比企谷 八幡の異世界漂流記(沈黙)   作:Lチキ

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IS インフィニット・ストラトス 12

 

あの後、八兄を連れ戻すために千冬姉が人間離れした全力疾走で追いかけたり、俺が一人で寮の部屋に行くと箒がいて、風呂上りのタオル1枚のところに居合わせて危うく頭をかち割られそうになったり、結局千冬姉と八兄は翌日の始業のチャイムが鳴るギリギリになって一緒に登校してきたりと色々あった

 

その時、2人は泥だらけで熊っぽい物を担いでいたがそれには触れないでおく

 

それから先も模擬戦までの1週間の間で色々とあった

 

翌日、俺の専用機がIS学園で用意されることになったと先生から報告を受けると、性懲りもなくセシリアが突っかかってきて、なんやかんやで八兄と口論になって

3分もしないうちに、昨日と同じ流れになってセシリアが涙目になったところで俺とクラスの何人かが全力で止めた

 

あと、専用機の話は八兄にもあったが当てがあると断っていた。

いつの間にそんな当てを作ったのかと凄い聞きたいところだが、半ば乱心状態のセシリアが騒いだり、それを周りがあやしたりなだめたりとそれどころじゃなかったので聞けなかった

 

その後、普通の授業になって束さんの話が出た所で、箒の事がクラスに知れ渡る事となってそれなりの騒ぎになったが

 

箒の姉とは私は関係ないという一喝でクラスの空気は凍ってしまい、それ以上この話が出る事はなかった

6年前の話だが、箒と束さんは仲がいいとは言えなかったがそこまで悪いという訳ではなかったはずだ。

それなのに、あの言いようはいささかおかしいと思い

休み時間に八兄に相談したら

 

 

「兄妹っていうのは大抵が優秀なほうとそうじゃない方とで周りから評価される。一方が優秀であればあるほどにもう一方は優秀な方の付属品と思われる物なんだよ。そうすると付属品は徐々に不満をためていきやすくなり、最終的に付属品であることが嫌になる

 

昔の知り合いに優秀な姉貴に憧れてその存在を認めてるのに反面してるっていう自身も相当優秀な妹と、妹より不出来で学校での認識が小町ちゃんのお兄さん、家でも妹がカーストトップで自分が最下位みたいな兄貴がいたよ

 

でも、妹が自分に反面しても使えるものは兄でも使うが座右の銘なちゃっかり妹でも上のやつは兄貴でも姉貴でも形がどうあれ妹を大切にしてるもんなんだよ。もっとも、その逆もそうとは限らんがな」

 

 

よそ様の家の事だ。ほっといてやれと最後に締めくくり話を終える

何か釈然としなかったが、箒もあまり触れられたくないようだしとりあえずは放っておくことにした。というか、小町ちゃんって誰?

 

 

一日たって何とか普通に喋れるようになった山田先生の授業で、女子高的なノリにいたたまれなくなったり

 

将棋の駒とチェスの駒を片方ずつに並べて日英戦争みたいな事をやってる八兄がいたりした。いやいやどういうルールだよそれ?

 

ちなみに、最終的に圧政を敷くキングをクイーンが打倒し、戦死した王将の腹心の部下である金将が王をついで、金将の親友である銀将がクイーンと駆け落ちして終わった。地位や名誉を捨てて一つに愛に生きる事を決めた銀将と、そんな友の事を知りながらも、黙って見送った金将の男気がよかった。軽く感動してしまったよ本当に

 

 

その後、俺と八兄と箒で一緒に昼食をとったり、なんやかんやで俺は箒にISを教わる事になった。

昼食中は誰も話しかけてこず、八兄も終始無言で箒も機嫌が悪く、俺も必死に話を振ったがどうしても話が続かなかった。定食の味、よくわからなかったな‥‥

 

訓練に八兄も一緒にどうかと誘ったが用事があるとそのまま帰ってったが、俺の見立てでは用事なんてないと見た

 

で、その後、ISを教えてもらうはずが1週間剣道の稽古ばかりして模擬戦当日を迎えたのであった‥‥‥順風満帆、用意周到?なにそれ美味しいの?・・・はぁー・・・

 

 

模擬戦当日 アリーナ

 

 

「なあ、箒」

 

 

「なんだ」

 

 

「ISの事を教えてくれるって事じゃなかったのか」

 

 

「‥‥‥」

 

 

「目をそらすなよ‥‥」

 

 

「‥‥仕方ないだろ、お前のISがまだ届いていないんだから」

 

 

「はぁー・・・まあ、いいよ。それで先生!俺のISはまだですか?」

 

 

『す、すいません!もう少しだけ待ってください』

 

 

管制室から山田先生の申し訳なさそうな声が届きもう一度ため息を吐く

そう、俺の専用機は試合時間になってもまだ届かないでいる。本当に俺の学園生活はなぜこうもあれなんだかな‥‥

 

仕方ないので空中に表示されてるディスプレイから、すでに表で準備ができてるセシリアに目を向ける

 

 

「あれが、あいつの専用機か」

 

 

青を主体にしたカラーリングにひときわ目立つ大きなライフル銃

八兄に聞いた名前は確か「ブルー・ティアーズ」だったけ?

 

 

『織斑君!織斑君!来ました織斑君の専用IS』

 

 

『織斑、すぐに準備しろアリーナを使用できる時間は限られているからな。ぶっつけ本番で物にしろ』

 

 

そうこうしてる内にようやく来た

白を主体とし、セシリアの専用機と比べるといささかゴツイ印象を受ける機体

 

 

『これが、織斑君の専用IS、白式です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

管制室

 

 

「背中を預けるように、そうだ。後はシステムが最適化する」

 

 

ようやく届いた白式の乗り方の基本を教え一息つく

その他、相手の説明などは山田君が引き継いでくれているので、随分前に入れて冷めてしまったコーヒーに手を伸ばす

 

本当なら三日前くらいに用意できていればよかったのだがな・・・

そうすれば最低でも最適化は済むし、なんなら戦闘訓練の初期の初期だけでも教えられたものを、あのバカがやたら凝り性でこんなギリギリになってしまった

 

あの白式は、学園が用意したと名目上なっているが本当のところは束の手がけたハンドメイドであり、正直心配でたまらない

 

あの束に限り、不備があるとか何らかのトラブルがあるなんて事思ってはいないが、あの束だからこそ、いったい何を仕出かすのか分からないのだ

 

昔から一夏の事を可愛がっていたやつなら万が一にも一夏に何かがあることはありえないだろうが、逆を言うと敵対者の身の安全が保障されてない可能性がある。

流石に、そんな無茶はしないと思うがもしかするともしかするので気が抜けない。できれば一夏に勝ってほしいところだが、オルコットの身の安全も教師としては守らねばいけないのだ

 

そんな事を考えているうちに一夏は白式を纏いアリーナ上空に飛び上がった。

やや危なっかしく体をよろけさせるが、どうやら問題なく起動できたようだ。これでもう一つ肩の荷がおりる。あとはこのまま何事もなく試合が終わり、欲を言えば一夏が勝てばいいのだが

 

すると、オルコットはISに備わっている専用チャンネル越しに一夏に話しかける

 

管制室は、データ収集、不測の事態への早期対応、細かな記録などが目的でアリーナ内の会話を逐一ひろえるようになっている。もちろんそれは、IS同士でしか会話ができない専用チャンネルでも例外ではない

 

 

『最後のチャンスをあげますわ』

 

 

『チャンスって?』

 

 

『わたくしが一方的な勝利を得るのは自明の理、今、ここで謝るのであれば許してあげなくもなくてよ』

 

 

‥‥私は、この小娘の身の安全を守らなくてはいけないんだろうか?‥‥なんだか別にいいような気がしてきた。

でも、教師としてやらねばならんか‥‥じゃないと減給とかされそうだし

世知辛い世の中だ

 

 

『謝るって‥‥ぶっちゃけ俺、そんなに悪い事してなくないか?』

 

 

『おだまりなさい!!わたくしを辱めておいてよくもぬけぬけとッ』

 

 

いやいや、それは一夏じゃなくて八幡の方だろ。それに、もとはと言えば自業自得なのに何を言ってるんだこいつは?

 

と、いうか辱めも何もお前が国際問題に匹敵するような暴言を吐いたところに八幡が日本の威信を守るために応戦しただけで、多少のやりすぎはあったがそれでも悪いのはお前だし勝手にビービー泣き出したのもお前だろうが!

 

教育的指導と銘打ってしばいてやろうか?あん?屋上への片道切符なら割安で販売中だぞ?

 

 

「銘打ってて言っちゃ駄目だろ教師。それに片道じゃあ戻れないし、5体満足で帰れるかどうか不明だが」

 

 

何問題はないだろ、それに今ならサービスで私自らISの操縦試験もやってやろう。そのかわり落第点を取ったら即留年だがな

 

 

「テストがサービスとか・・・それに始まったばかりで留年が決まるとかどんだけ鬼畜使用なんだよ。減給どころかクビ切られるぞ」

 

 

ブリュンヒルデをなめるなよ、いざとなれば不当解雇だのなんだのとマスコミ使って騒ぎ立てれば民衆は――――‥‥

 

 

「‥‥八幡、なぜここにいる」

 

 

「ピットにいても篠ノ乃と一緒で気まずいし、観客席にいてももっと気まずいんでそれなら一番見やすい所で見ようと思って」

 

 

そういう八幡は私の隣でなにやら甘い臭いを漂わせる入れたばかりのコーヒーを片手にディスプレイを眺めている

 

無論、ここは管制室であり関係者以外立ち入り禁止で、扉も電子ロックを始め2,3個ほどのセキュリティーで守られている。一般生徒は教師が同伴しないと入る事すらできない場所だ

 

 

「そういうことではない。どうやってここに侵入してきた」

 

 

「扉から」

 

 

「‥‥殴られたいのか?」

 

 

「体罰反対。別におちょくってるわけじゃなくて普通に扉から入ってきたって意味です。というか窓もないここ(管制室)に入るなら扉から入るかどこかを壊さなきゃいけないでしょ」

 

 

「‥‥では、どうやって扉から入った?最低でもカードとパスがなきゃ入れないはずだが」

 

 

電子ロックを解除する専用カードに、本人認証のパスワードこれらは通常教師陣と一部の生徒(生徒会)しか持っていない

しかも、電子ロックはいくつかある重要施設ごとにカードが変わっているためどこからかカードを入手しても管制室専用をピンポイントで手に入れるのは至難の業だろう。

もっとも防衛主任をしている私の持つマスターカードだったら話は別だが

 

 

「企業秘密です」

 

 

「‥‥‥」

 

 

「無言で手をならすのやめてくださいよ。とりあえず今は一夏の試合を見ましょうよ」

 

 

「‥‥お前の模擬戦が終わったらじっくり聞かせてもらうぞ」

 

 

と、一応いった物の八幡が本気を出せばそうそう捕まえる事が出来ないので本当に話せない内容なら聞き出すのは難しいだろう

というか、正直な話、この規格外な弟ならルパン○世レベルの事でも平気でやりそうなので電子ロックの解除くらい普通にできそうだし

 

とりあえず、この事は置いておこう。考えていても分からんし

 

目の前で戦っているもう一人の弟に目をやると、ちょうどファーストシフトが終わったところだった

 

一夏の機体は先ほどまでより全体の線が細くなり、色の鮮明度も段違いだ。

何より持っていたブレードの名に驚かされた

 

 

「雪片弐型、あれって先生の使ってたやつですか」

 

 

「…同型ではあるが、私の使用していたものとは別物だな。ただ、雪片の最大の特徴はその特殊能力にある」

 

 

「確か、自分のエネルギーを消費して相手のバリアを貫通するみたいなのでしたっけ」

 

 

「ああ、大まかに言えばそれであってる」

 

 

あいつにしては時間がかかった割に平凡な機体だと思ったが、こういう事か

 

 

「それじゃ、一撃逆転で一夏の勝ちって感じですか」

 

 

「いいや、おそらく一夏の負けだろう」

 

 

雪片の力はまさにISキラーといっても過言ではない強力な物だ。しかし、その分アレの取り扱いは非常に難しくまさに諸刃の剣と言っていい代物だ

 

一撃を当てればどんな不利からでも逆転できるが、良くも悪くもアレは近接武器であり相手に近づき当てなければ意味がない

今の一夏の技量では中距距離戦を主体とするオルコットに当てる事は難しいだろう

 

 

そして、案の定一夏の刃がオルコットに当たる前に試合終了のブザーが鳴る

 

 

《試合終了、勝者セシリア・オルコット》

 

 

 

 


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