神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8177字。

壱式との戦いです。


爆炎放射の壱式戦

「ほらほら当ててみなよ!」

 

走って壱式アンチの放ってくる爆炎を回避しながら煽る。手持ちの武器が水風船数個しかない今の俺には、これくらいしかやることがない。ひたすら逃げまくり、壱式がどこかへ逃げてしまうのを防ぎながら古宇利と延岡が戻ってくるのを待つ...命をかけた時間稼ぎだ。

 

「それなら君も攻撃してみなよ。本気で殺して欲しいのなら、まずは本気で殺しにかかること...だ!」

 

そう言いながら壱式は手を後ろに向けて爆炎を放った。そして響く銃声。また狙撃を塵も残さずに燃やし尽くすことで無効化したのだろう。どうやって撃たれる前に察知してんだ...?

 

……だが、分かったことがいくつかある。こいつは炎を手からしか放射出来ない。生み出した炎の軌道を変えることは出来るようだから手の延長線上にいなければ絶対に安全...というわけではないが、あの手からでしか炎を生み出せないのであれば、手を封じてしまえばなんとかなるかもしれないな。

 

そしてもう一つ。壱式がハウリングを使う際、通信機のノイズが全く起こらないこと。上位個体になるにつれてノイズの起こる時間は短くなっていたが、壱式ともなると完全に無くなるらしい。つまり、ハウリングを予見することが出来ないわけだ。だから、目で見て避けるしか方法は無い。

 

「ほら、逃げてばかりでは面白くない。強者ならば向かってくるが良い」

 

壱式は続け様に爆炎を放射してくる。若干先ほどまでよりも広範囲に放たれた爆炎が俺の身体を飲み込まんと迫ってくる。俺の走りの速度から、絶対に避けられない大きさを計算して撃ってきたようだな...それを一瞬だけ全力を出して走ることで壱式の目算を崩し、すんでのところでの回避に成功する。

 

「悪いが今の俺は弱者なんでな。こっちの戦いに付き合ってもらうぞ」

 

能力は最後まで温存する。能力だけで殺し切れるほどの力を出せるわけではないことと、狙撃手の葉山がスコープ越しにこちらを見ているから下手に分かりやすく力を使うわけにはいかないからだ。一切の無警戒状態で、二人が来た後のどさくさ紛れに能力を使い隙を作る...それが最適だろう。

 

そのためにも、最大限のお膳立てをしなければならない。壱式のペースには持ち込ませない。無理矢理こちらのペースに引き摺り込む...!

 

「そんで...それも読めてるぜ!」

 

放たれる爆炎から逃げながら次なる盾に逃げ込み...すぐさま盾と垂直に向かって走る。その次の瞬間、爆炎は盾を迂回するようにして裏側に回り込み、その場を燃やし尽くした。

 

ある程度の距離までなら炎の軌道は制御できる。よって、こうして遮蔽物の裏側に炎を到達させることも可能...俺の予想が当たったな。避けてなきゃ今頃黒焦げだ。

 

「ちょこまかとよく逃げるネズミだな」

 

「ハッ、ひとでなしに動物扱いされるなんてなァ!舐められたもんだ...ぜ!」

 

そう叫びながら俺は水風船を一つ掴み取り、壱式に向けて投げつける。

 

「無駄なことを...!」

 

当然のように壱式は水風船に爆炎を差し向けて一瞬で蒸発させた。

 

……チッ、蒸気が発生してほんの一瞬でも目隠しになるかと思ったが、ならなかったか...それもそうか、湯気は空気で冷やされて小さい水の粒が出来ることで見えるわけだから、爆炎で温められてすぐに冷めるわけがない。目眩しは無理か...

 

「仕方ねぇ...!」

 

見られているが仕方ないと割り切り、俺は最初の爆炎でやられて倒れている自衛隊員に走って近づくと、装備の一つとして正規の隊員に配られている9mm拳銃を抜き取る。水が切れた最中にアンチに襲われた時のための最低限の護身用ではあるが、俺にとっては数少ない武器だ。

 

「ちゃんと動けよ...?」

 

呟きながら拳銃を壱式に向ける。引き金を引くと...きちんと弾丸が発射してくれた。爆炎に晒されてもちゃんと機能を保ってくれていたようだ。使えなかったらヤバかった...

 

だが、放たれた弾丸は壱式の放った爆炎によって燃え尽きた。まぁ、狙撃も燃やし尽くすのだから当たらないことくらい初めから分かっていた。けれど、撃てることがわかっただけで十分。タイミングさえ見計らえば、俺なら当てられるはずだ。

 

「そんな武器、いくらでも防いでや...チッ、やっぱ鬱陶しいな」

 

何処かから飛んできた狙撃を爆炎で消し去りながら壱式は呟いた。

 

「やはりあの狙撃手は溶かしてしまおう。転移を殺ったのも彼奴だしな...っ、奴はどこだ?」

 

壱式が狙撃に気を取られた瞬間に、俺は盾の一つに滑り込んで息を潜めていた。

 

「隠れたか...ならば、一つ一つ焼き尽くすのみ...」

 

それをされては困るので、ここで攻めに転ずる。

 

「っ、そこか!」

 

物音がした盾目掛けて壱式は爆炎を放った。爆炎は盾を丸ごと包み込み、全てを燃やし尽くした。耐熱性のあるはずの盾も溶かすとはな...本気の火力を出されては遮蔽物の意味がないな。

 

「……いないだと?...グッ⁉︎」

 

俺の放った弾丸が、壱式の右肩を貫いた。右腕がダランと力なく垂れ下がる...どうやら、神経を傷つけることに成功したようだ。これで右腕は使えない。

 

「まずは片方...!」

 

「くっ...なぜそこに...!」

 

「物音に釣られるお前が悪いんだよバーカ」

 

俺のズボンのポケットには、小石が幾つか入っている。動いた際に擦れて生じる摩擦熱は常日頃から増幅されて保持されており、その一つを盾の裏に置いておいたのだ。込められた増幅熱を消費すれば、その小石は多少だが動かすことができる。浮かせて、盾にぶつければ物音が生じてそこに俺がいると誤認させられるわけだ。

 

「……っ」

 

ちょうどその時だった。俺の視界に、古宇利と延岡の姿が見えた。俺が言った通り、装備を回収して戻ってきたようだ。律儀に俺用の盾と水鉄砲まで持ってきてやがる...

 

さて、どうしたものか。俺らの勝ち筋は、二人による奇襲が成功すること。まずは両手を封じて爆炎を封じ、そのまま殺してしまう...これが最適解だが、どうやってその流れに持ち込もうか...

 

……ってか、そうだ。まずは手を潰さないといけないことを二人に伝えなきゃなんないんだ。だが、通信機を使えばそのそぶりで仲間がいることがバレかねない...じゃあ、今の流れに沿って壱式を煽るように装いながら...!

 

「これからもう片方の手も使えなくして、お得意の爆炎を封じてやるぜ。覚悟しやがれ壱式!」

 

これで通じたか...?と思いながら銃を向けて引き金を引く。

 

「っ、無駄な足掻きを...くっ!」

 

壱式は爆炎で俺の弾丸を消し去ったかと思えば、別方向に左手を向けて爆炎を放った。狙撃から身を守ったのだろう。

 

「もう見過ごせないな...溶かしてしまえ...!」

 

……っ、そうか!壱式は先程自分の口から言っていたじゃないか!弐式や参式の見聞きしたことが流れ込んでくるって...!葉山の近くにいた自身の子が狙撃手の位置と狙撃タイミングを見ていたから、事前に狙撃を察知することができたんだ!

 

そして、今壱式はそこにいる弐式か参式に葉山を攻撃するように伝えていた。葉山が危ない...けど、俺にはどうすることも...!

 

「……なっ、消え...⁉︎」

 

急に壱式はそう言いながら驚愕の表情を浮かべた。そしてハッとした顔をしてその場を飛び退いた。

 

その次の瞬間だった。壱式の左肩が背中側から貫かれた。先程までの狙撃方向とはまるで別方向からの狙撃であり、壱式は反応することが出来ていなかった。

 

「く、そ...あの力のせいか...!」

 

左肩を撃ち抜かれたためか、右腕同様左腕もダランと垂れ下がっていた。今ので両手を封じられた...?なら、今が勝機...!

 

「ふふふ、ふははは!!」

 

まるで狂ったように壱式は笑い出す。それを気味悪く思いながら、俺は冷静に拳銃を向けて引き金を引いた。

 

「無駄だ!!」

 

垂れ下がった手から爆炎が噴き出る。噴き出た爆炎は壱式の身体を包み込むと、爆炎で出来た鎧のようなものを形成する。その鎧に触れた弾丸は、瞬く間に消失した。

 

「狙撃も水もこれ以上喰らうものか!貴様ら全員、塵も残さず焼き尽くしてくれる!!」

 

ヤッッベェ追い込みすぎて対処不能なレベルで本気出してきやがったコイツ!あの炎ってどれだけ出していられるんだ?制限とかあるのか?無いなら一生あのまま爆炎の鎧を纏い続けるのか?もしそうなら倒す方法ねぇじゃんか!

 

両肩撃ち抜かれて手を動かすことができなくとも、手はあるから炎を生み出すことはできる。生み出した炎を操ればああして身に纏うこともできる...できるってのはわかるけど、完全防御はダメだろオイ!

 

クソっ、これじゃあ二人が来てもどうにもならん。どうやって攻略する...?それとも、一度わざと逃してしまって、油断して鎧を解いたところを狙撃して倒してもらうか...?

 

……いや、逃すつったってそれは俺が殺されてからだろ!俺が生き残るには、どうにかして奴わ殺さなければ...!

 

「まずは貴様からだ...!」

 

「っ!!」

 

爆炎の鎧の一部が流動し、こちらに向かってくる。軌道を無理矢理捻じ曲げてでの攻撃なためか速度が遅いな。回避は簡単...そして、攻撃の瞬間に鎧が一部薄くなったのも確認できた。

 

けど、にしたってこちらの攻撃は届かないだろう。いくら薄くなったところで、あの熱量の前で水や弾丸を通すことは不可能だ。

 

超広範囲に炎を拡散せざるを得ない状況を作って鎧の形成を防ぐってのが出来れば良いが、それをさせる方法も、それを回避して攻撃に繋げる方法も思いつかない...!

 

どうする...!

 

「リーダー!!」

 

「なっ...⁉︎」

 

古宇利が飛び出してきた⁉︎そんで中型の盾を放り投げてくる...って、それは助かるけど壱式の前に姿を晒してどうする⁉︎

 

「二人目...!のこのこと現れおって、貴様も消してやる!!」

 

「消されてたまるかよ!」

 

そう言いながら古宇利は水の弾丸を壱式に向けて放つ。だが、水の弾丸は壱式の鎧に触れる手前で蒸発し切ってしまった。牽制にすらならない...!これなら実銃の方がまだマシ!

 

「どちらも効かん!消し炭になれ!!」

 

「まず...⁉︎」

 

超広範囲、無差別に放たれた爆炎が迫ってくる。俺はなんとか近場の盾の裏に身を隠し、古宇利に投げ渡された盾を上に向けて身を守ることに成功したが...隠れる前に見た限りでは、古宇利は...!

 

「古宇利!!」

 

古宇利が間に合ったかは五分五分...安否が心配だが、今は耐えるしかない。爆炎が消えた時が、最後の勝機...!

 

「っ、今...!」

 

爆炎が途切れた瞬間、俺は立ち上がる。

 

視界の端に、古宇利の姿が見えた。地面に打ち込まれた盾に届かず、手持ちの盾でなんとか凌ごうとしたものの防ぎ切れず、全身に火傷を負った痛々しい姿が目に入る。

 

叫びたくなる気持ちをなんとか抑え、俺は手に持った小石を壱式に向けて投げつけた。

 

爆炎を無差別に放射したことで、鎧はこれ以上なく薄くなっていた。しかし、銃弾を溶かすには十分な火力を残していた。その炎は小石を溶かすことなんて容易な熱量を保持しており、当然のように溶かし尽くす。

 

だが、小石に込められた熱量、増幅熱までは溶かせない。見えない増幅熱はそのまま壱式に向かって突き進み、炎の鎧を突き抜けて皮膚に触れる。

 

「な゛ッ...⁉︎」

 

熱い。爆炎を操る壱式アンチが一生感じることはないと思っていた熱の刺激が襲い掛かる。それは、偽りの熱。実態のない幻痛。

 

しかし、その偽りの痛みは生命としての反射を引き起こし、自ら火傷を作り出した。脳に送り付けられる刺激が真実であると誤認したがために、身体の方が真実に近づけようとしてしまったのだ。

 

初めて感じる痛み。それに、壱式は耐え切ることができなかった。結果、幻痛の熱を喰らった弐式と同じように、ハウリングの操作を手放した。

 

その刹那だった。

 

放たれた水の弾丸二発が、壱式の腕をそれぞれ撃ち抜いた。両腕が溶け落ち、地面にぼとりと落ちる。

 

「なっ...」

 

壱式の目の向けた方向、そこには、二つの水鉄砲を構えた延岡の姿があった。俺用にと持ってきていたものを同時に使い、二点同時攻撃を実現したのだろう。

 

「両手は潰した...これで炎は使えない、そうだな?仮谷」

 

「あ、ああ。そのはずだ」

 

幻痛の熱を使ったことがバレてないかヒヤヒヤしながら答える...どうやらあの様子だとバレてはいないようだな。

 

「……古宇利...!」

 

壱式に近づく延岡だったが、その目は倒れた古宇利の方を向いていた。

 

「お前のせいで、古宇利は...!」

 

二丁の水鉄砲を延岡は壱式の頭に突きつけた。

 

「お、おい、やめろ...!」

 

「死して償え...!!!」

 

バシュッ...

 

壱式の頭を、水の弾丸が貫いた。

 

完全に溶けて、壱式は生命活動を停止した。

 

「や、やった...延岡...!」

 

延岡に向かって走る。

 

「……っ、なんだ?この光...」

 

延岡は不審な行動を取り始めた。延岡なら即座に古宇利を心配して駆け寄りそうなものだが、なぜか死んだ壱式に向けて手を伸ばし始める。

 

そして...

 

「う...ぐっ...⁉︎」

 

頭を抱えたかと思えば、ゆっくりと前に倒れ込み始めた。

 

「延岡⁉︎」

 

全速力で走り、倒れ込もうとする延岡を受け止める。

 

「どうした延岡!おい!しっかりしろ!」

 

返答がない。なんで倒れた?壱式に何かされたのか...?

 

「クソッ、延岡もダウンかよ...って古宇利は⁉︎どうなった!」

 

延岡を地面に横たわらせ、古宇利の様子を確認しに行く。

 

「……っ、まだ息がある...!」

 

古宇利の近くには、溶けた水のボトルがあった。中身はない。もしや、水を被って少しでも炎から逃れようと...?けど、この火傷じゃ長くは持たない...!

 

「こちら第五部隊の仮谷!壱式アンチの討伐完了!全身火傷の生存者一名と、その他生死不明者多数!救護班を頼む!!」

 

通信機で本部に連絡を取る。救護班...間に合うか...?

 

「了解した」

 

「えっ...?」

 

返事は肉声で背後から帰ってきた。

 

「葉、山...?」

 

振り向くと、そこには葉山がいた。狙撃兵がなんでこんなところに...というか、先程まで狙撃支援をしていたはずなのに、どうやってここに来た...?

 

「今すぐに連れてこよう」

 

そう葉山は告げると、まるで夢でも見ていたかのように葉山の姿が消え失せた。

 

「なっ...消え...⁉︎ってうわぁっ⁉︎」

 

消えたことに驚いたのも束の間、今度は何人もの人と一緒に葉山が出現した。その中には、小樽もいて...もしかして救護班の面々か?

 

「許諾は全て許可する。存分に力を振え。救える命は全て救うぞ!」

 

「了解!」

 

小樽の号令で、救護班は散り散りになって負傷者の元に向かい始める。

 

「壱式を殺ったのはあいつだな?怪我はあるか?」

 

「の、延岡は怪我はしてない...それよりもこいつがヤバい!古宇利を治してやってくれ!」

 

「だってさ小樽。お前の力を見せてやれ」

 

「ああ、必ず救ってやる」

 

そう言いながら小樽は古宇利のそばにしゃがむ。

 

「……服は溶けていないようだな。レベルⅢの火傷だが、私の力ならいけるか...葉山!何処かから水のボトルを!水をかけてくれ!」

 

「了解」

 

葉山の姿が一度消え...すぐ水のボトルを抱えた状態で戻ってくる。そして全身に水をかけて古宇利の身体を冷やす。

 

「ここまでの傷は初めてだが...治す!」

 

小樽は古宇利に手をかざす。

 

……すると、だ。古宇利の全身を蝕んでいた火傷が、みるみるうちに治っていった。

 

「これは...治癒の力...⁉︎」

 

「秘密だぜ?外部には絶対に漏らすなよ」

 

「なんで治癒の力を...葉山は転移だし、どうして...⁉︎」

 

「それについては追々な。延岡...だっけか。アイツが壱式を倒したんなら、お前もすぐに知ることになるだろうよ」

 

……俺は、目の前の不思議な現象を、ただただ見ていることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ」

 

延岡が壱式を倒したことにより鹿児島市内のアンチは皆逃げていったようで、鹿児島での作戦は終わりを迎えた。

 

死傷者は多数...全員が生き残ることは叶わなかった。だが、なんとか命を保った者たちは、小樽率いる医療班による治療がなされて一命を取り留めたらしい。

 

「よっ、功労者。なに夜空見てため息ついてんだ?」

 

船のサイドデッキで一人でいたところに、葉山が近づいてきた。

 

「……夜空を見て落ち着かせようとしていただけだ」

 

この世界に来てしばらく経ったが、夜空を見上げると地球に帰ってきたのだなと感じて少し落ち着くのだ。これまでの異世界は夜がなかったり、勢力図の表れであったり、あっても星がなかったりと、こうして星のある夜空を見上げる機会が無かったからな...まぁ、俺の知る地球とは違うから、帰ってきたというのは少し違うのだが。

 

「まぁ、落ち着けなかったがな...流石に色々ありすぎた」

 

「だろうな...あれだけのことがありゃ、落ち着くってのも無理な話だ」

 

「……なぁ、延岡と古宇利は大丈夫なのか?」

 

「心配いらないぜ。延岡は元々傷は無し。古宇利も小樽が治して復活さ。今は両方おねんねしてるがな」

 

「そうか...良かった...」

 

死人は出てしまったが、見知った二人が生きていてくれて、ひとまず嬉しい。

 

「……なぁ、聞いてもいいか?二人が転移と治癒の力を使えた理由を...」

 

俺がそう聞くと、葉山はキョロキョロと辺りを見渡した。

 

「……いずれ上から聞くだろうが...人もいないし、先に教えとくのも悪くはないか。結論から言うと、この力は壱式を殺したことで手に入れた力だ」

 

「壱式を...?」

 

「ああ。壱式を殺した者にだけ、壱式の中に光が眠っているのが見えてだな。それに触れると、こうして奴らのハウリングの力が手に入るってわけだ」

 

「そういや、葉山は那覇の転移の壱式を殺したんだったか...ってことは、小樽が札幌の壱式を殺したってことか?」

 

「そうだ。つっても、あいつの場合はトドメを刺しただけなんだがな。治癒のハウリングは、傷は治せるが毒物や薬物を中和することができない。もちろん、それらによる体内の損傷は治せるから基本は治されてしまうのだが、麻酔は別だ。麻酔銃によって、札幌の壱式は眠りについた。そうして得た検体を、小樽が解剖した。アンチの体内組織を探るためにな。そうして最後にトドメを刺し...治癒の力を手に入れた」

 

「な、なるほど...壱式を殺すとハウリングの力を奪える...そっか、だからあの時...」

 

沖縄で講習会で、力を奪い取るとか言った直後に教官は一瞬黙り込んでいた。まるで、口を滑らしてしまったかのように。その時はあくまで比喩的な表現で、アンチの手数を減らしたことを意味しているのだと思っていたが、まさか本当に奪い取っていたとは...

 

「これが、機密事項...というわけか」

 

「ああ。俺の部隊に入れば面白いって言ったのは、転移のハウリングを使って戦えるからだったのさ。アンチの力を使えると表立って言うわけにはいかないだろ?だから、入ってから詳細を伝えると言ったのさ」

 

そういうことだったのか...たしかに、機密事項たり得る情報だなそりゃ。そんで、軽率に元一般人の志願兵を誘う葉山はどうなんだ...?

 

「そして、ハウリングを使えるのは俺だけじゃない」

 

「……というと?」

 

「小樽の奴が承諾がなんだと言っていただろ?あれはだな、俺らを壱式と見立ててハウリングの間借りをすることを指しているんだ。俺らが承認すれば、そいつもしばらくの間だけ力を使えるってわけだ。事前準備はそれなりに必要だがな」

 

そんなことも出来るのか...能力持ちを部隊のリーダーにする意味あるのかと思っていたが、承認済みの部下で固めればたしかに部隊として成立するな。

 

「……あれ?別のことに夢中で忘れてたが、壱式を殺した延岡はどうなるんだ?」

 

「当然、炎のハウリングを手に入れるだろうな。元一般人が手に入れてしまったことは上にとって不都合かもしれないが...直にあいつを主力とした部隊が作られるだろう」

 

「そっ...かぁ...」

 

……延岡は九州出身で、九州での作戦を終えたら除隊するつもりだった。だが、ハウリングを手に入れてしまったせいで、簡単には抜けられなくなってしまった...そして、延岡が残るのならば古宇利もおそらく残ろうとするだろう。

 

もうしばらく、このメンツでアンチと戦うことになるんだろうなぁ...と、思うしかなかった。




ちょくちょく葉山と小樽が能力を使っているような描写をしていたのですが、気付いてくれた方はいますかね...?
そして、無傷で帰ってやると言った古宇利はものの見事に重傷を負って小樽に治癒される始末...見事なフラグ回収ですね。

そんなこんなで炎のハウリングを手に入れた延岡ですが、次回は早速新たな部隊での戦闘が始まります。
お楽しみに...!
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