攻め込む側なのに防衛戦をするという極めて不思議な戦いの開幕です。
「消火栓準備完了!」
「放て!!」
弐式との戦闘後、何度か下位個体のアンチとの戦いがあったものの無事に第五部隊は持ち場にたどり着いた。
今は、作戦通り近くにあった消火栓にホースを取り付け、放水の準備をしているところだった。もうすぐ放水出来るだろう。
消火栓のボタンが押され、地下の貯水槽から加圧送水ポンプにより水が供給されてホースから放射される。
放たれた水はアンチに直接ぶつける...ためのものではない。周囲の道や建物の壁などにあらかじめ水を撒き散らしておくことで、アンチの接近を防ぐための放水だ。俺たちの目的は鹿児島県庁にアンチが外から侵入されるのを防ぐこと。接近さえ防ぐことが出来れば、必ずしも倒す必要はないのだ。
よって、今この場で俺たちが扱う武器は、遠方にも水の弾丸を飛ばすことができる水鉄砲だ。近づいてくるアンチをこれで牽制し、近づかせない。接近されてもこれで撃ち抜いたり、装備の一つである水風船を投げつければ問題ない。
防衛戦だが、手で持つ盾は無い。今使う水鉄砲は両手で扱う類のものであり、ここに来るまでに装備していた盾は使えないからな。代わりに、地面に打ち込んで展開した大型の盾を遮蔽物として戦うことになる。これでアンチが遠くから飛ばしてくるハウリング攻撃を受け止めるのだ。
放水による接近の防止、水鉄砲による射撃でさらなる牽制と撃退、そして固定盾による防御...これがこの防衛戦を勝ち抜くための策だ。
「こんな放水一つでアンチの奴らを止めれんのか?」
「まぁ無理だろうな」
放水を見ていた古宇利の口から漏れたボヤキに口を出す。
「止められるのは地上を歩くアンチだけ。空を飛べるアンチは止められないな」
「放水の届かない高い壁を伝ってこられたり、建物の屋上を跳んで迫ってきたりもするかもね」
「マジか...ん?けどよ、それなら下位個体しか来れないんじゃね?人間にはそんなことできないだろ?」
「確かにそうだね。動物化している下位個体でなければ、空を飛んだりすることは出来ない」
「いや、そうとは限らないぞ。ハウリングがあれば上位個体だって...っと、まずは斥候が来たようだぜ」
空を飛べる鳥型のアンチが数種類飛来してくる。
「よーく狙えよ...撃ち落とせ!」
俺たちめがけて飛んでくるアンチに向けて引き金を向け、水の弾丸を放つ。
「っ、避け...オラァッ!」
急降下中にも関わらず水の弾丸を回避してきたアンチを蹴り飛ばし、地面に叩きつける。水浸しの地面に落ちたため即座に身体が溶けて死に至る。
「よくそんなこと出来るね...」
「こっち見てる場合か来てんぞ!」
「うわっと⁉︎」
延岡はなんとか飛んできたアンチを回避する。だが、流石に俺のようにはいかず反撃までは出来なかった。
「っ、ハウリング⁉︎」
アンチは延岡の目の前で対空すると、ハウリングを発動させた。翼を羽ばたかせることで暴風が巻き起こり、それによって延岡の身体が地面から離れ...
「えっ?」
延岡の身体が浮きかけた瞬間にアンチの身体が溶けた。
「……はは、自分で水巻き上げて死んでらぁ!」
「……本当なら俺、死んでいるな。運に助けられただけ...!」
「それがわかっているなら集中しな!次が来る!」
通信機からノイズが聞こえて来る。斜め上を見上げると、建物の屋上から虎のようなアンチが飛び出してきていた。おそらくアイツらがハウリングを発動させているのだろう。
だが、ここは避けるだけで良い。地面が水浸しなのは、先ほど水が巻き上げられたものの今も変わりはない。直接飛びかかられることさえ回避してしまえば、奴らは地面に着地してそのまま溶けるはずだ。
「よっ...っ、こいつ足場を...!」
アンチは地面スレスレのところで着地したような動作を取ると、そこにある見えない何かを蹴って飛び掛かってきた。発動させていたハウリングは、透明な足場を作るものか...!
「これでも喰らってろ...!」
俺は後ろに飛び退きながら水風船を取り出し、俺を喰らおうと大きく開けた口に投げつける。水風船はアンチの牙に触れて破裂し、撒き散らされた水によって顔が内側から溶け出して死に至る。
「クソッ、次から次へと...!」
地上からの接近は防いだものの、ハウリングであったり動物化による身体能力によって上からどんどんアンチがひっきりなしに攻め込んでくる。水の補給をする暇がないな...無駄撃ちはしないように気をつけないと物量で押されて終わる...!
「出来るなら濡れた地面に押しつけて...」
飛行する鳥のアンチの足に捕まって飛び掛かってきた猿のアンチを、上から銃で殴りつけて地面に叩き落とし殺す。
「残弾の温存...!」
続け様に襲い掛かってきた鳥のアンチの足を掴み取り、地面に投げつける。速度操作経験者特有の反射神経が成せる技であるために、周りから見たらわけわからん動きでアンチを仕留めているように見えるんだろうか...元一般人なのにどうしてそんなに動けるんだって悪目立ちするのは避けたいところではあるが、ここまでやらなきゃ普通にここで死にかねないから致し方なし...!
「ボルテージ上がってきた...!さっ、次!」
さっきの猿のアンチのように、移動手段の無いアンチを鳥型アンチたちがサポートして連れてくるようになってきたため、さらにアンチたちの攻撃は激化していっていた。協力してくるとはなんで厄介な...だが、戦いが激化していくうちに俺自身の戦闘スイッチがどんどん入っていく。仲間たちも自分を狙うアンチの撃退に精一杯で俺のことを見る余裕なんて無いだろうから、少々過激な戦闘も出来るだろう。周りの目は気にせず、攻撃に集中...!
「……って死んだ⁉︎」
鳥型アンチに運ばれてきた、雷による身体能力強化ハウリングを持つ犬のアンチが落下中に死に絶えて地面に激突していった。水浸しの地面に触れてそのまま溶けていく。
あのアンチを生み出した親個体、もしくはそのまた親である上位個体が死んだことでもろとも死を迎えたのだろう。各地で戦闘をしているから、どこかで上位個体を倒したら別の場所にいる下位個体が全滅するということは容易に起こりうることだ。逆に、こちらで殺したことで他の戦況が良くなることも考えられる。
攻め続けられているこの状況、キツくはあるけれども思っているよりかは苦しい盤面ではないのかもしれない。上位個体を殺せば一気に相手の数が減る、今は下位個体が主体となって襲いかかってきているからその恩恵をあまり感じられていないが、いずれ上位個体である弐式や参式が現れて来るだろう。そうしたらフィーバータイムだ。狩って狩って狩り尽くすのみ!
「コイツらじゃ力不足だぜ?さっさと弐式参式を連れてくるんだな!」
ハウリングを使ってくることが無くなってきた。ハウリングを使えない陸式や漆式をあるだけ送りつけることで、こちらの体力や物資切れを狙おうって魂胆だろう。ここまで戦術を組んで来るとは、アンチたちを指揮している親玉はかなりやり手だな...だが、こんなので削り切れると思ったら大間違い。人間を舐めすぎだ。
「……ハッ、とうとうおいでなすったか!」
人型のアンチが近くの建物の屋上に現れた。なんのハウリング持ちかは知らないが、上位個体はハウリングによって生じる通信機のノイズが一瞬しか起こらない。落ちてくる下位個体にも気を配りながら、上位個体の動きを注意深く観察する。初動を見逃せば、ハウリングによってはそのままこの距離からでも殺されかねない...!
「……あっ」
屋上のアンチの頭が、まるで殴られたかのようにぐらりと横にぶれた。
「無防備に立ってるから撃ち抜かれてやんの!」
葉山の狙撃がアンチの頭を撃ち抜いたのだろう。狙撃の精度があまりにも良すぎる...だが、今のでアンチに葉山の位置がバレてしまったようで、アンチの軍勢がそちら側に移動しているのが見えた。
……けど、それはそれでありがたい。どうせ狙撃手は一度撃ったら場所を変えるもんだから何も無い場所にアンチたちを誘き寄せることができるし、そちら側にアンチの戦力が出向くことで県庁に近づく個体が少なくなるからこっちも戦いやすくなる。
「今のうちに...!」
そして、今の上位個体の死によってさらにアンチの数が減った。一時的に攻撃の物量が減ったため、水の補給に向かう時間的余裕が生まれた。俺は急いで後退しながら背中のボトルを取り外し、後方待機している隊員から満タンのボトルを受け取り装着する。
「よし...っと、また上位個体が...!」
別の建物の上に人型アンチが現れた。葉山はおそらく移動中。狙撃支援は受けられない。どうやってここまで来るつもりかは知らないが、俺らが倒すしかない...!
「……っ⁉︎」
屋上からアンチが飛び出そうとした瞬間、腕を斜め前に突き出して何かを掴み取るような動作をした。そしてその直後に銃声が鳴り響く。
別方向からの狙撃支援...?葉山以外にも狙撃兵がいたのか。そして、あのアンチは放たれた銃弾を察知して掴み取っただと...⁉︎
飛び出す直前だったために、身のこなしで銃弾を回避することができなかったから銃弾を掴むことで身を守ったのだろう。そして、そんな事象を引き起こせる能力は限られる...
「身体強化のハウリング!...く、来る⁉︎」
俺の目には、ものすごい速さで屋上から飛び出し、一直線に俺の元まで近づいてくるアンチの姿が鮮明に映っていた。このままではそのままぶつかられて、俺の身体がミンチにされてしまうだろう。
咄嗟に俺は後ろに跳びながら前に向けて水風船を放り投げる。それにぶつかればアンチの身体は即座に溶けるだろう。その後の衝突こそ避けられないだろうが、ぶつかってきたのが液体ならばまだ助かる可能性はある。もちろん、この速度だからコンクリート並みの固さになっているだろうけど、そのままぶつかられるよりかは遥かにマシ...!
「ってコイツ避け...⁉︎」
あのアンチ、空中を蹴って水風船を回避した⁉︎他のアンチのハウリングで足場を作ってもらったのか、それとも身体強化でそこまでできるようになるのかは知らないが、非常にまずい。このまま接近されるわけにはいかない...!
俺は持っている水鉄砲から、背中のボトルへと繋がっているホースの接続を解いた。それにより、ホースから水が勢いよく噴き出て前方に水を撒き散らす。
流石のアンチも接近を諦めてくれたようで、また空中を跳んだかと思えば地面に着地した...って、着地⁉︎地面の水は⁉︎
「……電気分解か...!」
雷による身体強化のハウリング...下位個体が使っていたのを見た時は、目に見える形で体外に雷が放出されていたにも関わらずそれで感電することはなかったため、体外放出は出来ないものだと思っていた。だが、人型を取る上位個体は体外に雷を流し込むことができるようで、地面の水に雷を流し込み電気分解をすることで身体が溶けるのを回避していた。
一言も喋らないのを見るに、こいつは参式か。参式でこの出力なら、弐式や壱式になったら広範囲の放出も可能なのでは?こいつがどれだけの威力の雷を使えるのかはわからないが、触れたら感電待ったなし...だけど、水は電気分解されるから水鉄砲も効かない。実銃を使うしかないが、正規の自衛官でない俺は持ち合わせていない...どうする?
「っ!」
考えている暇はなかった。真正面からアンチが物凄い速度で突っ込んでくる。ホースを抜いたために無制限に水を放出してしまったのでもう水はない。水での牽制は不可能...もはや感電覚悟で行くしかない!
「ほっ...オラァッ!」
前から向かってくるアンチに向けて水鉄砲を投げつける。アンチはそれを横に避けてから再度俺に向けて走り出そうとしたが、向こうから既に十分な距離を詰めてくれていたため、横移動している時に一歩踏み出すだけで懐に潜ることができた。前に向かおうとしているその勢いも利用して、肘を胸の辺りに叩き込む。
「……感電しない?」
胸に肘を喰らってよろよろと後ろに後退りするアンチを見ながら俺は呟く。水の電気分解ができるほどの体外放出が出来るというのに、俺には雷を流さないのは何故だ?
……それ以上の出力を出せないのか?身体強化と電気分解をするのでもう限界なのかもしれない。参式ではそれが限界...ひとまずそういうことにしておこう。詳しいことを理解する必要はない。ただ、感電はしないことさえ分かっていれば、それで十分!
「よっ、ほっ、セイッ!!」
むくりと上体を起こしたアンチの顔めがけて振り回した左手の甲を打ち当て、勢いそのままに右足で頬に蹴りを叩き込む。そのまま右足で着地し、ぐるりと身体を一回転させて左足で後ろ回し蹴りをキメる。
「……うおっ、溶けた」
短時間での三連撃が効いたのか、アンチは横に倒れて地面に手をついた。その瞬間、手が溶けていき支えを失った上半身は地面に接触、そのまま水に溶かされていく。
「……なるほど、足からでしか体外放出が出来なかったわけだ」
足に触れていたら感電していたのだろうか...と思いながら溶けていくアンチを見届ける。
『アンチの攻撃が止まった。第五部隊総員、今のうちに補給を取れ』
通信機から出水の連絡が飛んでくる。たしかに、アンチが来ないな...ハウリングによる通信機のノイズも無い。今の参式を倒したことでアンチ側に何かが起こったのか...?
まぁ理由はなんであれ、一瞬でも休息が取れるのはありがたい。次なる攻撃が来る前に、急いで補給を済ませよう。ちょうどさっき、水を噴射して一瞬で使い切ってしまったばっかだからな...
「はぁ、ひぃ...ま、まだ本隊は壱式を倒せてないのか...?」
息を切らしながら、近くにいた延岡が呟いた。
「さぁな。中の様子は知る由もない」
「けどよ、アンチの奴らが来なくなったってことは、壱式が死んでもうここに来る理由がなくなったからってのは考えられないか?」
「だったら倒したと連絡が伝わっているはずさ」
古宇利の発言を否定しながら俺は回収した水鉄砲とホースを再接続し、水のタンクを背負う。
「きっとあちらも体勢を立て直しているだけだ。準備が終われば、また別の作戦で攻めてくるんじゃねぇかな」
「流石にもうそろそろ勘弁願いたいな。流石の俺でもそろそろ体力がキツいわ...リーダーはよくまだ動けるな」
「これくらいでへばってるわけにはいかないんでね...さて、そろそろ配置に戻るぞ。いつ来るかわからねぇんだからな」
……と、俺が言ったその直後だった。
ドンッ!!バリィン!!
背後...いや、上から爆発音のような音とガラスの割れるような音が響いた。見上げると、建物六階...知事室付近にあたる位置だった。
爆炎が崩壊した壁から噴き出す中、そこから一人、何者かが飛び出した。
見た目は人間。だがしかし、なぜか見ただけで異質な気配を感じ取る。どこか生命とは思えない、異様な感覚...
……この感覚は間違いない。アンチだ。それも、今回の作戦の標的である壱式...!!
「……って、ヤベェ!二人ともこっち来い!」
延岡と古宇利を引っ張り、地面に打ち込まれた盾の裏側に隠れる。
「タンクの水を被れ!」
俺は急いで背中のタンクを取り外し、自らにぶっかける。
「なんでそんなこと⁉︎」
「壱式が来るからだ!!早く!!」
俺の焦り様に二人も危機感を覚えたのか、即座に水を被った。
その数瞬後だった。
壱式は周囲に爆炎を放出した。
一つは、六階からの落下による地面への衝突を、爆炎による空気の膨張であったり衝撃波などを利用して速度を落とすことにより回避するため。
そしてもう一つは、真下にいる俺たちを丸ごと焼き払い、着地後の安全を確保するため...!
「っ、ぐ...熱い...!」
水を被ったのは、その爆炎から身を守るためだった。炎を操る弐式がこの鹿児島にいたこと、そして県庁の壁が破壊されたのも炎だったことから壱式のハウリングが炎系統だと察知していたのだ。
だが、爆炎の火力が思ったよりも高い。水を被ったにも関わらず身体が熱い。能力を扱えるようにと受け取った熱耐性があるというのに熱い...となると、延岡や古宇利は俺以上の高温を浴びていることになる。耐え切れるか...?
「……収まった...か」
被った水や、放水によって撒き散らされていた水の全てが蒸発しており、辺りに残る熱気と湿度が合わさりまるでサウナの中のような蒸し暑さを感じる。他の仲間はどうなった...?無事...なのか?
「っ、あれが壱式...!」
盾から顔を出した古宇利が壱式を視認する。
壱式はキョロキョロと周囲を見渡して何かを探しているようだった。生き残りがいないか探しているのか...?
『第五部隊応答願う。動ける者はいるか?』
「……仮谷、延岡、古宇利、動けます」
通信機から来た声に応答する。
……他に返答は無かった。
「今動けるのは俺たちだけかよ...」
「じゃあ、俺たちだけで壱式を倒すしか...」
確かに、このまま壱式に逃げられれば今回の作戦の意味が全てなくなってしまう。逃さずにここで倒してしまうのが一番良い...が、それは可能なのか?
残りの俺たちの武器は、各々二、三個ほど持っている水風船のみだ。それだけで、あの爆炎を操る壱式に勝てるとは到底思えない。
……能力を使えば、あるいは...だが、ここで使うのか?二人に見せれば、その後何が起こるか...
……いや、躊躇していてはダメだ。ここで使って、確実に壱式を仕留める!
「……ふむ、あらかた焼き尽くせたようだな。あとは...」
横を向いたかと思えば、壱式は手のひらから爆炎を放出した。その直後に銃声が響く。
「あの狙撃手を溶かすとしよう」
狙撃もあの爆炎の前には塵すら残らないか...というか、どうやって事前に察知してるんだよ。他のアンチのハウリングか?
「やってしま「うおアッツ⁉︎」...まだ生き残りがいたか」
……何やってんだ古宇利⁉︎爆炎に晒されたんだから盾が高温になっていることくらい想像つくだろ⁉︎なんで触った⁉︎
「クソッ、こちらの位置がバレちまった...」
「あつつ...本当にごめんリーダー」
「しゃあない...俺が飛び出して奴の注意を引きつける。どうにかして隙を作るから、二人で壱式を仕留めてくれ」
「そんなの無茶だ、死ぬぞ!」
「大丈夫だ、リーダーに任せろ。それとも、このまま三人で焼き尽くされるか?」
「……出来るんだな?」
「ああ。二人はまず、そこの後方部隊がいたところに隠れて移動しろ。そこならギリ生き残っているタンクとか、ここに来るまでに使った盾が落ちてるはずだ。回収できたら、それを使って攻撃を仕掛けてくれ」
「……わかった。死ぬなよ」
「死ぬもんか。二人こそ、気を付けろ...よ!」
盾の裏から飛び出す。そんな俺の姿を見た瞬間に壱式は爆炎を俺に向けて噴射してくるが、自慢の足の速さで駆け抜けて別の盾の裏に滑り込む。
「ほう、なかなかやるようだね」
壱式の注意が完全にこちらに向いたのを確認した俺は、ハンドサインで二人に行けと指示を飛ばす。そして動き出した瞬間に俺もまた飛び出し、爆炎を回避しながら別の盾に隠れる。
「……おや、君は私の子供と戦っていた者の一人じゃないか。たしか...死に際最後に水をかけた奴だったかな」
……え?話しかけてきたかと思えば、凄いことを言ってきたな。炎を操る弐式と戦ったこと、そして水をかけて死亡確認を取ったことを何故こいつが知っているんだ?
「……何故それを知っている?カメラかなんかで見たのか?」
盾の裏に隠れながら聞いてみる。会話が出来るのならば、話し続けて時間稼ぎをするのも良いだろう...あと、普通に理由も知りたい。
「君たちが弐式や参式と呼ぶ子供たちの見聞きしたことの一部は、私にも流れ込んでくるのだ。だから、君のことを知っている」
「へぇ...じゃあ、あの弐式の味わった死を、お前にも感じてもらおうか!!」
そう叫びながら俺は三度盾から飛び出すのだった。
本当は今回で鹿児島の戦いを終わらせるつもりだったのですが、収まり切らなかったので次回へ持ち越しです。
ようやく始まる壱式との戦い...乞うご期待。