神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8131字。

魔力送信施設への潜入回です...が、既に前回から少し日が経ってます。


潜入調査せし魔法使い

「こことあそこ...近いところに二つ施設があるとは、探すのが楽で良いな」

 

湊は二方向を指差し、魔王へ魔力を送る施設の場所を示す。

 

「ここまでずっと同じ方向に魔力の反応があると思ってたら、近くにあったから方向が似通ってただけだったんだな...」

 

俺たちは魔力送信施設を探すために、三角測量と同じ方法を取ってきた。限定広域魔力探知では、ある程度の距離の外に対象の反応がある場合、ある程度の方角しか指し示してくれない。だが、異なる方向から再度探知をすることで方角の情報を会得し、二つの情報を組み合わせることで大体の居場所を探ることが出来る。そして大体の場所が分かれば、その地で探知をすることで正確な位置がわかるという寸法だ。

 

そうしてこれまで五つの送信施設を見つけてきた。魔力の反応からして、残りは二つ。その二つの魔力の反応は、二点から測った際の方角があらかた一致しており、なおかつその二点から距離が離れていたために可能性のある範囲が膨大になっていたので後回しにしていた。

 

そして、別方向から探知をかけて完全に位置を特定したら、まさかの二つが近場に設置されていたということがわかったわけだ。

 

「よーし、じゃあこれまで通り調査を始めますか」

 

「いや、待て」

 

いざ乗り込もうとしたその時、湊に止められる。

 

「ここまででかなりの時間を使ってしまった。チェルスの準備や、軍への情報提供、そして私たちの準備時間も必要なことを考えると、それぞれ順番に調べるのでは時間がカツカツになる恐れがある」

 

「そっか、残り時間はあと三日...その辺の準備も考えると、今日中には終わらせないとか。でも、順番にやらないならどうするよ」

 

「二手に別れよう。この距離なら離れても模倣の傷は余裕で接続状態を保てるはずだ」

 

「それしか手はないか...この傷でも届くよな?」

 

「それは幸希が一番わかっていることだろう。なぜ私に聞く」

 

「いやなんとなく...」

 

あれからずっと湊の手の甲には針で刺した傷が残っている。ほんの少しの穴...けれど、自然治癒が起こらないその傷が四日も開いていて常に魔力を引き出していたおかげで、だいぶ模倣の傷も強化されてきた。こんな程度の傷でも多くの魔力を引き出すことができるし、かなりの距離が離れていても問題なく魔法を使うことができる。

 

まぁ、まだ魔王との決戦の地から魔力送信施設のある場所まで届かせることは出来ないんだけどな。それに、傷が小さすぎて湊が他の場所の傷を治そうとした際にうっかり治してしまうこともあり...こっちは湊に頑張ってもらうしかないか。俺のせいじゃないな、うん。

 

「それじゃあ、私はあっちを調査しに行く。幸希は向こうを頼む」

 

「了解。テレパス使って、魔法使うタイミング上手くずらしていくぞ」

 

「了解した」

 

模倣の傷による魔力抽出が湊の魔法使用のタイミングと重なってしまうと、湊が使おうとしていた魔力を俺が使ってしまい魔法が不発になってしまうということが起こりかねないため、テレパスを利用して状況を常に確認できるようにしておくのだ。

 

「……ん?」

 

湊が施設へ向かっていくのを見届けていた俺は、とあることに気付く。

 

「テレパスで確認し合うの、魔王戦じゃ無理じゃね...?」

 

おそらく、魔王戦は前回と同じように宵闇の中で行われるはずだ。となると、魔力の雨によって見出されてしまうため、内にいる俺と外にいる湊では魔法による通信は出来ないことになる。ってことは、さっき言った事故が起こってしまっても不思議ではない。

 

「こればっかりは訓練するとかは無理だしな...」

 

どうしたものか...第六感で湊が魔法を使おうとしている瞬間を事前に察知することは出来ないしなぁ。魔力を使い始めた挙動を察知することはできるから、それに気付ければ後から発動させるのを止めることはできるけど、流石に同時に使おうとしてしまった時にはどうしようも無い。何か別の方法があれば...

 

「……そういや、最初は通信機使ってたな」

 

普通に電子機器に頼るのはアリだな。問題は、咄嗟に魔法を使うことになった場合に、思念ではなく声で伝えなければならないために伝達が遅れてしまうことだけど...何も連絡を取れないよりかはマシか。後で提案しておこう。

 

「とりあえず解決として...模倣の傷は流石に大丈夫だよな?」

 

おそらく、模倣の傷の魔力接続が魔力の雨によって切れることはないだろう。神様から与えられた能力はその世界の摂理を凌駕することが多い。魔法拡散下でも速度操作を使えたように、魔力の繋がりが無条件で切断されることはない...と思いたい。

 

「大丈夫だってことにしておこう。そんじゃ俺も行きますか」

 

魔力探知を発動し、反応がある方へ向かう。

 

「湊と同じ魔法を使えば問題ない...はず」

 

湊が魔法を発動させていくのを感じ取った俺は、湊が発動させた魔法をそのまま使う。気配の遮断、空気の屈折による透明化、音の遮断、熱放射の遮断、匂いの遮断などなど、ありとあらゆる魔法を行使してあらゆる痕跡を消していく。魔力的、物理的にも俺の存在が気取られることはないだろう。

 

唯一湊と違って魔力の痕跡の遮断はしていないが、俺自身は魔力を持っていないため魔力探知に引っかかることはないから問題はない。魔物の魔力器官も、この世界の次元収納でしまっているためその魔力が検知されることもない。今の俺は完全に透明人間だ。

 

「……あそこか」

 

魔力送信施設を発見する。これまでに見つけたものと同様にトーチカのような見た目をしている。トーチカの内部には地下へと続く穴があり、その奥に攫われた人がいるはずだ。

 

「魔物の数が多いな...やっぱり、ここにクルイガが居るで間違いなさそうだな」

 

これまでの調査ではまだクルイガを発見できていなかった。魔力の反応からしてこの施設にクルイガがいるのではないかと考えていたが、これまで以上に魔物の数が多くて厳重な警備体制が引かれていることから、ここに居るに違いないだろう。

 

「クルイガの魔力供給が一番多いから、ここを真っ先に断つことができれば戦いやすくなる...出来れば湊に攻略を担当してもらいたいな。となると、魔法使いがいてくれた方がありがたい...!」

 

そんなことを誰にも聞こえない声で呟きながらトーチカに近づく。監視の魔物は俺に気付くことはないものの、うろちょろと歩き回っているため不意に衝突してしまわないように細心の注意を払いながら進む。触れてしまえば流石に気付かれるからな。慎重に、慎重に...

 

「……よし、潜入完了」

 

トーチカの穴に体を滑り込ませて中に入る。扉はあるけど、開けたらバレるからな...魔物が開けた瞬間に滑り込むのもぶつかりそうで危険だし、こうする他なかった。湊みたく身体が小さくないから、一瞬引っかかって抜けなくなりそうだったけどギリギリセーフだ。

 

「さて...行くか初潜入」

 

これまでの潜入は役割分担をしていた。トーチカ内部は湊がやり、外の戦力調査は俺が担当していた。内部の様子は湊からある程度聞いてはいたけど、実際に潜るのは初めてなんだよな...なんだかワクワクしてきた。

 

「罠らしきものは無し...っと」

 

安全を確保してから穴に飛び込む。魔法で若干浮くことで着地時に生じる僅かな土煙も起こさずに降りる。

 

「……聞いてた通り、穴の中は外よりかは魔物が少ないな」

 

キョロキョロと見渡し、周囲の様子を目に焼き付ける。記憶の共有による情報共有を確実にするためだ。チェルスに情報提供する時のために手帳にメモも残すけれど、魔法で記憶を呼び覚ますことで鮮明に思い出すことが出来るから、後から書くことも考慮して今は大雑把に重要なところだけ書き込もう。

 

「道は前後に二つ...クルイガの魔力反応は前からか。じゃあ先に後ろを潰そう」

 

進路を後ろに決める...のだが、そこで違和感に気づく。

 

「あれ?暗く無い...?」

 

湊が言うには、穴の中は光が僅かに差し込む穴の周辺以外全て暗闇らしいのだが、前後に伸びている道を見ると燭台のような物が設置されていて明かりが灯されていた。ここだけ他と違う...?

 

『幸希、どこか様子が変だ。穴の内部に入ったのだが、これまでと違って明るい』

 

湊からテレパスが飛んでくる。

 

ああ、こっちもそうだ。

 

『そっちもか...これまでとは何かが違うのかもしれない。気をつけて調査をしてくれ。僅かな異変も見逃すな』

 

デフォルトの状態を直接見て知ってるわけじゃないから僅かな異変と言われてもなぁ...まぁ、全てを目に焼き付けておくよ。後で情報を擦り合わせていこう。

 

湊との通信を終え、俺は横道へと入っていく。

 

「……虫の魔物...目が無いな。熱か魔力で探知するタイプか?対策しておいて良かったぜ」

 

道を進んでいると魔物と鉢合わせする。しかし、熱放射を遮断しているため、ピット器官による熱源探知で俺を見つけることは出来ない。魔力探知も俺には無意味。俺の真横を素通りしていく魔物を横目に見ながら歩みを進める。

 

「にしても、なんで明るいんだ?魔物に光なんて要らないだろうに」

 

完全な暗闇である宵闇の中でも動けることからもわかるように、ほとんどの魔物は夜目が効く。いや、少し違うか。魔物は宵闇に魔法や閃光弾で光を灯したとしても一切怯まない。急に明るくなっても眩しがることなく行動し続ける。おそらく、魔物の目には明るさは関係なく、何か別のものを見て周囲を把握しているのだろう。魔力では無いだろうけど...精霊みたいなものだから、直接世界を見てるとか?

 

……って、魔物がどうやって世界を見ているかなんてことはどうでも良い。問題は、魔物は暗闇でも問題なく見れるのになぜ明かりが設置されているのかということだ。明るくないと困ることでもあるのか...?

 

「……魔法使いがいる?」

 

もしも、人間の魔法使いがここにいるとしたらどうだろう。当然だが、人間の目は完全な暗闇には適応できない。いくら瞳孔を広げようとも、光がないのだから見えるはずがない。だが、魔法使いならば暗視魔法を使い視界を確保することができる...が、暗視魔法が使えない、もしくは無駄に魔力を消費することを嫌って明かりを設置していると考えれば、一応説明はつく。

 

「警戒しなきゃか...」

 

カサカサと歩いている虫の魔物を避けながら道を進む。分かれ道があればしっかりメモを取り、穴の内部の地図を脳内にも手帳にも残していく。

 

「……こっちには魔物しか居ないな。戻って反対側を確認するか...」

 

こちら側の道は倉庫になっているようで、短い分かれ道が大量にあり、それぞれの道の奥に種類別に物資が置かれていた。といってもそのほとんどが食料であり、魔物たちの餌であるようだった。ちょくちょくすれ違う魔物は食事休憩を取りにここに来ているのだろう。

 

「こっち側を攻略する意味はあまりない...けど、本命を攻略中にこっちから来た魔物に背後から襲われるのも面倒だし、道は塞ぐように指示しておかないとな...」

 

穴の入り口付近まで歩きながらメモを残していく。こういった所感は記憶共有では渡せないからちゃんと書き記さなければならない。

 

『幸希、魔法使いを見つけた』

 

っと...やっぱり魔法使いがいたか。

 

『それも、以前出会った傀儡魔法の使い手だ。そのせいで、この施設を守っている魔物たちは軒並み強い者が集められているようだな。本人に戦闘能力が無いからなのだろうが...』

 

なるほどあいつか。まだ会えては無いが、こっちにも多分魔法使いがいるはずだからここかそっちのどちらかが湊、もう片方がチェルス担当になるだろうな。

 

『なるほど。そちらの魔法使いがどれほどの強さなのかによって変わるだろうから、見つけたら連絡を頼む』

 

りょーかい。

 

……っと、そう返事を返したその時だった。

 

コツッ、コツッ、と革靴で歩いたような足音が響いてきた。ここにいるのは虫の魔物だから、どう考えても魔物の足音じゃない。他の魔物がいると考えるよりも、魔法使いがこちらに近づいてきていると考えるのが自然...!

 

「うぃ〜疲れた疲れた」

 

そんなことを呟きながら男が一人道の向こう側から歩いてきた。

 

「一旦休憩っと」

 

ヒョイと無重力空間にいるかのような軽やかさで男は跳び上がると、穴の外に飛び出していく。

 

……いけるか?...やるか。

 

バレる危険性はあるものの、俺はここで勝負に出た。湊の魔法を駆使して、まず穴の向こう側を透視する。そして男が着地する足元に、物を引き寄せる魔法を使って魔物が食べた物の残骸を置いておけば...!

 

「おわっ⁉︎」

 

男は食べ残しの残骸を踏み抜き、足を滑らせてその場で転倒する。その瞬間に僅かに地面表面の砂を動かし、倒れ込んだ男の手のひらに擦り傷を与える。

 

模倣の傷の発動条件を満たした。だが、魔力を接続すれば僅かな違和感が男にも伝わってしまう。そのため、転んだ衝撃や擦り傷の痛みに意識が向いている僅か数瞬の間だけ魔力を繋ぎ、男がどんな魔法を使えるのかという情報だけ抜き取る...!

 

「いってぇな...誰だぁ?こんなとこに果物の皮なんか捨てた奴...後で見つけてとっちめてやる」

 

男はそれだけ言うと、魔法で擦り傷を治癒してからトーチカの外へと出ていった。

 

「……そこそこ抜き取れたな。湊、魔法使いが使える魔法の情報送るわ。強いかどうかは湊が判断してくれ」

 

テレパスで男が使えるらしき魔法を列挙して湊に送りつける。

 

『……ふむ、使える魔法の多さからして転生者である可能性が高いな。魔王軍の配下として育成するにしては要らない魔法を覚えすぎている』

 

転生者?なんで魔王軍に転生者が与する必要があるのやら...

 

『……この魔法の覚え方、どことなく私と似ているような...?私と同じ研究者なのだろうか』

 

んで、強いのか?

 

『強いかどうかはわからない。だが、少し興味がある。私がこちらを担当することにしよう』

 

りょーかい。それじゃっ、クルイガを探して調査終わりにするわ。

 

湊への連絡を終えた俺は男が出てきた道へと進む。クルイガの魔力探知を使って位置を特定し、脇道も全て探索して作られた部屋の位置関係などを記録していく。

 

こちら側はあの男が常駐しているためか、魔物が一匹もおらず、道がコンクリートで整備されていて扉付きの部屋まで造られていた。周りに誰もいないことを確認してから扉を開けて中に入ると、中には家具も設置されていた。とことん快適に過ごせるように整備されているな。反対側の何も整備されてない洞窟のような道とは大違いだ。

 

「ここが最後の部屋か...うん、反応的にもこの奥にいるで間違いなさそうだな」

 

扉を開けて部屋の中に入る。

 

「うわっ、何これ金庫みたい」

 

扉を開けた先の部屋はそこまで広くはなかった。そして目の前には巨大な金庫扉のようなものが設置されていた。金属板で阻まれたもう一つの部屋...この奥にクルイガが捕えられているようだ。

 

「これを突破しないといけないわけか...開ける方法はこれか?」

 

金庫扉の横に指紋認証機のようなものがあった。そしてその下にはダイヤル錠もあり、メモリに刻まれている数字は0から99まであった。何かは俺にはわからないが、ダイヤル錠の下にも何かあるし...

 

「指紋認証の電子的な鍵に、ダイヤルで物理的な鍵も付けて、さらには謎の装置で三重の施錠...それに加えて魔法でのセキュリティもついてるのか。厳重すぎだろ」

 

魔法で探知をかけると、金属の壁や金庫壁の中に魔法が仕込まれていることがわかった。魔法ですり抜けて通ろうものなら、攻撃されて弾き飛ばされると同時に罠を設置した魔法使いに連絡が飛ぶことだろう。

 

一番下のものは謎だが、多分魔力を検知してる...のかな?あの男の魔力を流し込まないと最後の鍵が開かないとか、そんなとこだろう。人間の手が入っているせいで、科学技術も魔法技術も使って施錠しているのがなかなかに面倒だ。

 

「指紋と魔力は頑張りゃどうにかなるかもしれないけど、ダイヤルだけはどうしようもないな。3回合わせるとしても100の三乗で百万通りあるわけだし、総当たりはほぼ無理。男から聞き出すか記憶を抜き取るしかない...となると、戦闘は避けられないか」

 

こういう古典的な鍵の方が魔法でどうこうすることができなくて厄介だな...いやまぁ、やりようによってはまほうで解決することができるのかもしれないが、俺にはその方法を思いつくことができなかった。

 

「出来れば目視してクルイガがちゃんといることと、無事な状態なのかどうかを確認したかったが...仕方ないか。離脱しよう」

 

男が戻ってくる前に部屋を出て、穴まで戻ってくる。透視をして上に男や魔物がいないことを確認して穴を抜け出し、トーチカの穴に身体をねじ込んで外に脱出する。

 

「よいしょ...先合流地点に向かってるぞ」

 

テレパスを使い湊に連絡をする。

 

『こちらも今離脱したところだ。外の見張りの数を改めて確認したら戻る』

 

っと、それ忘れてたな...湊が飛行魔法を発動させたのを確認してから俺も使い空を飛ぶ。

 

「……トーチカの周囲百メートルには遮蔽物無し。屋根の上に三体、地上にまばらに散らばって六十体ほどいるな。そんで、さっき出て行った魔法使いが一人...」

 

……ん?男がこっち見てる...?

 

「……どこの誰だか知らないが、遊んでないで持ち場に戻れ」

 

俺を見て言っているのか...⁉︎けど幸いなことに、俺を魔王軍傘下の魔法使いだと思い込んでいるようだ。さっさと逃げれば持ち場に戻っただけに見えるはず...!

 

「チッ、俺に手間かけさせんなよ」

 

急いでその場を離れると、男は一言そう言ってトーチカの中へと戻っていった。

 

「穴の中じゃバレなかったのに、なんで今はバレたんだ...?飛んでたから...?」

 

なぜバレたのかが分からず頭を悩ませながら合流場所に向かって飛行する。湊ならわかるのかな...

 

「……おっ、湊先着いてる。よっ...と」

 

諸々の偽装魔法を解除し、最後に飛行魔法も解除して湊の近くに着地する。

 

「湊ーなんか飛んでたら魔法使いにバレたんだけどなんでかわかる?」

 

「会うなりだいぶまずい報告をしてきたな」

 

「いや、バレたといってもそこにいることがバレただけで、魔王軍の魔法使いだと思われてて偵察してたことはバレてないんだよ。だからギリギリセーフだと思う」

 

「そ、そうか...それで、なぜバレたかだったか。おそらくだが、飛んでいたからではないかな」

 

「飛んでたから?」

 

「施設の周囲にいた魔物の中に、空を飛ぶことができる者はいたか?」

 

「いや、いなかった」

 

「なら、その施設に空から近づく者は誰一人いないわけだ。よって、上方向にのみ探知の魔法をかけておけば、仲間が通って反応してしまうといったことが起こらず、敵だけを探知することができる」

 

「なる...ほど?じゃあ地上から歩いて入る分にはいけるのか?」

 

「そうだろう。現に、幸希はバレずに潜入できただろう?」

 

「ホワイトリスト方式で探知魔法を全域に使えば良いのに...」

 

「魔力消費と生成の釣り合いが取れるラインがこれだったのだろう。襲撃に備えるには常に探知を発動させる必要があるが、魔力には限界がある。上方向のみの対象限定無し探知が出来る限界というわけだ」

 

「そっか、魔力が足りないんじゃしょうがないな...さて、情報共有するぞ」

 

「時間が惜しい。移動しながらやるぞ」

 

「移動って、工房にか?」

 

「いいや、違う。とにかく転移してからだ」

 

「お、おう...」

 

湊が作り出した転移魔法陣の中に入り、どこかへと転移する。

 

ぐにゃりと歪む視界、一瞬の浮遊感、着地と共にじんわりと景色が切り替わっていく。

 

「ここは...森?」

 

どうやら森の端に出てきたようだ。左を見れば鬱蒼とした森が広がっているが、右を見ると整備された道が伸びているのが見える。

 

「用があるのは森では無い。あそこにある施設だ」

 

「施設...なに?あれ」

 

「軍の駐屯地だ」

 

「軍?もう情報提供するのか?」

 

「それはまだだ。あそこには別の目的で行く。ひとまず...先程やったように姿を完全に消せ。潜入するぞ」

 

「潜入...?」

 

よくわからないが、湊の言う通りに姿を魔法で隠し、軍の駐屯地へと入っていくのだった...




もうそろそろ第三章も終わりが近づいているため、軍への潜入は描写しません。
次回になったら、何をしていたのかわかるはず...
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