ドタンドタン、ガタガタッ、ゴーゴー
強風が家の壁を揺らし、雨が横殴りに窓に打ち付けている。
「外、大丈夫かなぁ」
不安そうに窓の外を眺めるヒメ
「ニュースによると今年最大級の台風だってね」
テレビを見ながらミコトが答える
「ここまで強いとニンゲンは大変そうだね」
「今年最大でも去年には似たようにもあったでしょ、そうそう死んだりしないよ。むしろ、建物が壊れないかが心配かな」
「なんだかんだこの家も古いからねぇ」
突然、テレビの画面が突然砂嵐に変わった。
「あれ? どうしたんだろ」
「どしたー?」
「急にテレビが映らなくなってね。もしかしたら風でアンテナがずれたのかも」
「じゃあ今から直すついでに補強しておく? 私たち飛梅の精霊なんだからちょっと飛べば行けるでしょ」
「確かに。お風呂準備してる間に終わるだろうから先汲んどくね」
二人が考えている通り、修理自体は難しくはないだろう。
問題は風が強いこと、そして―――
―――飛梅である二人は風によって飛ばされる程度の重さしかないことである。
◆ ◆ ◆
「いったたた・・・」
ミコトは痛みで目を覚ました。
想像以上の強風でヒメ共々風で飛ばされてしまったのだ。
「ヒメ!ヒメ!大丈夫!?」
飛ばされながらもしっかりと手を繋いでいたため、ヒメとはぐれずにすんだ。
「うぅ・・・あと5分・・・」
「いいから起きて!ここ家じゃないって!」
「何言ってるのミコト・・・、えっここどこ?」
辺りを見回すと見慣れない建築様式が広がっている。遠くまで飛ばされたのだろう。
「ヒメ、あの看板みて・・・」
ミコトが指を指した先にはこう書かれていた
『大董烤鴨店』
◆ ◆ ◆
「・・・もしかして中国まで飛ばされた?」
「・・・そうかもね、建物は横浜にも似たのはあったけど、ここは平仮名が全然ないし見た事ない漢字もある」
ヒメそれを聞いてうなだれたかと思うとすぐに顔をあげ、笑顔で提案した。
「じゃあせっかくだしこの辺観光していこうよ!」
「帰るときはまた飛んでいけばいいんだし、少しくらいは見て回ってもいいんじゃない?」
「まぁ・・・一理あるかも」
「よーし!じゃあしゅっぱーつ!」
◆ ◆ ◆
「それにしてもチャイナ服着てる人あんまいないね?」
「日本の着物みたいに祭事でしか着ないんじゃないかな」
「なるほど~、着てみたいけど難しいか」
「今は一文無しだからね、日本に戻ってから横浜に行くのがいいんじゃないかな」
「ぶー、本場で着るのがいいのに」
「あれ?ディズニーランドがある」
「なになに・・・? 【上海迪士尼乐园】 もしかしてここ上海か。だったら大宰府からそんな飛ばされなかったんだね」
「じゃあ少し見てから帰ろうか」
◆ ◆ ◆
人を、街を、海を越えしばらく飛んでいるとようやく自宅が見えてきた
「いやぁ楽しかったね」
「ふわぁ・・・まさかアンテナ直そうとして海外まで飛ばされるとはねぇ」
長旅で疲れたのかミコトはあくびをしながら答える
「でも疲れたからお風呂入って寝たーい」
「そうだね、おふ・・・ろ・・・」
「お風呂のお湯出しっぱなしじゃん!」