ただしオリ機体とかはないのであしからず
一夏の試合は結果から見れば、完敗と言っていいだろう。オルコットのシールドエネルギーは5割以上残っているし最後なんて自滅で終わったしな
まあ、でも試合の中でも相手を追いつめる時やいい感じのところも結構あったし、専用機持ち相手に素人が頑張った方だろう
というか、むしろ素人相手にあれでいいのかよ代表候補生・・・
ぶっちゃけ最後の一撃が決まってたらやばかっただろ。慢心やらがあったのは分かるが、流石に色々と駄目だろ
遠、中距離タイプで間合いも確保できるうえビットを入れれば最大5つのビーム兵器を携えて完全な近距離タイプに接戦されること自体なかなかないと思うのだけれど
しかも相手が千冬レベルの達人とかならまだしも、篠ノ乃相手に剣道で完敗してた一夏の近接戦闘でアレとか、割と本気でそれでいいのかと聞きたい
いや、これから戦う身としてはそのほうが都合がいいと言えばいいんだけどもあまりにもずさん過ぎるだろ
でも、そうはいっても俺はISの事をそこまで詳しい訳じゃないし、知識のほとんども前の世界から引き継いでるだけでそれが=この世界と同じでもない
現にISとかいう摩訶不思議乗り物が存在してるしな
だから一概に俺の知識だけでオルコットの事を酷評できるわけではないんだよな
「で、今の試合は世界王者『ブリュンヒルデ』としてどうでしたか?」
分からないなら分かる相手に聞けばいい
幸にここにはそれを解説してくれそうな人が二人いるしな。といっても一人の上から読んでも下から読んでもの人は俺の存在を認識すると同時に怯えまくり、生まれたての小鹿みたいになっているので実質一人だけだけどな
話を向けられた千冬はブリュンヒルデという単語に若干眉がピクリと反応する
理由は知らんが千冬はこの名前が気に入っていないそうだ。まあ、中二っぽいネーミングだし分からなくもない
それにうろ覚えだが確かブリュンヒルデってジークフリートの恋人でなんやかんやで寝取られたジークフリートを謀殺してその後葬式で後追い自殺したとかなんとかのアレだったな、自分が言われると確かに不快と思うかもしれんな
「‥‥一夏の方は見たまま素人と言っていい。ところどころ評価できる箇所もあったが動きに無駄があり被弾数も多い。それに、最後の方でいつもの癖が出ていた」
一夏の癖と言うのは、おそらくあの調子に乗ると手をグーパーするあれだろう。俺はそこまで気が回らなかったが千冬は気が付いていたようだ。流石である
「代表候補生相手に健闘していたが、それも相手の慢心があってからこそだ。運よくファーストシフトが完了したがあれがなければそこで試合は終わっていた。総合評価はC-と言ったところだ」
「フォーマットも終わってないぶっつけ本番になったのはそっち側(学園側)のミスなんじゃ?」
別に俺の事じゃないんでどうでもいいが単純に気になったので聞いてみる
稼働時間2桁程度の素人が国内有数の実力者である代表候補生と戦うのに万全とかけ離れた状況でやり合わなくてはいけにとか無理ゲーだと思う。むしろ悪意すら感じられる
「‥‥次にオルコットの方だが」
話そらしやがった
「色々と言いたいことはあるが全体的に酷かった。この一言に尽きる」
やっぱりそういう感じなんだな、あれ
「第3世代型の特徴でもある近代兵装を惜しみなく使用しているのはテストパイロット的にはいいだろう。ビームライフルによる射撃にビット4機の変則攻撃、同時変容できない事を除いてもスッペク的には初期の白式を遥かにしのいでいる。
だが、いくら機体の性能がよくとも使用者があれでは宝の持ち腐れもいいところだ。
ビットは本人の集中力次第で機動力が大幅に変化する。常に冷静を心がけビットの機動力を最大限まで発揮させていれば一夏は近寄る事すらできていないはずだ。なのに4機すべてを破壊され、隠し玉であるミサイルでも決定打を与えられなかった」
「最後のは一夏が運良くファーストシフトしたからでしょうがないんじゃ?」
「シフトが完了するまでどれだけ時間があったと思ってるんだ?オルコットが慢心なく戦っていればそんな時間を与えることなく倒せたはずだ」
なるほど、つまり今回オルコットが最も失敗したのは時間をかけすぎたという所か
慢心だの侮りなどもあったろうが、それ以上に相手を嬲り倒そうという腹積もりだったのだろう、そのためやたらと勝負を長引かせていた。それは試合中の会話やら発現やらでも伺える
結果、一夏に同時変容できない欠点を見破られ隙を突かれビット大破
擁護のしようがないな。するつもりもないけど
「ところで、次はお前の試合だがいつまでここにいるつもりなんだ?」
一通り試合の評価を話し終えると千冬は一息置いてそんな事を聞いてきた
「俺の機体は整備もメンテもばっちりなんですぐにでもやれるし、下に行っても一夏と篠ノ乃が話すのを少し離れた所から見てることしかやることないんでもう少しいさせてもらいます」
「2人と会話する選択肢はないのか‥‥」
呆れ顔で言う千冬の顔を視界の端でとらえたが気にしない
そんな顔なんて生前これでもかと言うほど担任のおせっかい独身教師やら部活の毒舌氷の女王やあれは天使かな?違った妹だ、違わないや天使だった。から散々やられ続けてきたのだ
今更、兄妹設定のクール系スーツ姿の教師風美人姉からそんな顔されても痛む心などありはしない。むしろ痛みを通り越して快楽を感じるくらいだ
「そういえば、ドタバタしていて聞いていなかったが、お前のその機体はどうやって手に入れた?」
「企業秘密です」
「茶化すな、真剣に答えろ。どこの国でも男性操縦士の情報はほしいだろうが国の最新鋭であり技術の結晶である第・3・世・代・型を易々とくれるとこなんてありはしない。どんな裏ワザ、いや・・・どんな取引をして手に入れた?」
俺は一夏と違い自分で専用機を入手している。
教師である2人はすでにそのISを見ており、整備にも立ち会っている。しかし、その入手経路は秘密にしてある
特にそれは家の家族にも関わる秘密であり、もしも千冬の耳に入ると冗談抜きに国際問題に発展する可能性が高い
「国家機密です」
「私は真剣に答えろと言ったはずだが、聞いていなかったのか?」
声に明らかな怒りの感情を滲ませ目も鋭い、人を射殺さんばかりの目とはこういうのを言うのだろうか?
普通に怖いが、こちらもそれではいそうですかと素直にいう訳にはいかない。ISの事もそうだがあ・の・国にはまだまだ利用価値が残っているので、今ここで潰されるわけにも有耶無耶にされるわけにもいかない
なので、どんなに凄まれようともこれ以上答える事はできない
都合のいい金づるは大切に使いつぶさなくてはいけない。それが俺のポリシーだ
「真剣ですよ。お察しの通り色々と取引してますんで話すことはできません。それにそっちだって国家機密の意味は十分承知してるでしょ」
「‥‥話す気はないか。まあいい、今は試合も控えている事だしこれ以上は聞かん」
「そりゃどうも」
「今・は・だぞ、試合が終わったらちゃんと話してもらう。これは命令だ」
「それは教師命令ですか、それとも家族命令?」
「両方と言いたいところだが、その答え次第で話すのか?」
「いいえ」
そう答えると扉に向けて歩き出す
アリーナの方を見ると機体の整備を終えたオルコットがすでにISを展開して飛びだっている。
時間的にはあと少し余裕があるが、まあいいだろう
相手の情報は頭に入っている。実際の実力も今ので大体分かった
後は、あの短絡思考をうまく利用すれば勝てない事もないだろう
仮に今の戦闘で慢心がなくなっていても問題はない。俺はいつもと同じようにいつも道理に俺としてこの戦いに臨むだけだ