神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8127字。

湊視点での戦闘です。


魔力奪いし魔法使い

「よくもまぁアイツらを痛ぶってくれたな」

 

幸希の情報から、空中から接近した際に引っかかってしまう探知魔法の存在と、そのおおよその高度は分かっていた。なので、探知に引っかからないギリギリの高さから魔法の砲撃を浴びせ、魔力送信施設の外を警護していた魔物は全て一撃で倒していた。

 

その後、しばらく待っても追加の魔物が出てこなかったため、残りは中で待ち構えているのだと考え送信施設の中に入ろうとしたその時、軽いぼやきを言いながら男が扉を開けて出てきたのだった。

 

「痛ぶってはないさ。全て一撃で葬ったからな」

 

「……それもそうだな。適当言ったな。そもそもアイツらが消えたところで何も思わねぇわ。だが...」

 

男の手に杖らしき物が現れた。だいぶ古典的な魔法使いのようだが、もしや私と同じくらいの世代だったりするのか...?

 

何はともあれ、先に攻撃させるわけにはいかない。これまで通り小声で幸希に魔法を使うことを宣言してから、幸希に教えてもらった閃光の魔法を放つ。

 

「俺に喧嘩を売るとは良い度胸してるじゃねぇか!」

 

っ、魔法で閃光を上に逸らされた⁉︎防御魔法だったら貫けたものを...!

 

「ブッ潰れろ!!」

 

男の魔法によって私の頭上に巨岩が生成され、重力に引かれて落下してくる。私は巨岩を閃光で撃ち抜...こうとしたがやめ、別の魔法を撃ち込み粉々に砕く。閃光は魔法でできたものをなんでも貫通してしまうため魔法を撃ち抜けないのを失念していた。勝手にピンチになってしまうところだったな、危ない危ない。

 

「……クソッ、恵まれてやがる...見るだけで心底ムカついてくるぜ...!」

 

「勝手にムカつかれても困るんだがな。ところでお前、転生者だろう。なぜ魔王軍に与している?」

 

「は?逆に聞くが、なんでテメェは入んねぇんだよ魔王軍。魔法を失った人類の相手してるよりも、魔王軍に入った方が魔法の研究出来んだろ。流石の大賢人フォルス様でもそこまで頭回んなかったかぁ?」

 

「……なるほど、ある意味で研究者らしいな」

 

たしかに魔法の研究が第一の魔法使いならば、このまま何も進展せず、なんなら迫害までされかねない人類を見限って魔王軍に入った方が、より魔法の研究が出来るだろうからこの道を選ぶのは当然なのかもしれない。

 

だが、誰しもがそうするわけではない。現に私は魔王軍についてはいない。その発想に至ることもなかった。どうにかして人類に魔法を取り戻させる方向で研究を続けようとしていた。私ではなくとも、おそらく多くの魔法使いがそうするだろう。異なる方法ではあるが、クルイガやチェルスがそうであったように。目の前の男が取った選択はある意味一番魔法使いらしくはあるが、人の道は確実に踏み外していると言えるだろう。

 

「だが、それだけの理由で人類を裏切るとは自分勝手と言わざるを得ないな。そして、魔法の研究が魔王軍につく理由なのだとしたらそこを退け。私の相棒が魔王を倒せば、魔王は人類と再び協定を結ぶ。人類に魔法を教えるという魔王の言質も取っている。お前がそこを退けば、結果的に今よりももっと良い環境で魔法の研究が出来るはずだ」

 

「うっるせぇ!さっきからゴチャゴチャ言ってるが俺を説き伏せようとしてるってか⁉︎恵まれた奴の言うことなんか聞くかよバーカ!」

 

男の持つ杖が一瞬光った。地面からイバラのようなものが生えてきて私の身体を絡め取ろうとしてくる。

 

「恵まれた何でも持ってる奴が上から目線で俺の生き方に口出ししてくんな!テメェは人類側についてもどうとでもなるんだろうが、俺はちげぇんだよ!魔物と一緒じゃねぇと俺はただの人以下...!俺の居場所は魔王軍なんだよ!」

 

イバラを飛行によって回避した私に向けてまだ罵声を浴びせてくる。

 

……何かがおかしい。この男が魔法を使う時、若干だが違和感が...

 

「なら別に、条約が結ばれた後も魔王軍に残れば良いだけの話だろう。ここで私の足止めをする理由は何一つない」

 

「別にテメェ以外だったら通してたさ!こんな場所の護衛なんて面倒な仕事ほっぽりだして研究してるさ!けど、来たのがテメェなら話は別だフォルス!」

 

……今の話が本当かはわからないが、チェルスにこちらを任せた方が良かったか...?というか、なぜ私をそこまで敵視しているんだ?もしや、前世で交流があり、何かが原因で恨まれているとか...?

 

「お前に何かしたつもりはないが、なぜそこまでして私を憎んでいるんだ?そもそもお前は誰だ。名乗ってみろ」

 

「テメェに名乗る名なんてねぇ!名もなき弱者によって死ぬが良い!フォルス!」

 

また杖が一瞬光ると、引火の槍らしきものが現れてこちらに向かって飛んできた。適当に物質生成の魔法を使って射出し炎の槍を迎撃すると、生成された物は炎に包まれて燃え尽きる。通常よりも火力が高い...威力が上がるようにカスタマイズされているようだな。

 

……やっぱり違和感がする。あの杖が一瞬光って魔法が使われた瞬間、何かがおかしいと思わされてしまう。杖によってそう思わされてしまっているだけなのか?それとも、ちゃんと気づけてない違和感の欠片を感じ取っているのか...?

 

「チッ、魔法で物作って受け止めるとか贅沢なことしやがって...!」

 

……今のが贅沢?引火の槍は適当に物をぶつけてその効力を失わせるのが定石だ。物質生成はたしかに魔力をそこそこ消費するが、ある程度の魔力を持っていれば贅沢といえるほどの消費では決して無い...

 

「……まさか...?」

 

魔力探知を発動させる。大雑把なものではなく、より正確に判別できるように精度を最大限まで上げる。

 

結果が出た。そして、違和感の正体に気づいた。

 

「お前...魔力がほぼない...のか?」

 

男が保有している魔力はとても微々たるものだった。そして、大量に魔力を抱えていたのは男が持っている杖であった。魔法を使うための魔力はこの杖から供給されていたのだ。僅かに感じていた違和感は、男自身の魔力が一切減っていないことを常時発動の魔力探知が捉えていたことによるものだったのだろう。

 

「っ...ああそうだよ!テメェの作った魔法使って転生したらこれだ!器は十分あんのに魔力がすっからかんだ!あん時のフォルスより酷い!これじゃ二度目の転生も不可能だ!」

 

男は大声でひたすら捲し立てる。

 

「それでも未来の魔法を見れるなら良いか...とか思ってたら人類は魔法を失ってるしよぉ!絶望だよ絶望!俺が転生した意味なんもねぇ!だからこそ!魔力の提供に魔法の研究のサポートまでしてくれる魔王軍は希望なんだ!全てを持ってるテメェに奪われてたまるかよ...!」

 

……そうか、この男は何もかも私とは違うのだな。転生して、最高の魔力の素養を持って生まれた私と何も持たずに生まれた男。人類が魔法を失ったことに絶望した男と、取り戻させると未来の希望を持った私。魔王に立ち向かうことで未来を得ようとした私と、魔王軍に与することで現在の幸せを選んだ男。

 

一歩間違えていればこうなっていたのかもしれないという、私の別の可能性を見せられた気分だ。

 

だからこそ...決して相容れることはないだろう。最高の身体を手に入れた...男に言わせれば恵まれている私の言葉は決して男に届くことはない。説得で引かせることは不可能。実力行使で打ち倒し、先に進む他ない。

 

「嫌がるかもしれないが、同情はしよう。だが、これは人類のため。人類の魔法のため。お前を倒し、クルイガを救って魔王を倒す!私の願いのために、お前には敗れてもらう!」

 

そう言い放って攻撃に転じようとしたその時だった。

 

周囲の動きを探知する魔法が頭上からの攻撃を検知した。男が魔法を使ったような素振りはなかったはず...っ、これは私の閃光⁉︎

 

「っ...!」

 

慌ててその場を飛び退いた。最初に男が上に逸らした閃光が戻ってきたのか...っと、どうやら男はここで畳み掛けようとしているようだ。杖がチカチカっと複数回光っていた。

 

それは、魔法の発動する合図...そのため防御魔法を展開しようとしたのだが、幸希が魔力を引っ張っていく最中だったため発動させることができなかった。容赦なく魔力を吸い取っていくな...!

 

「フォルス...お前を殺す!」

 

複数個の魔法が発動し、私の背後から迫ってくる。後ろを見ながら走り何の魔法なのか解析した私は、拳銃を抜き飛んでくる魔法に向けて銃弾を叩き込む。この魔法なら銃弾一つで軌道を逸らすことは簡単...!

 

「そんな逆恨み一つで殺されるのはごめんだな!」

 

地面を流動させ男の足を埋めて動きを封じる。そして閃光を撃ち込みながら男に向かって走る。

 

まずやるべきは杖の奪取。あの杖さえ奪ってしまえば、魔力源を失った男はほぼ全ての魔法を使えなくなる。そうなればほぼ確実に勝利できるだろう。

 

「……テメェ、他人に魔力を譲渡しているな?」

 

閃光を左右に逸らした男はそう呟いた。幸希との魔力接続を見破られた...?だが、それがバレたところで何かが起こるわけでもない。このまま接近して杖を奪う...!

 

「なら、俺にもくれよ!!」

 

杖が光り出す。今度は一瞬ではない。

 

「っ、私の魔力が...⁉︎」

 

私の魔力を無理矢理奪って杖に吸収している...⁉︎そうか、あの杖に溜め込まれた魔力は全て他の人間や魔物から奪ったもの!私の魔力を奪いながら魔法を使うための魔力も手に入れるだなんて...面倒極まりない!

 

「なおさら奪うしかない...!」

 

幸希の模倣の傷による魔力の抽出とは違い、あの杖による魔力吸収は全体から満遍なく魔力を奪っていく。そのため、一点から魔法に使用する魔力を捻出すれば魔法を使うことは可能だった。

 

だが、自分自身と幸希、そして男と三人分の魔力を供給し続けるのは、さしもの私の魔力生成量でも追いつかない。そもそも幸希が魔法拡散を使うたびに赤字だからな。よって、このままの状態が続けば私は魔力切れを起こしてしまう。魔王に知られることを防ぐために幸希にも教えていない隠し球はあるが、それを使うと魔力が繋がっている幸希にも伝わり、魔王にもバレる恐れがある。出来れば使わずに、短期決戦で杖を奪い取る...!

 

魔法を発動、身体能力を一斉強化し、一瞬でも早く杖に手を...っ⁉︎

 

「死ね」

 

男の手には銃。放たれた弾丸。このまま進めば間違いなく私の頭を貫く。左右への回避は間に合いそうに無い。だが減速し、振り上げた手で弾丸を掴み取れば...!

 

「弾けろ!」

 

掴み取った弾丸が爆発した。弾丸を掴んだ手が弾け飛び、周囲に肉片と骨と血液をばら撒く。

 

「ぐっ...!!」

 

脳に痛みが届く前に痛覚を遮断。そのまま即座に治癒魔法を...いや、あれではここまでの傷は治らない。魔力消費は激しいが、ここは幸希が使っていた逆行再生で...!

 

……よし治った!幸希に傷をつけさせた方の手が吹っ飛ばされなくて助かった!左手だったら幸希のつけた傷も治してしまって、魔力接続が途切れてしまうところだった。不幸中の幸い...!

 

「うっそだろ吹っ飛ばしたのに治せんのかよ...⁉︎」

 

「あぁ...こっちも驚いてるよ」

 

男が動揺している間に接近する。近づいてしまえば、自らも巻き込みかねない爆破の魔法が仕込まれた弾丸を放つことはしないだろう。そのまま杖へと手を伸ばし、柄の部分を掴み取る。

 

「破壊は...無理か。なら没収だ!」

 

魔法で杖を破壊しようと試みたが、溜め込まれた魔力が杖に刻まれている魔法陣に流れており物質保護の魔法が発動していたため破壊することは出来なかった。ならばと魔法で杖を握る男の手を切り裂き奪い取ろうとする。

 

「舐めんな...!なんでも魔力量で解決しやがって!!」

 

「あぐっ...!」

 

男は手を切り裂かれてもなお杖を離すことをせず、杖を握り締めたまま蹴りを私の腹に叩き込んできた。子供の握力では杖を握り続けることは出来ず、地面に転ばされる。

 

「今のテメェに魔法じゃ敵わねぇ。だが、テメェは子供だ!この体格差だけは覆らない...!」

 

っ、魔法の結界...?四方わずか二メートルの結界に閉じ込められてしまった。逃げ場を封じ、このまま子供と大人の体格差を活かして近接戦に持ち込む気か!

 

「くっ...」

 

相手の土俵にわざわざ留まる必要はない。魔力は惜しいが魔法拡散を使って背後の結界を散らし、結界の外に抜ける。

 

「なっ、魔法を無効化しやがった...⁉︎まただ、また魔力量で解決しやがって...!」

 

男は怒り心頭の様子でこちらに銃を撃ち込みながら破られた結界の外に出る。また何か魔法が込められていると困るので、飛んできた銃弾は全て真横に軌道を逸らして対処する。

 

「だが、流石の大賢人様もそろそろ底が見えてきたようだなぁ!」

 

やはり魔法拡散は多くの魔力を消費してしまうな。このままでは魔力切れを起こしかねない。なぜかさっきから幸希はあまり魔力を抜き取ってこないが、いざという時に足りなくなっては困る。魔力切れでも魔力接続は切れてしまうからな...

 

「底、か」

 

……仕方ない。奥の手を解放するしかないようだ。

 

「確かに底は見えてきたな。だが、私の魔力生成速度を舐めてもらっては困る」

 

そう言いながら私は、発動させていた魔法を解除していく。

 

「いくら早かろうが、テメェの魔力はもう...な、何が起こっている...⁉︎」

 

「何って、ただいつも通り魔力を作っているだけだが?」

 

「おかしいだろ!俺が魔力を吸い取ってるっていうのに、他者にも魔力を分け与えているというのに、なぜテメェの魔力は回復し続けているんだ!!」

 

「ただ、無駄を省いただけ。これが私の本来の速度さ」

 

この身体の魔力生成速度はあまりにも桁外れだ。私の膨大な量を蓄えられる器を持ってしても、すぐさま満杯になって溢れてしまうほどに。

 

だが、これまでの私は普通に魔力も減るし魔力切れ限界近くまで減ることもあった。リトライを使った後は特にな。それも本来ならば、数十秒もすれば満杯に戻るのが私の身体だった。

 

ではなぜ本来よりも魔力回復が遅かったのか。それは、周りにわからない形で魔力を魔法にして放出していたから。私が魔力過剰症を起こした者にやっていた対処法を、もっとデカい規模で常に行っていたのだ。その魔法を解除すれば、私の魔力回復は本来の速度に戻るというわけだ。

 

「さぁ、奪い尽くしてみろ。それが出来ないのなら、潔く負けを認めるが良い!」

 

溢れ出る魔力をそのまま周囲に放出させながら男に向かって走る。男は驚きによって反応が遅れて動き出しが遅れた。その隙に近づき、銃を構えようとする手を叩き飛ばしてそのまま突進する。

 

衝突の瞬間だけ私の背後から魔力を一点集中放射させることで爆発的な推進力を得て、なおかつ二重衝撃の魔法を使うことで子供の体格ながら男を吹き飛ばすことに成功する。

 

「ガハッ...!」

 

男は自分で作った結界の壁に背中から激突した。それを見た私は自分で開けた穴から再度結界内に侵入し、入ってきた穴を私の魔法で埋める。

 

「な、何を...」

 

「閉鎖空間を作ってくれたことに感謝しよう。おかげで、この選択肢を取ることができる」

 

本来ならば長い時間をかけて行わなければならない工程を、結界に囲まれてこの狭い空間で行うことと、私の圧倒的な速度での魔力生産と放出をもって、短時間でそれを成し遂げる。

 

「……あぐっ...!」

 

「……あ、そうか。お前自身の魔力は少ないのだったな。ではあまり意味はなかったか...」

 

私がやったのは、この狭い空間内を私の魔力で染め上げることだ。魔力を持つ魔法使いがその空間内に入ると、自身の魔力と反発を起こしてしまい苦痛に見舞われる...のだが、この男の魔力量が少なかったために反発があまり起こらず効果が薄かったようだ。

 

「チクショウ...俺のことを馬鹿にしてんのか!!」

 

「いやすまない。そのようなつもりはなかったのだが...」

 

男は激昂して魔法を発動させようとした。だが、この空間内では私は全てを認識できる。動こうとしたその予兆すらも感知できる。よって、動き出しは私の方が早い。

 

「ならば、これで終わりとしよう」

 

魔法拡散を使用した。男の全身を包むように展開されたその魔法は、男が発動させようとしていた魔法を散らし、完全に無効化してしまう。

 

「魔法が⁉︎...うぐっ!!」

 

私が拳を突き出すと、空気中の魔力がその威力を伝播させて男の腹を叩いた。圧倒的な量の魔力は物質に似た性質を持ち始める。突き出した拳が固体化した魔力を押し、男の元まで届いたのだ。

 

「ク、ソが...」

 

どさりと男は倒れ込んだ。杖が男の手から離れ、杖に蓄えられていた魔力が散っていく。奪われた魔力が戻ってくるわけではないのだな...一応この杖は預かっておこう。使うことはないかもしれないが、次元収納の中にでも入れておくとしよう。もしかしたらこれを幸希が使ってくれるかもしれないからな。まぁ使い方を知らないから使うことは無理だろうけど...

 

「さて、記憶やらなんやらを引き抜くとしよう」

 

気絶ではいつ起き上がってくるかわからないので、魔法を使い眠りにつかせてから記憶を読み取る。幸希が言うには指紋認証とダイヤル錠と魔力検知の三重の鍵があるようなので、指表面の型を魔法で取り、記憶を読み取ってダイヤル錠の番号を知り、魔力を無理矢理引き抜いて結晶にすることで持ち運びできるようにする。

 

「よし、これで問題ないはずだ」

 

男から鍵を抜き取った私は、解除していた数々の魔力浪費用魔法を発動させながら施設の扉を開けて穴の中へと入っていく。

 

「魔物がいると聞いていたが...なんだこれは。干からびている...?」

 

穴を降りると、魔物が地面に横たわっていた。まさしく虫の息といった様子だ。

 

「……なるほど、魔力を引き抜かれたのか」

 

魔物が干からびているのは男が杖によって魔力を奪い取ったからだろう。魔力を過剰に吸い取られれば、魔力によって身体を形成している魔物がこうなるのも仕方はない。だがまさか、杖の魔力が地下を警護していた魔物たちのものだとは思っていなかったな。

 

おそらく復活することはないだろうが起き上がってきても面倒なので魔法を撃ち込んで絶命させながらクルイガが捕らえられている場所へと向かう。

 

「この部屋か...さっさと鍵を解いてしまおう」

 

魔法であの男の指を再現して指紋認証を突破、続いてダイヤル錠を読み取った記憶の通りに回して突破、そして最後に抜き取った魔力を機械に押し当てて...

 

「よし、開いたな」

 

巨大な金庫扉がひとりでに開いていく。念のため扉部分や、それを超えた先の地面や壁などに魔法による罠がないことを確認してから扉をくぐる。

 

「見つけた...救いに来たぞ」

 

クルイガは透明な箱の中に収められていた。箱の中はクルイガの魔力が詰まっており、けれど溢れてはいないところを見るに下から魔力を抽出して魔王の元に送り出しているのだろう。

 

「ほら、さっさと目覚めろ」

 

箱を魔法で破壊し、クルイガを揺さぶる...が、目を覚ます様子はない。

 

「起きないな...出来れば早めにこの場を去りたいところなのだが...」

 

この場でやるべきことはもう終わらせたため、これ以上ここにいる今はない。チェルスのところに加勢しにいくか、サポートをするために魔王と戦っている幸希の元に戻るかしたいところなのだが...クルイガが目覚めないことにはどうにもできないな。まさかこの場に放置するわけにもいかない。

 

「……仕方ない、か。巻き込むことになるやもしれないが、こいつも連れてチェルスの加勢に向かうとしよう」

 

魔法でクルイガの身体を浮かす。置いていけないのなら、連れて出回るしか方法はない。となると幸希の方に向かうのは危険すぎるので論外だから、自ずと向かうべき道は限られてくるわけだ。

 

「よっ...と。周囲上空共に敵影無し」

 

クルイガを浮遊させながら魔力送信施設の外に出た私は、周囲を見渡して魔物の増援が来ていないことを確認する。

 

「チェルスの援護に行くとしよう」

 

飛行魔法を発動し、チェルスたちが攻略中の送信施設へと向かう。

 

一つずつ、魔王討伐のピースが揃っていく。あとは任せたぞ、幸希。私の力ならいくらでも分けてやる。だから、絶対に勝て...!




名前も明かされずに戦闘終了...少々トリッキーな相手ではありましたが、研究者で戦闘経験は浅いとはいえ湊の力があればあんなものです。

さて、次回はカリヤくん時点に戻して魔王戦の続きです。
魔王に魔法拡散を使われたカリヤくんは、いかにして突破するのか...乞うご期待!
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