神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8598字。

移動&軽い戦闘回です。


襲い掛かる盗賊、あるはずのない印

「カリヤーお客さんやでー」

 

ドンカラを立つ日の朝...ずっと太陽真上で昼みたいなもんなのに朝って呼んでいいのか?まぁとにかく、日が変わってすぐのことだった。

 

カミレに呼ばれて下に降りると、ルミが待っていた。

 

「おっ、ルミじゃんどうした?」

 

「あ、あのっ、ええと...」

 

キョロキョロと周りを見て、ルミは口籠もっていた。

 

「……ここじゃなんだし、上で話そうぜ。そこなら誰もいないしよ」

 

「……うん」

 

ルミは魔族のことを話しにここまで来たのだろう。それなら周りに誰もいない方が話しやすいだろうと思い、二人で上の階へと向かう。

 

「ここならいいだろ。適当に腰掛けてくれ」

 

周りに誰もいないことを確認してから、適当な箱に腰掛ける。

 

「魔族の話...しにきたんだよな?」

 

「うん。その...まずは、ありがとう」

 

「いいってことよ。頼まれなくともやってたことだしな。感謝したいのはこっちの方だぜ」

 

「……私、急に記憶が元に戻ってびっくりしちゃったんだ。魔族がパパの姿になったんじゃなくて、魔族がパパだったと思い込まされていただなんて...」

 

「そっか、俺が魔族を殺した瞬間に、改竄された記憶が全て戻ったんだな」

 

俺が前に拘置所で使った記憶改竄の魔法は、解除されることのない永続的な記憶改竄だ。だから魔力銃を消しても効果が残っていた。対してあの魔族の記憶改竄は、死んだら効果が消えるタイプのものだった。あの会場の外にいた者の記憶も一斉に元に戻ったのだろう。

 

「それでね、私はパパが魔族に取って代わられてたことを知ってたからまだ良かったんだけど、ママは知らなかったから、ものすごい混乱しちゃって...心の病気?で今入院してるの」

 

ま、マジか...夫がいつのまにか別人になってて、そのことに一切気付くことができなかったってのを考えると、精神を病んでしまうのは致し方ない...なんとも不憫で可哀想だ。

 

「ママが入院しちゃって、結局パパも戻ってこなくて、私今家で一人で...」

 

ルミの目に涙が浮かんでいた。今にも溢れ出しそうで、だけどルミは懸命にそれを止めようとしていた。

 

「悲しいけど、こんな時だからこそしっかりしなきゃって思ってて...そのためにも、頭を整理したくてここに来たの。今まともに話せそうなのが、カリヤさんしかいなくて...」

 

鼻を啜り、手で涙を拭って、ルミは俺の目をまっすぐ見た。

 

「パパを...魔族を殺してくれて、本当にありがとう。私、カリヤさんに話して...信じてよかったって思ってる」

 

「……うん、どういたしまして」

 

そう言いながら俺はルミの頭に手を伸ばそうとして...ハッとなって手を戻した。ついついステラにやっていたように頭を撫でようとしてしまったが、流石に会ってまだ二回の子にやるわけにはいかないな。事案がすぎる。

 

「あと、泣きたい時はちゃんと泣いていいんだぞ?」

 

「大丈夫。ここに来る前に、もう嫌になる程泣いてきたから...パパの遺体が見つかったって報告が、家を出る前に来たの。なんでも、この町の住人じゃない人なのに首輪をつけていない遺体が前に町の中で見つかって騒ぎになったんだけど、その人がパパだったらしくて...」

 

……なるほど。記憶の改竄で、ルミのお父さんの姿をこの町の人全員が忘却させられた結果、町の住人ではないと認識されていたのか。記憶が戻ったことで、実はルミのお父さんだったと発覚したわけだ。さっき、ルミが結局パパが戻ってこなかったと言っていたが、もう遺体として見つかっていたからそんなふうに言っていたんだな。

 

「でも、その仇はカリヤさんが取ってくれたから、もういいの。もう二度と会えないけど、覚悟はできてるから」

 

「……強く生きてくれよ、ルミ」

 

「うん、私、お父さんみたいな議員になるって決めたから。町の人みんなのことを考えて、みんなが幸せに暮らせるような町を作るって決めたから。だから、頑張って生き続けるよ」

 

僕を見つめるその目は、決意でいっぱいだった。

 

「カリヤさんは...これからも魔族を殺していくの?」

 

「そうだな。残る魔族は十六人。一人残らず殺すつもりだ」

 

「そっか...私には応援することしかできないから、この町からカリヤさんの無事を祈ってるね」

 

「ありがとう。ルミも立派な政治家になれるように頑張ってくれ。俺も陰ながら祈っておくよ」

 

「……ごめんね。話したかったことはこれでもう終わりなんだけど、なんか忙しそうな時に来ちゃって...」

 

「いいよ別に。ちょうど良いサボりの口実になったしな」

 

「さ、サボりはダメ...だよ?」

 

「ははっ、冗談だ。んじゃあ下まで送るぜ」

 

ルミを下まで送り、家に帰らせた。最後の最後まで感謝してくれたんだが、みんなの前だったもんだからちょっと気恥ずかしかった。

 

「なぁなぁ、いつのまにあんな可愛い子と知り合いになったん?」

 

……と、茶化しに来る奴もいる始末だ。とりあえずその頭にチョップして黙らせてから、俺はこの町を立つ準備に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だいぶ空振りが続くなぁ...」

 

センフリを出てから、三つほど町を巡ったが魔族は一人もいなかった。一人旅をしていたなら魔族がいないと分かったらすぐに次に移動できるのだが、ドンカラの配送について回る今の感じだとそれもできないのが地味に辛い。無意な時間を過ごさなければならないってだいぶ退屈なんだな...

 

「まぁ四人をこの広い世界でとんとん拍子に見付けられたことの方が異常だったんだろうけどさ...」

 

「次の町は当たりだと良いね」

 

「だなー他の国に行くのは面倒だし」

 

ドンカラは基本的にこの国の中でしか商業をしていないため、他の国にも魔族がいたら今のやり方では探し出すのは困難だ。その時になったらいつもの一人旅に戻るだけだが、できればこの国だけで完結してほしいものだ...そーいや、この国ってなんて名前なんだ?よくよく考えてみたら知らないな...

 

「そないなことよりも盗賊の心配してほしいわーユーリ見張り頼むで」

 

「わかってるよ」

 

さっきまでいた町を出る時に、町の人からこんな忠告を受けていた。ここから俺らが次に向かうハイソという町の間では、馬車を襲う盗賊がいるらしいのだ。その盗賊はどこからともなくやってくると、弓矢を使って襲い掛かってきて金品や食料などを奪っていくらしい。

 

ただ、一つ気になるのは、弓矢で襲いかかってくるにも関わらず、被害あった人全員無傷らしい、というところだ。弓矢で威嚇射撃こそすれど、直接人に撃ち込むようなことはしないってことだよな?そんな情報が出回ってたら脅しにならないと思うんだが...何かしらの能力が関係していたりするんだろうか?

 

「まぁもし来たとしても、カリヤがおるから安心やな!」

 

はい、フラグ立てた。これ絶対盗賊襲ってくるやつじゃん。

 

「……しゃーない。そんときは代わりに戦ってやるよ。ほんとにそんなことになったらなハッハッハ」

 

こういう時はさらにフラグを積み立てることで逆に現実になりづらくしてしまえば...

 

「ちょっ、カリヤあれ見てーや!人が空飛んどるで!」

 

「そんなんただ能力で飛んでるだけでしょ」

 

この前浮力を操ることで空を飛んでいた魔族と戦ったし、そういうことできる人って普通にいるにはいるんだろ?まぁ、珍しいっちゃ珍しいのかもだけど。

 

「……さっき僕そっちの方見てたけど、そんな人いなかったよ?」

 

「でもそこにおるで?」

 

「……弓矢?」

 

カミレが指差した方を見たユーリがポツリと呟いた。

 

「件の盗賊じゃねぇかチクショウ!」

 

俺もバッと空を飛んでいる人の方を見る。フードを目深に被ったそいつは確かに弓矢を持っていて、しかももう矢を番えていた。今にも矢を放ってきそうな勢いで...

 

「狙いは馬か!カミレ急停止させろ!」

 

「わ、わかった!」

 

カミレが能力を使って全ての馬に止まれと命令するのと、盗賊が矢を放つのはほぼ同時だった。

 

馬車が急停車したため、放たれた矢は馬に当たることなく十数メートルは先の場所に命中する。もしそのまま走り続けていたら当たっていただろう。そして馬車が動いたまま馬が倒れることで、馬車は横転し大惨事になっていただろう。ギリギリのところで最悪の事態は回避できた。

 

……が、盗賊は止まらない。盗賊は空を飛び回りながら次なる矢を番えると、馬の足を狙って矢を放ってきた。まだ荷台から降りる途中の俺にはどうすることもできず、カミレが引き連れていた、馬車を牽引している馬全ての足に矢が突き刺さっていく。

 

「ああ!アタシの馬がー⁉︎許さへんアイツ!!」

 

ってかアイツ普通に当ててね⁉︎全員無傷だって話じゃ...そういや被害者って言ってたし無事なのは人だけで馬は例外ってか⁉︎

 

「カリヤ仇取ってくれー!」

 

「わーってるよ!」

 

荷台から飛び降り、荷物を奪い取るために少しずつ高度を落としつつある盗賊を睨みつける。

 

「クソっ、魔族じゃねぇのか...!」

 

魔族だったらサクッと撃ち殺せたものを...普通の人間だから殺さないようにしなきゃいけなくて手数がかなり減っちまうぞどうする...?

 

「……そこ、退いてもらえるかな」

 

俺のことを見下ろしながら、盗賊が話しかけてきた。

 

「退くわけねぇだろ俺らの移動手段奪いやがって。タダで済むと思ってんなら大間違いだぜ?」

 

「この状況で良くそんな見栄を張れるね。そんなに力に自信があるのか?」

 

「ああ大有りだ。お前のことなんかサクッと締めれる程度には自信があるぜ?痛い目見たくなけりゃこんなことやめて投降するんだな」

 

「さっきのを見てそこまで言うなんて...けど、投降なんてするつもりはない。僕らが生き残るにはこうするしかなくてね...僕からもこう言うよ。痛い目を見たくなかったら大人しくその積荷を寄越しな」

 

「断るね!」

 

「そうか...なら、こちらも力づくで奪い取るのみだ!」

 

盗賊が弓矢を構え、俺のことを狙ってくる。

 

「先に言っておく...俺に弓矢は通用しないと思え!!」

 

盗賊の手が矢から離れ始めた瞬間に動き始め、俺の右肩を狙って放たれた矢を回避する。

 

どれだけステラと一緒にいたと思ってるんだ。弓の構え方、矢の番え方、力のかかり具合...そんなのを見ていれば手が離れる瞬間には軌道が丸わかり。能力とか魔法で途中から軌道を変えるとかされなければ、完璧に先読みして避けることなど容易い。

 

聖杖世界で過ごした一年と数ヶ月の記憶と経験を持つ俺が、こんな空飛ぶ盗賊なんかに負けるかよ!

 

「避けれるもんなら避けてみやがれ!」

 

魔力銃を生み出し、銃口を盗賊に向けて引き金を引く。銃口から大量の火球が放たれ、盗賊の飛行先を覆う勢いで飛んでいく。

 

「火炎系の力...そんなので僕を捉えられると思うなよ!」

 

「おっ、だいぶ速いな...」

 

盗賊は飛ぶ速度を上げて、壁のように迫り来る火球を回避する。そしてそのままの勢いでこちらに矢を三本立て続けに放ってきた。

 

「けど、そんなん脅しにもならねぇぜ?」

 

無理な体勢なのと、急加速によってさらに乗った慣性を計算していなかったためか、矢はあらぬ方向に逸れていったため別段避けることなく外れていく。

 

「ほーら、ちゃんと狙わないだダメだぜ?こんなふうにな!」

 

魔力銃を消し、俺はエアガンを生み出す。きちんとホップアップがかかっていれば、BB弾の射程は五十メートルほどになる。この距離なら十分当てられるはずだ。

 

距離と盗賊の飛行速度、BB弾の速度などなどを加味して狙いを定め、偏差撃ちをする。引き金が引かれたことで放たれたBB弾は、上向きの回転によって生まれた揚力のおかげで重力に逆らいながら長く遠くに飛んでいき...盗賊の肩に命中する。

 

「あづっ゛⁉︎」

 

多分、あの盗賊には飛んでくるBB弾が見えなかったのだろう。突然肩に痛みが走り、何が何だかわからず戸惑っているようだった。

 

「ダメだぜーちゃんと当たったならヒットって叫ばなきゃ」

 

「何を訳のわからないことを...!」

 

「また痛みに襲われたくなけりゃ、大人しくすることだな」

 

エアガンの銃口を盗賊に向ける...サッと横に避けられた。手首を動かして合わせようとすると、スッと今度は上に飛んで避けられる。完全に警戒しているな...もしかして、こいつが自分に向いたら痛みが走る、みたいなふうに勘違いしているのか?エアガンが能力の照準の役割を果たしていて、これに狙われなければ能力は発動されないって思ってるんじゃ...まぁ、こうも避けられちゃ当てられないのは確かだな。

 

「なんの力なのかさっぱりだけど、お前もマルチなんだな...なら、もう手加減はしない。一度眠ってろ!」

 

「お前も...って、まさかおまっ⁉︎」

 

その言葉に驚いている間に、盗賊はこちらに向かって一直線に飛んできた。急いでエアガンを構え、対抗しようとした俺だったが、信じられない光景に一瞬思考が止まる。

 

盗賊の姿が一瞬にして消え去ったのだ。

 

まさか、空間転移の能力...?かと思われたが、俺の頬に正面から拭いてきた風が掠った。これはおそらく...透明化。光を捻じ曲げたか、俺の認識を歪ませたかで盗賊の姿を視認できなくさせられたのだ。

 

それに気づいた俺は適当に当たりをつけて引き金を引いた。パンパンパンッとBB弾が飛び出し、空中で何かにあたったかのように弾けていく。

 

そこに盗賊がいる。だが、それがわかってもこの距離じゃどうしようもなかった。

 

次の瞬間だった。

 

「あ゛...があ゛あ゛ぁ゛っ゛っっっ!!」

 

頭に鋭い痛みが走った。まるで、矢が刺さったかのような...いや、本当に刺さったのだろう。頭蓋骨を突き破り、脳にまで達したかのような痛みが俺の頭を揺さぶり、意識を奪おうとしてくる...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、その痛みとは裏腹に、どこか冷静な自分がいた。

 

こんな痛みを...脳まで貫かれたかのような痛みを感じるほどの怪我をして、なぜ生きていられるんだ?

 

この痛みの中意識を保っていられたのは、聖杖世界での経験のおかげだろう。闘技場にて実際に死ぬほどの痛みを何度も味わってきたがために、死に直結しない痛みは脳が慣れてしまって、こんな痛みを受けても意識を手放すことなく動じずにいられるのだ。

 

そして、今感じている痛みは、この経験上の痛みと似ている。死に直結しない痛み。それが示すことはつまり...

 

「この痛みは偽りの痛み...意識を奪うための幻覚でしかない!!」

 

俺の刺さっている矢に触れる。触れてみてわかったが、刺さっている場所からは血が一切出ていなかった。つまり、傷になっていない。やはり幻覚であると確信した俺は、そのまま刺さっている矢をがっしりと握ると、頭の中を掻き回されるような痛みに耐えながら矢を勢いよく引き抜いた。

 

「オゥラァッッ!!」

 

弓矢でみんなを脅しながら、積荷を奪うために降下してきた盗賊に助走をたっぷりつけた飛び蹴りを叩き込む。

 

「ナッ...⁉︎」

 

飛び蹴りを喰らった盗賊は驚愕と苦痛に満ちた声を上げながら地面に墜落し、ゴロゴロと転がっていく。

 

「の、脳天に...確かに射したはずだろ...!なんで動けんだよ⁉︎」

 

「舐めてもらっちゃあ困るぜェ!この程度の痛みでおちおち寝てられるかってんだ!!」

 

「くっ...狂人が...!」

 

盗賊はゆっくりと起き上がり、弓矢を構えながらまた飛び立とうとする。

 

「させるか!」

 

テーザー銃を生み出し、盗賊に向ける。だが...

 

「また消えた...!」

 

盗賊の姿が一瞬にして消える。だが、透明になっているだけで存在していることには変わらない。攻撃はやめ、ジグザグに地面を駆け回ることでどこから飛んでくるかもわからない矢を避ける。こんだけ予測不可能な行動を取れば矢を当てることは至難の業なはずだ。

 

相手はマルチ。この世界には魔道具のようなものはないから、飛行も幻覚を与える弓矢も透明化も、全てあの盗賊自身の能力だ。さっきは不意をつかれてしまったが、それは飛行以外に能力があると知らなかったから。わかっているなら対処のしようはある。

 

「もう油断はしねぇぜ...?どうせ近くにいんだろまずは逃げ道を塞ぐ!」

 

テーザー銃を消し、魔力銃を作り出す。そして魔法弾を四方八方に向けて発射する。

 

「即席の結界みてぇなモンだ。これでお前はもう出られない」

 

放たれた魔法弾は数十メートルほど進むと、急停止して空中に魔法陣を描いた。その魔法陣が障壁の魔法を起動し、複数個合わさることで辺り一帯を囲う半透明な箱を作ってしまう。

 

もしも既にこの範囲外に逃げられてしまっていれば徒労になってしまうが、まだ何も盗れていない以上この場を離れているとは考えにくい。絶対にこの中にいるはずだ。

 

「あだっ⁉︎」

 

障壁に何かがぶつかった音がした。そして、何か痛がるかのような声もしてきた。

 

「そこに...いるな!」

 

俺は音がした方向に向けて魔力銃を向け、魔力弾を放った。放たれた魔力弾は減衰することなく見えない盗賊のもとまで飛んでいき、命中する。

 

「っ...」

 

魔力弾の威力はか細い。当然、これで倒せるなどとは思っていない。だが、魔力は本来この世界にはないもの。それを知覚することは何事よりも容易い。これで能力を使って姿を消したとしても、撃ち込んだ魔力を辿れば盗賊の姿を追える...!

 

「あ゛...」

 

さらに追撃を加えようとした、その時だった。盗賊の透明化が解除され、その姿が露わになる。

 

「ッッッ...!!!!」

 

「ちょちょちょっ⁉︎」

 

何をしてくるつもりなのかと見ていたら、盗賊は苦しみ出してそのまま頭から地面に向かって真っ逆さまに落ちようとしていた。慌てて俺は走り出し、落下地点に滑り込んで盗賊をキャッチする。

 

「もしかして、この世界の人には魔力って害なのか...?」

 

魔力弾を撃ち込んだ直後にこんなことが起きたのだ。関連性がないとは言えないだろう。本来この世界にないものが体に入り込んだことで、拒絶反応を引き起こしてしまったのかもしれない。今思えば、これまでこの世界の人間に魔力弾そのものを撃ったことは無かったからな...こうなるなんて知らなかった。

 

そんなことを考えながら、俺は先ほど魔力弾を撃ち込んだ場所に触れた。聖杖世界で幾度となくやってきた魔力操作で、体内に入り込んだ魔力を外に放出し...こんなことしなくても、魔力銃を消せばいい話だったな。一緒に障壁も消えちゃうが、問題ないだろ。

 

「う、うぅ...」

 

魔力銃を消して体内の魔力を消してやると、盗賊は意識を取り戻したようで、ゆっくりと身体を起こした。その拍子に、目深に被っていたフードがぱさりと落ちた。

 

「……あっ⁉︎」

 

盗賊...その正体は子供だった。そして少年はバッと額を手で覆って隠した。まるで、そこに見られたくないものがあるかのように。だが、俺の目はハッキリとそれを捉えていた。あるはずのないそれを。

 

第三の目(サード・アイ)...⁉︎」

 

魔族しか持っていないはずの身体的特徴。それを、なぜ普通の人間であるはずのこいつが持っているんだ...?まさか、神からもらった力が間違った判定をしたとでもいうのか?

 

「おいお前!」

 

「ちがっ、僕は魔族じゃ...」

 

「なんで魔族じゃねぇのにそれ持ってんだ!」

 

「……えっ?」

 

この反応...間違いない。こいつは魔族なんかじゃない。能力は正しかった。じゃあなんで第三の目(サード・アイ)があるんだ...?

 

……もしかして、そういうことか?偶然その位置に第三の目(サード・アイ)っぽく見えるコブとひきつれが起きて、あたかも魔族かのように見えるだけ...?魔族は第三の目(サード・アイ)を必ず持ってるけど、第三の目(サード・アイ)があるからといって必ずしも魔族ではない...必要条件と十分条件みたいな話になってきたな。けど、つまりはそういうことなんだろ?

 

「なんで僕が魔族じゃないって...」

 

「そういう能力なんだ。お前は魔族じゃない、そうだろ?」

 

「……」

 

「こんなことするのも、それのせいで魔族だって勘違いされてるから...ってとこか?そういやさっき僕たちが生き残るには...とか言ってたな。ってことは他にも似たような連中がいるのか?」

 

「っ!離せ!!」

 

抱えていた少年が急に暴れ出したため、思わず手を離して解放してしまった。そして瞬く間に透明になってしまい、何処かへと飛んでいってしまう。

 

「……逃しちまったか」

 

いろいろ聞きたいことがあったんだが、逃げられてしまったなら仕方ない。

 

「にしても、まさか第三の目(サード・アイ)を持つ普通の人間がいるだなんてな...」

 

魔族を見抜く能力を持ってて良かった。もし持っていなかったら、第三の目(サード・アイ)の有無で魔族を見分けていただろうから、無関係な普通の人間も殺してしまっていただろう。本当によかった。

 

「馬も全員無事...と」

 

俺を射抜いたのと同じ弓矢だったためか、馬は全員無事なようだ。おそらく、あの少年が地面に落ち始めた時に全ての能力が解除されていたのだろう。そのおかげで矢を引き抜かずとも自然に消えたのだ。痛みも引いたのだろう、馬たちは元気に嘶いていた。襲われた人が全員無傷ってのは、幻覚の痛みを与える弓矢で襲われたからだったんだな...

 

「積荷は?」

 

「全部無事だ。ありがとうカリヤ」

 

積荷を確認して回っていたユーリがそう言うってことは、被害は無しか。

 

斯くして、俺は一切の被害なく盗賊を返り討ちにし追い返すことができたわけだが、新たな謎も生まれることになったのだった...




カリヤくんはいろんな経験を積んでるからそれなりに強いけど、少し爪が甘いというか、ちょっと予想が外れるとすぐにダメになるんですよね...まぁそれもご愛嬌ってことでね!
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