俺と翔陽が交代して、サーブは翔陽に回るが…
「あっ」
アウトになり1点差に戻った…ここからは俺は田中先輩チームには入れない。 翔陽、ここでお前が活躍しなければ、烏野には居場所は無いぞ。
中学の時は違い、周囲は経験者だ。 人数も多いからここでは補欠、あるいはユニフォームも着れずに3年間終わる。
中学の経験があると無いとでは、スタート時点での差がある。
確かに翔陽の身体能力は高い、スタミナと強靭なバネ…喘息でスタミナが無く、誰よりも高く飛べる訳では無い。
俺が欲しい才能だ。
「ちっ!」
そして翔陽はまた月島にブロックされた。
「悪いね、先の彼と違って単純だから分かりやすい」
「何だと〜」
「先のサーブ見たろ? 身長や身体能力が無いならそれ以外で磨かないとダメなんだよ」
先から気になるが月島は、身長や身体能力によく拘るな。
最初は長身の自分に自信が有るのか思ったが…もしかして?
「ねぇーそろそろ見せてよ王様のトス、味方を置き去りにしたトスをさ」
「先から何なんだよ、王様、王様って何がイケナイんだよ」
「君、彼が何でコート場の王様って言われてるか知ってるの?」
「? そんなの、相手チームが影山の上手さに王様みたいに強いとか?」
「確かに、そう思う連中も多いけど…あれは、同じチームメイトが付けたらしいよ。 意味は横暴で独裁政治な王様だって」
月島に言われ去年の試合を思い出していた。 確かにプレー中チームメイトに強く言う場面は見えていた。
「県予選決勝見たよ、最後はチームメイトが影山のトスに応えなくてベンチに下げられたよね」
「…あぁ、そうだよ。 トスを上げた先に誰も居ないのは怖ぇーよ」
経緯は解らないが、これまでの態度でチームが亀裂を入れた結果が影山が烏野高校に来たんだな。
勿論本当の理由違うかも知れないが、そんなトラブルが無ければ、北川第一中学なら、県大会ベスト4の青葉城西に行くはず
「でも、それは中学までだろ? 俺にはちゃんとトスが上がるから関係ない」
「ん?っぷ!」
場の空気が重くなる中で、気にせずにマイペースに言う翔陽に澤村先輩と田中先輩は吹いていた。
「それより今はどうやって月島を倒すかだ!それ以外何かあるのか?」
「…」
翔陽は割とビビりな小心者なのに、こういう時は堂々するのはなんなんだろうな…
「相変わらず、何なんだろうな」
「そういう、真っ直ぐな根性論でどうにかなる訳無いでしょ…」
月島はイラつきながらサーブをした。
ボールは田中先輩が受け取り、影山に向かい、スパイクにトスを投げる体制に入った。
これまでの勝率なら、間違いなく田中先輩だが、もう既に月島と山口が構えている。 幾ら、田中先輩でも、構えた所からスパイクを決めるのは難しい。
「田中さ…」
「影山、 居るぞ!!」
翔陽の呼びかけで、咄嗟に影山は田中先輩から翔陽に切り替えてトスを上げた。 ボールはギリギリ掠り、相手コートに入ったがアウトになる。
「危ねぇ〜ギリギリ相手コートに入った〜アウトだけど」
「お前、いったい何をいきなり」
「でも、ちゃんとボール来た!」
『!?』
「中学の事は、知らなぇー 俺にとってはどんなトスだって、
ありがたいトスなんだ!」
「俺は何処にだって飛ぶ、どんなボールだって打つ、だから俺にトス持って来い!!」
この自信は何処に有るのか疑問だが…けど不思議と力がある様に感じる。 大阪の中学時代に全国大会出場したけど、上に行くヤツらみたいな…この当然な自信がある奴は怖い。トータルで負ける気はしないが…追い込まれても揺るがない何か……コート外から翔陽見て恐ろしく思える。
そして、影山も翔陽が声をかけるまでは田中先輩にトスするつもりが、咄嗟に切り替えた。 結果は点にはならなかったが、スパイカーの元に届ける正確なトス…澤村部長がこの2人が噛み合う時を期待するのがわかる気がする。
「でも、俺はどんなトスでも打ちますよ!」
「合わせた事も無いのに無理に決まってるだろ?」
どうやら、先のクイックを打つことの話をしてたのか? でも影山は無理と否定。 翔陽は驚いていたが、 数日、影山見て思った。
影山は勝負に勝つために最適解を即座に対応していた。けど、ついて来れないチームメイトから無茶な横暴な個人プレーになる。
だから、傍目からは根性論タイプにも見えるが、実際はバレーに対してストイック過ぎるほど冷静なんだ。
まぁ〜一番の問題はその事をチームメイトに上手くコミュニケーション取らなかった事だが…今は置いておいて、どう対応するんだ?
「王様らしく無いんじゃない?」
「今打ち抜いてやるから、待ってろ!」
「またー、そんなムキになって、何でもガムシャラにやれば良いってもんじゃ無いでしょ?」
「ん?」
「人には向き不向きがあるんだし、君は明らかにスパイカーに向いて無いでしょう?」
「…確かに、中学の時も、今も…俺、飛んでも飛んでもブロックに停められてばっかだ。 バレーボールは高さが必要…幾ら高く飛べても圧倒的な身長差は埋まらねぇ」
「翔陽…」
「だけど、あんな風になりたいって思っちゃたんだよ。だから、不利とか不向きとか関係ないんだ…この身体で戦って、勝って勝ってコートに居たい!」
俺は翔陽のその言葉に突き刺さる。 喘息のハンデが合っても俺もあのコートに立ちたい…そう思った。 傍から見れば無謀と言われても、僅かな時間しか入れなくても俺はコートに立ちたい!
「はぁ、だからその方法が無いんでしょ? 根性論で身長差は埋まらない」
「スパイカーの前の壁を切り開く…その為のセッターだ」
どうやら影山も翔陽に期待したのはわかる…何か3人にで打ち合わせして揉めてるが…
「にしても星野も大変だな」
「どう言う意味ですか、菅原先輩?」
「なんと言うか真っ直ぐな奴が居ると色々とな」
そう言いながら、顔が笑ってる菅原先輩を見て、多分楽しでるのは解る。
「まぁ、前のチームでも見かけないタイプなのは確かですね」
大阪時代のチームはブロックとレシーブ主体の守備チームとして完成されていた。 安定感あるしチームメイトもバランス良く安定していた。 対して、この2人は能力が凄いがバランス悪すぎる。
だから…
「あっ、はやい…」
「おい、お前…チッ」
どうやら、早速クイックに行ったが、案の定、空ぶった。
「出た、王様のトス!」
「最初から上手く行くわけ無いだろ!」
それから数回チャレンジしたが、見事に空回り、最後はネットに絡まる感じになる。
「全然、タイミングわからねぇー」
「お前、反応早いんだから、もっとガァっと来いよ」
「ガァなのか、ぐわぁなのか分からねぇーよ!」
「重要なのはソコじゃねぇーよ」
「影山、それじゃ中学時代と同じだぞ」
「日向には反射もバネも有るので慣れれば対応出来ると思うのですが」
「日向のそのすばしっこい所を、お前のトスが殺してると思う」
「ん?」
「日向には技術も経験もない」
「菅原さん!」
「中学時代みたいにお前のプレーをギリギリ付いて来た優秀なプレーヤーとは違う…でも、日向は素材はピカイチだ」
「そんな、天才だなんて」
『言ってねぇーよ』
思わず、俺と田中先輩はツッコミを入れてしまった。
「お前の腕が有れば、日向の持ち味を…その…何か上手いこと使えると思うんだよ!」
「俺、お前と同じポジションのセッターだから解る。 ズバ抜けたセンスとボールコントロール、そして何よりも敵ブロックの動きを冷静に判断できる目…俺には…全部無いもんだ」
「そんな事ないですよ 菅さん」
「田中、1度聞こう」
菅原先輩も決して下手なセッターでは無い。 でも、影山の様な圧倒する何かを持っていない、同じポジションだから解るんだろうな…
「技術があって、やる気もあり過ぎるくらいあって、何よりも周りを見る優れた目を持ったお前が、仲間のことが見えないはずがない」
そう言ってボールを渡した菅原先輩に対して、影山は混乱していたが、しばらく考えて口を開いた。
「俺は、お前の運動神経が羨ましい」
「はぁ?」
「だから、宝の持ち腐れのお前が腹立たしい?」
「はぁぁ!?」
「それなら、お前の能力を全部使ってみせる」
どういうことだ?
「お前のいちばんのスピードと、いちばんのジャンプで飛べ……ボールは俺が持っていく」
「持っていくって何? どういうことだ?」
「お前はただ、ブロックがいないところでMAXのスピードとジャンプで全力スイングだ。俺のボールを見なくていい、合わせなくていい」
「はぁー! ボールを見なければ空振るじゃん!」
「かもな!」
「おい!」
「でも、試してみたい……」
「わかった」
正直、影山の意図が分からなかった。だが、影山は集中していた。
「何を狙ってる?」
月島のサーブを田中先輩がレシーブして、影山にボールが向かった瞬間——
ドン!
いつの間にか、翔陽がブロックのいない反対サイドにスパイクを決めていた。
「早い……」
嘘だろ? 今までみたいに翔陽の動きに合わせてから打つよりも、翔陽が飛んでスイングした瞬間にボールが飛んでいた。
「おぉ〜、手に当たった〜!」
翔陽は久しぶりにスパイクが決まってテンションが上がっているのか?
「おい、今……日向、目をつぶってスイングしたぞ?」
『はぁ!?』
澤村部長の一言に、その場にいた全員が驚いていた。
つまり、翔陽はブロックのいないところに飛んだ直後から全力スイングした。
そして、影山はそのタイミングにトスを上げた……
ありえない!
「お前、目をつぶるって何してるんだよ!」
「えっ、だってお前、ボール見なくていいって言ったじゃん。目を開いてるとどうしても見てしまうから……だから目をつぶったんだ」
「確かに言ったが、それでも普通するか!?」
「何が悪いんだよ、成功したんだから!」
「けど、お前、信じるか普通?」
「だって信じる以外わかんねぇんだよ!」
俺は翔陽を一年見て、わかった気でいたが……コイツ、こんなことを平然とやれるのか?
俺はとんでもないヤツのチームに入ったかもしれない。があって、やる気もあり過ぎるくらいあって、 何よりも周りを見る優れた目を持ったお前が、仲間の事が見えない筈が無い」
そう言ってボールを渡した菅原先輩に対して、影山は混乱していたが、しばらく考えて口を開いた。
「俺は、お前の運動神経が羨ましい」
「はぁ?」
「だから、宝の持ち腐れのお前が腹立たしい?」
「はぁぁ!?」
「それなら、お前の能力を全部使ってみせる」
どういう事だ?
「お前の1番スピードと1番のジャンプで飛べ…ボールは俺が持っていく」
「持っていくって何?どう言う事だ?」
「お前はただ、ブロックが居ないところでMAXのスピードとジャンプで全力スイングだ。 俺のボールを見なくて良い、合わせなくて良い」
「はぁー! ボールを見なければ良いって空振るじゃん」
「かもな!」
「おい!」
「でも、試してみたい…」
「わかった」
正直、影山の意図が分からなかった。 だが、影山は集中していた。
「何を狙ってる?」
月島サーブのボールを田中先輩がレシーブして影山に向かった瞬間に
ドン!
いつの間にか、翔陽がブロック居ない反対サイドにスパイクを決めていた。
「早い」
嘘だろ? 今までみたいに翔陽の動きに合わせてから打つよりも、翔陽が飛んでスイングの瞬間にボールが飛んでいた。
「おぉ〜手に当たった〜」
翔陽は久しぶりにスパイクが決まってテンション上がってるのか?
「おい、今…日向目をつぶってスイングしたぞ?」
『はぁ!?』
澤村部長の一言にその場に居る全員が驚いていた。
つまり、翔陽はブロック居ないところに飛んだ直後から全力スイングした。 そして、影山はそのタイミングにトスを上げた……
ありえない!
「お前、目を瞑るって何してるんだよ!」
「えっ、だってお前ボール見なくて良いって言ったじゃん、目を開いてるとどうしても見てしまうから…だから目をつぶったんだ」
「確かに言ったが、それでもするか普通!?」
「何が悪いんだよ成功したんだから」
「けど、お前、信じるか普通?」
「だって信じる以外わかねぇーんだよ!」
俺は翔陽を1年見て解った気で居たが…コイツ、こんな事を平然とやれるのか? 俺はとんでもないヤツのチームに入ったかもしれない。