神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8453字。

今回は全編会話回です。


能力保持者の事情聴取

「……ここ、か」

 

福岡戦から一日が経ち...俺は、ある部屋に呼び出されていた。自衛隊が占拠した福岡県庁の一室だ。

 

ここに呼ばれた理由は...まぁ、何となく見当はついている。俺の幻痛の熱についてであろう。日田の部下たちの前で能力を使ったからな。あの時には理解が及ばなかったかもだが、異質な力を使ったことに後から気付いたのだろう。

 

はてさて...どう切り抜けたものか。入った瞬間に殺される、とかは流石にやめてくれよ?対話にさえ持っていけば、殺されるような流れにはならないように出来るのだが...

 

「……あれこれ考えても仕方ないか...」

 

なるようになれだ。銃で撃たれようが、弾丸の摩擦熱を増幅させて逸せばいいだけ。近接武器で襲ってきたら体術でいなすだけ。俺なら無傷とまではいかないだろうが、この場を切り抜けることくらいはできるはずだ。

 

コンコンッ。

 

「入れ」

 

ノックをすると返事が返ってきた。入るか...

 

「失礼しまっ⁉︎」

 

扉を引いて、中に入ろうとしたその瞬間だった。足が何かに引っかかる感触があり、咄嗟に下を見るとそこにはワイヤーのようなものが取り付けられていた。ワイヤートラップ...⁉︎早速仕掛けてきやがった...!

 

慌てて飛びのこうとしたが、遅かった...

 

俺は、突如として上から降ってきた水をモロに浴びてしまった。

 

「……なに?これ」

 

なんで俺、こんな子供が仕掛けたかのようなトラップを浴びせられたの?意図がわからなくて困惑を隠し切れない。

 

「ほら見ろ!水を浴びても身体が溶けない!身を守った様子もない!紛れもない人間だろ⁉︎」

 

「延、岡...?」

 

聞こえてきた声の主が延岡であることにさらに驚く...そして、一旦冷静になろうと心を落ち着かせようとしながら、俺は部屋の中を見渡した。

 

部屋の中にいるのは、十人。その中で見覚えがあるのは...五人。延岡に、葉山、小樽、門川、中津...いずれも、ハウリング能力を手にした者たちだ。他の五人は知らないが...そのうちの二人はやけにピシッとした隊服を着ている。上官か?

 

……となると残り三人は、現状自衛隊が保有している八つのハウリングの持ち主たちか?予知能力に、重力操作、透明化の能力者たちだろう。

 

こんな能力者大集結をするほどの話ってことは、十中八九俺の力についてだろうな。そんで、入って早々水をぶっかけられたのは、俺がアンチではないことを証明するためか...?

 

「……ふむ、たしかに人間のようだ」

 

上官らしき男が呟く。

 

「突然呼びつけ、挙句このような仕打ちをしてしまい申し訳ない」

 

「良いですよ別に...タオルさえ貰えるなら」

 

「用意済みだ。ほれっ」

 

葉山が転移で俺の目の前にタオルを出現させてくれたので、それを掴み取って濡れた髪や服を拭く。

 

「拭きながらで構わんから話を聞いてくれ。私は日比谷と言う。ハウリング能力を手にした者たちを統括する立場にある者だ」

 

そう言った日比谷の襟元を見ると、そこには星のようなものが二つついていた。あれって、階級章だっけ?あんまり詳しくないが、星だけしかついてない人って、将官レベルの立場なんじゃ...

 

「隣にいるのは補佐役の東雲。皆はハウリングを手にした者たちだ。何人かは君も見覚えがあることだろう」

 

一通りの紹介を終えた日比谷は、真剣な表情でこちらを見据えた。

 

「まず、なぜ召集命令が下ったか...君は理解しているか?」

 

「……なんとなくは。一応、理由を聞いても?」

 

「全ての始まりは、福岡戦の予知から始まった。壱式を倒すのに君が必要不可欠だと予知に出た時にはその理由はわかっていなかった。だが、その時が近づくにつれて八代君の予知も鮮明になっていった」

 

八代...この名前には聞き覚えがある。たしか、日田の奴がそんな名前を出していたような...

 

「そして、その予知には君がハウリングのような特異な力を使っている場面が映っていたと八代君から報告があってな。その場に居合わせた日田部隊の生き残りや中津君に聞き取りも踏まえ、何かしらの力を持っていると断定してここに呼びつけたというわけだ」

 

なるほど、中津たちに見られていなくとも、予知に映っていたから遅かれ早かれバレていたのか。だったら、なおさらもっと早く使うべきだったな...

 

「このことに、何か異議申し立てはあるか?」

 

「ないです。俺が力を持っていることは事実なので」

 

「そうか。では、その力はいつどこで手に入れた?48体目の壱式がいたとなれば大問題だ。包み隠さず教えてもらいたい」

 

……そうか。他人目線だとこの力はハウリング能力にしか見えない...というか、ハウリングしか超能力がないのだから、人の身で力を使っている=壱式を倒しているという認識になるのか。そして、俺は沖縄から九州にかけてしか移動していないため、他の地方の壱式を倒すことは物理的に不可能。各都道府県に一体ずついる壱式とは別に壱式が存在するという話になってくるのか。

 

「この力は元から持っていた。壱式を倒して手に入れた力ではない」

 

壱式が他にもいるというのは誤りだから、余計な混乱を生まないためにもしっかり否定する。信頼を得るためにも、ここは嘘をつかずにすべて打ち明けるとしよう。

 

「もとから持っていた...?」

 

「ああ。自衛隊の非常部隊に入るよりも前からだ。そして、こうしてバレる前からも、ちょくちょく隠れて使っていた。そうしていなければ、福岡の炎の壱式を討伐することはできていなかった」

 

「……そうか、トドメを刺したのは延岡君だったが、あの場で壱式を追い詰めていたのは君だったな。そういえば、突然壱式がハウリングを解除したと報告にも挙がっていたが...それは君の仕業だったというわけか」

 

うなずいて肯定する。

 

「だが、わからないな。なぜ君はそのような力を手に入れていた?力を隠していたのは、自分のみが力を持っており、バレたら迫害されるのではないかという恐怖や、アンチであるとの勘違いを避けようとしたなどと予想がつくが...正体のわからないものを扱うわけにもいかん。説明を求める」

 

「説明...か」

 

「自分でもわかっていないのか?」

 

「いや、そういうわけではない。どう話そうか考えていただけだ。そうだな...皆は、オカルトや超常現象をどこまで信じている?」

 

「信じてるか...?まぁ、こんな力があるくらいだし、前よか信じてもいいって気にはなっているな」

 

俺の質問に葉山が答えた。

 

「なるほど...たしかに、ハウリング能力やアンチの存在によってある程度許容範囲が広がっているかもしれなな。けど、これから話すことはそれでも信じがたいことだろう。だが、すべて真実だ。信じられずとも、ひとまず聞いてくれ」

 

そう前置きして、俺は話し始めた。俺は別の地球から来たこと。どっかの神様が起こした事件によって人々の魂が初期化されるという出来事があったこと。それによって世界が変質してしまい、その中でも大きく本来の歴史から逸れてしまった世界がいくつもあること。その世界を、世界を統括している神様の頼みで修復して回っていること。その際に、一つ超能力を持っていくことができること...などなど、ひたすら説明した。

 

この世界にはアンチ事変前には超常的な力は存在していないため、すぐには呑み込めないことであることは重々承知している。それでも俺は誠意をもって説明を続けた。

 

「この世界での異変は、皆も知る通りアンチの出現だ。魂の変質によって、とある人間は異質な力を手にしながら産まれてしまった。自身の劣化複製と多数の能力を持ったそいつを、神様は新人類と呼んでいた。それが今のアンチなのだろう。俺は新人類...アンチをすべて殺し、この世界から消し去ることを目的として送り込まれた神の使いというわけだ。この世界に元々いた人間ではない」

 

「じ、じゃあ沖縄にいたのは...?」

 

「この世界への出現位置として最適だったのが沖縄だったらしい。自衛隊の現本拠地があったのもあそこだったからな。旅行中にアンチ事変に巻き込まれたというカバーストーリーを携えて、神様の指示に従って自衛隊に接近した。ちなみに、あの非常部隊募集のテストがあったあの日に俺はこの世界に来た」

 

「……にわかには信じられない話の連続であったが、今話したことはすべて真実である...ということで良いのだな?妄想や植え付けられた記憶ではないと断じて言えるか?」

 

「ああ。つっても、証明のしようはないがな。唯一証明できるのは、俺がこの世界に持ってきた能力くらいか」

 

「まだ聞いていなかったか。君の持つ力は、いったい何なのかね?」

 

「俺はこの能力を、幻痛の熱と呼んでいる。幻覚の痛覚と書いて幻痛だ。物体が擦れる際に生じる摩擦熱を増幅し操ることができる...が、その熱はモノを燃やしたり焦がしたりはできない偽物の熱。痛覚に直接熱さをもたらす目に見えない攻撃だ。まぁ、増幅熱を蓄積させればいずれ本来の摩擦熱も溜まっていってモノを燃やしたりできるようにもなるが...中津が見た、芝生の火はそれが原因だ」

 

……ダメだ、何度やっても能力を説明する力が養われない。俺が考えた能力だってのに、微妙に複雑なせいで伝えにくいし、これでもちゃんと説明してるつもりだがどれだけ伝わっているのかがまるでわからない...!

 

「……見せた方が早いか。能力を使って見せてもいいか?」

 

「加減してくれるのならば」

 

「それじゃあ加減して...」

 

俺は手をパンッパンッと叩く。

 

「たったこんだけでそこそこ貯められる。蓄えた増幅熱は目には見えず、モノに宿すことや空気を経由して別のモノに流し込むことができる。あとは、熱を宿したモノを増幅熱を消費することで動かすこともできるな。ちなみに今回の熱の熱さはこれくらい...」

 

「アツッ!?」

 

突如として幻痛の熱を浴びせられた葉山がわちゃわちゃとその場で飛び跳ねだす。

 

「熱過ぎ...!」

 

葉山は熱の宿った手をぶんぶんと振る。

 

「本当なら、熱を浴びせて暴れた際の摩擦熱も増幅させれるから追撃できるんだが、まぁ今回はデモンストレーションだからやらないでおこうか」

 

「これ、かなりヤバいぞ...目に見えないのもヤバいし、回避不可能なのがえぐ過ぎる...!」

 

「熱は実体がないから、障壁や壁を透過して攻撃することができる。アンチたちが何かしらの方法で身を守ろうとしたとて、貫通して攻撃ができるわけだ。だが、こんな能力にも弱点はある」

 

「弱点...?こんな力があれば何でも倒せるだろ」

 

「一つ。この力は基本的に痛覚に作用する力であること。そのせいで、痛覚を欠損している下位個体には一切能力が通用しない。水に熱を宿して動かすといった方法でしか攻撃ができないわけだ」

 

「……上位個体なら効くのだろう?運用方法はこちらで考えればよい。効かない相手は他の者が当たればよいのだから気にする必要はない」

 

「まぁ、それもそうだな。上位個体を追い詰めるために使う分には十分だろうな」

 

別に下位個体相手だろうが普通に武器使ったり体術で攻撃できるから問題はないんだが、対壱式決戦兵器として運用されるのも悪くはないな。

 

「もう一つの弱点として、物理的な火力があまりないことがある。与える熱は偽物だ。脳が錯覚を起こして自らやけどを生み出したりすることはあれど、基本はダメージにならない。熱に耐えきれずに意識を失うといったことが起こらなければ、この能力だけでは倒しきれない。もちろん、圧倒的なほどに熱を蓄えることができたなら話は別だがな」

 

この能力を考えた時にはこうなるとは思っていなかったが、水という対アンチに特化した武器を命中させるための繋ぎとして使うのが良さそうだよな。この能力でガンガン戦っていくことを想定して作ったのだが、案外使ってみると火力不足だったから妨害目的で使った方が強そう...もうちょい増幅効率上げておけばよかったなぁ。

 

「説明できることはこんなものかな。何か質問はあるか?」

 

「……一つ質問していいだろうか」

 

日比谷が口を開いた。

 

「君はこの世界を直すために来た...と言っていたな。そして、異物としてアンチを挙げていたが...ハウリング能力はどうするつもりだ?」

 

「ハウリング能力?...そっか、もしアンチを全員倒したら、人間にハウリングが残るのか...」

 

「全てを戻すために、それらも排除する...などといったことはしないよな?」

 

「どうなんだろ。そもそも壱式を倒したら能力を手に入れられるっていうのがこの世界に来て初めて知ったことなんだよな...ちょっと待て。神様に聞いてみる」

 

『そこまではしなくて良いぞ。ハウリング能力が残っても問題はない。新人類という、人類の脅威さえ取り除けとこの世界の神は言っておる』

 

返事早いな...

 

「そこまではしなくていいってさ。アンチだけ倒せばいいらしい」

 

「……そんな、簡単に神と連絡を取れるものなのか?」

 

「そういうもんなのさ。全てが終わったらハウリング持ち全員始末とか、そんなことはしないから安心してくれ」

 

多分あの質問の意味ってこういうことだよな。つーか、もしハウリング持ち全員殺さないといけないってなってたら、この場で俺が殺されるだろ。危ないな...

 

「……あっ、そうそう言い忘れていた。俺はアンチを全て倒し終えたらこの世界から離脱しなきゃならない。そして、離脱するには死ぬ必要がある。だから全部終わったら何かしらの方法で死んで退場させてもらうんで、そこんとこよろしく」

 

「よろしく、じゃないが?」

 

軽く言ってのけたところを葉山に突っ込まれる。

 

「なに簡単に死ぬとか言ってくれてんだ?」

 

「とは言ってもね、そういうもんなんだから仕方ないだろ。元々俺はこの世界には居ない存在。用が終われば去るのみ。次の仕事も控えてるしね、さっさと離脱する必要がある。これまでにも三回既にやっていることだ。今更ここを突っ込まれようと、変わるつもりはないぜ」

 

「っ...」

 

葉山は黙った。何を言っても無駄だと分かったようだな。

 

「他に何か質問はあるか?」

 

日比谷の質問に答え終えたので、次の質問を聞こうとするが...無いみたいだな。

 

「無いのなら、俺から話すことは終わり...」

 

「じゃあ俺から一つ言わせてもらおう」

 

突然男が声を上げた。こいつは...俺の知らないハウリング能力者の一人か。

 

「なんだ?」

 

「俺はさっき話題に出てきた予知のハウリング能力者の八代っつーんだがよ...」

 

予知の八代...って待て、そうだ八代って日田の...!

 

「お前、そんな強い力持ってんだろ?だったらよ...なんで日田の野郎が殺される前に壱式をぶっ殺さなかった!ああ゛⁉︎」

 

八代は俺に詰め寄ると、胸ぐらを掴んで叫んだ。

 

「っ...日田の奴が言ってたな、予知を手に入れた八代とは友達だってよ...」

 

「ああそうだよ!奴とは親友だった!それを!お前が手を抜いたせいで死んだんだ!よくも俺からアイツを奪ってくれたな!!」

 

「八代君やめなさい!」

 

日比谷が叫んで静止を促す。

 

「日田君を殺したのはアンチだ、断じて彼のせいではない!」

 

「けどコイツが最初から本気を出してりゃ、アイツは死ななかった!アイツの死に際の予知のすぐ近くにコイツがいた!止めれたはずだろ!!」

 

っ...そうか、予知のせいで親友の死に際を見てしまっているのか...

 

「そう、だな」

 

俺はゆっくり口を開く。

 

「たしかに、俺がもっと早く能力を使うと決意していれば、日田が生き残れた可能性もあったかもな...」

 

「認めたな!お前がアイツを...!」

 

「だが、俺は殺していない。殺したのはアンチ...そこを履き違えてもらっては困る」

 

「なっ...お前!」

 

「俺に憤るのは結構だが、それでは日田も浮かばれないだろう。日田が死ぬ要因になったアンチは三種。障壁と、既に死んでいた透明化の下位個体、そして死体操作の弐式にして物質透過の現壱式だ。残る最後の奴を殺す方が、よっぽど日田のためになる」

 

「ペラペラと...!自分の罪から逃げるんじゃねぇ!」

 

「逃げる?...そんなつもりはない。そんなに憎いのなら俺を殴るがいいさ。ただし、殴ったらあとはアンチ狩りに専念してもらおうか」

 

「っ...言ったな...!」

 

ギリリと歯を噛み締める八代は、グッと拳を握りしめ、胸ぐらを掴んだまま思い切り俺の左頬を殴り飛ばした。

 

「ぐっ...!」

 

「日田の痛みはこんなもんじゃねぇぞ!」

 

八代は叫びながら俺を奥へ投げ飛ばそうとするが、俺はしっかり耐えて倒れるのを防ぐ。

 

「そう、だな...こんなもんじゃ、足りねぇ...!!」

 

ドゴォッ...!

 

「なっ...⁉︎」

 

俺は自分の頬をこれでもかという勢いで殴り抜いた。八代の拳の二倍以上と言っていいほどの威力の拳が叩き込まれ、俺の身体はふらつく。

 

「これでも足んねぇ...いくら積み重ねようが、死に等しい痛みには到底ならねぇ...」

 

「っ...だったら、殺してやる...!お前に、アイツと同じ苦しみを...!」

 

「やめろ八代!流石に落ち着けって!!」

 

葉山が後ろから八代にしがみつき、身動きを封じる。

 

「いいぜ?殺されてやるよ」

 

「お前も煽るんじゃねぇよ⁉︎」

 

「全てが終わったらお前に俺を殺させてやる。異世界人の俺は死んだら消えるから、死体も残らない。合法な完全犯罪が出来るぜ?だからよ...死なずに最後まで残って見せろ。そして俺を殺せ。それが出来ねぇってんなら、約束は無しだが、どうだ?」

 

「……やってやる。最後まで生き残って、絶対にお前を殺してやる...!」

 

「……葉山君」

 

「了解」

 

葉山が抑えていた八代が突如として姿を消した。転移でどこかに飛ばしたのか...?

 

「お前なぁ...何で煽った」

 

「ああでも言わないと、アンチを倒すことに意識が向かないと思ったからだ。これで、アイツは最後までアンチと戦うはずだ。そして、絶対に生き残ろうとする...アイツが死んだら日田も悲しむだろ。これが、俺にもアイツにとっても、そして日田にとっても最善だと思ったから言った」

 

「お前...あの一瞬でそんなことを...?」

 

「それと、だ。日比谷さん。一つお願いが」

 

「……何だ?」

 

「八代を前線に出してやってください。予知の能力があれば、今のアイツならそうそう死なないはずです。障壁の力を奪えた今なら、八代を守りながら戦うこともできるはず。どうか、お願いします」

 

「なぜ、そのようなことを君が望むんだ?」

 

「それが、日田の願いだったから。アイツは、障壁の力を手に入れられたら八代を前線に戻すように上と交渉すると言っていました。前みたいに八代を前線で戦わせてやりたい...その願いを、叶えてやってほしいんです」

 

「……わかった。今すぐには難しいかもしれないが、その方向も考えてみよう」

 

「ありがとうございます」

 

日比谷に頭を下げる。これが、今の俺にできる日田への償い...

 

「……色々ありましたが、これで俺から話せることは以上です。異世界から来たなどと怪しさ満載だとは思いますが、あなた方の味方です。どうか、アンチ討伐に協力させてください...!」

 

「……頭を上げてくれ」

 

日比谷が口を開く。

 

「君の目的、使命は理解した。そして、歓迎しよう。君の力を、これまで通りアンチ討伐のために役立ててくれ」

 

「っ、ありがとうございます!」

 

「小樽君、彼の傷を癒やしてやってくれ」

 

「わかりました」

 

小樽がこちらに近づいてくる。

 

「あいや、別に治さなくていい。自然治癒に任せる。それが贖罪に少しでもなるなら...」

 

「有無は言わさない」

 

「あちょっ⁉︎」

 

小樽は俺に触れると、顔の傷をあっという間に治してしまった。

 

「この傷のせいでアンチにやられたなどといったことが万が一起こった場合、どう責任を取るつもりなんだい?」

 

「それは...」

 

「君に死なれては困る。戦力という意味でもそうだし、八代のモチベを保つためにも、よろしく頼むよ」

 

「はっ...自分で言っておいてなんだが、殺されるために生きろっておかしな話だよな」

 

「前からそうだったけど、よくもまぁあんな状況であそこまで口が回るよな」

 

「延岡...」

 

「まぁ...なんだ。これからもよろしく」

 

「……ああ!」

 

延岡の差し出した手を握る...

 

「いでででで⁉︎何すんの⁉︎」

 

「それはそれとして、俺らに隠し事をしていたことと危険な行動に出たことは上司として説教させてもらうから、そのつもりでな、参謀?」

 

「う、うす...リーダー」

 

ここぞって時に立場の差を利用してきやがって...強かな奴だ。

 

「……仮谷君、一ついいだろうか?」

 

「なんです?」

 

「先程君はこれで話せることは以上だと言っていたが、話してもらいたいことは他にもある。それは、君が知った新たなアンチの情報だ」

 

「……そっか、報告していなかったか...」

 

そういえばまだ、死体操作のハウリングのことや、新たな壱式に関することについて一切話をしていなかった。

 

「これは、俺の憶測も含まれています。それを念頭に置いて、必ずしも正しいとは限らないと思って聞いてください」

 

そうして俺は、また話し始めたのだった。




ついに能力バレ。
そして、八代にめちゃくちゃ恨まれました。
自分のせいで人が死んだのに精神性を崩さないカリヤくんですが、これは成長と言っていいのやら...
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