ハナコとコハルが付き合ってからのその後です
補習授業部にて
「では改めて……おめでとうございます!!ハナコちゃん、コハルちゃん!!」
「うふふ♡ありがとうございます、ヒフミちゃん♡」
「うぅ……は、恥ずかしい……」
私とコハルちゃんが付き合い始めたことは、すぐにモモトークで補習授業部皆さんに伝えました。
ヒフミちゃんからすぐにおめでとうございますと連絡が来て、改めてコハルちゃんと付き合ったことを実感しました。
アズサちゃんは、よくわかっていないみたいでした。……戦闘訓練と勘違いしていました。アズサちゃんらしいですね……♡
「…めでたいこと、だったのか?」
はてなマークを頭上に浮かべていそうな、そんなアズサちゃん。その様子を見ていたヒフミちゃんがアズサちゃんに詰め寄って。
「そうですよアズサちゃん!!おふたりはカップルになったんですよ!!」
「かっぷる……?今までのハナコとコハルとは違うのか?」
「ひとつ先に進んだんです!!とっても、とーっても素晴らしいことなんですよ!!」
……ペロロさんを語る時のような熱量で。身振り手振りで表現しています。
「そうですね…お互いに好きで好きでたまらなくなって、より一層、親密な、相手の秘部をまさぐり会う関係になった♡と言えばわかりやすいですか?」
「えっちなのはダメ!!!」
「あら♡」
「ほっぺた赤らめて誤魔化さない!!しけぇ!!!!」
……自分で説明しておいて、少し恥ずかしくなってしまったのはバレてしまいました。
そんなやり取りを見ていたアズサちゃんは少し考えた素振りを見せてから、結論を口にしました。
「つまり、ずっと一緒に居たいから2人は付き合った。ってことか?」
素早く頭を振って頷くヒフミちゃん。興奮冷めやらぬ勢いで私とコハルちゃんを交互に見つめています。
なんだかヒフミちゃん忙しそうですね……?
「じゃあ、私もヒフミと付き合いたいな。」
アズサちゃんはふと、そう言いました。
ヒフミちゃんとコハルちゃんは固まってしまいました。かく言う私も、動揺を隠せませんでした。
そんな私たちの様子を見てか、どこか不思議そうにアズサちゃんは呟きました。
「私は、ヒフミのことが好きだぞ?」
なんてまっすぐな。ぺかー、と後光がアズサちゃんから差しています。眩しいです。サングラスが必要です。
「え、えっとですねアズサちゃん。この場合の好きっていうのは、胸がドキドキしたり……」
「…?……そうだが?」
「あら♡」
「わ、わぁ…!!」
「は、はぅ……」
……少しの間、沈黙が続きました。時間が過ぎるにつれて段々とアズサちゃんの表情が曇っていき、いつの間にかヒフミちゃんの服の裾を掴んで。
「……ヒフミは、私のこと、好きじゃない、のか?」
不安そうに、ヒフミちゃんを上目遣いで。庇護欲を掻き立てられる仕草で。
こんなことをされてしまっては、耐え切れる人はいないでしょう。直接されていない私にもダメージが伝わってきます。
コハルちゃんの表情もえっちなものを見つけた時の表情になっています。……ただ、いつものように騒がずに、2人の様子をただ見守っていました。
……そんな庇護欲を掻き立てられる事をダイレクトにぶつけられたヒフミちゃんは堪えきれずに。
「わ、私もアズサちゃんの事が好きですっ!!大好きですっ!!」
「時間が経つにつれて、私の中がアズサちゃんのことでいっぱいになることが多々ありました!!ちょっとした出来事を共有したくなったり、寂しくなって会いたくなることもいっぱいあります!!」
「学校の帰り道にちょっと寄り道して、他愛もない話をして、一緒に笑う!!」
「私は、そんな普通の生活をこれから先アズサちゃんと過ごしたいですっ!!」
大胆な告白には、大胆な告白で。またここに1組のカップルが誕生しました。
「うふふ♡では、今度コハルちゃんと私、ヒフミちゃんとアズサちゃんでダブルデートなんてどうでしょう?」
「…いいわね!!アズサ、ヒフミ。私、いいデートスポットしってるの。」
シャーレにて
「こんにちは先生♡」
”ハナコ、いらっしゃい。当番に来てくれてありがとう。”
今日の当番はハナコ。最近は他の自地区にかかりきりだったから、トリニティの情勢に乏しい。
ただ最近の噂によると、どこかトリニティらしくない政治的な思惑が減ってきているとの事だった。
「ふふ、本日はよろしくお願いいたしますね?」
早速業務に取り掛かる。あいも変わらず積まれる書類の山。普段よりは少ないから、ハナコをランチにでも誘ってみようか。
作業を進めていると、どこか上の空でぼーっとしているハナコの様子が目に入ってくる。
”ハナコ?”
「…あ、あら、ごめんなさい先生。えっと、その。」
どこか珍しい様子だった。もにょもにょと段々と声量が小さくなって、顔がどんどん赤色に染まっていく。
”…なにかあったの?”
「実は先日、とある派閥から勧誘を受けていた時なのですが……」
「浦和ハナコ、あなたの才能を貸していただきたいのです。……力のない我が派閥を、どうにか再建するには。」
「……。」
前ほど強引な勧誘ではないのですが、やはり段々と心が冷えきっていく感覚に襲われます。……どうしてこうも普通の学園生活が送れないのか、暗い感情が段々と膨れ上がってきた頃でした。
「…ちょっと!!ハナコに何してるのよ!!」
たまたま通りがかったコハルちゃんが来てくれたのです。
「あら、正実の1年生の方…でしたか?ごめんなさいね、今のあなたに関係の無いお仕事の話をしているのです。……ごめんなさいね。」
トリニティの方の中では非常に丁寧で優しい振る舞い方でした。話を聞いていた限り、派閥の件で追い込まれる前までは心優しい方なのだろうと感じました。
トリニティは、善良な方も心赴くままの生活を送れなくなってしまうのでしょうね。
……私と重なるところがあって、断るのに苦労していました。……私のように投げ捨ててしまってはきっと過ごしていけないから、というのを理解してしまいましたから。
「……。」
困っている私をみて、コハルちゃんはどこか決意を固めたような表情を浮かべました。思わず告白された日のことを思い出してしまいます。
私のそばまで駆け寄って。
「…ハナコ、ちょっと。」
そう言って、コハルちゃんが内緒話をするような仕草をしたので、私はお顔をコハルちゃんに近づけたのです。
その時でした。
「……っ。」
「……!?っぁ!?……んぅ………!?」
コハルちゃんから、お口とお口でのキス。
「!?」
「ぁ、え!?」
咄嗟に離れようとしましたが、優しく頭に手を添えられて逃げ場がありません。
ちかちかと、何かが弾けました
酸素を求めているのか、高鳴りが抑えきれないのか、自然と呼吸が荒くなって。
いつの間にか周りを気にせずに互いの熱を交換し続けて。
「…ぷは。」
互いの混じった唾液が、舌をつたって。
「…いい?ハナコはどこの派閥のモノでもないの。私のハナコよ…!!」
やりきった表情を浮かべたコハルちゃんは高らかにそう宣言しました。
その一部始終を見ていた派閥の方は腰を抜かしてしまったのか、ペタりと座り込んでいて。
「……し、失礼いたします…!?」
ハッとした後、急いでその場を立ち去って行きました。
「…というようなことが。」
”……それは。”
「…もう、コハルちゃんの行動ひとつひとつが、なにかとてつもないようなものに感じてしまって。」
「…本当に本当にうれしいのですが、それ以上に……」
更に真っ赤に染まっていく頬。
「…こんなことを平気でやってくるコハルちゃんに私、たえきれませぇん……」
今日が当番の日で本当によかった。とハナコはつぶやく。
……そんなことされたら、顔も見れないね。
「せんせぇ、わたし、コハルちゃんのお顔、もうみれないです……」
……そりゃ、そうだと思う。
トリニティで政治的な思想が減った理由がなんとなくわかったような気がした。
ミカとハナコ
「…あ、浦和ハナコじゃん。やっほー!!」
「あら、聖園ミカさん。こんにちは♡」
どうやら今日は奉仕活動のない日のようです。……たまたま出会ってしまったかのように装っていますが、計画的に私に会いに来たようです。
きっと内容は。
「…コハルちゃんとお付き合いしてるんだよね?」
コハルちゃんのこと。
「…ふふふ♡さて、どうでしょうか♡」
……別に隠している訳では無いのですが、あの件があったので少しだけ棘がたってしまっているのでしょうか。……癖でうまく取り繕ろうとしてしまいました。
「…あー、いいのいいの。隠さなくても。純粋にお祝いしにきたの。おめでとうハナコちゃん。」
「…っていうか、たまたま見ちゃってたし。……コハルちゃん大胆!!って。」
見ていた。……見ていた?
「……?」
脳裏によぎるのは、コハルちゃんとのディープキス。
「あ、アレを見ていたのですか!?」
ミカさんに大きく迫ります。
「わ、わぉ!?……そんなおっきな声出せたんだ……!?あと、そんな前のめりにならないで落ち着いて……!!」
落ち着いていられない、あんな所を見られてたなんて私はこれからどう学園生活を送れば良いのでしょうか恥ずかしくて私……!!
「あんなふうに私のものだよ!!って見せつけられちゃったらさ……ほら、ね?」
ぼふん。お顔が真っ赤になっているのが分かります。というか暑いですとっても。
前までちょっとした破滅願望みたいなのはありましたが、辱めで破滅するのは違います!!
「正直、今でもドキドキが止まらないっていうか。……やられた本人の方が多分大変なことになってるとは思うけど。……ねね、どうだったか教えてよ。」
興味津々で私に尋ねてきました。
ぐるぐるとあの時の記憶が蘇って、思考が巡って。結局出てきた言葉は。
「も、もうお嫁にいけませぇん……」
情けない一言だった。笑うならひと思いに笑ってください!!
「……もしかして、ハナコちゃんって結構うぶ……?大丈夫だよ!!コハルちゃんが責任をとってハナコちゃんを貰ってくれるよ……!!」
「……ちょっと前まで露出徘徊してたとは思えないな。」
ぼそりとミカさんはそう呟きました。それは、そうなのですが……!!
「…スパダリな片鱗あったからなーコハルちゃん……実際にやってる所を見るとびっくりしちゃったけど、まぁ納得かな。」
「…ほら、あんまり言いたくないけどさ。私、魔女扱いされてるじゃん?それを見かねて私の事を庇ってくれたんだよね。」
「……前も派閥の子たちにちょっかいかけられてたのを助けてくれたし。……かっこよかったな。」
そう言ったミカさんはどこか懐かしそうに、寂しそうなそんな表情を浮かべました。
……もしかしたら、ミカさんもコハルちゃんの事を。
「……どう?少しは学園生活楽しくなりそうかな?」
その言葉が出かかった時、ミカさんは私に対してそう言いました。言う機会を逃してしまいました。
私はミカさんの言葉に、本心で答えて。
「…そっか。」
その言葉を聞いたミカさんは幸せそうに微笑みました。
「…私1人じゃ、ちっぽけかもしれないけど。」
「ハナコちゃんとコハルちゃんが幸せになれるように。」
祈るそぶり。その姿は、今まで見てきたどんなものより美しく感じました。
……根拠はありませんが、ミカさんもきっと幸せになれるような、そんな気がしました。