足を縛り付けられている男も、軍服のようなものを身につけている男も両方魔族だ。一瞬でカタをつける...!
「なっ、お前は...⁉︎」
って、拘束はされてるけど目隠しされてねぇのか⁉︎口塞いでないのは拷問だからいいとしても、視界を塞いでないってマジかよ!マズイ顔を見られた刑務官じゃないってアイツにバレた!
「ビート!そいt
魔族が言い終わる前に扉を蹴って中に押し入り、魔族たちに銃弾をぶっ放した。眉間に風穴が開き、魔族は沈黙する...一人は。
「……なんなんだ貴様は...刑務官じゃないようだが」
「逸された...だと?」
拘束されていた魔族は眉間を打ち抜いたため完全に死亡しているだろう。だが、もう一人は無傷だった。銃弾が逸されてしまったのだ。
「なるほど、貴様が...そして、魔族を見分けられるという話も本当らしい」
「……考える暇も与えずに殺すつもりだったんだが、仕方ない」
俺は後ろ手で扉の鍵を閉める。これですぐには逃げられまい。
「魔族は死んでもらおうか」
「死ぬのは貴様だ。俺に楯突いたこと、後悔させてやる!」
魔族の手がこちらに向けて伸ばされ、俺に触れてこようとする。とりあえず触れるのはまずそうだ。横っ飛びで躱し、魔族の頭めがけて拳銃を撃つ...が、全て逸らされてしまう。
「それが何かは知らんが、俺には効かん!」
なんの能力かはわからないが、能力で銃弾を逸らしているのは確定だろう。その能力の秘密を暴くか、それともゴリ押すか...まずはゴリ押す!
弾を打ち尽くした拳銃を消し、短機関銃を生み出す。連射してどれだけ逸らせるのか試してやる!
「貴様首輪があるのに力を...⁉︎」
「サクッと死に去らせ!」
ストックを肩に当て、短機関銃をぶっ放す。ものの一、二秒で弾は打ち尽くされ排出された薬莢が地面に散らばる。
「誰が死ぬって...?」
だが、それでも弾は一つも魔族に掠ることなく全て逸されてしまった。この感じだと銃弾はどれだけ数を撃っても逸らされちまうか...?
「誰が死ぬかよ!オイ!!」
魔族は既に息絶えている魔族の頭をガシリと掴んだ。
次の瞬間、グルンと首が回転して捩じ切れ、胴体と分離してしまう。そして魔族は異常なほどに回転した頭をこちらに投げつけてきた。
「回転能力...!って軌道が⁉︎」
飛んできた頭を回避したのだが、突然野球の変化球のように軌道が変わり俺を追いかけてきた。即座に俺は拳銃を生み出して飛んでくる頭を撃ち抜いた。さらに多くの穴が空いたことで空気の流れが乱れたのか、軌道がさらにズレて俺の真後ろの壁に叩きつけられた。グチャリと潰れて血肉が飛び散り壁を赤黒く染める。
「テメェの能力、物体の回転と回転物の軌道操作ってところか。なおさら触れさせるわけにはいかなくなったな!」
触れたらその部位を回転させられて捩じ切られてしまう。触れられないように遠距離から攻撃して無力化しよう。
「ああその通りだ!ゆえに貴様のその珍妙な武器も通用しない!」
銃弾は回転している。そのため魔族の支配下に置かれてしまう。だからいくら撃っても逸されてしまったのだ。奴を仕留めるには、回転していない弾を撃つしかない。だが、魔力銃で撃った弾丸は皆全て回転してしまっている。ただの魔力弾も、どの魔法弾も例外はない。
つまり、能力じゃ...銃じゃ攻撃できない...?いや、一つだけ方法はある。だが、あれは当てるのが難しい。必ず当てられるタイミングで撃つ必要がある。
「まずは...!」
魔力銃を生み出し、地面に向けて発射する。地面がカチンコチンに凍りつき、こちらに向けて手を伸ばしてきていた魔族の足を滑らせる。
「銃がダメなら...!」
銃剣を生み出し、転んだ魔族の背中に突き刺す。
「アグゥッ!...かかったな!」
「んなっ...⁉︎」
銃を握っていた手が急に回転し始めた。それに引っ張られる形で腕や肩も回転し、折れてしまわないように自分の身体が勝手に動いて上へと跳ね上げられてしまった。
「これで貴様は終わりだ!!」
上へと跳ね上げられた俺は、地面に着地するまで自由に身動きすることはできない。そこを狙い、魔族は落ちてくる俺に向けて手を伸ばしてきた。
アレに触れたら一巻の終わりだ。かといって適当に銃を生成して間に噛ませようとしても、魔族は触れたものに触れているものも回転させることができるためその行為は無駄だ。防御策は一つもない。
ならば、攻撃あるのみだ。
俺は一つの拳銃をその手に生み出した。
「その武器は通用しねぇと何度言ったらわかるんだ?諦めて死ぬがいい!!」
この形状の武器から放たれる攻撃は簡単に逸らせる。そう思っている魔族は銃を気にも止めずに手を此方に伸ばす。
パンッ!
引き金を引くと、乾いた音が拳銃から鳴った。
「……なん...だ、と...」
魔族の喉に風穴が開いた。声と血と空気がそこから漏れ出していた。
「油断したねぇお前!」
撃たれて後ろに倒れ込む魔族を蹴って落下の勢いを殺し着地する。足がついた瞬間に回転させられないかだけ心配だったが、もう能力も使えないようだ。
「ガフッ...」
「もう声も出せねぇみたいだな...お前の考えてることはどうせアレだろ?なんで銃弾を逸らせなかったのか、だろ?懇切丁寧に教えてやるよ」
持っている銃を消し、再度同じものを生み出す。これで再装填の手間を省く。
「これはな、試作品で失敗作なんだ。だから、他の銃とは違って銃弾が回転していない。そのせいで超至近距離じゃねぇと当たらないが、油断してくれて助かったぜ。あのタイミングじゃなきゃ当てられなかった」
そう、この銃は聖杖世界にて作られた銃の試作品だ。俺がまだ何も干渉していない時に聖杖世界の鍛冶師が自力で作り上げた代物であり、ライフリングが存在していなかったため銃弾が回転しないまま射出されるのだ。この魔族にとっては天敵とも言える武器だろうな。
「じゃあな魔族。お前に恨みはないが、そういう仕事なんでな。世界のために死んでくれ」
心臓付近にもう一発銃弾をぶち込んだ。ここまでやれば流石に息絶えただろう。
「あとは、一応こいつの服を剥ぎ取って第三の目を分かりやすく見えるようにしておいて...」
銃剣を生成して剣を抜き取り、魔族の軍服を切り裂いて第三の目を表に見えるようにしておく。
「よし!状況は不自然だが、まぁ別にいいだろ!」
魔族が二人で仲良く死んでいるのは不自然極まりない。死に至った致命傷が同じ形状だから、なんらかの要因で仲違いし同士討ち...ってシナリオも作れないだろうな。第三者の介入は絶対疑われてしまうだろう。念入りに記憶を消去しないとな。
「……よし、ずらかるか」
扉の鍵を開け...ん?
「開かないっつーか鍵壊れてる?...うわっ、ドアノブ取れた」
ねじ切れてやがる...もしかして、魔族が俺を出さないために鍵を壊した?こりゃ面倒な...
「扉壊すしかない...よな。海外の警察がやってるやり方で...」
散弾銃を生み出し、ドアハンドルとドアフレームの間に突きつける。斜め45度下方向に向けて...撃つ!
「よっしゃやりぃ!意外と行けるもんだねぇ...」
壊れた扉を押し、部屋の外に出る。内開きだったら詰んでたから外開きで助かったぜ...
「……そういや眠らせたあの人また起きてないよな...?ちょっと急ぐか」
駆け足気味に歩き、地上階へと向かう。
「そーいやあの人以外に刑務官っていないのか?全然見当たんないけど...」
まぁ、いたらいたで面倒なだけだからいないのは好都合なんだけど、もしかしてワンオペなのか?ちょっと可愛そう...
「それじゃあぐっすり寝れて良かったのかねぇ?」
地上階に出て、眠った刑務官がいる部屋まで戻ってきた。まだぐっすりだな。もうしばらくは起きないだろう。
「鍵を戻して...と。じゃあな、魔族死んでて混乱するだろうけど頑張ってくれ〜」
この部屋を後にして、受付の男がいるところまで向かう。用が済んだら一人で出て来ればいいって言ってたからこれでいいはず。んで、去り際に記憶を消してしまえばこれで完全犯罪成立だ...多分。
ガチャリと扉を開け、建物の入り口まで戻ってきた。もう少しかかるかと思ってたけど結構早かったっすねとか言いながら受付の男がこちらの方を向いてきて...その顔が真っ青に染まる。
「ど、どうしたんすかその血⁉︎」
「血?...あっ」
完っっ璧に忘れていた。聖杖世界の魔族は死んだら塵になるから特に気にしていなかったが、この世界の魔族は死んでも死体が残る。ということはつまり、飛び散った血もそのままってわけだ。魔族を殺した時の返り血がついちゃってたか...
「もしかしてあの人怒らせちゃったっすか⁉︎あの人喧嘩っ早いから...!」
「ああ、いや別に殴られたとかそんなんじゃ無いから安心してくれ。ただの返り血だから」
「返...え?」
「返り血だよ返り血。聞こえなかったか?」
「え...え?」
困惑し切っている受付の男に近づき、その頭に魔力銃を突きつける。
「わからないなら、全て忘れてしまえ」
引き金を引くと、ガクンッと男の頭が後ろに引っ張られたかのような動きをして、そのまま尻餅をついて倒れた。
「あいったた...あれ?今何が...」
立ち上がってもう一度俺のことを見るよりも前に、俺は拘置所の外に出た。
ミッションコンプリート。二人いたのはちと想定外だったが、二人の魔族を一度に殺すことに成功した。
これでこの町に残る魔族は、あと一人。
前々回ぶりの戦闘ですが、ちょっと薄味でしたね...でも、聖杖世界での出来事を活かした戦いにできたのは個人的に嬉しいと思ってたり。
この世界も聖杖世界みたいな名前もうそろそろ付けないとなぁ...