神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8645字。

今回ちょっと変な構成にしてみました。


傀儡勝負、霞がかる記憶

「潜入成功...っと」

 

簡単な手荷物検査を終え、パーティー会場の中に入ることができた。首輪を付けているから能力について聞かれることもなし。すんなりと入れて拍子抜けだ。

 

「政治家のパーティーだからもうちょい警戒されるかと思ってたけど、こんなもんなんだな」

 

ここに来たのはこの町の議員になりすましている魔族を殺すためだ。魔族を見分けることのできる少女、ルミの望みでもある。もうあの子のお父さんは戻ってこないけど、その無念を晴らしてやらなければ。

 

「能力はおそらく、フロートみたいな模倣能力か、変身能力の類だろうな。それで議員になりすましてるんだろ」

 

パーティー会場の壁に寄りかかりながら、情報の整理のためにボソボソと呟く。翻訳を切っているから周りの人に聞かれる心配はない。なんかボソボソ言ってる変な奴とは思われてそうだけど、それは鋼の心で無視する。

 

「これからもっと人が増えてくと考えると...人混みの中であの壇上に上がるであろう魔族を撃ち抜くのはちと難しそうだな。射線がねぇや...」

 

壇上とはいっても、体育館の壇上とかではなくお立ち台みたいなものだ。だから、そこまでの高さはない。高く銃を持ち上げるわけにはいかないし、人の肩越しに狙うのも難しいだろう。となると、普通の銃では無理だ。

 

「魔法で追尾性をつけて、上から狙うしか無いか」

 

第一プランはこれだな。俺には跳弾を狙う技術はないし、これが一番現実的だ。

 

「あとは...うん、色々回りながら細工するか」

 

パーティー会場の中を歩き回る。流石に壇上の近くには近づけそうにも無いので、客が立ち入れる場所だけを回る...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬、立ちくらみのようなものに襲われ、身体がぐらついた。おっとっととなんとか体勢を持ち直し、顔を上げる。

 

いつのまにか、周りに大勢の人がいた。ほんの一瞬前まで、まだ数人程度しか会場の中にはいなかったはずなのに、いつのまにこんな数に...⁉︎

 

しかも、なんか周りに倒れている人も大勢いるぞ。ほんと、何が起こった⁉︎

 

「……って、魔族⁉︎」

 

一般客の立ち入りができない場所の方にも大勢倒れているもんだから気になってそっちの方を見たら、そこには魔族が立っていた。その近くには黒い服を纏った、いわゆる護衛のような人たちも倒れている。そして、出入り口が軒並み凍らされていた。まさか、これら全部をあの魔族がやったのか...?

 

一瞬で人を増やしたかと思えば、大勢の人々が昏倒していて、扉も凍っている...とても一つの能力で、まして変身能力や姿の模倣などではこんなことはできないだろう。まさか、あの魔族はマルチなのか...?

 

「……そこの貴様。今、こちらを見てギョッとしたな?」

 

ま、魔族が俺のことを真っ直ぐ見ていた。さっきの声は翻訳能力を使わずに出た声だったから、魔族という単語が聞こえたわけではないはず...まさか、仕草でバレたのか?

 

「なるほど、貴様があの二人を殺した襲撃者か...どうやら、俺と同じ能力らしいな」

 

同じ能力...?なんの話かわからないが、今はそんなこと考えている余裕はない。すぐに撃ち抜いて殺すか、全力で誤魔化すしか道はない。

 

だが、今は人混みの中だ。射線がない。撃つにしてもこの人混みの中を抜ける必要がある。第一プランの銃を作ってもいいけど、それをここで作るくらいなら外に出て撃った方が早...え?

 

もう、銃を持ってる?しかも、第二プランとして考えていた魔力銃ももうなぜか懐にあるぞ?一体なんで...よくわからんが、好都合だ。これなら人混みの中でも撃ち抜ける...!

 

「操られても面倒だ。全員退出願おう」

 

魔族の声が周囲に響いた。

 

次の瞬間、俺の周りにいた人たちが一斉にはけて壁際まで寄っていった。残されたのは、俺と魔族のみ。

 

「……なんだと?首輪付き?」

 

俺の首輪を見て魔族が困惑している?...そうか、俺が能力を使えないと思い込んでいるのか!今この瞬間なら...!

 

「まさか、そういう反応をするようにあらかじめ仕込んで置いたのか?クソ、襲撃者はだいぶ狡猾なようだ...まぁ良い。それなら、首輪の付いていない者を片っ端から調べるのみ」

 

魔族が俺から目を離した⁉︎

 

「……ハハッ、何勘違いしてんのか知らねぇが...」

 

俺は、翻訳能力を使ってあの魔族に絶対に声を届かないようにしながら叫んだ。敵から目を離すマヌケへの勝利宣言だ。

 

「テメェはこれで終わりだ!!」

 

一発の弾丸が作り出されて拳銃から放たれた。その弾丸は綺麗に魔族の頭へと吸い込まれるように突き進み...その顎を貫いた。

 

立て続けに銃を撃ち、全身に風穴を開けていく。合計六発...全て撃ち切る頃には、もう魔族は動かなくなっていた。

 

「……偉くあっけなかったな...」

 

結局何が起こったのか分からずじまいのまま殺してしまった。

 

「あれはいったいなんだったん...⁉︎」

 

俺の頭に、何かが流れ込んできた。

 

……いや、違う。これは元からあったものだ。

 

いつのまにか霞がかかっていた記憶、それが解放されたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あとは...うん、色々回りながら細工するか」

 

パーティー会場の中を歩き回る。流石に壇上の近くには近づけそうにも無いので、客が立ち入れる場所だけを回る。

 

「ラウンドテーブルいっぱい並んでんなぁ...ここに料理でも乗せてくのかねぇ?」

 

こういう政治家のパーティーとか参加したことあるわけないし、この世界特有の文化とかもあるだろうから見て回ってもなんのこっちゃわからないな。

 

「つーか、なんで商人ばっか集めてんだろ?商売関係で何か発表があったりすんのか?」

 

魔族のことだ。何かしらよからぬことを考えていそうだ。巡り巡ってこの町にダメージがいくような、そんな政策を発表するなり、商人に対して根回しをしたりするんだろうな。

 

「まぁやることは変わんないけどよぉ...よし、細工は終了っと」

 

第二プランのための細工が終わったので、他のものより少し小さめの魔力銃を懐にしまう。消してしまうと細工も全て消えてしまうから普通にしまうしか無い。今ボディーチェックされたら軽く詰む。

 

「あとは...待つだけか」

 

またしても壁に寄りかかり、パーティーが始まるのを待つ。ハッキリ言って退屈な時間だ。一応翻訳能力で近くの人の話し声を盗み聞いたりはしているが、大した情報は得られそうに無い。ぶっつけ本番で行くしかないな。

 

「……」

 

えー...待つこと三十分。人がパーティー会場にごった返してザワザワと騒がしくなってきた頃だった。

 

二人の黒服を連れた男がスタッフサイドの扉から会場の中に入ってきた。おそらくあの二人は護衛なのだろう。そして、その護衛を引き連れている男は、紛れもなく魔族だった。

 

魔族が拍手で出迎えられている。みんなはアレが魔族だと知らないから、パーティーのホストに普通に拍手を送っているに過ぎないのだろう。今から全員に魔族だと解らせて、拍手を止めてしまおう。

 

俺は銃を取り出す。人混みの中に紛れ、腰の位置で上向きに銃を構え、機会を待つ。

 

タイミングは、魔族が壇上に上がって護衛の人が魔族から離れたタイミング...!

 

今!

 

引き金を引く。ちゃんとサプレッサーをつけていたので、破裂音は最小限だった。周りの人の拍手の音でかき消され、誰の耳にも届かなかったことだろう。

 

銃弾は斜め上へと飛んでいき、天井に達するかと思われた瞬間軌道が捻じ曲がる。そして銃弾は壇上にいる魔族の喉元目掛けて飛んでいき...

 

ガキンッ!と音を立てながら、空中で何かに衝突したかのように潰れた。

 

能力で防がれた...⁉︎アイツがマルチとかじゃなければ魔族の能力じゃないのは確実...護衛の能力か!

 

「全員その場から動くな!」

 

護衛が叫んだ。その瞬間、首から上だけ動かなくなってしまう。

 

あの護衛、やけに離れた場所にいるなとは思っていたが、魔族の乗っているお立ち台とは違う別の台に乗ってこちらの方を睨みつけていた。あの位置からだと、おそらくこの場にいる客全員の頭が見えるだろう。あの護衛の能力は、視界内のものの動きを止める力...といったところか。

 

護衛から見えない場所にあるものは普通に動かせるようなので、俺は手に持っていた銃を消した。それにより、先ほど撃った弾丸や排出された薬莢も消え去る。そのおかげで、もう一人の護衛に落ちている銃弾を拾われるのを防ぐことができた。

 

「消えた...今のは力による攻撃か!スタッフ!首輪のついていない者を調べろ!」

 

……とりあえず、首輪のついている俺に疑いの目が向けられることはなさそうだな。けど、このままじゃあの魔族は殺せない...おそらく、もう一人の護衛が魔族を守る壁のようなものを作っているのだろう。まずはアイツからなんとかしないと...

 

けど、どうやってあの護衛の能力を解除させる?前に試してみたけど、魔法拡散はやはりこの世界の能力には効果がなかった。魔法拡散以外の何かで能力を解除する必要がある。

 

仮になんとかして能力を解除させたとしても、もう一つの壁が立ちはだかる。それは、あの高台にいる護衛の能力だ。一度上に撃ち上げてから軌道を変えて狙うさっきの撃ち方では、弾丸が護衛の目に止まり、能力を使って弾丸を止める時間的猶予が生まれてしまう。こっちの能力も止めさせなければならない。

 

「第二プラン...!」

 

高台の護衛の死角にあるため動かせる右手を懐に潜り込ませ、しまっていた魔力銃に触れる。そして...あらかじめ撃ち込んでおいた魔法弾の効果を発動させた。

 

「なっ...何事だ⁉︎」

 

「煙...⁉︎火元はどこだ!」

 

火元なんてない。この会場の至る所に撃ち込んでおいた魔法弾から煙が出ているだけ。奴らにはこの煙を排除することはできない。

 

といっても、これはただの目眩し。吸い込んでも特に害はない...言ってしまえば、空気に色をつけているだけみたいなものだ。一般人含め皆酸欠で倒れるだなんてことは起こり得ない。

 

けれど...これで、視界は塞げた。

 

「よし、動ける...!」

 

高台の護衛の視界を塞げたので、全員にかけられていた静止の能力が解除され自由に動けるようになった。

 

そして、なんとも都合がいいことだろう。この煙の中でも、俺だけはどこまでも見通すことができる。そういう煙...としか言いようがなく、なんとも都合のいい魔法だが、自分にとって都合がいいのが魔法だろう?存分に力を振わせてもらおう。

 

「とりあえず...!」

 

一旦、実験で最初と同じように上に向けて銃を撃ってみる。放たれた弾丸は天井付近で軌道を変え、魔族に襲いかかるが...

 

「チッ、やっぱ無理か」

 

もう一人の護衛の能力は発動したままだ。このままだといくら撃っても魔族には届かないだろう。

 

「どうぞこちらへ...」

 

クソっ、護衛が魔族を会場の外に出そうとしてやがる...!

 

「させるかってんだ!」

 

煙に包まれて混乱している一般人たちを軽く押し退けて人混みの中を抜け、一番端にあった周りに誰もいないテーブルの上に乗る。乗っていた食器などが床に落ちて割れるが気にしない。魔力銃を作り出し、魔族が出ようとしている扉に向かって魔法弾を撃ち込む...!

 

「なっ、氷...⁉︎」

 

扉を完全に凍り付かせる。これでそうやすやすと外には出られまい。ついでに他の扉も凍り付かせ、他の逃げ道も塞いでしまう。

 

「謎の飛翔物に煙に氷...いったい何人いるんだ...!」

 

おっ、どうやら複数人による犯行だと思ってくれてるみたいだな。偶然だけど、そう思ってくれたおかげで第二プランが上手くいきそうだ。

 

俺は別の魔力銃を生み出し...それを一般人の方に向けた。

 

「利用させてもらうぜ。世界のために...魔族を襲え!」

 

ドシュドシュッ!と人々の頭に魔法弾が命中する。その弾丸に当たったものは皆、一瞬立ちくらみでも起こしたかのようによろけ...バッと一斉に魔族の方を見た。

 

「魔族を...」

 

「魔族を...」

 

「魔族を...!」

 

「殺せ!!」

 

複数人の声が重なり、会場内に響く。一斉に踏み出した足が床全体を揺らす。

 

魔法弾を受けた十数人が一斉に魔族の方へと走り出し、襲いかかる...!

 

「なんだお前ら⁉︎」

 

おっ、護衛一人で十数人を相手取ってるな。こりゃだいぶ手練れなようだな...

 

「能力を使え。まずはあの護衛を打ちのめせ。ただし殺すな」

 

小声で呟く。それだけで、洗脳状態の人々は俺の指示を得て行動に移す。

 

こんな洗脳魔法を魔力銃にした奴はどこのどいつなんだよ...絶対犯罪に使おうとしてんだろと思ってしまうが、せっかく作られたものなんだ。有効活用してやろうってことで使っている。

 

「……ってなぜ能力を使わない?...って、首輪付きじゃねぇか全員!」

 

だから能力持ち一人に勝てねぇんだ!能力も使えず、洗脳状態であるが故に本来の身体能力も発揮できない!そもそも誰かと戦うことすらしてこなかった奴らだ!そんな状態じゃ人数差なんて簡単にひっくり返せる!

 

「首輪の無い奴を...!」

 

魔法弾を放ち、首輪のついていないこの町の人を撃ち抜き一時的な傀儡とする。

 

「さぁ、奴を潰せ!」

 

撃たれた三人が人混みの中から抜け出し、護衛に飛びかかる。

 

あまりにも真っ直ぐすぎる攻撃。そのせいで狙われている場所が丸わかりだ。おそらくは空気を操って壁にでもしたのだろう。壁を貼られて簡単に防がれてしまう。

 

だが、壁に遮られても攻撃は止まなかった。壁に阻まれた男が、口を大きく開く。

 

会場全体を揺るがすほどの爆音が、男の口から放たれた。

 

「あぐっ...⁉︎」

 

空気の壁では、音...空気の振動を止めることはできなかった。護衛が両耳を塞ぎヨロヨロと後退りする。その間に女が、どこかのテーブルに置いてあったのだろうフォークを握って魔族に襲い掛かる。

 

「させ、るか...!」

 

魔族の喉に今にも突き刺さりそうだったフォークが、空気の壁に阻まれる。その瞬間、フォークの刃先から何か液体のようなものが飛び出していた。ただの水とかではなさそうだ。おそらくは、液体金属。フォークを突き刺した瞬間にフォークの一部を液体金属にして傷口に流し込もうとしたのだろう。防がれてしまったが、もし命中していれば相当なダメージ...というか、普通に死んでいたかもしれない。

 

「……なんで、あいつは見えてるんだ?」

 

この煙は護衛や魔族のところまで届いている。そして、この煙は自分の手元すら見えないほどの濃さである。傀儡となった人たちが自由に動けているのは、俺が視覚情報をある程度送っているから。つまり、その補助を受けていないあの護衛には、何も見えていないはずなんだ。なのに、この人数の襲撃を捌き切っているのは何故だ?

 

そんなことを考えている間にも、護衛は爆音を放てる男の頭に頭突きを叩き込んでから鳩尾に膝をめり込ませ昏倒、液体金属の女には足払いをかけて転倒させ、その背中に蹴りを叩き込んで無力化していた。

 

残る最後の一人も、放たれた右ストレートをすんでのところで回避しながら襟を掴み、地面に投げながら胸に肘をめり込ませて意識を奪っていた。

 

あの戦闘能力の高さにも突っ込みたいところだが、さっきから目が見えてないとおかしい事ばかり起こっている。どうして見えているんだ...?

 

……そうか、空気を操る能力!この煙は空気に色をつけただけのようなもの!自分の周りの煙を能力を使って分解して視界を確保したのか!俺には煙を認識することができないから、あそこだけ煙が晴れていることに気づけなかったんだ!

 

「けど、それなら...!」

 

煙が晴れているならやれる手がある。俺は魔力銃を、もう一人の護衛...高台の上で煙に覆われたために思うように動けないでいる静止の能力を持った護衛に向け、引き金を引いた。

 

「魔族と護衛を止めろ」

 

俺の視覚情報を得た護衛が高台から降り、煙のない視界の開けた場所へと向かう。

 

「お、おぉ!ようやく来てくれたか!お前の力でこの場を...⁉︎」

 

魔族と護衛の動きが止まる。

 

「お前...何を...⁉︎」

 

よし、これで護衛の動きを封じることができたな。首輪のついていない者のみを狙って魔法弾を撃ち込み、護衛を襲わせる。身体を動かせない護衛は能力で身を守るしかない。あの空気の壁を貫通して攻撃できる人がいれば話は早いが、もしいなくとも長時間能力を行使し続けるのは難しいだろう。時期に限界が来て倒れてくれるだろう。その時が来るまでひたすら待ち続ければ...!

 

「……全く、使えん護衛どもだ」

 

初めて、魔族が口を開いた。

 

次の瞬間だった。俺が差し向け襲わせた人たちが急にバタリと床に倒れ込んだ。

 

「お前、この煙を全て薙ぎ払え。さすれば、敵は見える」

 

「……できるが、それをしたら俺は動けなくなるぞ」

 

「やれ」

 

その言葉と共に、ガクンっと護衛の男の頭が揺れた。いつのまにか静止の能力を持った護衛は地面に伏しており、自由に動けるようになっていたらしい。

 

そして護衛は手をゆっくり前に突き出すと...その能力で全ての煙の色を取り除き、曇った視界を全て晴らしてしまった。護衛は鼻からたらーっと鼻血を垂らして地面に倒れ込む。

 

「……」

 

魔族は自身の手をズボンのポケットに突っ込み、会場内を見渡した。煙が晴れる前に急いで人ごみの中に紛れ込んだから、首輪もあるし怪しまれることはない...はず。

 

ってか、あの魔族の能力はなんなんだ?護衛に無理矢理命令を聞かせてたり、襲いかかった人たちを一瞬で無力化したり...どれも模倣とか変身では説明がつかない。元々ルミのお父さんがそんな能力を持っていたなら話は別だが、じゃあなおさらなんの能力なんだって話になる。

 

「まさか、俺が魔族だと知ってる奴が、この中に潜り込んでいたとな...」

 

……もしや、俺が使っていたのと同じ、記憶を操る力...⁉︎

 

「全員、この場で起こったことを全て忘れろ。その後も、俺が魔族だと知る者がいればそいつが襲撃者だ」

 

この場にいる者全員の頭が横にブレる。

 

記憶が塗り替えられる...そんな感覚の中、俺の意識は一瞬落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……全て、思い出した。魔族によって消されていた記憶が全て戻り、ようやく全ての疑問が解けた。

 

「魔族の能力は記憶操作だったのか...」

 

俺が魔力弾を使って洗脳した人たちが急に倒れたのは、魔族が能力を使い俺が植え付けた記憶を消し去ったからだろう。二つの記憶操作...能力と魔法の競合による負荷で倒れたんだろうな。

 

「……ってことは待てよ?ルミが言ってたのってもしかして...」

 

ルミは、突然お父さんの様子が変わり、その時から能力で魔族だとわかるようになったと言っていた。ルミとその話を聞いた俺は、てっきり魔族が変身系の能力を使って成り代わったのだと思っていたが、実際はこうだったのだ。

 

ルミやルミのお母さん、並びにこの町の人全員に、あたかも元々ルミのお父さんが魔族自身だったというふうに記憶を改竄したのだ。記憶の中のルミのお父さんを丸々自分の姿で塗りつぶした...ホームビデオの映像を改竄して人物を入れ替えたような感じだな。

 

そうやって魔族はルミのお父さんになりすましていたのだ。あくまで姿を書き換えただけだから性格面で記憶との齟齬が生じたし、ルミの能力には反応してしまう。けれど、それはあくまでイレギュラー。もしルミの能力がなければ、誰にも気づかれることなく魔族はその姿のまま人ん家に潜り込むことができたわけだ。

 

「……なるほど。俺と同じ能力って言ってたのもそういうことだったんだな」

 

記憶操作の魔法弾を使っていたおかげで、魔族は襲撃者の能力は自身と同じだと誤認した。そして、扉を凍らせたり煙を出したりといった事象も、この中にいる首輪無しの人を操って行ったことだと判断し、襲撃者本人は一人だと考えた。だからまず俺のことを疑ったし、首輪を見て能力を使えるわけがないと思ったから別にいるはずの真犯人を探そうとした...と。

 

「なんか、偶然が噛み合ってなんとか勝てたみたいな感じだな...ってかあいつの強さはなんなんだよそれが一番気になるわ」

 

あの護衛の強さは結局なんだったんだ?まさか、普通に強いだけ?魔族は軍との繋がりもあったし、そこから護衛として引き抜いたりしたのかな...

 

「……とりあえず、脱出するか」

 

みんなの記憶も戻ってきたのか、ザワザワと騒がしくなってきた。聞こえてきた話し声の内容から察するに、いつのまにか議員の姿が変わっていたのに今まで気づけなかったことに大層不思議がっているようだ。そこに倒れている人が大勢いるという事実も合わさり、会場内は完全にパニック状態だった。

 

俺は魔力銃を消し凍りついた扉を元に戻すと、その混乱に乗ずる形で会場の外へと出た。誰かに止められたら記憶を改竄してやり過ごすつもりだったが、特に問題なく脱出に成功する。

 

「ミッションコンプリート...ってね!」

 

魔族三体の討伐完了。残る魔族は...

 

「って、そういや神様、聞いてなかったんだけどこの世界に魔族ってどんだけいるんだ?」

 

歩いてドンカラの事務所に戻る道すがら、神様に質問する。

 

『二十人じゃな』

 

「……意外と少ないな?もう五分の一殺してんじゃん」

 

『そもそも同じような魂の変質が複数人に渡って起きていること自体奇跡なんじゃ。二十人でも多いくらいじゃな』

 

「あーそういうもんなのか。この世界結構広いし、めっちゃ時間かかるかと思ってたけど意外とかからなさそうだな...」

 

残りは十六人か...このペースだとあと一ヶ月もあれば終わるんじゃね?と思いながら、俺は事務所に戻るのだった。




せっかく能力を記憶操作にしたし、ちょっと起承転結をバラしてみよーと思いこんな構成にしてみましたが、なんかあまり上手くいかなかった...
下手なことはするもんじゃないと思いました。
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