魔王戦の続きです。
そういえば魔法拡散を使われたのに宵闇が明るいままなのおかしくね?と気付きまして...光源魔法が雲の近くで展開されていたために魔法拡散の領域に入っていない、もしくは魔王が勝負の場を整えるために明かりを設置してくれた、この二つのどっちかとして脳内補正をかけておいてください、お願いします。
では、本編どうぞ!
「っ...⁉︎」
魔王が魔法拡散を使ったことで魔法が使えなくなってしまっているが、素の身体能力によって泥沼の中魔王の攻撃をなんとか紙一重のところで避けていたその時だった。
少なくなっていた湊の魔力が急激に回復していくのを感じ取った。
「なぜ...?いや、理由はどうでもいい!」
今は使える魔力が増えたことの方が大事!こんだけ魔力があれば...あれが出来る!
「まずせめて武器を...!」
魔力を引き出し、魔法を発動させる。発動させたのは...魔法拡散だ。
「……む?」
魔王が異変に気づいたらしい。だが、どうやら魔法拡散の領域内に自身の魔法拡散を展開することで、その領域内でのみ自身の魔法を使えるようになることは知らないようで、即座に塗り潰してはこなかった。記憶の読み取りが甘いぜ...いや、この技を俺が使ったことはない。やっていたのはニアだ。だから俺から抜き取った記憶では知り得なかったのだろう。
「……よしっ!」
自らの魔法拡散の中で次元収納を発動し、次元の裂け目から武器を急いで取り出す。
「貴様、なぜ魔法を...ぐっ⁉︎」
魔王が困惑している間に銃弾を顔に当てて怯ませる。そして魔王が一瞬のけぞった隙をついて槍を取り出すと、それを持って泥沼の上を走る。
「オラァッ!!」
脚目がけて槍を振り回し、思い切り殴打する。身体強化が乗ってないからダメージはあまり期待出来ない...が、久しぶりに傷をつけられた...!
あと少し...!
「なるほど。自らの魔法拡散で上書きをすることで魔法の発動を可能としたのか。そのような技術が存在するとは...ますます面白い」
魔王は傷を癒しながら笑う。
「面白がってられんのも今のうちだぜ...!」
ヒットアンドアウェイで魔王から距離を取った瞬間に振り下ろされた魔王の剣を、槍を振り回して魔力を含んだ雨粒を叩き割り、その魔力を模倣の傷で無理矢理操ることで生み出した魔力の壁で防ぎながら俺は不敵な笑みを浮かべる。
「ははっ、やっぱ槍あった方が守りやすいわ!」
魔王の放ってくる攻撃を、全て槍や槍で叩き落とした雨粒の魔力で弾き飛ばす。槍を取り出すまでは、自力での回避や拳で雨を叩き割って魔力を引き出す必要があったから非常に面倒で尚且つ危険だった。やっぱ長物の武器って偉大だな!
「そんで攻撃は...!」
魔法拡散を発動し、魔王の腹に向けて線状の拡散領域を広げる。そして、その直径三十センチにも満たない領域からはみ出ないよう、正確に閃光を撃ち込む。
「はっ、タネさえ割れてしまえば再び塗りつぶすことも容易よ」
上書きした魔法拡散をさらに上から上書きされてしまい、閃光は魔王に届く前に消失する。
「上書き合戦になれば、貴様に勝利の芽はない。再誕の魔力もいずれ尽きるだろう。魔法は諦め、別の手で挑んでくるのだな」
別の手と言われても、物理攻撃の手段はもうあまりないからなぁ...
……一応、一撃必殺になり得る魔法は、あるにはある。魔法改竄だ。今貼られている魔王の魔法拡散に干渉し、魔法の対象を魔王自身に、そして効果を魔法の魔力への分解拡散から、魔力の魔法への合成集約へと反転させることで、魔王の体内の魔力が何かしらの魔法へ強制的に変化して内部から崩壊させることが可能だ...理論上は。
問題は、その二つの改竄を同時にやらなければならないことだ。対象の変化が先だと、魔法拡散の効果によって魔王の使った魔法拡散自体が散らされてしまう。
かといって効果の反転が先だと、俺が効果対象になった状態で反転が起こってしまう。俺の体内に魔力はないものの、模倣の傷で湊と繋がっている状態でやるのは何が起こるかわからないためあまりにもリスクがデカすぎる。それと、魔力の身体を持っている魔王がどのような影響を及ぼすのかもわからない。
よって、魔法拡散を改竄するならばまず対象を移し替え、魔法拡散が解除されてしまう前に効果の反転を行う必要がある。キネットサーマル戦でやった時は速度操作があったから容易にできたが、速度操作がない今行っても成功しないだろう。一時的な魔法拡散の解除はできるだろうが、また発動されるだけでほとんど意味はない。
……仕方ない。あともう少しでその時は来る。それまで物理で耐久だ。
「そいつぁいいこと聞いたぜ。アドバイスありがと...よ!」
魔王の攻撃を槍で弾き飛ばし、そのついでに吹き飛ばした雨粒の魔力を操る。魔力を空中に固定し、それを足場として一歩二歩と空中を駆け上がり、魔王の眼前に跳び上がる。
「セイッ!!」
落下の勢いそのままに槍を振り下ろし、魔王の頭を真上からぶん殴る。
「とぅっ!」
魔王の顔を蹴って魔王から距離を取る。
「チッ、やっぱ火力不足か」
刃が付いていないこの槍はほぼ鈍器としての運用しかできないため、有効なダメージをあまり与えることができなかった。仕方ない、ここは...削るか。
槍を中心にして魔法拡散を発動し上書きする。そして閃光を撃ち込んで槍の先端を消滅させ、無理矢理先端を尖らせる。
「さーて、次はどうしようか」
魔王が剣を振り上げているのを見ながら俺は呟く。どれだけ追い込まれていたとしても、俺のすべきことは決まっている。思考を回せ。発想力で相手を上回る...!
「まずはッ!」
槍を上方向で振り回して、雨粒を弾く。それを見た魔王は、剣を振り下ろしながらその軌道を斜めに逸らし、真横から切り飛ばそうとしてくる。真上は魔力の壁による防御が為されていると判断したからだろう。
だが、それはブラフ。実際には壁は作っていない。誘導によって真横から薙ぎ払うように振られた剣を跳躍によって避けると、剣の腹部分に乗って槍を突き刺しバランスを取る。
普通なら人一人の重みが乗った剣なんて支えてられないだろうが、魔王なら普通に支えられてしまう。それを利用し、剣を振り切って動きが止まった瞬間に槍を抜いて剣の上を走り、剣を握る手に尖らせた槍の先端を深々と突き刺す。
「グゥッ...なかなかやるな!だが、この程度で殺せると思うなよ!」
もう片方の手で掴んでこようとしてきたので、槍を引き抜いて飛び退いて回避する。
「そりゃまだ殺せるとは思ってないさ」
ベチャッと泥沼の上に着地した俺は、不敵な笑みを浮かべながら言ってやる。
「けど、その時は必ず来る」
「ほう、ならば実現させてみろ!」
「ところで...魔法拡散なんて魔力の使う魔法、ずっと使ってて良いのか?魔力切れになっても知らないぜ?」
「何を言う。魔力切れなど起こるはずが...なっ、なんだと...⁉︎」
「気付いたみたいだなぁ?救わせてもらったぜ。お前が魔力源としていた奴らはよ」
「っ...なるほど、再誕の仕業か!」
「フォルスだけじゃないぜ。あいつ一人じゃ同時に攻略することなんて出来ないからな」
俺はそう言いながら槍で雨粒を弾き、空中に魔力の足場を作り出す。
「これで...お前の魔力は有限だ!」
足場を駆け上がり、魔王に向かって跳ぶ。そして、最初から持っていた拳銃を引き抜き、魔王に向ける。
引き金が引かれ、銃弾が放たれる。反応が僅かに遅れた魔王は防御魔法を発動させることができず、肩に弾丸を喰らってしまう。
「貰うぜお前の魔法...!模倣の傷発動!!」
今しがた作った傷で魔王の魔力と接続する。ここまで何度も細かい接続を繰り返したおかげで、もう魔王の魔法の情報量には適応済み。問題なく魔法行使が出来る!
「回復はさせねぇぜ!」
魔王が治癒魔法を使おうとしていたのを魔力の流れから察知した俺は、模倣の傷の魔法発動による魔力抽出によって治癒魔法に使われるはずだった魔力を奪い取り、治癒魔法を不発にする。
拉致被害者による魔力供給が行われていたときは、魔力を奪い取ろうにも新たに供給がされるために狙って奪うことができず、魔法の不発化が出来なかった。今も宵闇の雨の魔力供給はあるものの、先ほどまでの供給量と比べれば微々たるものだ。これくらいなら容易に奪い取れる。
そして、おそらく魔王はこれからする攻撃を想定していないはずだ。この攻撃は魔王の意識外の攻撃となり、必ず命中するだろう。
「なっ...なぜ魔法が...っ⁉︎」
魔王から奪った魔力を使い、光線を魔王に向けて放つ。魔王はそれを避けることができず、モロに喰らって皮膚が焼け焦げる。
「なぜ魔法拡散内なのに魔法を使えるのかって?そりゃ当然だろ。これはお前の魔力で発動させたお前の魔法なんだからな」
魔法拡散は、自己以外の魔力で練り上げられた魔法を魔力に分解する効果を持つ。自分の魔法は無効化されないわけだから、模倣の傷で魔王の魔法を発動させた場合は当然無効化されることはない。
魔法拡散による防御の一番の対策は、相手の魔法を利用することだ。聖杖世界ではその性質を利用し、次元収納に相手の魔法をしまい、解放して相手に打ち返すことで突破したことがある。ニアは分解した相手の魔力を使って魔法を発動させることで突破したりもしていたか。今俺がやったのはそれに近いな。
「お前の魔法なら、この場でも使える。結構いい魔法持ってるじゃないか。自分の魔法で殺されるってのも、また一興かもなぁ?」
治癒魔法の魔力を奪い取り、巨大な腕を空気中に作り出す。触れれば精神力や魔力といった力を奪い取られる、衝撃の剣の機能と一部似たような力を持った腕だ。それを魔王に向けて振るう。
「ただの猿真似で殺せると思うなよ...!」
魔王はその場を飛び退き、巨大な腕を回避する...が。
「なっ⁉︎」
魔王が着地した瞬間に魔法で泥沼と化した地面を一面凍り付かせる。これで身動きは封じたわけだ。
「くっ、魔力が...!」
魔王本来の魔力回復量もなかなかのもので、それに加えて宵闇の雨の魔力供給もあるものの、魔法拡散を発動させている状態で俺が攻撃のための魔力をどんどん引き出していると、流石の魔王も消耗していくらしい。魔力収支は赤で、どんどん魔力が減っていく。
「無駄な魔法拡散は解除...!」
「節約を考えるなら正解だ。けど、解くべきではなかったな」
確かに、俺が魔王の魔力を使って攻撃してくるのなら魔法拡散を発動させておく意味はないだろう。ただ魔力を浪費していくだけだからな。だが、俺が使えるのは魔王の魔法だけじゃないんだぜ?
湊の魔力を使い、巨大な閃光を放つ。それを見た魔王は防御魔法を展開しようとしていたが、無意味だとわかっているので魔力を奪い取らずに放置する。
その結果、防御魔法は完全な形で発動された。しかし、閃光は魔法による防御を全て貫通する...!
「ぐおおッ!!!」
「良いねぇ大ダメージだ!そして、治療できるとは思わないことだな!」
魔力を奪い取り治癒魔法を妨害する。魔王に付けた傷は一生治させやしない。かなりの魔力を使うのでさせてやってもいいが、模倣の傷の接続が途切れる方が困るので全て遮ってしまう。
「どっちを取る魔王!魔法拡散使って魔力切れを起こすか、それとも使わずにお前とフォルスの二つの魔法で殺されるか!せいぜい悩むことだ!」
なんてことを言いながら、魔物の魔力器官から魔力を引き出し、雷撃をチャージする。使える魔法は魔王と湊のものだけじゃない。魔法拡散さえ使われなければ、無数の魔法での攻撃が可能だ。
「さぁ!どうする!」
どうせ戦いはこれで終わりだ。全ての魔力を引き出してしまい、雷撃を溜め込む。魔王の魔法と湊の魔法も存分に使い、雷撃をさらに強化していく。
「おらよっ!!」
雷撃を魔王に向けて撃ち込む。脚を凍らされている魔王は身動きできないため、できる行動は二つに一つ。そのまま受けるか、魔法拡散で雷撃を分解するか...!
「……ハッ、そっちを選んだか!」
魔王は魔法拡散を発動させた。魔王に向けて飛来していた雷撃は瞬く間に魔力に分解され、魔王の魔法だけが残り少しばかりのダメージを刻んでいく。
「だが、判断が遅いな!!」
魔法拡散は魔法を魔力に分解する。魔物や湊の魔力がありったけ込められた魔法が、魔王のすぐそばで魔力に分解されたわけだ。となれば、当然...!
「あぐッ...⁉︎」
他者の魔力が占めた空間によって生じる魔力の反発。その苦痛が魔王を襲う。魔力の反発という概念のない聖杖世界では問題なかった、至近距離での魔法拡散による防御はこの世界...そうだな、再誕世界では自らに牙を剥いてしまう。やるならまだ魔法が近くにない状態で発動させなければならず、魔王の判断が遅れたためにこの事態を招いたわけだ。
「それで魔法解除しないのは流石だな」
魔王は魔力の反発の苦痛に苦しみながらも、魔法拡散は解除せずに発動し続けていた。そして自らの魔力を放出して他者の魔力を押し流し、反発現象から逃れる。
「けど、ゴリゴリ魔力削れてんねぇ!繋がってるから全部分かるんだぜ?」
魔法拡散の発動と魔力の押し流しに寄ってどんどん魔力は削れていっている。あれほどあった魔力ももう三分の一にも満たない。このままいけば...!
「魔王!お前はもう詰んでいる!」
魔王の魔法で身体強化をかけ、一瞬で魔王の前まで跳躍する。そして、湊の魔力を使って魔法の発動を試みる。
もちろん、魔法拡散によってその魔法は分解される。けれどそれでいい。至近距離での魔法発動によって先程と同様に魔力の反発を引き起こさせる...!ちょいと回りくどいやり方ではあるが、引き出した魔力を直接外に押し出すことはできないため、魔法拡散を利用する方法で魔力を撒き散らし魔王を苦しめる。
魔王の魔法は、魔力の反発と模倣の傷による魔力の奪取によってほぼ完全に封じ込められている。素の身体能力は脚を凍り付かせることで封じており、もはや魔王に打つ手はないはずだ。
「ぐっ...おおおっ!!」
「っ、脚を⁉︎」
魔王は剣で自らの脚を切り落とすと、地面を叩いて俺の元まで跳んできた。恐るべき執念...だが、その行為は自らの死をさらに早めるだけ!魔王の魔法を使って冷静に攻撃を防御し、空間を叩いて魔王を地面に叩きつける。
「余裕がなくなってきたなァ!勝利条件が変わってることに今更気付いたかァ?」
俺の勝利条件は、魔王を一度殺すこと。だが今は、本来なら不可能であった魔力切れという勝利条件を狙うことが出来るようになっている。魔王の魔力回復が追いついていない現状では、魔力切れは時間の問題。実質的に、魔王はタイムリミットを突きつけられているのだ。そしてこの傷だ、殺害による勝利も出血量からして時間の問題である。
本来受け手側であったはずの魔王は、能動的に俺を殺して模倣の傷を解除させなければ負けが確定する。俺は魔王の魔力と直結しているため、俺の魔力切れは魔王の勝ちにはなり得ない。
「時間切れで魔王!お前は負けるんだ!!」
「させるか!」
魔王は地面を転がって湊の魔力溜まりから離れると、飛行魔法を発動させて空から俺に近づこうとする。
「この魔王をここまで追い詰めた者は貴様が初めてだ!だが、そこが限度!」
剣を振り下ろしてくる魔王を見て、俺は攻撃用の光線魔法と防御魔法を発動...
「っ⁉︎」
させようとして、防御魔法だけ失敗した。
こいつ...この土壇場で俺と同じことをしやがった!俺が引き出そうとした魔力を、後から魔法を発動させることで横取りして俺の防御魔法を不発にしやがった!光線の魔法は魔王の治癒魔法用の魔力からぶんどったものだから発動できたが、使われてない魔力から防御魔法を引き出そうとしたがために防御魔法だけ不発...!
「貴様の負けだ!!」
魔王の身体を光線が貫くものの、殺すまでは至らない。逆に、魔王の振り下ろした剣が俺の身体を縦に引き裂く...!
「……ふっ」
痛みによって遠のきそうになる意識の中、俺は笑う。
「いいや、俺の勝ちだね」
治癒魔法用の魔力を主として、大量の魔力を引き出す。魔王は勝ちを確信していたために出遅れ、先程のように不発させることは出来なかった。
その結果、魔法が発動する。
「リトライだ!!」
時間が巻き戻る。俺が死ぬ前、魔王が地面に叩きつけられた辺りの時間まで戻ってくる。
そして、認知時間停止が始まる。だが、この止まった時間を認識できるのは俺だけだ。魔法を発動させたのも、巻き戻す対象も俺なのだから当然だ。
魔王はやはり、あの時点で詰んでいた。時間切れでも負け、殺されても負け、そして俺を殺してもリトライによって生き返る。対象は俺なため魔王の魔力がゼロになるわけではないものの、魔法発動による膨大な魔力消費は今の魔王の魔力では限界に近いはずだ。よって、魔王は魔力をゴッソリと減らされて魔力切れを起こす。
唯一ある勝ち筋としては、魔力を自ら減らし、リトライを発動させられないほどの魔力量の状態で俺を殺すことだった。だが、焦っていた魔王にはその発想は出てこないだろう。そして、魔王の魔力量は俺の模倣の傷の発動の匙加減によってある程度その減少量を操作できる。この勝ち筋は実質的に不可能だったと言えよう。
……さて、そろそろ時間停止が止まる。俺の計算が正しければ、魔王は魔法拡散による魔力消費で即座に魔力切れを起こすことだろう。そこに攻撃を仕掛ければ、俺の勝ちだ。
意識を全て魔法発動に集中させる。一撃で魔王を葬り去る...!
時間が、動き始めた。
「……なっ⁉︎」
リトライによる急激な魔力消費と魔法拡散による消費により、魔王は魔力切れを引き起こす。魔法拡散が解除され、模倣の傷による魔王との繋がりが絶たれたことからそれを確認した俺は、湊の魔力を使い頭上に壁を貼る。
これで雨を堰き止め、魔力回復を防ぐ。素の魔王の回復量では防御魔法すら貼れまい...!
「これで!!終わりだ!!!」
超巨大な閃光を撃ち込む。魔王は地面に仰向けになりながら閃光を見つめ...
「……貴様の勝ちだ」
一言そう告げて、閃光に飲み込まれた。
「……っ、はぁ...はぁ...」
集中しすぎて呼吸を忘れていたらしく、息切れを起こしてしまう。軽い眩暈の中、魔法でゆっくりと地面に降下していき、巻き上げられた土煙の中に入り込んで魔王のいた場所付近に降り立ち、全ての魔法を解除して身体を休める。
「あんま言いたかないが...やった...よな?」
「ああ、見事だ。よくぞ殺してみせた」
「っ⁉︎」
声のした方へ振り向き、突風を吹かせて土煙を払う。そこには...
「合格だ。約束通り、協定を再び結ぼうじゃないか」
男とも女ともつかない、容姿の人間が立っていた。
「にんげ...ん?」
「一度死んだことで神の力が解かれたようでね。人の身に戻ってしまったようだ。見ての通り、魔王の正体は人だ。神によって、魔物を統べて人と異なる存在として人を導く魔王としての役割を与えられた、天命の魔法使いヲル...これが正体さ」
「な、なるほど...?」
天命の魔法使いとか名乗ってたのはそういうことなのか...どことなく法術世界の人間と魔王・魔物の関係に近い...のか?
「出来ればこのことは口外しないように頼む。知られてしまうと、世界の運営に少しばかり支障が出てしまうからな」
「口外するつもりはないさ。目標達成したから、もうこの世界からおさらばするつもりだしね。別れの挨拶を言いたいし、湊が戻るまでは待機だけど」
「そうか、この世界を去るのか...ならば、再誕を呼ぶが良い。後のことは再誕と話をつけることとしよう」
「わかった。呼ぶわ」
通信機を使って湊に連絡を...
「あぐっ...!!??」
体内に激痛が走る。そして、身体中に異質な力が流れて全身を巡っていく感覚に襲われる。
「なん、で...魔王が...!」
おかしいだろ、宵闇の雨粒はカッパで全て弾いている。魔力は取り込んでいない。なのに、なぜ体内に魔力が溢れ出すんだ...!
「ま、さか...魔力を貯蓄して...⁉︎」
魔力の放出を試みるものの、それよりも前に俺の手が勝手に動き出した。既に体を乗っ取られている...⁉︎
「おい、ヲル...!宵闇を、晴らせ...!」
なんとか口を動かして声を出すものの、一歩遅かった。俺の手はカッパを掴んで脱ぎ捨てると、その直後体内の魔力が魔法を作り出す。宵闇の雲が縮小し、一点に集まり、ひたすら凝縮、収縮、圧縮...!
そして出来上がるは大量の魔力が一点に集められた氷の粒。それが空中から落下すると、勝手に開いた俺の口の中に入り込み...
大量の魔力によって俺の意識が押し流された。
「ふははははは!!!!」
大声で笑う魔王の声だけが木霊した。
ようやくカリヤくんらしい戦いが出来た気がします...
そして、カリヤくんが魔力を取り込んで聖杖世界の魔法を扱い湊に教えるその度にこっそり魔力を吸い取って力を蓄えていた魔王が、ついにカリヤくんの身体を乗っ取り復活!
次回、第三章 模倣の傷、最終回。