神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8243字。

前半会話パート、後半戦闘パートです。


死体操作のお膝元

「死体操作の壱式は、高知にいる」

 

ハウリング能力者が集められた作戦会議での第一声は、八代の予知報告だった。

 

「……そして、現物質透過の壱式も同じ場所にいる」

 

「高知に...?」

 

日田から物質透過のハウリングを奪って逃走した壱式は、その後行方をくらませていた。もしかしたら戻ってくるかもと、元々物質透過の壱式がいた大分の県庁を監視したりもしたのだが見つからず、九州をいくら探しても目撃されることはなかった。

 

そんな奴は高知に移動していたらしい。占領されていたため大分に戻れず仕方なくなのか、死体操作の方に引き寄せられて移動したのかはわからないが...壱式が二人もいるって相当面倒だな。

 

「どうやって福岡から高知に移動したんだ?橋は全て落としているから移動できるはずがないんだが」

 

「死体操作で転移を使ったんだろ。可能ではあるはずだ...っと、ここで死体操作のハウリングについて現状分かっていること、それに加えて俺の仮説も踏まえた資料を配らせてもらう」

 

事前に作っておいた紙資料を配る。俺がこの前の愛媛戦で気付いたことを言語化してまとめている。その場で話すよりも、こうして事前にまとめた文章なら俺の説明でも幾分か分かりやすくなるはず...

 

「能力使用申請によるアンチ間でのハウリングの間借り、そして俺らからも無理矢理間借りしている...か」

 

「そこに関して鳥栖に聞きたいんだが、福岡や愛媛での戦いの最中に、どれだけの人数に間借りをしていたか覚えているか?」

 

「……部下たちに全員使えるようにしてあったから、三十弱といったところだな」

 

「間借りを許可する中で、不自然な申請があったりはしなかったか?申請の数が多いとか、タイミングが不自然だとか...」

 

「あー、そういうのまでは分からないな。必要ならさっさと許可しちまうし」

 

「なるほど...葉山はどうだ?最低でも福岡から高知への移動に転移を使ったはずなんだが、不自然な能力使用申請はあったか?」

 

「……たしかに、思い返してみればあの時違和感があったかもしれない。何より俺らの部隊は、福岡での戦いの最中県庁を取り囲むように展開していた。そして、お前の言う物質透過の力を奪った壱式の姿は見ていない...初めは透明化と物質透過を併せ打ちしてバレずに結界を抜けたのかと思っていたが、あの時点で転移を使って逃げていたのか...?」

 

「じゃあ、これに書かれている通りである可能性は高そうだな」

 

「となると、高知での戦いは苛烈を極めることになるな。死体操作と物質透過の壱式に加えて、これまで倒してきたアンチたちの死体がそれぞれハウリングを使ってくることになる。実質、11のハウリングを相手取ることになるからな。それに加えて、生きている他県のアンチが攻撃してくることもあるわけで...」

 

「それは前からもそうだろう。問題は、本来なら倒したアンチのハウリングはもう考えなくていいところを考慮しなくちゃならなくなった、だろ?那覇や札幌を取る前の状態だと思って戦わなきゃならんわけだ」

 

「そうか、私の治癒の力も使われる可能性があるんだな...」

 

「……そこは問題ない。リスクはもちろんあるが、やりようによっては死体にハウリングを使わせない方法がある」

 

「なに?その方法はなんだ?」

 

「単純だ。能力使用申請を拒否すればいい。ただ、味方の申請かどうか見分けることはできないだろうから、全ての申請を拒否することになる...つまり、ハウリングの間借りが出来ない」

 

「なるほど...そりゃ大層なデメリットだな」

 

ハウリング能力の間借りは自衛隊にとって大きな戦力だ。超常現象を操るアンチに、同じく超常現象で対抗する...数にも数で対抗出来るなど、もはや必要不可欠な戦術となっている。

 

それを捨てるとなると、俺たちは純粋な武器と水の力で戦うことになる。ハウリングを使えるのは、保持者である延岡や葉山たちだけ...そして、それらを主力にしようにも危険が大きすぎる。アンチに殺されてしまうとハウリングを奪われてしまうためだ。戦力としては必要不可欠だが、あまりにもリスクが大きい...

 

「ここで、まず決めなきゃならないことが一つ。ハウリング能力者は今回の戦いに参加するか否か...同じ能力者で固めて動き身を守る方法は今回は使えない。ハウリングの略奪を防ぐためにも、皆は参加しないという手もアリだと思っている」

 

「……そこまでする必要はないんじゃないか?間借り禁止にすれば、既に死んでいるアンチはハウリングを使わないただの雑魚敵。おそらくアンチ側は、死体操作で俺たちのハウリングを使える前提で身を固めているはずだ。そこを崩せているならば、逆に俺らの能力を全て注ぎ込んで一気に突破してしまう方が早く、そして安全に決着をつけられると思うぞ」

 

「なるほど、そういう考え方もあるか...他に案はあるか?ないなら全員で突撃する方向で考えてみるんだが...決定で良さそうだな」

 

能力者だけを集めて県庁に突撃し、早期決着を決める...リスクはあるものの無能力者が突入するよりかは壱式討伐成功確率も上がるだろう。こっちには障壁や予知、転移など攻撃をやり過ごす能力が複数あるし、いざとなれば治癒もある。炎に武器生成など純粋な火力も申し分なく、透明化や重力、罠など搦手も使える...なまじバラバラに動くよりも一纏まりにして動いた方が強いなコレ。

 

「詳しい作戦は当日までに俺が考えておく。そんで、最後に決めなきゃならんことだが...誰がどの壱式を倒す?」

 

「死体操作の方は誰でも良いだろう。私たち以外に同行した者が仕留めれば良い。問題は...」

 

「ああ、物質透過の方だ。因縁がある者がこの場に二人いる。そのどちらかなのだが...この場で決めてもらいたい」

 

この戦いで、日田のハウリングを奪い返すことになる。そうなった場合、物質透過を手に入れるのは八代か中津のどちらかだ。両者ともにあの壱式は日田の仇である。片や友人として、片や日田の部下として、各々あの壱式には並々ならぬ思いがある。

 

「……多分、上層部が期待しているのは俺が仕留める方なんだと思う。本来なら、日田さんが俺の持つ障壁のハウリングを持つはずだったから」

 

物質透過と障壁の両方を持った能力者を上層部は欲しがっていた。二つの力を手に入れられるかという試験的な意味合いもあったとはいえ、実現できるのなら上も万々歳だろう。

 

「……けど、これは八代さんがやるべきだと思います。多分、俺なんかよりも気持ちが強いと思うので」

 

「ああ、俺にやらせてくれ」

 

中津が譲るようなことを言うと、すぐさま八代が名乗りを上げた。

 

「……なんとなく、そうなるだろうと思っていた。俺もこれに賛成だ。気持ちの面以外にメリットが大きいからな」

 

「メリット?」

 

「まず、予知を奪われにくくなる。物質透過の力は生命以外の全てをすり抜けることができる。アンチのハウリングも例外じゃない。直接アンチに攻撃されない限り、危害を加えられることが無くなるわけだ。障壁で守るために二人セットにする必要があったこれまでの状況も変えられるから、戦いの幅も広げられる」

 

防御系の力を固めて一人が持つよりも、最優先で守らなきゃならない人自身が身を守れる力を持っていた方が効率が良いからな。

 

「そしてもう一つ。それは、八代を物質透過のハウリング能力者であるとして公表できるようになること。予知を隠すために八代を一般隊員扱いしていたが、ハウリング能力者として公表できれば堂々と護衛をつけられる。予知をさらに守りやすくなるわけだ。それに、こうやってハウリング能力者だけが集められる会議にも参加しやすくなる」

 

「それは...そうだな」

 

「事情を知らない追加人員が来た時に、八代がいることを不審がられても困るか...よし、八代が壱式を倒すことにしようか」

 

「決まりだな。それじゃあ、今回の会議はこれでお開きだ。高知決戦に向けて、各自準備をしておいてくれ」

 

こうして、能力者のみの会議は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高知県庁は海から若干離れた位置に建てられている。だが、県庁近くに鏡川という川が流れており、海と繋がっているため巨大船では近づけないものの、小型船ならば少人数での接近が可能であった。

 

そのため、県庁突入組である者たちは小型船で川に入り限界まで近づいたところで転移して突入することになった。他の隊員たちは、川に入る少し前のところにある漁港に接岸して県庁に向かうことになるだろう。宮崎でやった作戦とほぼ同じというわけだ。

 

そういうわけで、俺ら突入組は漁港で小型船に乗り換え、川へ向けて出発したのだが...

 

「おい、何だよありゃ...!」

 

陸の方を見た者たちが次々に反応していく。

 

そこには、まるでゾンビかのように腐った死体たちが蠢く光景が広がっていたのだった。

 

「クソッ、死体操作の力で周辺の死体を操ってんのか...!」

 

おそらく、彼らはアンチに襲われて亡くなった者たちなのだろう。そうだよな、死体操作なんだから操れるのはアンチの死体だけじゃないよな...!

 

「悪趣味な...!」

 

「全くだ。それに、水で溶かすことができない分、ただのアンチよりも厄介だぞ...」

 

たしかに、水をかければ溶けるアンチとは違ってあのゾンビたちは簡単には倒せない。ある程度のダメージを与えれば死体操作で操れなくなることは分かっているが、人間サイズだとどれだけ破壊すればいいのか検討がつかないな。

 

「……燃やすしかないな。俺に任せてくれ」

 

「火力なら俺にも任せろ。火炎放射器でも実銃でもありったけ生み出してやる」

 

こういう時、純粋な火力を出せる延岡と門川は頼りになるな...こっちは二人のおかげで何とかなるが、漁港から移動する者たちは大丈夫か?装備は水鉄砲が主だから、実銃の装備もあるとはいえ大量のゾンビたちには少々心もとないような...これは、早めに決着をつけないといけなさそうだな。

 

そのためにも、死体操作から先に片付けたいのが本音なのだが...順番は物質透過が先だ。ターゲットは物質透過の壱式でありながら死体操作の弐式でもある。先に死体操作の壱式を討伐した場合、物質透過の壱式は一緒に死ぬのか死なないのか、どちらが起こるのか分からない。そして、もし仮に死ぬのだとしたら物質透過のハウリングは誰のものになるのだろう。

 

そうした不確定要素が多すぎるがために、物質透過の壱式から倒すことになっている。死体操作を先に潰してゾンビたちを消してやりたいところだが、こればっかりは仕方ない。順番通りに、いち早く二体とも処理していこう。

 

「……そんで、ゾンビアンチもちゃんといるようだな。使用申請がチラホラ来ている」

 

「こっちもだ」

 

通信機からハウリング特有のノイズが聞こえ出した瞬間に、皆が口を揃えて能力使用申請が来たと言い出す。

 

能力の間借りが出来る隊員たちには、今回の作戦中はしないようにと告げてある。そのため、この能力使用申請は十中八九死体のアンチのものだ。俺の説立証、そして却下によってちゃんとハウリングの発動を防げているようだな。

 

「……中津!そっちに壁!」

 

八代が突然叫んだ。おそらく予知で何かを見たのだろう。同じように判断した中津は、言われた通り即座に障壁を展開する。

 

その次の瞬間、障壁に何かが激突した。そいつは...

 

「身体強化の...上位個体か。どこにでもいるよなコイツら」

 

陸地から俺ら目がけて飛んできたのであろうそいつは、障壁に阻まれて落下していく。そのまま川に落ち、全身が溶けて死んでいく。

 

「そりゃ他県のアンチもそこそこ居るよな...だが、この布陣の前ではどんな攻撃も無意味だ」

 

「過信は禁物だがね。さて、そろそろ突入だ。八代、転移後どうなるかわかるか?」

 

「……アンチとゾンビどもに囲まれるが、炎で全て対処可能だ。怪我も無し」

 

「この様子だと、私の出番はそうそう無さそうだな」

 

今回は珍しく治癒担当の小樽も参加している。万が一この中の誰かが致命傷を負ってしまったとしても、死を迎える前に治せるようするためだ。日田の二の舞は起こさせないという上層部の判断である。予知と障壁があるからおおよそ平気だろうが...まぁ、障壁は物質透過で突破されてしまうからな。怪我してしまった際の対処はできるに越したことはない。

 

「では、飛ぶぞ」

 

葉山が突入部隊全十一人を転移させる。俺を含めた能力者十人に、死体操作を手に入れる春野を入れて計十一人...これが、今回の突入部隊の全容だ。

 

「っ、予知通り...!」

 

転移によって県庁近くに着地すると、周囲にはアンチ数体とゾンビたちが呑気に歩いていた。

 

即座に延岡が前方に炎を撒き散らしてアンチもゾンビも焼き殺し、後方は門川が生み出した銃で風穴を開けていく。

 

「……っ、上からくるぞ!」

 

八代は上を見ながら叫んだ。そこには、鳥の姿をしたアンチの下位個体がこちらに向かって急降下してきていた。

 

「任せて」

 

西条が手を上に上げ、横に振った。その動作によって、俺たちの頭上には目に見えないほどの細さのワイヤーのようなものが張り巡らされた。

 

アンチたちにはそのワイヤーは見えていないようで、そのまま急降下してワイヤーに触れ...バツンッ!!と翼が切断された。

 

「ほいっ、と」

 

すぐさま波佐見がアンチの重力を操って横へ薙ぎ払い、近くの建物の壁に叩きつける。翼を失ったアンチは身動きも抵抗も取れず、そのまま壁に押し付けられて圧死する。

 

「……片付いたか」

 

周囲の敵は一瞬で殲滅された。ハウリングって強いな...

 

「それじゃあ、俺らは援護に回る。突入頑張れよ」

 

そう言って葉山は鳥栖と共にどこかへ転移していった。葉山はいつも通り狙撃支援、そして鳥栖は狙撃中の葉山の姿を周りから隠すためについて行くのだ。

 

鳥栖の持つ透明化のハウリングがあれば、県庁に忍び込むことなんて簡単なんじゃないかとも思うが、実はめちゃくちゃ危険な行為なのである。まず、透明化をしていると、同じく透明になった人同士は互いを認識することができるものの、それ以外からの視認を完全に封じてしまう。そのため、下手すると葉山の狙撃支援が透明化していた誰かに偶然当たってしまい...といったことが起こりかねない。

 

そのため、潜入に透明化は使わず、葉山という狙撃手を守るために使うのだ。やや勿体無いものの、フレンドリーファイアをしてしまうことが一番しょうもないため致し方ない。まぁ、透明化なんてなくとも真正面から全てを叩きのめして進めばいいだけだ。コソコソ隠れて進むより断然早い。

 

「さぁ、進もう。さっさと物質透過の壱式をぶっ殺しに行くぞ」

 

「おう、了解!」

 

県庁への移動を始める。後ろや上は西条が常に罠を張り続けているため敵が来る心配はない。前にだけ意識を向け、攻撃に備える。

 

「アンチ発見!上位個体!」

 

高知県庁は高知城のすぐ真南にあり、もともと城の敷地内であったためか小さめではあるが水堀が県庁南側を覆っている。そのため県庁にこちらの方角から近づくには橋を渡るしかないのだが、接近ルートが限られていることが分かっているためか橋の近くにアンチたちが密集していた。それも、どいつもこいつも人型の上位個体...それに加えて人間アンチ問わずゾンビたちがいっぱいだ。

 

「上位個体は任せろ...!」

 

俺はポケットから小石を数個取り出し、斜め上へ勢いよく投げつけた。

 

投げられた小石は上位個体たちの上を素通りしていく...が、溜め込まれた増幅熱は途中で分離し、真下にいた上位個体たちに降りかかる。

 

「ア゛ッ!」

 

どいつも増幅熱を喰らって声を上げて苦しみ始めた。声を出したから全員弐式...しかも、痛覚があるってことはちゃんと生きているアンチだ。ってことは、他県から来た能力不明のアンチ...妙なハウリングを使われる前に仕留める!

 

「堀に落とせ!!」

 

「あいよっ!」

 

俺が幻痛の熱で上位個体たちの意識を焼いてハウリングの発動を封じている間に、波佐見が重力を操ることでアンチたちを皆水堀へと叩き落としていく。

 

「二時!!」

 

八代が叫んだ。二時の方向から攻撃が来る...!

 

「っ!まーたお前か...!」

 

飛び込んできたのは雷による身体強化のアンチだった。飛び込んでそのまま拳を放ってきたため、持っていた水鉄砲でその拳を受け止めようとする...と、アンチは直前で攻撃をやめた。破壊したら中から水が飛び出してきて拳を潰されると気付いたようだな。弐か参かはわからんが、この判断能力と身体能力の速さで場をかき乱されると面倒...!

 

「すまん間に合わなかった!」

 

障壁の展開が一歩遅れてアンチの接近を防げなかったことを中津が謝ろうとする。

 

「別に構わん!」

 

アンチに増幅熱を叩き込み、即座に蹴りを叩き込む。近づかれようが別に構わない。さっさと倒し切るのみ...!

 

「おらよっ!」

 

蹴りから流れるように小石を目に狙って投げつける。過度に摩擦熱を溜め込んだことにより本物の熱を蓄えていた小石が接したことでアンチの目が潰れる。視界を奪って平衡感覚が乱れたところにもう一度蹴りを今度は腹に叩き込み、アンチを後ろに転ばせてその直後に頭に向けて水鉄砲を撃ち込む。

 

「討伐完了!」

 

「このまま押し進むぞ!」

 

前に進むために、中津が障壁を解除する。その直後、延岡と門川が圧倒的なほどの火力を出してゾンビたちを蹴散らしていく。

 

「他の上位個体はどこいった?」

 

「あらかた水堀に叩き落としたけど、何体かしぶとく残ってる。遠いからこんなもんだけど...近づいてきたところを返り討ちにしようか」

 

基本的にハウリングは距離が遠くなるほど緩やかに性能が落ちていく。遠くから攻撃していくよりも、近づいたり、攻撃のために近づいてきたところを返り討ちにする方が効率が良い。

 

「のこのこと来おって...!」

 

門川が近づいてきたアンチたちに向けて鉛玉を撃ち込んでいく。生み出された銃たちが爆音を響かせて煙を撒き散らしながら弾を撒き散らし、アンチたちを蜂の巣にしていく。

 

……が、煙の中から一人だけ無傷でアンチが飛び出してきた。

 

「なっ、避けれるはずが...⁉︎」

 

「なら俺が!」

 

延岡が炎を放つと、アンチは炎に飲み込まれる...がしかし、その中からまたしても無傷でアンチが飛び出してくる。

 

「マズイ、物質透過か...!」

 

慌てて中津が障壁を貼ったものの、その障壁をすり抜けてアンチはコチラに向かって走ってくる。物質透過の上位個体か...敵にすると、なんでもすり抜けるってのは相当面倒だな...!

 

「だが、弱点は把握済み...!」

 

俺はアンチの進行方向にいる八代の前に立ち塞がると、水鉄砲をアンチに向けて引き金を引いた。銃口から飛び出した水は、アンチの身体をすり抜けることなく命中してその身体を溶かした。

 

無敵に思える物質透過のハウリングだが、アンチなので例にも漏れず水に弱い。水の含まれた液体をすり抜けることはできないのだ。日田が大分で物質透過の壱式を倒すことができたのも、この性質があったからこそ。ハウリングでは、水という弱点を克服することはできない。

 

「罠もすり抜けてくるか...厄介すぎでしょ」

 

「狙撃も当たらんからな。頼れるのは水だけってわけだ」

 

「いいや、それだけじゃない」

 

八代はそう言うと、突然横を向いて身構えた。その直後、障壁をすり抜けてアンチが侵入してくる。

 

ドスッ...!

 

八代の放った拳がアンチの顔面に突き刺さる。

 

「生物はすり抜けられない...ハウリングを奪っていった野郎には直接拳を叩き込んで殺してくれるわ。水なんかで簡単には死なせねぇぞ」

 

お、恐ろしいことを言うなこいつは...けど、ただの物理攻撃が聞くのは事実。水が切れたとしても太刀打ちできなくなるわけではないことは覚えておこう。

 

「道が開けたな。今のうちに進むぞ」

 

あらかた掃討したことによって橋を渡れるほどの余裕が生まれた。重力と障壁によって橋までアンチに妨害されない道を作り出し、移動を...

 

「待て!これは...!」

 

八代が静止を促した。どんな未来が見えたというんだ...?

 

「まさか、長らく雨が降らなかったせいか...!」

 

八代がそうつぶやいた瞬間だった。

 

水堀に叩き落したはずのアンチたちが、なんと這い上がってきた。

 

「水堀が...枯れてやがる...!」

 

「はは...そうきたか」

 

天候を操るハウリングによって常に晴れになっていたため、どうやら水堀が枯れてしまっていたらしい。

 

面倒だが...こいつらは、ちゃんと殺してやらないとダメそうだ。




やはり能力者がこれだけそろうと大味な戦闘展開になりますね...壱式との戦闘が始まればこの流れも変わると思うので、しばしお待ちを...
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