神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8173字。

展開めちゃ早めですが、宮崎編です。


透明県庁の銃撃戦

「いやー、にしても、少し特訓しただけで早速実戦投入されるとはな...」

 

延岡が壱式アンチを殺してハウリング能力を会得してから、トントン拍子に事が進んでいった。延岡を中心とした、俺や復活済みの古宇利を含めた新部隊の設立、部隊の仲間がハウリング能力を借用出来るようにする事前準備と、借用を前提とした訓練がなされ、数日後にはもう実戦...それも、鹿児島のお隣である宮崎攻略作戦だ。

 

「流石に早過ぎだろ...」

 

「だよなー、やるならもうちょい練習してからにしたかったわ。これ使うのムズイ」

 

そうぼやきながら古宇利は手のひらからボッと小さな火を灯した。

 

「急に超能力部隊として訓練させられて、数日でこれだぜ?返り討ちにあってもおかしくないだろんなもん」

 

「まぁ、これだけ早く動くのにはそれなりのワケがあるんだろうよ。例えば、鹿児島から離脱したアンチが別の県で体勢を立て直す前にすぐさま奇襲を仕掛けちまう...とかな」

 

「だとしても焦りすぎじゃね?」

 

「あとは、ようやく本格的な攻撃性能を持ったハウリングを手に入れられたから、この流れでドンドン突き進んじまおうって感じかな」

 

これまでのハウリングは転移と治癒のみで、どちらかといえばサポート寄りの能力だ。まぁ、葉山は転移の力で狙撃地点をすぐに変えるという運用法で攻めに転じてはいたが...炎というまさにといった力はそれだけ魅力的なのだろう。若干焦りすぎと思わざるを得ないがな。

 

「ノリと勢いじゃねぇか。不安すぎる...」

 

「けど、ここまで来たからにはウダウダ言ってもられない。覚悟決めて行くぞ。延岡も、大丈夫か?」

 

「あ、ああ。なんとかね...」

 

ここまで黙り込んでいた延岡だったが、なんともないといった表情を浮かべる...その顔の奥に隠れた感情はどう考えても不安一色であったが、本人が大丈夫だと言っているのなら追及はしまい。戦闘中に崩れるようなら喝を入れさせてもらうが、それまでは静観するとしよう。

 

「さて、そろそろか...」

 

俺らが乗っている船は川へと入っていき、海路で行くことのできる宮崎県庁の最短距離まで近づこうとしていた。

 

実は、俺たちの部隊は他の部隊とは別の船に乗っているのだ。俺らはいわば突入部隊。他の奴らは鹿児島上陸にも使った巨大船で港に停泊しようとしているはずだ。

 

この船に乗っているのは三部隊。一つは延岡をリーダーとする新造部隊。二つ目は、葉山の転移部隊だ。県庁に一番近いこの位置から俺らを転移させ、どの部隊よりも先に突入させる役割だ。そいて三つ目は、この作戦のために作られたらしい部隊である。

 

この部隊は歴の長い者で構成されており、今回の標的の壱式を仕留める役回りを任せられている。延岡のような新兵ではなく、信頼のできる昔からいる兵にハウリングを持たせたいという上層部の思惑があるのだろうな...ちなみにハウリングを手にする予定のリーダーは門川と言うらしい。

 

この三部隊以外...つまり、港に停泊する予定の船に乗っている者たちは、先に県庁に突入する部隊がいるということしか伝えられていない。まぁそれもそうだな。この突入には転移のハウリングが関わってくる。ハウリングの事実を隠すにはこうする他ない。

 

他の部隊は何をやるのかと言えば、言ってしまえば前と同じだ。地上を進み、アンチを倒しながら県庁まで進む...前回と違うのは、突入部隊を止めようとして県庁に近づこうとするアンチたちを背後から襲う形になることか。港から県庁まで、そこそこの距離がある。前と違い迎え撃つような戦いはできないが、奇襲という形ならいささか戦いやすいだろう。

 

「準備はいいか?」

 

「ああ、問題ない」

 

「お前らを飛ばしたらすぐさま狙撃ポイントに付く。背中は守ってやるよ。大船に乗った気持ちで行ってこい...まっ、今乗ってるのは本隊に比べりゃ小舟だがな」

 

「そこで笑いを取りに行くなよ締まらないな...」

 

「そんじゃっ、いくぜ?頑張ってこい!」

 

そんな葉山の声とともに、ハウリングが発動する。転移の力により、延岡部隊と門川部隊は県庁目の前のロータリーへと転移する。

 

「一斉放射!!」

 

延岡の号令で、周囲にいるアンチに向けて一斉に炎を噴射する。転移直後の奇襲によって、アンチたちはなすすべもなく焼け死んでいく。

 

「周囲に敵影は...もう無いな」

 

少し距離が離れており炎から逃れていたアンチもいたが、門川部隊による銃撃や、早速転移によって狙撃地点に到着した葉山の狙撃によって残らず撃ち抜かれていた。

 

「突入するぞ」

 

門川が全体の指揮を取り、延岡部隊が先行して宮崎県庁の本館へと入っていく。知事室があるのは本館の二階。進行方向にいるアンチだけ殲滅し、真っ直ぐ知事室に向かうことになっている。

 

「……誰もいない...?」

 

中に入って辺りを見渡すが、パッと見では誰もいないように見える。中の警備ってこんなにザルなのか...?それとも、奇襲だったために準備ができていないだけなのか...

 

「……っ、ハウリング...!」

 

通信機からノイズが聞こえ始める。アンチがハウリングを使った証拠だ。

 

……しかし、アンチは姿を現さない。

 

「どこから来る...?」

 

まず、どんなハウリングだ?壁を貫通して攻撃できるようなハウリングだった場合、なすすべもなく撃ち抜かれるだけだからできればそれ以外なら嬉しいのだが...

 

……あれ、こういう状況、前にもあったような...

 

「……全員動くな。そして静かに」

 

動きを止めさせ、耳を澄ませる。

 

「……足音...!透明化だ!火を撒け!」

 

そんな俺の声に真っ先に反応した延岡が周囲に向けて炎を放った。

 

すると、壁や床に引火していく中、何もない場所に炎が纏わり付き出した。少しすると、透明化のハウリングが解除されたようで、姿を隠していたアンチが現れる。そいつに門川部隊の誰かが銃弾を叩き込み、アンチは死に絶えた。

 

「誰もいないように見えて、透明化したアンチの巣窟になっているようだな...」

 

透明化のハウリングを持つアンチの上位個体は、他者の姿も隠すことができる。よって、この中にいるすべてのアンチは透明化して襲ってくると考えていいだろう。透明なまま攻撃系のハウリングを使われたらめちゃくちゃ厄介だな...

 

「透明化か...厄介だが、前とは違って炎で炙り出せばいいから少し楽だな」

 

「けど、使いすぎにも注意だ。建物に引火、延焼してしまったら止められなくなる」

 

炎のハウリングで生み出した炎は、基本的にハウリングの解除で消すことができる。しかし、その炎が生み出した熱によって別の物に引火した場合は話が別であり、それはもう物理現象の炎と変わりないためハウリングの解除では消せないのだ。少しくらいなら建物内で使っても問題はないが、過度に使うと消せないくらい燃え広がってそのまま俺らが焼け死ぬことになるため注意が必要だ。

 

「そんときゃこいつで消すだけだろ。まぁ、面倒なことにはなりなくないのが本音だけどな」

 

そう言いながら古宇利はノズルを振り回す。

 

今回俺らは水鉄砲を装備しておらず、山林火災用に用いられるジャケット型のタンクと放水ホースを装備している。

 

これを使う理由はいくつかあり、一つは熱に対する耐性があること。炎のハウリングは便利だが、その熱は俺らにも牙を剥く。宿主である延岡は平気だが、間借りしている俺らは普通に熱の影響を受けてしまうのだ。そのため、ジャケット型のタンクを使うことにより防熱を担っているのだ。まぁ、消防士の着るような装備も着ているためやや過剰ではあるかもだが...

 

もう一つの理由は、その容量。普段の装備では1.5リットルとやや容量が少ないが、ボトルの交換のみで補給が完了するため不便はあまりなく、射撃の効率も良かったためなんとかなっていた。だが、この突入部隊は補給をできるタイミングがほぼ無い。従来の装備ではすぐに水が尽きてしまうのだ。

 

このジャケット型タンクは最大で約18リットルもの水を貯めることができ、一回の突入には十分な量であると言えよう。放水効率はこれまでよりかは悪いものの、直射と噴霧を切り替えることができるため攻撃や防御で使い分けができるほか、炎上してしまった箇所の鎮火も可能だ。今回は炎のハウリングや門川部隊の実弾が主力であるため、おそらく水を使い切ることはないだろう。

 

「面倒事は避けるに限る。このまま真っ直ぐ階段登って知事室に向かうぞ。延岡部隊は門川部隊を囲うように展開。延焼しない程度の弱火で牽制し、アンチが近づいてきていないかの確認、炎が揺らぐなどして発見で次第焼き尽くせ」

 

「了解参謀!」

 

……前はリーダーと古宇利に呼ばれていたが、部隊のリーダーが延岡になったからリーダー呼びが延岡に移って代わりに参謀って呼ばれるようになったんだよな。ちょっと恥ずいからやめてほしい...

 

何はともあれ、俺の指示通りに皆が動いて階段を登っていく。門川も特に何も言ってこないな。自分が言うのもなんだが妥当な判断だろうし、門川目線では壱式のトドメさえ刺せればいいから本気でヤバい時や完全に俺が間違ったことを言わない限りは口を出してくることはないだろう。

 

「……にしても、想像以上にいやがるな...」

 

階段を登る最中にも登り切って廊下を歩く最中にもひっきりなしに透明なアンチが迫ってきては焼き殺されていく。痛覚が無い下位アンチはともかく、痛覚があるのに突撃してこれる上位個体はなんなんだ...?有効打が無くて突撃しかできないのか?

 

「まっ、それはそれで面倒なんだが...!っと」

 

痛覚の無い下位個体は炎を浴びてもなんともないかのようにそのまま突進をしてくる。炎で視界が塞がれるのもあって門川部隊の銃撃は期待できず、水も炎によって噴霧した側から蒸発してしまうため使えない。よって、アンチが廊下を走る際に生じる摩擦熱を増幅させて完璧に位置を補足できる俺がアンチを蹴り飛ばして対処するしかない。

 

これで対処できるのは前方のみなため、後方から来る輩にはどうにもできないが...まぁ、そっちはそっちで上手くやってもらおう。

 

「……なぁ、マップだとこの角が知事室じゃなかったか?」

 

廊下の角を曲がろうとしたその時、古宇利がそんなことを言い出した。

 

「え?...確かにそうだったような気がするね。けど、扉がない...?」

 

「……透明化の力で、扉という存在を消した...とか?壱式ならそんなこともできるのかもしれない」

 

「ありうるな...でもどうする?扉がないんじゃ中には入れない。炎で壁を溶かし尽くすか?」

 

「……それも手の内だが、ここは一つ任せてくれ」

 

門川はそう言いながら壁に近づくと、何かを取り付け始めた。

 

「爆弾...⁉︎」

 

「これで壁をぶち抜く。粉塵が舞えば、中にいる透明なアンチの居場所もすぐにわかるだろう。一石二鳥だ」

 

「なるほど...わかりました。それで行きましょう。一度離れて、爆破でき次第即突入で」

 

門川が爆弾の用意を終え、全員でその場を離れる。

 

「3、2、1...」

 

爆弾が起爆し、知事室に繋がる壁がぶち抜かれる。破片が飛び散り終えたのを確認し、安全を確保してから知事室へ突入する。

 

「そこだっ!撃て!」

 

部屋の中を舞う粉塵の揺らぎ方からアンチの位置を特定した門川が指示を出し、足付近目掛けて銃弾が一斉に放たれる。足を狙い、動けなくなったところを門川がトドメを指す算段なのだろう。

 

しかし、アンチはデスクを飛び越えてその裏側に隠れることで銃撃から逃れた。そして、粉塵の揺らぎから、何かをこちらに向けて投げてきたことがわかる。

 

飛んでくる物の空気との摩擦熱を増幅し、輪郭を探る。これは...瓶?火炎瓶か...!

 

「下がれ!」

 

後ろに下がり、火炎瓶を避ける。地面に火炎瓶が衝突し、炎が燃え広がるところを即座に水を噴射して消火する...が、ガソリンについた炎はそうやすやすと消えるものではない。

 

「それなら...!」

 

霧状の水を前方に噴霧する。こうすれば、デスクの裏に隠れているアンチだって...!

 

「くっ...!」

 

ごく僅かながら身体が溶け、アンチが姿を表す。

 

「壱式発見!」

 

そう言いながら門川はアンチの頭部目掛けて引き金を引く。

 

しかし、当たらない。どうやらデスクの上に透明な何かがあったらしく、銃弾はそれに遮られたようだ。

 

「そう簡単に死ねるか...!」

 

一瞬のノイズと共に、アンチの姿が再び消える。

 

「壱式を逃すな!部屋全体に水を噴霧しろ!」

 

門川が叫ぶ。

 

「……あれ?」

 

水を噴霧しながら、俺は違和感に気づいた。

 

なんで今、ハウリングの発動直前にノイズが起こったんだ?ハウリング発動前に通信機にノイズが乗るのは、弐式までだ。壱式はノイズ無しにハウリングを使ってくる。目の前のこいつは、壱式ではなく弐式...?

 

見たところ、部屋の中に他のアンチはいない。広範囲に水を噴霧しているから、他にもいればその時点でわかる。よって、他のアンチがこいつに透明化をかけているわけでもないことがわかる。

 

……まさか...!

 

「そいつは弐式だ!本物の壱式はもうここにはいない!外だ!!」

 

目の前のこいつは弐式だ。もしこいつが壱式だった場合、不可解なことが二つある。一つはノイズが走ったこと。そしてもう一つは、最前にいる俺を見ても何の反応も示さないことだ。

 

伊是名島で俺は透明化の弐式を単独で倒している。壱式は上位個体である弐式と参式の見聞きしたことを知覚できるため、炎の壱式がそうだったように俺を見て反応していなければおかしいのだ。声に出すまではしなくとも、俺を見て何かしらのアクションを起こさないのはおかしい。となると、こいつは壱式ではないと予想できる...疑惑程度の根拠ではあるが、先のノイズの件も合わせれば弐式で確定する。

 

「壱式は窓から出たはずだ!そして、その窓は今あの弐式が隠している!さっさと倒して外に出るぞ!」

 

気にもとめていなかったが、この部屋は角部屋にも関わらず窓が無かった。おそらく扉を隠していたように透明化で窓の存在を隠しているのだろう。弐式を倒して窓を元に戻す必要がある。

 

そして、目の前のアンチが壱式でないのならば、門川がトドメを刺す必要はない。燃える床を耐火服を信じて飛び越え、デスクを回り込んでアンチに直接水をぶっかける。

 

「っ、窓が...!」

 

弐式が死んだことで隠されていた窓が現れる。窓は既に空いており、誰かが出た跡が残されていた。

 

窓から外を見ると、外を走って逃げる人型...壱式の姿が見えた。無防備に逃げているように思えるが、おそらく先程まで透明化が掛かっていたのだろう。

 

「アイツだ殺せ!ハウリングは不明!注意しろ!」

 

ここは二階。窓から飛び降りて追いかけることはギリギリ...可能!

 

「透明化じゃないのか?」

 

「そいつはブラフだ!多分別の力!!」

 

古宇利の疑問に叫んで答える。

 

透明化させたアンチで県庁内を固めることで壱式の力を透明化であると誤認させ、知事室に弐式を配置することで俺らを騙す魂胆だったのだろう。知事室にいるアンチは壱式...そういう思い込みを利用して本当の壱式を逃す時間を作り出そうとしたわけだ。

 

「まずは足を狙え!!」

 

二階から降りてきた門川が叫んだ瞬間だった。アンチの足元が少し爆ぜ、銃痕が残される。葉山の狙撃...!透明化が解除されたから援護射撃が出来る様になったのだろう。だが、外したか...!

 

『当たる軌道だったのに逸らされた!ハウリングだ!」

 

通信機越しに葉山の声が聞こえる。そうだよなあんだけの命中率を叩き出していた葉山が外すわけないよな...!

 

「物の軌道を変える力か...?実弾は使うな!水使え!!」

 

どんなハウリングかまだわからないが、狙撃を逸らせるほどの力なら実弾を使うのは危険だ。まずは水で足を封じよう。

 

指示を出しながら俺は斜めに向かって走り、壱式の進行方向に向けて水を放射する。逃げ道を封じ、壱式を足止めして回り込む...!

 

「クソッ...!」

 

舌打ちをした壱式は何かを握るような動きをとる。

 

「なっ...⁉︎」

 

するとその手にはリボルバーらしき銃が握られており、こちらに銃口が向く。

 

「あっ...ぶねぇ!」

 

なんとかすんでのところで銃弾の回避に成功する...が、ジャケットには掠ったようで、中の水がこぼれ落ちていく。

 

「武器の生成操作もしくは物体の引き寄せ...!」

 

おそらく前者か...?武器を操る力だとすれば、狙撃を逸らしたことにも一応説明はつけられる。他者の武器も操れることになるから出来れば勘弁願いたいが...さっきの透明化の弐式が使った火炎瓶も、こいつが生み出したものか...?

 

「……っ、あぶっ⁉︎」

 

俺の持っていたホースが勝手に動き、俺に向く。そして勝手に水の放射を始めた。他者の武器の操作も出来るで確定...そして、本来ならこんなホースと水が武器になんてなるわけないから、俺、もしくは壱式が武器だと思っていれば操作対象に出来るのだろう。実銃を持ってなくてよかった...ちょい痛いけど水だから致命傷にはなり得ない。けど、俺の行動を封じるには十分すぎる...!

 

「クソが...!」

 

穴も空いてるし水はすぐに底を尽きるだろう。そしてホースは固定されていて動かせないから、無理に動かそうとせずに手を離し、壱式に両手を向けて炎を放つ。

 

間借りしたこの炎には銃弾を完全に消滅させるほどの火力はない。だが、一部を溶かすことはできるはず。形を崩せば、空気抵抗が増して軌道は逸れる。さらに摩擦熱の増幅で銃弾の軌道に手を加えれば...!

 

「今だやれ!!」

 

立て続けに放たれた五発の弾丸が、軌道を逸れて外れる。リボルバーであるため残弾がないことは分かっている。今がチャンスだと指示を出しながら俺は壱式との距離を詰める。

 

「っ...⁉︎」

 

距離を詰め、びしょ濡れの身体で腕にしがみつくことで腕を破壊しようとしたその時だった。

 

空中にいくつもの銃器が現れ、銃口は俺の方を向いていた。武器の生成と操作...手に持たなくとも、直接操って引き金を引くこともできんのか...!防御手段がねぇ!このまま突進して壱式ともみくちゃになり、摩擦熱増幅での弾丸逸らしをどさくさ紛れにやるしか...!

 

「お疲れ。よくやった」

 

背後から声が聞こえた。

 

その直後、俺の目の前には壱式の姿は無く...いや、そもそもここは先ほどまでいた場所ではない。県庁本館の入り口付近...延岡部隊の後方⁉︎

 

「葉山⁉︎」

 

「無茶しすぎだ。少しは協力を覚えることだな、参謀くん?」

 

クッソこいつ煽ってきやがる...!

 

だが、俺があの場から姿を消したことで事態は好転したようだ。突然俺が消えたことで壱式の生み出した銃器での銃撃は全て空を切った。そして、その隙を突いて狙い澄ました延岡の射撃が壱式の両足を撃ち抜き、機動力を封じた。

 

「アイツ、なかなか筋がいいよな。狙撃兵としてスカウトしてやりてぇ」

 

「うちの主力奪おうとしないでもらえるか...?」

 

俺らがそんなことを話している間に決着がついた。

 

操られて自身を傷つけることに繋がりかねない武器を全て捨てた門川が壱式に近づくと、足を失って前に倒れ込んでいた壱式の頭を踏みつけて視界を封じ、ジャケットを脱いでタンクの蓋を開け、中身の水をぶちまけ始めた。

 

流石の壱式でも、この純粋な水という武器を操ることはできなかったようで、まともに水を浴びてしまう。水に触れた身体はみるみるうちに溶けていき、消滅していく。

 

「討伐完了だ...っと、これが例の...」

 

門川はそう言いながら消えゆく壱式に手を伸ばした。トドメを刺した者にのみ見える、ハウリング能力が手に入る光に触れた門川は、フッと意識を失ってびしょ濡れの地面に倒れ込んだ。

 

「……っと、そうだ...!総員周囲を警戒しろ!倒したのは武器生成のアンチ!透明化は消滅していない!門川を守れ!」

 

念には念を入れて、周囲の点検をさせる。意識を失い無防備な門川が襲われでもしたら目も当てられない。

 

「……お前、本当に元一般人か?場慣れしすぎだろ」

 

「まぁ、過去に色々あったもんで」

 

「そんな、ハワイで親父に教わった〜みたいなこと現実にあるんだな...」

 

……そっか、地球だからそういう話が出てくることもあるのか...ここ最近で一番の驚きを心のうちにしまい込みながら、俺は周囲の点検に混じりに行くのだった。




最低でもこの章までは26話ペースを続けようと思っているので、これからもだいぶ巻き気味の展開になると思います。
次第に人類側の手数が増えていって、戦力を分割しての同時攻略もこの先起こるため全ての都道府県での戦闘を描写することはないので、多分26話で収まるはず...

ちなみにまだ全ての都道府県のハウリングを決めているわけではないので、ぼちぼち完全に決めようと思います...
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