ハイキュー 流星の絆   作:ダレ狐

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コーチ

昨日の武田先生の連絡の翌日。

 

「気持ちは嬉しいんだけど、何で一緒に練習したこともない俺が気になるの?」

 

俺達──翔陽と影山と俺は、昼休みに東峰先輩の所に来ていた。

 

「あ! 旭さんが戻って来ないと2〜3年生が元気ないから!

(グサ)ぶは」

 

声が大きい翔陽に、両隣にいた俺と影山が脇腹あたりに手刀を入れて黙らせた。

 

 

『声がデカい』

 

「2人同時は……やめろよ〜」

 

「ははは、お前ら面白いなぁ〜」

 

そんな俺達のやり取りを見て微笑む東峰先輩だったが、少しして申し訳なさそうな顔をした。

 

「けど、悪い……俺はね。

高いブロックを目の前にして……それを打ち抜くイメージみたいなのが、全然見えなくなっちゃったんだ」

 

それを聞くと、俺も分かる。

背が特別大きくない俺も、ブロックに止められた頃は何をしても無駄に見えてしまう。

そんな恐怖がある。

 

「それにビビって、自滅する自分が頭ん中をよぎるんだ」

 

「い……1年のチビにこんな事言われたら生意気って思うかも……ですけど」

 

「思わないよ。何?」

 

「それ、分かります!」

 

翔陽は俺と同じように感じたのか、東峰先輩に自分の意見を言い始めた。

 

「俺、背が低くて技術も無いから、ブロックに捕まってばっかで……

でも今は、こいつのトスがあるから、どんな高いブロックでもかわせます!

ブロックが目の前からいなくなって……ネットの向こう側がパァっと見えるんです」

 

(あぁ、その景色……ちょっと分かる)

 

「そんで、一番高い所でボールが手に当たって……ボールの重さが、こう……手にズシッと来る感じ……大好きです!!」

 

(それも……よく知ってる)

 

「俺、旭さんが羨ましいです。

今の俺には、一人でブロックをぶち抜くタッパもパワーもないけど……旭さんにはそれがある。

今までたくさんブロックされたかもしれないけど……

それより、もっといっぱいスパイク決めてきたんですよね!

だから、皆、旭さんをエースって呼ぶんだ」

 

「あ……」

 

この翔陽が真っ直ぐに人を褒めるのは凄い。

お世辞じゃない本心だから、心に来るよな……。

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

「あっ、時間だ。戻るぞ」

 

「仕方ない、戻るぞ翔陽」

 

俺と影山が翔陽を掴んで移動しようとしたが、影山が振り返り東峰先輩の方を見た。

 

「あの……一人で勝てないのは当たり前です。コートには6人いるんだから……。

俺もそれを分かったの、ついこの間なんで偉そうには言えないですけど」

 

そう言って東峰先輩にお辞儀して戻って来た。

ここで俺も言わないのもカッコつかないから……一言だけ。

 

「先輩、俺も怪我を理由に一時期バレーボールを辞めてました。

でも、コートで戦うのが……スパイクを決める快感が忘れられなくて戻って来ました。

勝てる云々は置いておいて、シンプルにバレーボールが……烏野のメンバーとやりたいか。

それだけでいいんじゃないですか?」

 

「……そうか」

 

「失礼します」

俺達はそのまま東峰先輩の元を去った。

 

その日の夜 烏野市民体育館

 

「あの、上戸 コーチ良いですか?」

 

「えっと君は確か…」

 

「烏野高校 1年 女子バレーボール部 の丸山と言います。ポジションはリベロです」

 

私は今日の夜に市民体育館でママさんバレーボールの指導として来てる上戸 こずえコーチに声を掛けた。

 

上戸こずえコーチは90年代に活躍した元女子バレー選手で、現役を引退してからは大学と地元のママさんバレーボールのコーチをしていた。 実力は当然ながら指導した大学チームを優勝に導いた実績がある。

 

「私に何か話があるのかな?」

 

「突然の事ですみませんが、私達烏野高校にもご指導お願い出来ないでしょうか?」

 

「烏野高校って確か少し前に"小さな巨人"で話題の?」

 

「はい、女子バレーボール部は男子バレーボール部と比べると実績が無くて…顧問の先生もバレーボール未経験者なので…」

 

「それで、私に頼みに来た…と言うよりも指導してくれる人を紹介して欲しい感じかな?」

 

「はい、その通りです」

 

勿論、上戸コーチに来て欲しいが大学の指導がメインで厚意でママさんバレーボールの指導してもらってるのだ。おいそれと来てもらえる可能性は低い…けど、この人なら指導者の候補を知ってる可能性がある。

 

「なるほどね、確かに私は大学生の指導メインだから無理ね…そうね、居なくは無いけど引き受けてくれるか分からないわよ」

 

「ありがとうございます!」

 

「紹介するのは大学OGで近所に住んでる子よ…名前は木村 恵 ポジションはウイングスパイカーよ」

 

「木村 恵って…高校生の時にオリンピック選手になった人ですか?」

 

木村 恵 さん 2000年代頃、バレーボールブームの時に有名になった選手の一人で、 身長は160cmながらもサーブ・レシーブ·トス·スパイクの決定率が高く、その実力から18歳で2004年のオリンピックに出場した。

 

「へぇ〜あの子事を知ってるのね…そうよ、最も在学中に膝を壊してからは選手から離れて私のサポートをしてくれてね…今は実家の本屋の手伝いをしてるわ」

 

「そんな有名人が近くに居たとは…」

 

「まぁ〜あの子も騒がれるのが好きじゃないからね、とにかく、私から烏野高校に向かうように言うわ」

 

「良いですか? 本人の確認も無しに」

 

「私がするのは場を設けるまでよ、そこから君達のやる気次第…今週中には学校から連絡が来ると思うわ」

 

「わかりました…ありがとうございます」

 

よし、私達も頑張らないと!

 

翌日 烏野市内 木村書店

 

「いらっしゃいませー」

 

店内に響く落ち着いた声。

夕方の本屋は学校帰りの学生や近所の常連客でそこそこ賑わっていた。

レジに立っているのは、短めの髪を後ろでまとめた女性。

身長は決して高くないが、背筋がまっすぐで、どこかスポーツ選手のような雰囲気を感じさせる。

 

木村恵。

かつて女子バレーボール界で名を馳せた元オリンピック選手。

今は実家の本屋を手伝いながら、時々上戸こずえコーチをサポートしている。

 

「ありがとうございましたー」

 

最後の客を見送り、軽く背伸びをした。

「はぁ……今日は静かだなぁ」

その時、カウンターの上でスマートフォンが震えた。

画面には

上戸こずえコーチの名前。

 

「ん? コーチ?」

 

通話ボタンを押す。

 

「もしもし、コーチ? 珍しいですね」

 

『恵、ちょっとお願いがあるんだけど』

 

電話越しの声はいつも通り落ち着いている。

 

「お願い?」

 

『烏野高校の女子バレー部なんだけど』

 

「烏野?」

その名前に、恵は少しだけ眉を上げた。

 

「男子バレー部が“小さな巨人”で有名になったあの学校ですか?」

 

『そう、その烏野』

 

少し間が空く。

 

『女子バレー部の子がね、コーチを探してるの』

 

「へぇ……」

恵はカウンターにもたれながら天井を見上げた。

 

『私は大学の指導があるから無理だけど、もしよかったら一度顔出してあげてくれない?』

 

「えぇ……私がですか?」

 

『別に引き受けろとは言わないわ。ただ、話を聞いてあげて』

恵は少し考える。

 

「……高校生かぁ」

 

昔の自分を思い出す。

体育館の床の匂い。

スパイクの音。

そして、コートの中の熱気。

しばらく沈黙したあと、恵は小さく息を吐いた。

 

「分かりました。とりあえず一回だけ行きます」

 

『助かるわ』

 

「ただし、やる気が無かったら帰りますよ?」

 

『それでいいわ』

 

電話が切れる。

恵はスマートフォンをポケットにしまい、店の奥を見た。

 

「母さーん」

 

奥から声が返ってくる。

「なにー?」

 

「ちょっと今週、外出るかも」

 

「またバレー?」

 

恵は苦笑した。

 

「まぁ……そんな感じ」

 

そして小さく呟く。

 

「烏野高校、ね」

 

窓の外、夕焼けが街を赤く染めていた。

 

 

 

 

その日の夕方は男子バレーボール部にも動きがあった。

 

 

 

もう少しでGW最終日の練習試合に向けて気合いを入れている烏野男子バレーボール部の面々が練習しようとする中で体育館に武田先生と坂の下商店の店主が現れた。

 

 

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