ハイキュー 流星の絆   作:ダレ狐

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遂に影山登場です。


北川第一VS雪ヶ丘 1

ボールを高く放り上げ――

 

「行くぞっ……!」

 

左手のジャンプサーブが、サイドとセンターの間を鋭く突いた。

ファーストタッチが乱れる。

 

「チャンスボール、入った!」

 

泉が即座に翔陽へセットアップ。

 

「翔ちゃん!」

 

「せぇぇぇぇぇいッ!!」

 

翔陽のスパイクがラインぎりぎりに突き刺さる。

 

「ナイス スパイク!!」

 

会場がどよめく。

1点目、先制。

 

(今度はレフトを外す)

 

俺はあえて影山の前にブロックを外した――

「読まれた」と思わせた上で、影山の速攻を誘い込む。

 

影山は、裏をかくようにノーマークのセッターアタック。

 

(そこだ)

 

影山がスパイクモーションの時にセッターの泉と入れ替えて俺は影山のスパイクをブロックした。

 

「こいつ、ブロックも出来るのかよ!」

影山は俺が来てから1セット目よりも苛立ちが見え始めていた。

 

2連続得点!

 

(まさか、こんな……)

 

影山の眉がわずかに動いた。

 

ブロックが抜けた?――いや、違う。

 

あえて抜かせた。

 

ソフトブロックの網に誘導し、そこからのカウンターを狙っている。

 

速いテンポにすればするほど、影山のトスミスは増えていた。

 

あの完璧主義の男にとって、これは想定外の展開だろう。

 

 

次のラリー、俺は中央でブロックに立つ。

 

が、わざとわずかにタイミングをズラす。

 

影山が放った速攻――ミドルに上げたが、

 

「ワンタッチ!」

 

俺は時間差ブロックをして打ち込んだスパイクを上に上げた既に俺の後ろに居た泉がすかさず跳び込む。

翔陽が返し、関向が押し込む――!

 

3点目。

 

 

---

 

この時、確かに空気は変わっていた。

 

影山に支配されたはずの空間に、

“こちらの仕掛け”が確実に機能している。

 

翔陽の笑顔が、ほんの少しだけ、勝負師の顔になっていた。

 

次の4点目はサーブで相手のレシーブは崩れたがギリギリのネットインで1年生が反応が遅れてボールをコートから出して。

俺のピンチサーバーとしてはここで終わる。

余裕はあるが、試合の流れはこっちに来ているから充分だ。

 

「……交代、お願いします」

 

星野が小さく手を挙げた。

 

一瞬、ベンチが静かになったが――長谷川先生はすぐに頷いた。

 

「星野、よくやった。下がれ!」

 

「ありがとうございます」

 

コートを離れる星野の背中には、確かな満足感が滲んでいた。

吸入器を取り出し、静かに呼吸を整えながら、ベンチで仲間に指示を飛ばす。

 

「翔陽、次はライト側を使え。関向、次サーブのあとは逆サイドを狙って流れ作れ」

 

その声は落ち着いていて、誰よりも冷静だった。

 

(これで、俺の役目は終わった。あとは、託すだけだ――)

 

 

---

 

星野が下がった後も、試合のテンポは変わらなかった。

 

いや――むしろ、より明確になった。

 

雪ヶ丘は、誰かがミスしてもすぐに声をかけ合い、カバーし合っていた。

 

翔陽がスパイクミスをすれば、泉が背中を叩き、

 

「翔ちゃん、今の角度、いい線いってるよ!」

 

1年生のレシーブが乱れれば、関向が声をかけ、

 

「ナイス触った! 次、俺が拾うからな!」

 

そんな小さな“つなぎ”が、やがて大きな“まとまり”となってコートに広がっていった。

 

 

---

 

一方その頃、北川第一は――

 

(なんでだ……)

 

影山の眉がわずかに動く。

 

たしかに雪ヶ丘は素人チームだ。

戦術も未熟、個の技術も乏しい。

 

だが――「まとまっている」。

 

それが、逆に“完成された北川第一”の足を引っ張り始めていた。

 

「おい、なんであそこにトス上げねぇんだよ!」

 

「うるせぇな、今のはお前のブロックが――!」

 

苛立ちと責任の押しつけが、じわじわと選手たちの間に広がっていく。

 

影山は歯を食いしばる。

だが、その感情すら、彼のトスの“精度”をわずかに乱していた。

 

翔陽は走る。

必死に、仲間のカバーに入る。

 

その姿を見て、雪ヶ丘のメンバーたちは“自然に”体が動くようになっていた。

 

「翔陽、いけるか!」

 

「任せて!」

 

翔陽のスパイクがまた決まる。

 

「っしゃああああ!!」

 

ベンチの星野も、呼吸を整えながら小さくガッツポーズを作った。

 

(これでいい。翔陽が“1人じゃない”ことが伝われば、それだけで充分だ)

 

今、このチームには明らかに“熱”がある。

 

それが、影山以外の北川第一の選手たちを、次第に黙らせていった。

 

(俺が……もっとトスを完璧にすれば……)

 

(俺が、もっと……)

 

影山だけは、なおも全力で支配しようとしていた。

 

だが、それが“独り相撲”になっていることに、彼だけが気づいていなかった。

 

 

試合は2セット目で20対18 それでも地力では負けて徐々に追い詰められた所で1年生が影山のスパイクで突き指してしまった。

 

「――っ! ぐっ…あああっ!」

 

コートにうずくまる1年生の手から、じわじわと血が滲み出ていた。

突き指だけでなく、爪が縦に割れていた。

 

「木崎っ!?」

 

「とにかく医務室っ…! 俺が行く、星野は…」

 

顧問の長谷川が即座に1年生を医務室に行くこと判断したが問題は、星野を…試合をどうするか迷っていた。

 

1年生は明らかに動揺し、立ち尽くす。

 

(…マズい)

 

ベンチの星野は、息を整えながら自問する。

 

(俺が…出るしかないか…? でも、今の呼吸のリズムだと…あと数分しか保たない)

 

動こうとしたとき――

 

「お願いします! 星野を出してください!!」

 

その声が、突然ベンチ裏に響いた。

 

叫んだのは翔陽だった。

 

「斗真のこと、俺も知ってます! でも――!」

 

「ここで終わりたくないんです!!」

 

「さっきの1年も、あんなに頑張ってたのに! 斗真がいたから、俺たち練習して、ここまでこれたんです!」

 

「勝ちたいんじゃない、戦い抜きたいんです!!」

 

言葉に詰まりながらも、翔陽は必死に訴える。

 

続いて泉も叫ぶ。

 

「そうだよ! 斗真はずっと俺らにバレーを教えてくれた!」

 

「監督としてじゃなく、プレイヤーとして、コートに立ってくれよ!」

 

「お願いです、先生…!」

 

顧問の長谷川は黙って皆の顔を見渡し、そして最後に星野を見た。

 

「星野。……出られるか?」

 

「……はい。やります。5分間だけ、全力でやります」

 

そう答えた星野の目は、迷いのない強さで満ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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