PHANTOM LORD 作:あんくせらむ
【前回のあらすじ】リクルート
聖十と連合
幸いにも
代わりに
その後、評議会が半壊したりラクサスがやらかしたりなど色々あったが、今日も魔法界は相変わらず物騒な平穏を保っている。
しかし、水面下では絶えず暗躍を働く者達がいることもまた忘れてはいけない。
「何ですか? コレ……」
「闇ギルドの組織図よ」
仕事から帰ってきたルーシィは、いつもと違うギルドの様子に何事かとミラジェーンに疑問を投げかける。
ギルド内部のステージ前。
そこには空中に文字を書ける
大きな枠線の中に三つのギルドの名前、そこから網を張るように無数のギルドへと繋がっている。
「ジュビア知ってますよ。闇ギルド最大勢力『バラム同盟』。
3つのギルドによって構成されていて、それぞれが直属のギルドを束ねて闇の世界を動かしているとか」
元
『
『
『
その一つ一つが単身で魔法界を揺らがせ得るほどの強大な力を持っていると。
「よく知ってんな、ジュビア」
「ファントムは闇とも浅くない関係があったらしいので。
ジュビアの友人も何度か勧誘されたことがあって、その度に用心しておけと言われてきました。
特に長い髭の眼帯おじさんと黒髪ポニテのイケメンには注意しろ、と」
「
「うっ!? 返す言葉もありません……!」
その後、組織図を注意深く観察していたルーシィが声を上げる。
「あっ! あの『
「エリゴールがいたギルドだな。
他にもラクサスの親衛隊である雷神衆が潰した『
「うわ〜、全部
戦々恐々とするルーシィ。
しかしそんな彼女のささやかな祈りは即座にへし折られることとなる。
「その
「マスター!?」
地方ギルド連盟の定例会から帰還したマスター・マカロフ。
彼が言うには、
ゆえに彼らの討伐に踏み切ることになったのだ。
しかし今回ばかりは敵が強大すぎる。
「そこでじゃ。我々は連合を組むことになった!」
『
『
『
『
四つのギルドが各々メンバーを選出して
それが今回地方ギルド連盟によって下された任務である。
「たった6人の魔導士相手に……そいつら何者なの?」
「
「えっ!?」
マカロフは眉間のシワをいっそう深くさせて言った。
「定例会で最も紛糾したのは奴らが6人ではなく7人で行動していたことじゃ。
最近になって六魔と共に目撃された、その魔導士こそが今回最大の問題となった」
それぞれの
その追加の人員にして、彼ら以上の要注意人物として連盟が名を挙げた魔導士。
「『霊王』が……奴らに
ーーー
「てゆーか! なんでこんな作戦にあたしが参加することになったのよー!!?」
連合軍の拠点に向かう馬車の中でルーシィが嘆きの声を上げる。
集合場所は『ワース樹海』の近郊。
鬱蒼とした木々が生い茂る秘境の地だ。
「オレだってめんどくせーんだ。ぶーぶー言うな」
「マスターの人選だ。私たちはその期待に応えるべきじゃないか?」
ぶーたれるルーシィを宥めるように口を挟んだのはグレイとエルザ。
グレイはぶっきらぼうに言うが、それはルーシィが過度に心配しないようにとの彼なりのわかりにくい配慮だった。
一方のエルザは生来の生真面目さ故の前向きな発言でルーシィを勇気付けようとする。
「まだ……着かねー……の……か……」
「見て見てルーシィ〜、ナツが溶けてる〜!」
「いつものことでしょ、まったく」
そしていつも通りに乗り物酔いでグロッキー状態のナツとそれを木の枝でつっついているハッピー。
これほど重要な任務の前とは思えない、いつも通りのチームの仲間たち。
そんな彼らの姿を見ていると不安がっている方が馬鹿みたいに思えてくる。
ルーシィは拠点に着く頃にはすっかり肩の力が抜けていた。
辿り着いたのは深い森の中に鎮座しているとは思えないほど、めちゃくちゃハート柄の主張が強い装飾を大量に施した建物。
「趣味わるっ!」
「
「てことは此処にいるのは……」
なぜかマスター・ボブの別荘をご存知のエルザと、彼女の言葉から何かを察するグレイ。
直後、彼の予感を裏付けるように室内が暗転。
スポットライトと共に3つの人影が現れる。
「「「
我ら
「〝白夜〟のヒビキ!」
「〝聖夜〟のイヴ!」
「〝空夜〟のレン」
登場したのはスーツに身を包んだ三人の男性魔導士。
上から順に茶髪、金髪、黒髪のホスト風だ。
グレイはイケメンも度が過ぎると違いがわからねぇな、と思った。
「「「とうっ!!!」」」
そんなグレイなぞ、どこ吹く風。
彼らは一糸乱れぬ素早い連携で、すぐさま
その間、実に2秒!!
「その表情が素敵だよ。僕……ずっと憧れてたんだぁ」
「別にお前のためじゃないんだからな」
「さあ、長旅でお疲れでしょう。今夜は僕たちと……」
「「「フォーエバー♡」」」
そして浮ついたイケメンボイスの
しかしエルザとルーシィには効果いまひとつだ。
普通にドン引きしておられる。
ある意味、効果抜群と言えなくもない。
「君たち、その辺にしておきたまえ」
「「「一夜様!」」」
そして最後に降臨するは
「久しぶりだね。会いたかったよ、
アナタのための、一夜でぇす!」
鮮やかな橙色の髪!
純白のタキシード!
だいたい四角の顔!
デカい鼻、ケツアゴ、青髭、ぽっちゃり、四頭身!
相性最悪の
「か……は……!」
「あぁっ、エルザが死んだ!」
「この人でなし!」
「登場しただけで人でなし呼ばわりは流石の私も傷付くメェーン……」
哀れ、不意打ちのグロ3Dに耐えきれずエルザは意識をシャットアウト。
誰も幸せにならない空間がそこにはあった。
「何をしているんだ、このバカどもは……」
「うふふ、騒がしいこと」
「我々は連合を組んで
仲間内で争うよりはよほどよかろう」
「1人死んでませんか、ジュラさん」
「不幸な事故だ」
「あれもまた、愛……♡」
「違うんじゃないか? オレがおかしいのか?」
一足遅れてやってきた
因縁のある
そんなリオンもまた愛しい、と勝手に愛のボルテージが上がる紅一点のシェリー。
しれっとエルザを尊い犠牲にした
側から見れば彼らもこの場に相応しいキャラの濃さをしていた。
そしてカオスと化したカオスな講堂に更なる追加のカオスがひとつまみ。
「きゃあっ」
何もない場所で躓きながらダイナミックエントリーをかましたのは、あどけなさの残る青い髪の少女。
「あ、あの……
よ、よろしくお願いしますっ!」
とても危険な任務に赴くような魔導士とは思えないお子様の登場に、さすがの歴戦の猛者たちも困惑を隠せなかった。
とても危険な任務に赴くような魔導士とは思えないほど、先ほどまでふざけ倒していたくせに。
「これで全員揃ったようだな」
「いや、話進めるのかよっ!」
「では作戦の説明は私の方からさせてもらおう。
と、その前にトイレの
「そこに
普段はボケ寄りだが自分以上のボケが居るとツッコミに回らざるを得ない便利……もとい柔軟なグレイもさすがに過労死寸前になったタイミングで、一夜から今回の『
「メェーン……奴らの狙いは恐らくワース樹海に封印された古代の破壊魔法。
その名は『ニルヴァーナ』。
我々はそれを阻止するため、
「目標はたったの7人だが彼らはとんでもなく強い。
必ず1人に対して2人以上で戦闘するんだ。
決して1人で戦ってはいけない」
一夜から説明を引き継いだヒビキが
毒蛇を使う魔導士『コブラ』。
速度系の魔法を操る『レーサー』。
天眼の二つ名を持つ『ホットアイ』。
心を覗けると言う女魔導士『エンジェル』。
情報がなく未知数の『ミッドナイト』。
彼らを束ねる司令塔『ブレイン』。
そして最後に『霊王』ジョゼフィーヌ。
「ん? こっちは12人だぞ。数が合わない」
リオンの懸念通り、1対2で当たるとしても14人は最低でも必要になる。
しかし連合もそれに関しては織り込み済み。
一夜は作戦の最終工程を説明する。
「彼らと正面から戦って撃破する必要はない。
霊王を引き離した後、彼らの仮設拠点まで六魔を誘導してくれるだけで良いのだよ。
その後は我がギルドが大陸に誇る魔導爆撃艇『クリスティーナ』で拠点もろとも葬り去る!!」
「おおっ!」
天馬を模し、魔導収束砲ジュピターを擁する航空艦のクリスティーナ。
1箇所を手の届かない場所から狙い撃つにはこれ以上ない戦力だ。
「だが、問題はまだある」
手を挙げて待ったをかけたのはエルザだった。
「ジョゼフィーヌを引き離すと言えば一言で済むが、ヤツの強さはハッキリ言って異常だ。
直接、刃を交えた私にはわかる。
ヤツに対しては一国の軍隊を以てしても足止めにすらならない。
誘導するにせよ、何かしらの作戦が必要だ」
「メェーン、さすがエルザさん。
鋭い考察の
彼女に対しては別途の戦力を用意してある」
「ほう、援軍がいるのか」
「その通り。それこそが……」
「
エルザが思い至ったと同時、ルーシィの足下からニョキニョキと
「キャーッ!? なんかワサワサ出てきたんですけど!?」
「漏らすなよルーシィ」
「漏らしてないわよ! 生えてきてんのよっ!」
「わはははっ! 相変わらず騒がしいギルドよな!」
「「「木がシャベッタァァァ!!?」」」
ネコもしゃべってるし今更ではなかろうか。
「うむ、勿体ぶることもあるまい。
そこなジュラ君と同じ聖十大魔導の1人じゃよ」
生えてきた木は寄り集まり、やがて人のような形に収束した。
肌は樹皮。
手足は枝木。
髪は深緑の葉。
木の幹に浮かぶ表情をしわくちゃに綻ばせて、老齢の魔導士は豪放に破顔した。
「せ……聖十大魔導!?」
「というのは冗談じゃ」
「冗談なのかよ!?」
「というのも冗談じゃ!」
「ルーシィ、このジーさん薪にしていいか」
「一応えらい人だからやめてね」
自分で言った冗談に腹抱えてツボってる大魔導士を前に、めんどくせぇジジイが来た……という困惑を隠せない連合軍のメンバーたち。
「おいおいおい、ウォーロッドじいさんやい。
年寄りの寒い冗談にいつまで付き合わせとるつもりじゃい、おい」
そんな彼らに助け舟を出したのは、新たに部屋に現れた老人だった。
膝丈ほどしかない小柄な体躯だが、その眼光の鋭さからは並々ならぬ威圧感を感じさせる。
「おお、ウルフヘイム君!
相変わらず変な名前だね〜。というのは冗談じゃ!」
「大陸の命運がかかっとる作戦前に随分と呑気じゃのう、おい!」
聖十大魔導序列三位、ウルフヘイム。
彼はウォーロッドの冗談に青筋を立てて睨み上げた。
聖十同士の緊迫した雰囲気に空気が張り詰める。
「よしたまえ。今回の作戦は我々の働き如何に左右される。
開始以前に身内同士のどつきあいなど笑い話にもならんよ」
しかしもう一人、ワインを携えて優雅に登場した壮年の偉丈夫の取りなしによって場の空気は弛緩する。
現れた男こそ聖十大魔導序列二位、ハイベリオンである。
「う、うそでしょ……イシュガルの四天王が3人も!?」
「メェーン、その通り。
しかし、もう一人いらっしゃるとのお話でしたが?」
「あの男は馬車酔いで潰れている。常人の8倍酔いやすい男だからな。
しかし問題はあるまい。血の匂いには敏感ゆえ、戦端が開かれれば自ずと駆けつけるだろう」
聖十大魔導の上位4名に連なる者が3人。
それぞれの放つ存在感に気圧されるルーシィを尻目にして会議は佳境を迎える。
「では改めて作戦を整理しようか、メェーン。
まずは六魔と霊王の居場所を突き止めるのが最優先。
奴らがバラけていればそれでよし。
まとまっていた場合は隙を見てウォーロッド殿が霊王を隔離し、聖十大魔導3人がかりでこれを受け持つ。
その間に連合軍は六魔の方を1箇所に誘導しクリスティーナの射程圏内に押し込む!」
「よし、それでは出撃用意!
敵は少数、しかして強大! だが恐れることなく立ち向かえ!
我ら聖十の出張った戦場、負けることなど有り得ない! 行くぞ!」
一夜から説明を引き継いだハイベリオンが皆に開始の号令をかけ、ここに7対15の決戦の火蓋が切って落とされた。
……と、いうわけで。
以上『連合軍の愉快な作戦会議』実況と解説は私、ジョゼフィーヌ・ポーラでお送りしました〜。
そいじゃ、あとは
ーーー
討伐作戦開始の合図と同時、一目散に戦場めがけて駆け出したナツ。
遅れて
「見えてきた! 樹海だ!!」
「ちょっと待ってよナツー! あたし、もう、へろへろなんだけど……!」
「「「おんぶしてあげようか、レディ?」」」
「いらんわ、騎馬戦かっ!!」
そして樹海の見える丘に差し掛かった頃、一同の上空を巨影が過ぎった。
「おお! あれが噂の天馬……魔導爆撃艇クリスティーナか!」
「すげえ! でっけー!!」
それは空を飛ぶ戦艦。
天馬を模した船首に純白の主翼、至る所に魔導火器の砲門を備えた
これに並ぶ飛行艇はイシュガル大陸全土を探したとて他にない。
圧倒的な威容を目の当たりにして討伐メンバーたちは大きく喝采を上げる。
この戦艦に加え、さらに聖十の魔導士が4人。
負ける道理などあるはずがない、と。
次の瞬間。
その歓声は彼方から伸びる一条の黒い閃光によって掻き消された。
「なっ……!?」
いち早くその
漆黒の魔力の奔流がクリスティーナの横腹へと突き刺さる。
空を駆る天馬は、その一撃を以て船体を引き裂かれ……爆散した。
「嘘だろ……クリスティーナが落とされた!?」
「グズグズするな、残骸が落下する! 総員退避だ!」
ジュラの素早い指示もありメンバーの中に負傷者はいない。
しかし体の傷はなくとも、
なにしろ作戦の要が始まる前から潰されたのだ。
この時点で討伐作戦は半分失敗したも同然と言えるのだから。
「早速仕掛けてきたのぅ、おい。行けるか、ウォーロッドじいさんやい」
「うむ。
「では血戦だ。各々、命の使い所を見誤るなよ」
そんな絶望的な状況の中、聖十大魔導の三傑は冷静にクリスティーナが墜落して舞い上がった土煙の奥を見据えている。
ことここに至り動揺を露わにする未熟者はなし。
誰もが砂塵に紛れる7名の魔導士から目を逸さなかった。
その中の1人。
魔術師らしい三角帽を被り、ゴシックドレスに羽織ったマントをまるで死神の外套のように
「さて……とりあえず。
全員命をもらっておこうか」
大陸最凶。戦争を終わらせた魔神。
呪いと悪霊の
『霊王』ジョゼフィーヌ・ポーラが戦場へと降り立った。