前回からだいぶ時間が経っています。
すべての県の描写とかは無理なんで、良さそうな都道府県だけピックアップしていきます。
「よっ...と!相っ変わらず速いねぇ!」
俺は今、雷による身体強化のハウリングを扱う下位個体と戦っていた。
今回の戦場は大阪...これより西の地は全て攻略しきり、ついにここまで来たのだ。ここと京都を抑えることができれば、西日本の全域をアンチの手から取り戻すことができる。そのため、全兵力を大阪と京都に集結させて、大規模同時攻略作戦が実行されていた。
予知によって判明したハウリングはそれぞれ、大阪が身体強化、京都が行動規制であった。どちらも西日本攻略中にちょくちょく見かけたアンチたちだ。
どちらもとても強力のハウリングだ。そのため、動きを封じられても攻撃ができるようなハウリングを持つ隊員は京都へ、速さ関係なく攻撃が可能なハウリングや防御特化のハウリングを持つ隊員が大阪へと集結されていた。俺は素の身体能力で身体強化のアンチと渡り合えるというこれまでの実績があるため、大阪行きになっていた。
「それっ!」
接近してきたアンチの攻撃をひらりと回避しながら、水を纏った剣をアンチの進行方向に構えて切断する。
「にしても、まさかこんなに相性の良いハウリングが直前で見つかるなんてね」
兵庫県の壱式が持っていたハウリングは五感の強化。直接的な攻撃手段を持たず外界に作用するような力ではなかったため、倒してハウリングを奪うまでどんな能力なのか謎であったが身体強化のアンチの動きを見切るにはとても便利なハウリングであった。このハウリングで視覚や聴覚などを強化することによって、素早いアンチの動きにしっかりついていくことができている。
五感強化の壱式を倒すの、少し面倒だったんだよなぁ...どんなハウリングかわからないからってんで俺も駆り出されたのだが、五感強化で俺らの動きを先読みされて攻撃を何度も何度も避けてくる。直接的な攻撃性能のないサポート向きのハウリングだったからこちら側がダメージを受けることはほとんどないものの、ひたすら回避に徹しられて面倒だった。
最終的に、五感強化によって俺の幻痛の熱のダメージが爆増したために勝つことができたが、あんな面倒な戦いはもうごめんだな...サポート系のハウリングを叩くこと自体は楽なのだが、勝てる戦いをひたすら引き伸ばされるのは苦痛だ。
「おかげで、俺の能力も使いやすい...!」
俺の幻痛の熱は、五感で認識できた摩擦熱が増幅対象だ。五感強化によって、より細かく、より正確に摩擦熱を増幅させられるようになったため非常に取り回しが良くなった。
まぁ、デメリットも一応あるにはある。五感強化の壱式が俺の幻痛の熱を強く認識してしまったように、触覚の一種である痛覚も同様に強化されてしまっているのだ。視覚聴覚の強化によって攻撃の回避はしやすいものの、一度攻撃を受けてしまえば痛覚強化によって激痛に苛まれることになる。一長一短なハウリングだな。
「当たらなければどうということはない...がな!」
高速で襲いかかってくる下位個体の攻撃を避けながら摩擦熱を増幅させていき、少しずつ本物の熱を高めていく。痛覚のない下位個体には幻痛の熱はほとんど効かないが、五感強化で増幅効率が上がった今ならばすぐに本物の摩擦熱もダメージを与えられるほどの熱量に到達させられる。
まぁ痛覚がないためこれで動きが鈍るといったことは起こらないものの、僅かながらダメージは蓄積されていく。そうして頃合いを見計らって...!
「切る!!」
水を纏った剣で下位個体を切り裂く。身体が両断され、下位個体は息絶える。
「熱はもらってくぜ〜」
下位個体が溜め込んだ増幅熱を取り出し、俺の身体に纏わせる。増幅熱の量がそのまま手数に繋がる。倒したアンチからも回収して、次に繋げなければ。
「……っと、ゾロゾロ来るなぁ」
周囲から人型の上位個体が二人、下位個体が四体現れた。今ここには俺一人しかいないのに、だいぶ数を集めてきたな。
「こりゃいい感じに陽動が上手くいってるな。嬉しいやら、集まりすぎてて怖いやら...」
今回の俺の役割は、本隊を安全に県庁に辿り着かせるための陽動だ。
俺は何かとアンチに襲われて孤立させられがちである。それだけアンチどもに警戒されているわけだが、今回はそれを逆手にとっての陽動だ。一人で複数のハウリングの間借りをして最強となった俺を、本隊とは別方向から一人で暴れさせながら県庁に向かわせることでアンチの攻撃を集中させるわけだ。
俺は死なないことに集中しながらその攻撃に対処し、なんなら打ち勝って暴れ回ることでさらにアンチの意識をこちらに向けさせて本隊から気を逸らさせなければならない。実質的に、一人で頑張れそして死ぬなと無理難題を突きつけられているようなものではあるが、俺ならやってくれるだろうという期待にはちゃんと答えなきゃな...
「さーて...殲滅させてもらうぜ?」
両手で剣を構えながら俺はそう呟く。
次の瞬間、前方から突進してきた上位個体の拳が俺の胸に突き刺さる予知が見える。真正面から来たな...つーか、この程度の攻撃なら予知なんてなくても避けられるっての...!
正面の上位個体が雷を見に纏い、恐るべき速度で俺に向かって突進してくる。それに対して俺は、上位個体が動き出してから横移動で回避をし、剣に水を纏わせながら横に構えてすれ違い様に斬り飛ばす。
「単調な動き、欠伸が出るね」
俺にただ速いだけの攻撃は通用しない。五感強化による動体視力の強化によって、何もない状態でも見えていた攻撃はさらにスローになって見えている。突っ込んでくるところに攻撃を合わせることなど容易だった。
「次はお前だ!」
まず優先すべきは上位個体...よりも下位個体だ。今は攻撃されて尚且つ反撃しやすかったから始末したけれど、俺は先に下位個体を倒してしまいたい。
理由は、単純に面倒だから。幻痛の熱が効きにくいというのはいつも言っていることだが、それよりも面倒なのは動きが予想しづらいところだ。人の動きはいかようにも読める。人の形をした敵との戦闘は魔族との戦闘で何度もやってきたことだし、人の身でできる動きには限界があるから予想外の動きをされにくい。
しかし、下位個体は動物の形をしている。しかも、聖杖世界の魔物のようなファンタジーじみた生き物ではなく、一部溶けているような部分はあれど基本は普通に地球にいるような生き物の形をとっているため、これまでの経験がほぼ通用しないのだ。
動物じみた動きをしながらハウリングを使ってくる下位個体は、俺目線かなり厄介なのである。強化された動物の身体能力を経験による先読み無しで対処しなければならないため、予知無しでも先読みしやすい上位個体よりも攻撃回避に神経を多く裂かなければならない。そのため、早めに下位個体を始末してしまいたい。それが終われば、上位個体は幻痛の熱を使って一瞬で仕留めれば良い。
だったら先に上位個体を倒してしまっても良いのではとも思えるが、おそらく上位個体を先に倒してしまうとアンチたちに下位個体の方が俺の足止めに向いていると思われてしまい、上位個体が本隊の方に行ってしまうと思われる。上位個体の対処に苦戦しているように思わせて、こちら側に上位個体を集めるためにも後回しにするのだ。
「ほっ、それ!」
ジグザグに地面を駆け巡って近づいてきた下位個体の飛び付きを回避し、その背後から時間差で飛び掛かってきたアンチを水を纏った剣で斬り裂く。その流れで先ほど回避したアンチを後ろ手にノールックで斬り...
「っと!」
地面を這うような低い姿勢から、その鋭い牙で噛みつこうとしてきた下位個体を避け、すぐさま頭を踏み潰して身動きを封じる。
「おっと危ねぇ...!」
上位個体がちょっかいをかけてきたので、水を纏った剣をそちらに向けながら足元の下位個体を蹴り飛ばして接近を妨害する。
上位個体の接近を止めた俺は、残る一体の下位個体に自ら近づく。最後に残った下位個体は尻込みしているようで、なかなか攻撃してこないからこっちから攻撃を...!
「……っ!へっ、やるじゃねぇか!」
俺が振り下ろした剣を下位個体は横っ飛びで回避した。はなからカウンター狙いだったのだろう。避けられたのですぐさま横に剣を振って追撃するも、今度は上に飛んで回避しながら牙で攻撃しようとしてきた。
「だが、無駄!」
剣での迎撃が間に合わないと判断した俺は、剣を手放して下位個体の顎に拳を打ち付ける。そして殴り飛ばした下位個体の首根っこを掴むと、背後から近づいてくる上位個体に投擲する。
上位個体は飛んできた下位個体を避ければ良いものを、咄嗟に受け止めてしまった。それにより、下位個体に込められた増幅熱が流れ込んでその身は偽物の熱で包まれる。
「終わりだ」
落とした剣を拾い、トリガーを引いて水を噴射させて剣を振るう。水を纏った剣は上位個体を、抱えた下位個体もろとも引き裂き死滅させる。
「掃討完了っと...お次を探しにいきますか」
周囲のアンチを全て倒した俺は、県庁へと歩みを進める。アンチに圧をかけて、こっちに増援を送るように促すためだ。
「だが...ちと水が心許ないな。あと少ししかねぇや」
背中に背負っているタンクに入っている水は残りわずかだ。ここまでそこそこ連戦を乗り越えてきたから、出来るだけ節約しているとはいえかなり使ってしまった。道中で補給することはできないし、水が切れたら別の方法で戦うしかなくなってしまう。
「……っと、そんなこと言ってたら増援が...!ハッ、ここまで上手く思惑通りに行ってくれるとはねぇ!」
現れたアンチの増援は、上位個体が六人。下位個体は一体もいない。こちらの策略に相手はまんまと乗せられてくれたようだ。
「そんじゃあ...残らず死んでもらうぜ!」
剣を構えて、アンチの攻撃を待ち構える。
次の瞬間だった。俺の手足がガッチリ固まったように動かなくなってしまった。
「行動規制か...!」
どうやらあの上位個体たちは、全員が全員身体強化のハウリング持ちというわけではないらしい。俺の動きを止めてきたから、少なくとも一人は京都の行動規制で確定。他五人は...雷を纏い始めたのが四人か、じゃあまだ分からない奴が一人...!
「手足を止めたくらいで...俺を止められると思うなよ!」
まず、身体強化の上位個体たちが動き始めた瞬間に幻痛の熱を発動し、身動きによって生じた摩擦熱を極限まで増幅させる。その熱によって上位個体は苦しみ、動きを止めた。
すぐさま西条から借り受けた罠のハウリングを発動し、俺の周囲を覆うように罠の線を張っていく。これにアンチが触れれば罠が作動して、炎であったり切断であったりと、何かしらの攻撃が自動で襲い掛かるようになっている。弐式以上の身体強化には、線に触れてから罠が作動する前に走り抜けられてしまうため本来なら効かないが、幻痛の熱の影響で走りに支障が出て速度が落ちるため、これで身を守ることが可能なはずだ。
そうして俺は身を守ると、今度は動かない指を何とかほんの少しだけ動かし、剣のトリガーを引いた。剣表面の小さな穴から水が噴き出し、剣を覆い始める。
その水に幻痛の熱で作り出した増幅熱を込めていく。込めた増幅熱を消費することで、剣表面の水を動かして行動規制の上位個体に水の球を飛ばす。
「遠隔攻撃くらい、こっちにも手段はあるんだぜ?」
行動規制の上位個体に水をぶっかけて消滅させたことで、俺の動きを封じていたハウリングは解除された。
「……っ!」
動けるようになった瞬間に予知が発動する。突如として俺の目の前の空間が爆発する未来が見える。まだ判明していなかった上位個体のハウリングだろう。これは...まずいな。
俺はすぐさま後ろに飛びのきながら前方に障壁を貼る...が、またしても予知が発動する。爆発位置が先ほどと変わり、障壁の手前側に変えられてしまったためこのままだと爆発に巻き込まれてしまう。回避では爆破位置を変えられて対処されてしまう...何とか身を守るしかない。
急いで剣と背中のタンクをつなぐホースを外し、タンク内の水をばらまく。ばらまいた水に増幅熱を流し込んで周囲に漂わせ、空間の爆破による爆風を何とかせき止める。
「しゃあねぇなぁもう...!」
今ので水を使い切ってしまったため、もう剣での攻撃は出来なくなってしまった。こんなものを背負っていても邪魔なだけなので、剣もタンクも放り捨てる。
「やるっきゃねぇ...!」
またしても爆発の予知が発動する。この爆発はただ走って逃げるだけじゃ到底避けられない。能力の熱耐性によって爆発による熱はそこまで影響がないけれど、爆風と圧力は俺を倒すには十分な威力がある。どうにかして避けなければならない。
「身体強化、承認要求...!!」
アンチの言語の翻訳を起動して、幻痛の熱によって苦しみ悶えている身体強化の上位個体たちに呼びかける。たとえ壱式じゃなくとも、アンチたちが上の個体に承認申請をバトンリレーしていくのと同じように、コイツらに呼び掛ければ壱式まで申請が飛んでハウリングが返ってくるはず...!
通信機からノイズが鳴る。俺が放ったアンチの言語を拾ってノイズを響かせているのだ。そのノイズは壱式に直接申請を出した時よりも長く鳴り響き、ハウリングが返ってくるまでにも同様に時間がかかる。
「早く...しろ!」
そろそろ爆発が来る。間に合わなければ、爆発に全身を叩かれる...!
「ッ!キタ!」
ノイズが鳴り止み、ハウリング能力が宿る。
俺はすぐさまハウリングを起動して身体中に雷を纏い始める。そして雷で筋肉を刺激し、驚異的な筋力を発揮させてその場を飛び退くと、先ほどまで立っていた場所から十数メートルは離れた場所まで一瞬で移動していた。それとほぼ同時に、爆発が直前までいた場所を襲った。その近くに貼られていた罠の線が爆発によって悉く引きちぎられていく。
「さ、流石に速すぎ...!!」
俺は何とか着地して体勢を立て直した。
てっきり聖杖世界の雷装のようなものだと思っていたが、かなり身体能力にバフがかかるようだ。思っていたよりも何倍も動けるようになっていて正直驚きだ。多分あそこで悶えている身体強化の上位個体は弐式だから、そこからハウリングを得ているため今の俺が扱えるハウリングの強度は参式相当...それでここまで強化がかかるのか。
「意外とピーキーそうだな...扱うのに苦労しそうだ」
今の動きだけでわかったが、雷で強化されているのは筋力だけ。つまり、動体視力であったり思考速度であったりといったものは強化されていない。ただパワーやスピードが上がるだけなため、精密動作ができない。そして、急に止まろうとすれば肉体にかなりの負荷がかかる。だからこれまで戦ってきた身体強化のアンチは、すれ違いざまの攻撃をずっとしてきたのだろう。近距離で速度を活かしてひたすら攻撃する戦い方をするのは難しいようだ。
「けど、五感強化もあるし、今の俺なら...!」
五感の強化によって動体視力が強化されているので、高速移動中にも色々な動作をすることが可能なはずだ。それに加えて、俺には速度操作で音速以上の速さで動いてきた実績と経験がある。痛覚強化による自滅にさえ気をつければ、アンチよりもこのハウリングを使いこなせるはず...!
「まずは...お前だ!!」
地面を蹴って跳びはねる。蹴り込んだ地面にヒビが入り粉塵が舞う中、俺は一瞬で爆発の上位個体の目の前に移動するとそのまま顔面を右手で掴み、今の俺の勢いそのままに地面に頭を叩きつける。
ゴシャァッ!!と上位個体の頭蓋骨が砕け散る感触が走り、上位個体の頭からドバッと血が弾け飛ぶ。
「くっそ、これでもそこそこやりづらいな...やっぱ、すれ違い様に刃物で切るような戦い方の方が高速戦闘だと楽か...?」
今回は平気だったけれど、あの速度を出した状態でアンチに殴ったり蹴ったりしようものなら、アンチには相当なダメージを与えられるだろうがこちらの身もタダでは済まないだろう。それを避けるためにも、取り回しのしやすい刃物ですれ違い様にアンチの首を切っていく戦法が一番あっているのかもしれない。そこそこ強度のある武器である必要があるが、それは門川にハウリングで作り出して貰えばいいか...?
「まぁいいや、今回は治癒あるし派手にやっても問題ないだろ」
と呟きながら、俺は身体強化の上位個体四人の方を向く。しばらく目を離していたから、悶え苦しんでいた時に擦れて生じたであろう摩擦熱の増幅ができなくて復帰を許してしまった。
四人とも全身に雷を纏わせていてバッチリ戦闘モードだ。ハウリングの強度はあちらの方が上...だが、高速戦闘にはこちらに一日の長がある。多対一だろうが、負ける気はさらさらない。
「さぁ、来なよ」
俺が上位個体たちを煽ると、まず一人先走った奴がこちらに突っ込んできた。
この身体強化は細かい動きが難しく、必然的に大ぶりな動きになることが多い。そのため、動きを途中で変えることが難しい。だから、同じハウリングを使うもの同士ならば、後の先...カウンターを決める方が勝率が高い。
首を薙ぎ払うかのように放たれた飛び回し蹴りを軽く屈んで回避し、無造作に垂れ下がっている軸足に掴みかかった。そして、ぐっと俺はその場に止まろうと力を入れる。
すると、足を固定された上位個体は慣性によって上半身だけ前に進もうとする。しかし、足を掴まれているため前には進めず、そこを軸として下に倒れ込む形になる。その勢いを利用して俺は体を捻り、足を投げて上位個体を地面に叩きつけた。
「まず一人...!」
続いて二人が同時に飛びかかってくる。俺はすぐさま五感強化を解除しながら、自らの脚が壊れるのを覚悟で回し蹴りを放ち、飛んできた上位個体の片方を蹴り飛ばした。それによって上位個体同士が衝突し、錐揉み状態になって二人して地面に薙ぎ払われていく。
おそらく、今のでは殺し切れていない。折れた脚を治癒のハウリングで治しながら、もう片方の脚で跳躍して倒れた上位個体たちに飛びかかる。
「これで...!」
倒れた上位個体のすぐ近くに着地すると、その衝撃によって地面のコンクリートが破損し、破片が舞う。その中の先が尖った破片を掴み取り、上位個体の首を掻っ切ってその命を奪う。
「三人...ッ!」
残るは一人...というところで、身体強化のハウリングが解除されてしまった。おそらく、今殺した上位個体のどちらかが俺のハウリングの承認申請を通した奴だったのだろう。そいつを殺してしまったせいで、壱式とのハウリングの繋がりが断たれてしまったのだ。
「あと...一人!」
脚の治癒中であるため五感強化は使えない。身体強化のハウリングも使えない。
それでも、残る一人は倒せる。
俺のやることは決まっていた。最後の上位個体がこちらに向かって走り出そうとしているのを目視する。奴の攻撃を俺が喰らうことはない。攻撃を喰らう予知が見えていない時点で、これは確定している。
バンッ!!
俺が前方に貼った障壁に、走ってきた上位個体が衝突した音だった。
その次の瞬間、障壁にぶつかって動きが鈍った上位個体を取り囲むように障壁が設置される。そして、それと同時に罠のハウリングも起動しており...
ザクザクザクッッッ!!!
……と、上位個体の全身が切り刻まれて死亡した。
「……ふぅ、倒せたか」
身体強化があのタイミングで切れたのは少し焦ったものの、きちんと策を講じて返り討ちにできてよかった。
「さて...治したことだし、行きますか...」
まだ作戦は終わっていない。しっかり陽動を全うしなければ...
そう思って歩き出したその時だった。前方からまた上位個体が現れる。
「一体か...連戦辛いねぇ...!」
そうやって吐き捨てながらも、俺は翻訳能力を使ってまた身体強化のハウリングをもぎ取ろうとする。
しかし...
「……死んだ?」
現れた上位個体は、ふとプツリと糸が切れたかのように地面に倒れ込んだ。
「これ、は...なるほど、終わったのか」
俺がそう呟くと、ちょうど通信機から壱式を討伐したとの報告が飛んできた。
こうして、大阪での戦いは幕を閉じたのだった。
懐かしの雷による身体強化ですが、扱いやすさは雷装に軍配が上がり、出力はこちらのほうが上って感じで差別化してみました。
壱式になるとどれくらいの出力になるのかは...いずれ出せたらなと思っています。