ハイキュー 流星の絆   作:ダレ狐

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試合開始

大会2週間前 放課後、校舎裏にある小さな相談室。

バレー部顧問の長谷川先生は、俺の話を聞き終えると、ゆっくりとメガネを外した。

 

「――星野、お前の気持ちはよく分かった。でもな、これは“命”に関わることだ」

 

「分かってます。だから、フル出場じゃなくていい。“ピンチサーバー”限定で、条件付きの出場で構いません」

 

「条件付き?」

 

「タイムアウト明け・セット終盤の一点もしくは2セット目での大差が着いた時だけでもいい。医者の診断で『5分以内の高負荷動作』なら許容範囲って書かれてました」

 

「……それを証明するものは?」

 

俺は静かに、封筒を差し出した。

 

「先週、かかりつけ医に診断書を書いてもらいました。

喘息の状態は安定している。アレルゲンは運動ではなく季節性要因中心。

短時間の出場であれば“医師の監督のもと問題ない”と」

 

長谷川先生はそれを手に取り、しばらく黙読した後、ふぅと息をついた。

 

「……分かった。あと1つ。保護者の同意が要る。それさえ取れたら、俺は“監督責任のもと”で背中を押してやる」

 

「ありがとうございます。必ず、母に話を通してきます」

 

 

---

 

■帰宅後

 

夜。食器を片づけていた母さんの背中に、そっと声をかけた。

 

「母さん、ちょっと…時間ある?」

 

「どないしたん?」

 

「バレー部の大会…出たい。

ポジションはピンチサーバー。少しだけでもいい。

それでも俺…、“あの場”に立ってみたいんだ」

 

母さんは皿を置き、俺の目を見つめてきた。

 

「斗真…。あんた、自分の身体のこと――」

 

「分かってる。だから、医者とも相談して、無理のない条件で、診断書ももらった。

あと、ちゃんと吸入薬と予備のボンベも試合に持って行く。顧問も許可してくれるって」

 

数秒の沈黙が続いた。

 

やがて――母さんは、小さく笑った。

 

「…やっと、“お願い”らしいお願いしてきたわね、斗真」

 

「え?」

 

「今まで、自分で全部決めて、無理に大人ぶって、苦しくても黙ってたじゃない。

でも今のあんたの目は――“やりたい”って、ちゃんと言ってる。なら母さんも信じるよ」

 

俺は思わず、胸がいっぱいになって黙り込んでしまった。

 

「出なさい。斗真のサーブで、みんなの背中、押してあげて」

 

「……ありがとう」

 

このとき、ようやく――“自分もチームの一員として認められた”気がした。

 

 

 

そして、俺達は試合会場に来た。

 

「エアーサロンパスの匂い!」

 

「初の公式戦前で言うセリフかよ?」

 

「良いだろ、別に!」

 

「本当に翔陽一人から、星野が来て、試合にこぎ着けるとは。よくやったよ」

 

「皆、ありがとうな!」

 

「……んじゃ、アップするぞ!」

 

「よし、頑張るぞ!」

 

翔陽の掛け声で、気合いを入れた――はずだったのに。

 

空を切るような強烈な音が、翔陽の腹の中から聞こえた。

 

「その前に便所!」

 

「何やってるんだよ、あいつは……」

 

俺は準備をし、皆のアップを終わらせた。翔陽はギリギリで戻ってきた。

何か怒っているようにも見えたが、俺はベンチでポジションの確認をした。

 

「これまでの練習の通り、セッターのいる正面にはブロックに立てない。

真ん中から反対側を“コミットブロック”にする」

 

「なぁ〜本当に大丈夫か? 相手の学校、強いんだろ?

そんな相手に、こんな賭けみたいな作戦で……」

 

「関向の言う通り、普通はしない。

でも、基本が無い素人が通常手段で戦えるわけがない。なら、奇策で突破するしかない。

空いた陣地には関向と翔陽、2人で守らせる」

 

イメージ

 

ーーーーーーーーーーネット

①① (泉)

① (日) (関)

 

「どこまでやれるか分からないけど、頑張ろうよ、翔ちゃん」

 

「うん、勝って試合いっぱいしよう!」

 

皆、翔陽が本気で“勝ちにいってる”ことに驚いた。

俺は下手に声をかけてプレッシャーをかけたくなかったが――

いや、今は目の前の試合に集中だ。

 

「セットカウント、25対14。第1セット、北川第一!」

 

「……!」

 

俺たちの初陣は、想像以上に厳しい現実を突きつけてきた。

 

翔陽のスパイクも通らず、泉のトスも流れを作れず、何より――影山の存在が試合を完全に支配していた。

 

だが、その中でも。

 

“ソフトブロック”は、確実に機能していた。

 

数本の攻撃は、翔陽のフォローでリカバーし、ワンタッチからのカウンターで何点かを拾った。

 

北川第一のセッター影山もそれに気づいたのか、第1セット後半からトススピードを上げ、ミスが目立ち始めていた。

 

翔陽がネットを越すたび、少しずつ会場の空気が変わっていくのを、俺たちは肌で感じていた。

 

 

「ポジションチェンジ。ピンチサーバー、星野、コートイン!」

 

「おう、任せとけ」

 

俺はコートに立つ。

吸入器の感覚を確かめるようにポケットを押さえ、いつものように一歩後ろに下がった。

 

この5点で、流れを変える。

 

今回、俺の役割は“ピンチサーバー”だけじゃない。

ミドルブロッカーとしても、“囮”と“壁”――両方になる必要がある。

 

影山が前衛にいる今こそ、最大のチャンスだ。

 

 

 

 




改めて原作の面白さ再確認出来る今日この頃
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