神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8124字。

広島回です。


過程省略の無差別弾

「全部が全部俺の希望通り...とはならなかったが、まぁこれだけいれば十分だな」

 

などと、広島の港に降り立ちながら俺は呟いた。今日は、広島の過程省略の壱式を仕留めに来た。

 

今回のハウリング能力者は三人。予知と物質透過の八代と障壁の中津、そして治癒と猛毒の小樽だ。この三人は、事前調査で俺が必須だと思った三人だな。

 

本当はこの三人に加えて、過程省略の壱式と相性が良く攻撃性能も高い武器生成操作の門川も連れていきたかったのだが...八代も中津も小樽も、いずれもかなり重要な役回りであり、隊員の安全を守れる三人を持っていくのだから門川まで持って行くのは高望みしすぎだと怒られてしまった。

 

まぁたしかに、三人をここに集めると他の場所は被弾が許されなくなるし被弾の可能性もぐんと高まる。となると、やられるより前にやれという作戦にするしかないから、攻撃役も引き抜くのは流石にやりすぎだと引き留めるわな...

 

これはもう仕方がないので諦めた。大人しく俺が攻撃役を担うしかない。一応、以前とは違い小樽も多少攻撃に参加できるようになったから、全部を対応しなくちゃならない状況にはならないだろう。それでも、俺が主力であることには変わりない...うまく立ち回らなければ。

 

「さて...サクッと行こうか」

 

「了解」

 

それぞれの部隊の部下たちも交えた大所帯で、広島県庁に向かって歩みを進める。もっとも、この全員で県庁に突入するわけではない。途中で部下たちは分割していき、多方向から県庁へと攻撃を仕掛ける他、県庁に向かってくるアンチたちの掃討という役割が与えられている。

 

それぞれハウリングの間借りが為されており、俺ら突入部隊の劣化版のような部隊がいくつも出来上がるようになっている。劣化というのは、単にハウリング能力者本人よりもハウリングの強度が落ちているという話だけではない。八代の予知能力は、俺の幻痛の熱にハウリングの枠を譲っているため公表されていない。そのため予知のハウリングは他者への間借りをしていないのだ。

 

そのため、予知有りよりも過程省略による攻撃を受けやすいというやや致命的なデメリットがあるが...治癒もあるし、事前に広めた作戦通りにやればおおよそ被弾は抑えられるから問題はないだろう。

 

「……おっと、早速お出ましだ」

 

前方から数体下位個体が走ってきた。下位個体はある程度の距離まで近づかないと過程省略の攻撃が届かないらしい。それでも数メートルくらいの距離から攻撃してくるのだが、近づくまで時間がかかるならこちらの負けは有り得ない。

 

「中津、やれ」

 

「了解」

 

中津がハウリングを発動して、障壁を生み出す。作り出された障壁は、アンチたちの周囲数十センチほどの位置を取り囲み箱を形成し、アンチたちの身動きを封じた。

 

このようにアンチを閉じ込めてしまえば、アンチはコチラへの攻撃手段を完璧に失う。その代わり、こちらの攻撃も届かないように思えるが...

 

「八代」

 

「ああ、わかってる」

 

八代は身動きできなくなったアンチに近づくと、水を纏える剣を抜き、アンチを捕らえている障壁に向かって振り下ろす。

 

ズバッ...!

 

八代の持つ物質透過のハウリングにより剣は障壁をすり抜け、中のアンチのみを水で切断した。

 

「今見てもらった通り、このやり方なら安全に過程省略のアンチどもを倒せる。わかったな?じゃあ散開!!」

 

部下たちに散らばるよう指示を出し、まず第一陣が分離していった。

 

事前に説明していた作戦がこの、障壁で包んで物質透過で安全に切断するという戦い方だった。実行可能であることも見せたから、これで他のチームたちも、多少ハウリングの性能が落ちてるとはいえ同じことができるだろう。

 

「あらよっと...それじゃあ、俺らは先に進むぞ」

 

八代から間借りした物質透過を使い、残りのアンチを切断した俺はそう言って歩みを再開した。

 

県庁に向かうにつれて、一つ、また一つとチームが分離していく。障壁で身動きを封じては切り、不意打ちを予知と障壁でうまく受け止め、また動きを封じては切り、封じては切り...と繰り返しながら県庁へ近づく。

 

そうして、県庁の前にたどり着いた頃には、俺らの部隊だけが残った。

 

「よぉ、緊張してんな?深呼吸しな深呼吸」

 

「え、あ、はい...」

 

もうすぐ県庁突入だってのに緊張し切っているこいつは三次。門川の部下で、今回過程省略のハウリングを手に入れる予定の隊員だ。

 

今回のハウリングはそこまで技量を必要としない攻撃向きの能力であるため、誰がこのハウリングを手に入れたところで大きな問題はなかった。そのため、門川の部下であり前からハウリングのことを知っていた三次が適当に選ばれたのだ。聞くところによると身体能力がそこそこ高いらしく、うまくこの力を使いこなしてくれそうな気がするが...この緊張しい度合いを見ると少し不安になるな。

 

「すぅ...大丈夫です。行きましょう」

 

「よしきた。そんじゃっ、中に突入...ッ!」

 

八代から間借りしている予知のハウリングが、俺に攻撃を仕掛けてくるアンチの存在を見せてきた。毎度のことながらどこにでも出没する雷の身体強化のアンチだ。いったいコイツはどこの県から来てやがるのかと毎度のごとく思うが、そんなことを考えるよりも前にまずは障壁を...

 

ッ⁉︎身体が、動か...

 

「ガフッッ!!??」

 

身体が一瞬動かなくなり、防御が間に合わず俺は身体強化の上位個体...おそらく弐式の攻撃をモロに喰らってしまった。俺は勢いよく県庁へと吹き飛ばされ、壁に叩きつけられそうになる。

 

「こ、の...!」

 

なんとか俺は物質透過のハウリングを発動させ、県庁の壁を通り抜ける。そうして県庁内の廊下に抜けたところで物質透過を解き、廊下を転がって緩やかに減速をかけていく。

 

「クソッ...行動抑制の奴がどこかにいやがったか...」

 

攻撃を喰らう予知は見えるが、必ずしも回避できるとは限らない。そして、見える予知を攻撃だけに絞ってしまっていたがために、行動抑制のハウリングによって身動きを封じられる未来を見ることができなかった...それが、攻撃を受けてしまった原因だ。

 

そういや、身体強化も行動抑制も山口にいたから、広島に居てもおかしくはないのか...過程省略以外のアンチも警戒しておくべきだったなぁ...

 

とか考えながら、俺は治癒のハウリングを発動させて身体強化にやられた傷を治していく。かなり手ひどくやられたが、一分もあれば治せるだろう。

 

「つーか、分断された...?」

 

壁を通り抜けたからというのもあるのだろうが、俺を攻撃した身体強化のアンチはコチラを追いかけてくることはなかった。ってことは、奴はあの場に残ってみんなを攻撃してるのだろう。八代と中津がいるから死にはせずに何とか耐え忍ぶことは出来るだろうけど、俺と合流するのは難しいだろうな。

 

「前からそうだが、アンチたちに警戒されすぎだろ俺...流石に間借りの件がバレたわけじゃないよな?」

 

俺だけ狙われたのは、以前からバレている幻痛の熱を警戒したからなはずだ。俺が翻訳能力を使ってアンチからハウリングを間借りできることは、他のアンチたちには知れ渡っていないはずだからこれが原因ではないだろう。バレたら尚更狙われるだろうな...使うときは、目撃者は絶対に逃さずに始末する気持ちで使わないとだな。

 

「さて...しょうがないし、一人で動くしかないか」

 

知事室は本館二階だ。先に一人で知事室に向かって壱式を追い詰めるなり、県庁の外に追いやってみんなと合流してから一斉に叩くなり出来るようにしておこう。

 

「階段はっと...ッ」

 

三方向から見えない斬撃によって身体を切られる予知が見えた。アンチ個人を障壁で囲うのはこの一瞬では無理。一度俺の周囲に障壁を貼って防ぐことにする。

 

ガキガキンッ!!と障壁に刀が当たるような音が鳴る。すぐさま俺は周囲を見渡してアンチの位置の特定を...

 

「くそっ、隠れたか...」

 

遠距離からヒットアンドアウェイで攻撃し続けるつもりか...なかなか面倒だな。

 

刀で攻撃してくるわけだから物質透過のハウリングですり抜けることができれば良いのだが、物質透過のハウリングはすり抜ける対象をしっかり選ばなければならない。すり抜ける対象である刀を目視して指定することが出来ていないから、障壁で守るしかないんだよなぁ...

 

「……面倒ごとに付き合うつもりはない。ここは一直線に...!」

 

障壁を階段状に生み出し、障壁を駆け上がっていく。そして物質透過のハウリングを発動させて、天井をすり抜けてそのまま二階へと移動する。

 

「階段は...そこか!」

 

二階に上がってきた俺は階段前に障壁を貼り、別の階からアンチがやってくるのを防ぐ。味方の侵入も拒んでしまうが、八代が物質透過でみんなを連れてくるなり、中津が障壁の操作権を奪い取って解除するなりすれば入れるだろうから問題はなし。一旦周囲にアンチがいないか確認してから、壱式のいる知事室に突入するぞ...!

 

「……いないな。じゃあ、行くか...」

 

俺は知事室の前に向かう。そして、物質透過のハウリングを発動させて知事室の中に突入する。

 

「ッ...⁉︎」

 

突入直後、予知が発動する。銃弾が俺の胸を貫く予知だ。知事室の中にいた壱式は拳銃を持っている。あれで撃たれるのだろう。

 

障壁が間に合うかわからない。同時並行で幻痛の熱の発動も準備しておき、飛んでくる銃弾の回避をする準備を整える。

 

……しかし、壱式はこちらに銃口を向けてこなかった。壱式は知事室に入ってきた俺を認識すると、そのまま銃を下に向けたまま引き金を引こうとしていた。

 

「っ、まず...!」

 

壱式が引き金を引いた直後、突如として前方に銃弾が出現して俺に向かって飛んでくる。コイツ...過程省略のハウリングで銃の狙いを定めるという過程を省きやがった!壱式は引き金を引くだけで俺らに銃弾を浴びせることができる...!

 

「アグッ...!!」

 

飛んできた銃弾は俺の肩に命中し、貫通して背後の壁に穴を開けた。なんとか銃弾が空気を引き裂く際の摩擦熱を増幅させて軌道を逸らすことに成功したものの、ギリギリ致命傷を避けるのが関の山だった。

 

「ヤバすぎ...!」

 

肩の傷を治癒のハウリングで治しながら俺は思考を回す。

 

奴の銃撃は必中ではない。過程省略で省略しているのはあくまで銃の狙いを定めるところまでであり、銃弾の発射から命中するところまで省略できているわけではない。斬撃と違い、命中が確定していないから放たれた銃弾をどうにかすることで回避は可能だ。

 

だがしかし、俺の回避行動は奴の攻撃と相性が悪い。奴の攻撃は引き金を引くだけで完了するため、ほんの直前まで攻撃の予知が発動しない。そこから障壁を貼っても間に合うかはギリギリだ。

 

そして幻痛の熱による回避だが、空気抵抗の摩擦熱の増幅しかできないため完全に軌道を逸らすことは不可能に近い。普通の銃撃ならばライフリングによる摩擦熱の増幅によって十分に増幅熱を溜めることができるのだが、過程省略によって銃弾が虚空から生じるために銃身で本来生じる摩擦を認識することが出来ず、その部分での摩擦熱の増幅が出来ない。そのため、増幅熱が足りず軌道を逸らし切れないのだ。

 

相性が悪すぎる...門川の武器生成操作があれば話は簡単だったのに、上層部の奴らめ...!

 

「こうなったら...!」

 

俺の勝ち筋で一番確実なのが、奴が銃に込められている銃弾を全弾打ち切るまで守りに徹し、速攻で仕留めること。

 

リロードはマガジンを抜いて新たなマガジンを差し込むことまでがひとつの動作であるため、移動と同じく過程省略で省略することができない。新たな銃を取り出すことも省略できないはずだから、必ずそのタイミングで隙が生じる。そこを叩くしかない。

 

これを最後の手段として進めていき、別の手も同時進行させる...!

 

「さぁ、来なよ」

 

障壁は貼らない。ガチガチに身を守ってしまえば、壱式は別の攻撃で仕掛けるなり逃げ出すなりしてしまうだろう。わざと攻撃をさせ、それを凌ぐことで残弾を減らしにかかる作戦だ。

 

同時に、壱式の僅かな動きによって生じるものや空気との擦れの摩擦熱を増幅させ、ジワジワと熱を与えていく。過程省略のせいで壱式は派手に動くとをしないから増幅できる熱量は微々たるものだが、少しでもダメージを与えなければ。

 

「自ら死にに来るとは酔狂な奴だな。ならば、今度は大人しく味わうことだ」

 

銃弾三発が飛んでくる予知が見えた。いずれも胴体の正中線ピッタリの位置に命中するようだ。狙いをつける必要がないからこそ、こうも正確に銃弾を浴びせることができるのだろう。

 

「ッ...!!」

 

全力で幻痛の熱を発動させる。前方に出現してこちらに飛んでくる銃弾の摩擦熱を増幅し、左右に軌道を逸らしていく。身体のど真ん中を狙われているため左右に逸らしても被弾はギリギリ避けられない。だが、臓器さえ守れば...!」

 

「ウグッ!...まだまだ!!」

 

脇腹を銃弾が貫くものの、すぐさま治癒を回して傷を埋める。

 

「こっちも攻めさせてもらうぞ...!」

 

壱式に拳銃を向ける。死なない程度に痛みつけるなり、回避行動を取らせてその摩擦熱を増幅させるなりして身動きを封じようという算段だった。

 

しかし、突如として前方から現れた銃弾が俺の持つ拳銃に命中し、俺の手から弾き飛ばしてしまった。

 

「クソッ、設定が甘かった...!」

 

予知のハウリングの発動条件を自らに危害が加わる行為に限定していたがために、過程省略で銃弾を放ち拳銃を弾き飛ばすという壱式の行為の予知を見ることができなかったのだ。

 

「近づくわけにはいかねぇし...」

 

これ以上近づけば、空気抵抗の摩擦熱の増幅による銃弾逸らしが増幅熱不足によって不可能になってしまう。よって、俺から近づくことはできない。

 

対して、壱式の方もこちらに近づくつもりはないようだ。俺の力が摩擦熱に関するものだとバレているのか、それとも自ら近づくことで反撃を受けることを恐れているのかはわからないが、両者共にその場を動かないため妙な膠着状態が形成されていた。

 

銃は弾き飛ばされてしまった。拾い上げようとすれば、その隙を狙って攻撃されるだろう。残る武器は、水を纏う剣のみだ。だが、これは近付かなければ攻撃できない。

 

「こうなったら...やるしかねぇか」

 

残り残弾がどれだけあるのか、俺からはわからない。リロードであったり別の銃に持ち帰るなどの不審な行動をしないか見張りながら、俺は口元を手で押さえて口を開く。

 

「過程省略...承認要求」

 

翻訳能力を使いアンチの言語で壱式に俺の声を届ける。アンチの言語だから、壱式は疑わずに承認してくれるはずだ。

 

「よろしい、まとめて承認だ」

 

そう壱式が言った直後だった。背後の扉がバタンッと開く音がして、予知のハウリングが発動した。

 

そこには、刀を持つ弐式がいた。扉を開け放った直後に過程省略のハウリングを使って俺の背中をバッサリ切るつもりらしい。こいつのハウリング要求と重なったのか...!

 

だが、こちらもハウリング要求は通った!過程省略の始点と終点...俺の場合は、剣に水を纏わせてから解除させるまで!

 

ザンッッ!!

 

過程省略のハウリングが発動し、背後から近づいてきていた弐式は水の刃で切断されたことになり上半身と下半身が分断された。弐式の攻撃は間に合わず、刀を鞘からほんの少し抜いた状態で床に倒れ込んだ。

 

「なっ...⁉︎」

 

俺が過程省略のハウリングを使ったことに心底驚いたようで、壱式は慌てたような様子で引き金を何度も引く。そんな予知を見た。

 

その予知をもとにして、俺は壱式が引き金を引くのと同じタイミングで剣に水を纏わせるボタンを押していく。

 

すると、過程省略によって虚空から突然出現した銃弾が、現れた側から切られたような傷をつけて別方向へと飛んでいった。俺も過程省略のハウリングを使って飛んでくる銃弾を剣で叩き落としたのだ。水を纏う必要は銃弾を叩き落とすためには必要ないのだが、わかりやすい始点と終点作りのために利用させてもらった。

 

「キタッ、弾切れ...!!」

 

壱式が引き金を引くも、銃弾は現れなかった。これが示すことは弾切れしかない。銃を使うってのに残弾管理出来てないってアホすぎだろ...と思いながら壱式に近づく。

 

「よっ...オラァッ!」

 

水を纏った剣と過程省略を駆使して攻撃をする。拳銃を持つ手を遠隔切断して武器を奪い取った俺は、そのまま近づいて奴の胸の辺りに飛び蹴りをかましてやった。

 

壱式は後ろにのけぞると、窓ガラスに後頭部を勢いよくぶつけたようで、窓ガラスにヒビが入った。これを利用しない手はない。

 

「そらよっと!!」

 

過程省略の力を使い、剣で窓ガラスを叩き割る過程を省略したことで突如として窓ガラスが割れて周囲に散乱する。そしてすぐさま下から蹴りを叩き込んで窓の方に追いやり、足を掴んで外に落とす。

 

「流石に死にはしないだろ」

 

物質透過のハウリングで壁をすり抜けて県庁の外に出る。知事室は二階。そこからの落下なら、頭から落ちてもアンチなら死にはしないだろう...と、俺は壱式のそばに着地しながら考える。

 

「おっ、良いところに...!おーい!こっちだ!来てくれー!!」

 

分断された仲間たちが目に入ったので大声で呼びかける。どうやら襲ってきたアンチを何とか倒して、県庁に入ろうとしていたところだったようだ。

 

「あとはコイツにトドメを刺すだけだ。さっさとやっちまってくれ三次」

 

身動きを取れないように、壱式の手足を水を纏った剣の過程省略による攻撃で切断しながら三次を呼ぶ。これでもう過程省略の力を使おうとも攻撃はできないだろう。

 

「さっさとやってくんないと...ハイエナが襲ってくるから...な!」

 

近くにいたのであろうアンチたちが一斉に襲いかかってきた。狙いは俺...ではなく壱式だろう。壱式を殺して過程省略のハウリングを奪い取り、人類の手に渡さないようにしようとしているのだろうな。

 

「これ...意外と制御むずい!ってか省略した分の体力ちゃんと消耗するのな...」

 

近寄ってくるアンチどもに水を纏った刃の斬撃を過程省略で一歩も動かずに浴びせていく...が、省略する動作が何であるかを省略前にしっかり決めないといけないし、省略した動き分の消耗がどんどん蓄積されていくから非常に辛い。

 

どうせ省略できるからと大雑把な攻撃にするのではなく、できるだけ最小限の動きで仕留められるように動きを決めなきゃならないのか...なかなか面倒な力だなこれ。その強さには裏があるってわけか。

 

「マジで早く来てトドメ刺して⁉︎なんで倒すべき壱式を守らなくちゃならないんだ!!」

 

「な、なんかすみません遅くなりました!!」

 

遠隔斬撃によってアンチたちがバタバタと倒れていく中、三次がこちらに駆け寄ってくる。そして駆け寄ってきた勢いのまま水を纏った剣を振り下ろして壱式の首を落とした。

 

「早くハウリングを!」

 

「は、はい!」

 

三次が壱式の胸の辺りに手を伸ばすと、フッと意識を失う。それを俺は左手で受け止め、すぐさま抱えて走り出す。

 

「……やっべ過程省略のハウリングが切れた!!ちょっ、助けて!!」

 

壱式が死んで三次にハウリングが移ったことで、俺が間借りしていた過程省略のハウリングが使えなくなってしまった。遠隔斬撃が出来なくなってしまったため、襲いかかってくるアンチに対する攻撃手段が失われてしまう。

 

こうなるんだったら銃を回収しておくべきだった...!幻痛の熱は襲ってくるアンチが下位個体だから効き目が薄いし、剣は近づかれてからの対処しかできないのと三次を抱えて逃げる時には扱えない...俺だけじゃ三次を守るのは無理!!

 

「中津!八代!防御任せた!!俺もう疲れてハウリング無理!!」

 

過程省略のハウリングによる疲労も相まって、俺がハウリングを使うのはもう無理があった。それを自覚しているため、防御は中津と八代に全面的に任せてしまう。

 

「了解!抱えて走れるか?」

 

「それはなんとか!港まで戻るぞ!!」

 

襲いかかってくるアンチを予知と障壁で何とか凌ぎながら、俺たちは港へ戻るのだった。




この過程省略の力はそこそこお気に入りなのですが、だいぶ無法寄りの攻撃性能してますよね多分これ...カリヤくんじゃなかったら最初の銃撃で死んでたので、少し強くしすぎたかもと思ってます。
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