ご主人様に忠実な氷属性を操るTSダウナー系メイドさん 作:TSしか書かないマン
今世での俺の人生と言うのは割とシンプルなものだ。
農民の娘として生まれ、成長し12歳になるころには親にこの屋敷に売られた。そして、こんな風にメイドとして働いている訳だ。
まぁざっとまとめるとこんな感じだろう。
さて、そうして屋敷に務めることになった俺はとても気になるものを発見した。
それは地下の蔵書棚にあった”魔導書”だ。
この世界には魔法なんて言うファンタジーな物がある。
そして、そんなものが扱えるようになるための指南書が置いてあるではないか。
当然、ワクワクしない訳もなく。
幸いな事に俺のご主人様はその事に寛容で、魔導書の閲覧を許可してくれた。
そのおかげで、俺は休みの時間にありったけの魔導書を読み漁ることが出来た。
けど、だからと言って魔術の才能なんてものはなかったがな。
魔法と言うのには使用者によって扱える系統が異なる”属性”なる物がある。もちろん、異世界チートなんて持ち合わせていなかった俺は一属性しか扱えるものがなかった。
そして、それが”氷”だったのである。
……聞くところによると本当に才能のある人間とかなら4属性は扱えるらしい。なんだそれ、めっちゃうらやましいやんけ。
まぁ一属性しか使えないつっても、それでも魔術と言うのは好きだったから頑張ったがな。ない物を嘆いていてもしょうがないのだ。それなら、現実を受け入れて頑張った方が建設的である。
と言う訳で、結構頑張りました。
それはそれはもう、ほんっとうに。
4年間ほど持てる時間すべてを費やした。
その結果、氷魔術だけはかなり上手く扱えることが出来るようになった。
うーん、まぁ俺にしては割と上出来である。
忍び込んだ暗殺者を瞬殺できるくらいには強くなったのだ、我ながらすごいと思う。いや、マジで。
誰か褒めてと言っても、褒めてくれる誰かがいないという事くらいが玉にキズなのだが。
▽▲▽▲
さて、そんな訳で俺は休みの時間になったらいつも書庫に籠っている。
周りのメイドたちは基本的にお喋りで時間を潰しているから、俺の事は奇怪に見えるのだろう。「どうしてこんなところで本を読んでいるのですか」なんて書庫に掃除に来た他のメイドに質問されるのも慣れた物だ。
魔導書を読んでいる時と言うのは大抵頭をフル回転させているから、あまり人に喋りかけられたくない。
そういう時にはこのダウナーな見た目が役に立つ。なにせこの見た目、”私あんまり喋らないですよー”感だけは満載なのだ。そっけなく「魔導書を読んでいるだけです」って言ったらみんな興味を失ってどっかに消えていく。
……あ、あれ?自分で言ってて悲しくなってきたぞ?
うん、まぁ取り合えずそういう事だ。
そうして俺は静かな空間を守っているのである。
……えっと、やっぱり今度からはちゃんと受け答えしよっかな。流石に自分で言ってて悲しくなってきた。
とまぁそんな感じで今日も今日とて書庫に籠って時間を潰していたのだが……なんと、とても珍しい事にご主人様が書庫に入ってきたではないか。しかも、俺の名前を呼んでいる。どういうことだ、と疑問に思いつつご主人様の前まで行く。
「クローニャ、いるか」
「はいご主人様。お呼びでしょうか」
「ああ、そこに居たか。お前に用事があってきた」
「用事ですか?」
「ああ。と言うか頼みたいことでな。聞くところによると魔術が扱えるらしいが、本当か?」
「ええ、はい。氷魔術を少しだけ、ですが」
するとご主人様は、少し申し訳なさそうに言った。
「ならすまないが、アネロに魔術を教えてやってくれないか?」
「……アネロ坊ちゃまにでしょうか?」
「ああ、そうだ。嫌なら嫌と言ってくれても構わんが」
……まぁ、拒否権はないだろうがな。
ここは素直に”はい”と言っておくのが吉だろう。
「勿論、喜んでアネロ坊ちゃまに魔術をお教えします」
「それは感謝する。取り合えず、明日から教えてやってくれ」
「了解しました」
と、そんな訳でなぜか俺はアネロ坊ちゃまに魔術を教えることになった。
うーん……いや、さ?
もっとこう、本職の魔術師とかを家庭教師として雇って教えた方がいいと思うんだがな……。本当に俺なんかでいいのだろうか、って不安になってしまったのはここだけの秘密。でも、ぶっちゃけかなり不安である。
というか、そもそもアネロ坊ちゃまは7歳の男子だ。
当然俺は前世も含めて誰かに何かを教えるなんてことしたことがないため、ちゃんと教えられるかどうかすら怪しい。
本当に俺なんかでいいんだろうか。
まー、そこんところは頑張ろう。
もう命令されたことだしな。
うん、割り切っていこう。
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SIDE:アネロ
僕の髪は黒いです。
瞳も真っ黒です。
そして、それはずっと昔にこの世界で暴れていた”魔王”の容姿に似ているらしいです。だから、僕はあまり人からいい目をされません。みんな、僕の事を怖がります。メイドさんたちも、僕の事を怖がっているようです。
でも、いいんです。
そういうのは慣れていますから。
……いや、やっぱり噓かもしれません。
本当はそういう目で見られた時はとても悲しいです。
だから、お父様に”クローネと言うメイドに魔術を教えてもらいなさい”と言われたとき、心の中ではとても怖かったです。
だって僕はそのメイドさんの事をよく知らなかったからです。いつもの様に、腫物を見るような目を向けられるかもしれない、と身構えていました。
ですが実際に会ってみると、そのメイドさんはとても印象的な人でした。
真っ白ではなく、少しくすんだ灰色の髪。
ピシリと着こなしたメイド服。
目の下には大きなクマがあり、とても眠たそうです。
そして、とっても美人さんでした。
……あと、こういうのは下品な話なのですが、とても胸が大きかったです。メイド服の胸元のボタンなんて、今にも飛んで行ってしまいそうなくらいでした。どうしてボタンが飛んで行かないのか不思議なくらいです。
そして、そんなクローネさんは僕と顔を合わせたらすぐさまこう言いました。
「お坊ちゃまは魔術はお好きでしょうか」
「魔術……はあまり好きじゃない」
正直に答えてしまったけど、怒られないかちょっとだけビクビクしました。ですが、クローネさんは表情一つ変えないで言いました。
「そうですか。ですが大丈夫です、私が手取り足取り教えますから」
「……えっと、怒らないのか?」
「怒る?何をでしょうか」
「い、いや、なんでもない」
そして、なにも気にしていないとばかりにクローネさんは続けました。
「では、これから魔術の授業を始めます」
そうしてクローネさんの魔術授業は始まりました。
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あれから5日が経ち、分かったことがあります。
それはクローネさんは僕の事をちゃんと見てくれているという事です。
僕が魔王の特徴がある子供だとしても、クローネさんは何もないかのように普通に接してくれます。
そして、魔術の授業はとても面白かったです。
クローネさんはとても教え上手です。
難しいところでも分かりやすく説明してくれますし、何よりも分かんない事があっても僕を叱りません。
なによりも彼女の落ち着いた雰囲気が僕は好きです。
……この人なら、信用してもいいかもしれません。
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へいへいへーい!
あれから5日が経ったが、魔術を教えるというのは結構楽しい!
いやー、最初はどうなる物かと思っていたが意外とアネロ坊ちゃまが素直にいう事を聞いてくれる。あれをやってと言えばやってくれるし、なんでも素直に聞いてくれるから魔術を教えるのがやりすいのなんの。
やはり子供の成長と言うのは恐ろしい。スポンジのように吸収するのだ。うん、これならもっと高度な事を教えてもいいかもしれないな。
ぐへへ、ご主人様に報告したらこりゃ褒められるかもな。
っていうか、実際に褒められたんだが。
「最近、アネロがお前の話ばかりする。どうやらお前の授業と言うのは分かりやすくて面白いらしい」
こんな感じで褒められたのだ。
しかも、なんと特別ボーナスと称して金も出してくれたではないか。
なんと日本円換算するとその額、30万円だ。
よっ、ご主人様太っ腹!
いんやー、こりゃ思ってもいなかった収入だな。
これなら何か買えそうである。例えば、魔道具だとか。
明日は休日だし、街に出て何か買ってこようか。
30万もあるんだ、なんだって買える。
ふふふ、何を買おうか。想像が膨らむな!