比企谷 八幡の異世界漂流記(沈黙)   作:Lチキ

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IS インフィニット・ストラトス 2

IS≪インフィニット・ストラトス≫国際競技大会モンド・グロッソ

 

 

今日の織斑家は姉の千冬がこの大会に出るため、今年度の開催地であるドイツまで来ている。俺と一夏はただの応援だけどな

 

ここまで来てなんだが、やはり外国というのは慣れていないので居心地が悪い

ドイツの街並みはやはり日本と違う気もするが、別にそこまで違くもない気がするのでどうでもいい。正直もう帰りたい、帰りたいといっても今住んでるところは俺の家ではないのだけだな

 

 

 

この世界に来てから幾分かたち、これからの方針を決めた。

まず、元の世界に帰るか否か

 

これは否だ。帰り方を知らないのもあるが、何よりあちらでの俺はもう死んでいるとみていいだろう。そこに俺が帰ったところで歓迎などされないだろう。

それに戸籍や保険書、その他もろもろと厄介だしな。必要な面倒ならいやいややるが、必要ない面倒は決してやらない、それが俺のポリシーだ

 

 

次にこの世界でどうするか?

 

これは普通に生きてみようと思う。人生のやり直しとか、昔出来なかった青春を謳歌するとか…そんなことは露程も考えていないがな。

世界が変わろうと家族が変わろうと俺が俺であることに変わりはない。俺は世界に嫌われている、なら下手に希望を持つ方が馬鹿らしいという物だ

 

しかし、知識があってもこの世界の事が今だよくわからず、俺の実年齢も中学生だ。その状況で下手に動くことなぞ馬鹿らしい。最低でも一年は、様子見したいところだ

 

とりあえずの目標は?

清く正しく一日一日を大切にするとかでいいんじゃね?しいて言うなら会いたい人が一人いる。

 

 

篠ノ之 束

 

 

ISの開発者にて、この世界を面白おかしくした張本人である。現在は消息不明で、どこにいるのか分からないがこの女と織斑家には、繋がりがあるようなのでいずれ会う事もあるだろう。

 

会いたい理由は、単純に金になりそうだからだ。世界が変わろうと金が必要であることには変わりない。その点で彼女はとても興味深い

 

文字通り世界を変えてしまった彼女の技術力は金のなる木のようなものだ。とりあえず会って、親睦でも深めたうえでその技術を騙し取れば相当な値段になるだろう

彼女自身を国に売ればそれも金になるが、そうすると継続的な資金源にならないのでそれはないな。

なにはともあれこれも、今はできない事なので保留しておこう。

 

とりあえずそんなところでいいだろう。さてと、これからの方針はひとまず置いておき今ある問題を片付けるとするか。

 

 

誰かにつけられているな。

 

 

前方の曲がり角に停車してる黒塗りの車、それと後ろに2人、サラリーマン風の格好をした奴と、カフェテラスみたいなところでコーヒーを飲んでる女

それと、遠くから視線を感じる。恐らくここから数百ほど離れたビルのところにもいるな

 

全員普通を装っているが、明らかに素人ではないな。しかし、逃亡生活の中で身に着けたサーチャーヒッキーの前ではそんなちゃちな変装、無駄である

 

さて、狙いは俺か?馬鹿なこの世界で俺はただの中学生だ。人に付け狙われる覚えなんてない。精々あのぶつかってきた女子グループから迷惑料として財布をすった程度くらいだ

 

では、隣を歩いてるこのアホ面したイケメンか?それもない。知識としてあるこの弟は普通にいい奴で、プロに付け狙われるほどの馬鹿な事はしないだろう

 

こいつを好いてる女が妙な気を起こしたというなら分からなくもないがな。なんせこいつ顔もよくて性格もいい癖に、女の気持ちに全くと言っていいほど気が付かない唐変木だしな

 

 

では、こいつらの目的は何か?決まっている。このタイミングということは間違いなくモンド・グロッソ絡みだろう。

 

明日は千冬とドイツの選手との決勝戦がある。大方、俺達を誘拐し棄権しろとでも脅すつもりなのだろう。

 

 

そうなるとここで捕まっても殺されることは多分ないし、明日らへんになったら千冬が試合をほっぽてでも助けに来るだろう。両親がいない事からあの女の姉弟に対する執着心は俺が小町を思う気持ちや、雪ノ下陽乃が雪ノ下を思う気持ちに等しい。

 

むしろ、川崎レベルのブラコンといっても過言ではない

そんな女だ、世界大会と弟を天秤にかければ、弟の重さで世界大会が空の彼方に飛んでいく勢いで助けに来ることだ。

 

 

そんな安全がほぼ決まっている状況でどうするか、下手に抵抗せず捕まる?そんな訳がない。

 

なぜ俺が、見ず知らずの連中に捕まらなければいけない。俺を捕まえたいなら金を払ったうえで高級ホテルのスイートルームでも予約しろ。

 

次に一夏を囮に使い俺だけ逃げおおせるか。それもない。

 

こんな見ず知らずの弟など、どうなっても構わないがそれでは千冬がこいつを助けるために大会を棄権するだろう。

世界大会というだけあってその優勝賞金は少なくなく、両親不在、三人家族、二人学生のこの状況で家には金が必要だ。

前評判でも千冬は大会二連覇が確実とも言われている、その状況で棄権だと?寝言は寝ていえ。

 

俺の生活のためにも千冬には優勝してもらわなければならない。

 

 

なので、ここは非常に、面倒くさく、遺憾であるが俺自身が動いて事なきを得よう。

 

 

「おい、一夏。そろそろホテルに戻るぞ」

 

 

「なんだよ八兄?せっかくの外国なんだしもうちょっと見てこうぜ」

 

 

外国程度で浮かれやがって…これだから餓鬼は嫌いなんだ。

 

 

「それはまた、明日な。今日はとりあえず千冬のために早く戻って肩でも揉んでやれ」

 

 

「明日って、明日は決勝だしその後はすぐに帰らなきゃいけないじゃんか!今日くらいしか時間ないって。それとなんで千冬姉のこと呼び捨てなんだ?」

 

 

面倒くさい奴だな、兄貴のいう事は素直に聞けって、小町なら・・・・・・小町もあんま俺のいう事聞いてなかったな。妹でも弟でも兄貴のいう事を聞かないのが世の常なのか?それとも俺が兄貴だから聞かないだけか?金取るぞこの野郎。

 

まあ、いい。とにかく今はこいつをホテル(安全地帯)に早くやることが先決だ。多少の事には目をつむってやろう。

 

 

「はあー…いいか一夏?姉貴は今、一人でホテルにこもって明日に備えてるんだぞ?誰にも弱みを見せず、誰にも頼れず、外国の地でただ一人だ。そんな姉貴を見捨てて一人観光しようだなんてお前には血が通ってないのか……?」

 

 

「酷い言われようだ!?確かにそうかもだけど、兄貴が弟に言うセリフと目じゃないってそれ!ていうかいつもの倍以上濁ってるよ目!」

 

 

これぞ長い年月をかけ習得した濁り強化の術だ。目が濁ってるなとか腐ってるとか言われ続けて導き出したこの術は俺の意のままに目の濁りを増すことができる。

相手を牽制するときや、警察なんかに問い詰められた時によく使う高等技術、ちなみにこの術は増すだけで減らすことができない。

 

なので目の濁りをなくせはしない。時間が立てば勝手に戻るからいいんだけどな

 

 

「この年まで女で一つで育ててくれた姉貴のここ一番手時に、お前ってやつは・・・」

 

 

「分かったよ、戻るって!だからそのあからさまな泣きまねやめて!周りの人が見てるから!!」

 

 

心なしか涙声でそう訴える一夏をホテルに連れて行き、千冬に預け俺は先ほどの連中を見つけるためまた、外に出る。

 

 

日が暮れてもうすぐ暗くなるそんな時間、ホテルの前には黒い車の前で何かを話す数名の男女の姿

 

 

そして、その目が向けられた先には体格はまだ子供くらいだが、深く深く目の濁ったどこか大人びた雰囲気を曝しだす一人の詐欺師の姿

 

 

日の光も届かぬ夜にその二種類の姿は闇の中にと消えていく

 

 

 


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