比企谷 八幡の異世界漂流記(沈黙)   作:Lチキ

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IS インフィニット・ストラトス 5

クラスに騒音が響き数十秒後、やっとのこと女生徒達が話ができるほどには静かになる。それでも、あちらこちらではまだ感嘆の声を上げる者がいる

 

好かれることはありがたいが、こうも熱烈すぎる物はいっそのこと迷惑だ。しかも毎年毎年同じように騒がれては気も滅入るというものだろう

まあいい、とにかくここは例年如く一喝すれば大抵の生徒はどうにかなるだろうし日を追うごとに生徒たちもおとなしくなる

 

ただ、これも毎年の事だがいささか厄介な者達もいる。

 

窓際の席に構えるポニーテールの少女、篠ノ乃 箒

私の親友でもある天災の妹。高校の頃お世話になった剣道教室の娘であり、ISが世に出て少ししたら家族ともども政府の保護プログラムにより引っ越し、それ以降もたびたび住まいや名前を変えており両親とも離反。中学3年に剣道の大会で優勝したようだが、同じ門下生である私の目から見ても随分剣筋が荒れていた。

今の不機嫌そうな顔と合わせても、何事も問題なく卒業まで行くことは‥‥残念ながらないだろう

 

後ろの席に座る金髪でどうセットしてるのか謎のドリルの少女 セシリア・オルコット

イギリスの代表候補制であり専用気持ち、入試試験で女子で唯一教官に勝利した名実ともに優等生。彼女の家は貴族の家系であり今現在彼女が頭首をしている。数年前に両親は事故に会いこの世を去り、一人でオルコット家を支えてきた。

貴族かどうかは知らんが高慢な態度が目立ち、まさに女尊男卑を表現したような性格

普通のクラスなら問題はないだろうが‥‥いかんせんこのクラスには2人のイレギュラーがいる。何事もないなんて口が裂けても言えないが、当面は問題ないだろう‥‥多分

 

 

織斑家長男 織斑 八幡

どこかつかめにくい性格でその根性は目と共に腐っているが、何事にも対応できる柔軟な思考を持ち体捌きも自衛ぐらいなら難なくこなせる。よく誤解されるが根は腐っていても優しく、一本筋が通っている。

織斑家では家計簿をつけており、私と一夏の月の小遣いも管理している。金関係になると姉弟であろうが他人であろうが関係なくシビアになり基本的にどケチで金に汚い

言ってることはどことなく正論のように見せかけた虚言で、分かっていてもついつい言いくるめられるので小遣いアップや前借は絶望的にできない‥‥しかも前に失敗した時なんて、家にあるはずだったビールが消いたりとみみっちいけど効果てきめんな攻撃を仕掛けてくるので注意が必要だ

親しい友達はいない模様

 

ちなみに織斑家での役割は私が収入 一夏が家事全般たまにバイト 八幡が家計簿たまに家事である

 

 

織斑 一夏

末の弟で、兄とくらべるとイケメンで性格も明るく女受けしそうな感じだが、圧倒的なまでに鈍感、朴念仁なためいまだに恋人はいない

ちかくにある食堂では私が家にいないときなどにお世話になり、そこにいる兄妹とも親しい。

家族思いで私や八幡の事が大好きであり、前に八幡がいじめにあっていた時もいじめっ子を殴り飛ばすなどしたりしたほど男同士で年も近い事から私よりも八幡に懐いてる‥‥‥‥‥もちろん一夏も八幡も私の事は大好きである、異論は認めんッ!!!

 

と、まあそれはさておき今あげた4人はこのクラスで良くも悪くも中心になるであろう。天災の妹、代表候補制、世界初の男性操縦士(2人)

一癖も二癖もある連中がこれからどう過ごすのか、一人の人間として興味はあるが担任教師としては頭の痛い話である。

 

しかし、私も人を導くものとして何より彼らの家族としてこれから成長の手助けができれば幸いだ。   

 

それじゃあ、そろそろ学生気分の小娘共を黙らせるとするか

 

 

「静かに!」

 

 

先ほどまでしつこく騒がしかった数人の生徒は完璧に黙り、クラスの視線は自然と教卓にたたずむ千冬に向けられる

 

 

「これからISの基礎を半年で覚えてもらう。その次に実習だが基本動作は半月で体にしみこませろ!いいか?いいなら返事をしろ、良くなくても返事をしろ!」

 

我ながらどこかの軍隊かとツッコミたくなるが、実際に以前行われた自衛隊の教官をしているときの癖のようなものなので否定できない。

ついこの間まで普通の生活をしてきた小娘(こども)には堪えるかもしれないが、ISは、絶対防御があるといっても全てにおいて安全というわけではなく、下手をしたら一生消えない傷ができたり、最悪死んでしまう。なので、多少きつくともお遊び感覚を捨てさせる必要がある。

もっとも、例年道理なら私のクラスの人間がこれに否定をした事はなく、今年もそれは例外ではなかった

 

 

「「「「はい!!」」」

 

 

先ほどまでの騒音とは違い、一つに整われた声は教室に響き

予想していた通りの反応に内心頷く

 

それからは、副担任の山田君に任せ私は腕を組みクラス全体を見渡す

その時、弟たちを見るが一夏はなにやら顔を青くさせだらしなく口元が開いている。まあ、この空間(女子しかいない)に放り込まれ尚且つ私が教師であった事実に戸惑っているのだろう。

 

まったく‥‥‥‥可愛い奴め

 

本当なら今すぐ傍に行き頭の一つでも撫でてやりたいが、公私の区別をつけるべきと八幡にお説教されたばかりだしここは我慢する

 

その八幡はというと、顔を上げているがその目線は明後日の方向にある。あいつでも緊張するのかと一瞬思ったが、どうやらただ単にボーとしてるだけのようだ

 

相変らず肝が据わっている‥‥‥‥そんなところも凛々しい奴だ

 

腐った目に似つかわしくないその大人びた雰囲気は実年齢よりはるか上に思え、大人ならではの渋さがにじみ出る

弟に向ける感情ではないだろうが、もし血がつながっていなかったら女として惚れている事だろう。

 

世間のやつらは良く勘違いするが私の弟たちは男としてそれぞれ最上位に位置している

家事万能で心優しい可愛い一夏

家計を切り盛りする憂た顔が凛々しい八幡

 

どちらともジャンルは違えどそれぞれが立派なに『男』である

まあ、一夏の方は『男』というよりいいとこまだ『男の子』であるがな。それでもこれからに期待できる

                    ・・

だからこそこの学園で彼らの魅力に気が付くメス共も現れるだろうが、その時は姉として家族として女として真正面から叩き潰してやろう‥‥‥おっとそれから、教師としてもだな、それは別にいいか?いや駄目か

 

 

どれほどの時間そんなことを考えていたか知らないが気が付くとHRは終わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

HRが終わり教室の前には他のクラスから来た女子がごった返していた。

いったい何事かと思うが、彼女たちの目線は俺に降り注いでることから原因は俺だろう

 

こういったことは本来なら一夏の役なのだろうが、一夏はHRが終わるなりポニーテールの女子に連れられ教室を出て行てしまった

なにやら親しそうな雰囲気だったので知り合いかなんかだろう

 

ついでにその箒と呼ばれていたポニーテールは俺に向かって殺気を飛ばしていたので俺とも何らかの関係があるようだ。記憶にないから知らんがこの世界の俺は一体なにをしたんだよ?

殺気飛ばされるって相当だぞ‥‥まあ、以前は日常的に殺気や鈍器を向けられる生活を送っていたので気にしてはいないがな

 

一応警戒はしておこう。

 

 

「ねえねえあれが?」

 

 

「ISを動かした‥‥‥?」

 

 

「でも、二人いるんじゃ‥‥‥」

 

 

ざわざわとそんな会話が聞こえてくる。

どうやら、俺‥‥というか男性操縦者が気になるが声をかけられずに遠巻きから見ているといった感じか

 

高校時代の俺なら発狂していてもおかしくない状況だな。

人からの奇異の視線、勝手な落胆、遠くから人を見てヒソヒソと何かを言うしぐさしかも相手は全員女子

 

この状況、俺じゃなくても大抵の男はトラウマもんだと思う

 

唯でさえボッチ歴が長い俺なら速攻で耳イヤホン、寝たふり、素数を数えるの3段手法を取っていただろう。といってもそれは昔の話であり、こちとら30超えたいい大人であるのでこの程度の修羅場どうとでもなるのである

 

高校時代の俺は、いささか爪が甘かったのだ。いくら寝たふりを極めようと由比ヶ浜のような子が話しかけてくることもあるし

イヤホンもそれを取られれば嫌でも顔を上げなくてはいけなくなる。話しかけるなオーラを出しても気が付かない奴もいる。それでは本当の平穏は訪れない

 

ではどうするのか?これは俺の人生をかけ見つけた相手が話しかることを極限まで減少させる必殺技その名も『トランプ・タワー』!

 

トランプ・タワーとはトランプを立体に積み上げ山を築き、周りの振動でも崩れてしまう繊細かつ集中力を極限まで使う遊びだ

 

この遊びをしているうちは極力周りは近づいてこない。なんせ近づいた振動でタワーが崩れる恐れがあるためだ。仮に近づいてこようものなら軽く一睨みすれば散っていくし話しかけられたのを無視しても集中しているのだと思わせる事ができる

 

実際にやってくる奴がいても大抵興味本意か本格的な嫌がらせかただの空気が読めない奴くらいで

 

興味本位のやつが近づいてきたらわざとタワーを崩して無言で睨んでいると勝手にいなくなるし

嫌がらせのやつはそもそも寝たふりしててもやってくるのでどうしようもない

この事から、やっても結構楽しいトランプタワーは休み時間にボッチがとる行動としては最適といえる。ただし先生に見つかると没収される恐れがあるので要注意だ

 

最後に空気読めない奴だが、流石にタワーが完成まじかで話しかけてくるレベルはそうはいないし大丈夫だろう

で、俺のタワーは今あと2組を乗っければ完成する。なのでこのまま時間をかけ2枚をゆっくりおけば休み時間中に話しかけれらえる事はない。それに完成したときの達成感も味わえる一つで2つ美味しい完璧な作戦だ

 

 

 

そして2枚のカードを乗せようとした時、目の前に一つの影が声と共に現れる

 

 

「ちょっとよろしくて?」

 

 

それと同時にパラパラとタワーは崩れていき、俺の手に残る2枚のカードはその行き場を完全に失ったのだった

 

 

 


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