ハイキュー 流星の絆   作:ダレ狐

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北川第一VS雪ヶ丘 2

「さぁー、試合再開や!」

 

星野が戻ったことで、雪ヶ丘の士気は一気に上がる。

 

「やっぱ、斗真がいると違ぇな!」

 

翔陽が笑う。

 

「これで、また戦える!」

 

影山が、その様子を黙って見ていた。

 

(なんなんだ…このチーム…。なぜ“お前”が入ると、みんながこんなに…)

 

その内心には、戸惑いと…ほんのわずかな羨望が芽生え始めていた。

 

「――1本、入れるぞ!」

 

主審の笛が鳴る。

 

コートの端、エンドラインから助走を取り――

 

「ッッしゃああああああ!!!」

 

星野斗真、全力のジャンプサーブ。

 

まるで体重ごとボールに叩き込むような、打ち抜かれた一球は――

 

ビュンッ!!!

 

空気を切り裂き、唸るような音を立て、 コートの向こう、観覧席に座っていた観客にへ一直線に飛んだ――

 

強烈なノータッチエースが炸裂、20対19。

 

「うおっ!? 危ねぇっ!!」

 

田中がとっさに手を伸ばしてキャッチ。ボールの勢いに思わず腰が抜ける。

 

「な、なんだ今の…!?」

 

「あのサーブ、今の中学生で…?」

 

「え、牛島じゃないのか?」

 

観客席がざわつき始める。まるで爆風のような衝撃が、会場全体に伝わった。

 

その瞬間、北川第一の3年生たち――特にあの年の大会を知る者たちは、一斉に顔を強張らせた。

 

「……牛島若利、かと思った……」

 

「いや、でも…まさか……」

 

去年――春の大会、全国ベスト4の絶対的エース・牛島若利のサーブを間近で見たときと、まったく同じ感覚。

 

あの時も、ジャンプサーブ一発で空気が変わった。

試合のリズムが崩され、まともに試合にならなかった。

 

今、あの“再来”が目前にいる――

 

それが星野斗真だと理解する前に、心が防衛反応として拒否していた。

 

崩されたレシーブ。セッターが無理に上げたトス。

 

それを関向が拾い、泉が繋ぎ、翔陽が――

 

「いっけぇええぇ!!」

 

強烈なブロードで打ち込む。

 

スパイク成功! 20対20。

 

集中して、俺はアウトラインギリギリを狙ってジャンプサーブを当てた。

 

「うぉぉぉ! 」

 

俺は叫んだ! あの夏の試合以来の興奮だった。

 

 

 

――こんなにも、楽しかったんだ。

 

汗が、止まらない。

息が、苦しい。

 

でも、ネット越しの北川第一の

影山の視線。

隣で構える翔陽の気迫。

後ろで声を飛ばす泉と関向。

1年生たちの踏ん張る足音。

 

すべてが、愛おしいと思った。

 

ああ、俺、バレーがやっぱり好きだ。

 

――もう、一生できなくても構わないとは思わない。

できる限り、もっと…このチームと、バレーがしたい――

 

試合終盤。追い上げムード。

 

泉がトスミスをしたが、猛スピードで逆サイドに走る翔陽がブロードで飛び込む!

 

「翔陽!!」

 

「うぉぉおおおッ!!」

 

ズバァァン!!

 

相手ブロックの指先を弾き、サイドにボールが落ちる。

 

得点!! 24対22!

 

雪ヶ丘中、まさかの逆転寸前――会場がどよめいた。

 

だが、その直後。

 

「……はぁ……っ、っ……!」

 

星野が膝に手をついてうずくまる。

額から滝のような汗。顔色が悪い。

 

「星野!? おい、!!」

 

ベンチから長谷川先生がタイムアウトして駆け寄る。

 

星野は無言で、かすかに首を振る。

「まだ、いける」――そう言いたげに。

 

だが――

 

長谷川先生は、静かに告げた。

 

「――ここまでだ、星野。これ以上やらせたら、命に関わる」

 

チームメイトたちが抗議しようとする。

 

「でも、あと少しで 勝てるんです!」

 

「斗真だって、やれるって――」

 

「黙れ!!」

 

体育館に怒号が響いた。

 

「これは勝負じゃない、“競技”だ。

未来のある子供を潰すわけにはいかない。…俺が監督として決断する。雪ヶ丘は、ここで棄権だ」

 

その言葉に、場内が凍りついた。

 

審判が確認し、試合終了を宣言する。

 

北川第一、勝利。

 

だが、その表情はどこか曇っていた。

影山でさえ、勝利を噛み締める様子はない。

 

試合に勝ったはずの彼らより、コートを去る雪ヶ丘の方が、どこか誇らしげだった。

 

 

---

 

「悪かったな、勝たせてやれなくて」

 

「確かに勝てないのは悔しいけど…俺の3年間に意味があった……ありがとう」

 

日向は笑おうとしていたが……星野は知っている。

同級生の2人も知っている、この3年間の思いを。

 

『もっと早く…』

 

どうしようもない思いで、3年は悔しく泣いていた。

「あと1年あれば…」

 

そんな思いだった。

 

 

控室へ向かう通路。

北川第一と雪ヶ丘の選手たちが交差する一瞬――

 

そのとき、影山がピタリと立ち止まった。

 

「……お前たち」

 

翔陽と星野が立ち止まる。

 

影山は、感情を抑えたような声で、だが怒気を孕んで言った。

 

「お前たち2人は……あれだけのポテンシャルがあるのに、今まで何してたんだよ!?」

 

静まり返る空気。

翔陽も星野も、返す言葉が見つからず、黙って下を向いた。

 

その沈黙を破ったのは、関向だった。

 

「……てめぇ、いい加減にしろよ!」

 

影山が目を細める。

 

「何だと?」

 

「“何してた”だと? お前に何が分かる!」

 

翔陽が止めようとするが、関向は怒りを抑えきれない。

 

「翔陽は1年の頃からずっと1人で練習してた。星野は体が弱いのに、必死で、俺たちみたいな素人相手にも根気よく教えてくれた!」

 

拳を握りしめて言葉を吐き出す。

 

「お前みたいに“最初から恵まれたチーム”でやってきた奴に――全部を否定される筋合いなんてねぇんだよ!!」

 

「やめろ関向!」

泉が間に割って入る。

 

「ここで暴れたら、次の大会で1年が出られなくなる。わかってるだろ!」

 

関向は舌打ちして、一歩引く。

 

影山は沈黙したまま、翔陽と星野を見据えていたが――

やがて視線を逸らし、背を向けた。

 

「……次、勝つのは俺だ。覚えておけ」

 

その背中に、翔陽が小さく答えた。

 

「俺も次は勝ってコートに残ってやる」

 

俺は何も言えなかったが、いつか、試合の舞台で影山に勝ちたいと思った。

 

 

一方、観客席には、黒いジャージを着た集団がいた。

その背中には――「烏野高校」の文字。

 

「凄い試合だったな。あの北川第一のセッター、影山」

 

「何言ってるんですか、菅原さん。あんなの大したことないですよ!」

 

「まぁまぁ、田中もそのへんにしておけ。…それにしても、あの北川第一にいい試合してたな。部員が揃ってたら勝ってたかもしれないな」

 

「確かに。あのピンチサーバー、すごいですね。スパイクは見てないけど、ジャンプサーブだけでもあれだけ凄いなら、来年、牛若と戦うかもな」

 

「菅原さん、それは凄いですね!」

 

「何にしても、俺たちも頑張らないとな」

 

その高校は、かつて全国大会に出場した。

身長170cm前後と、バレーボールの世界では小柄ながら、

190cmを超える選手たちに立ち向かい、制した伝説の姿――

 

“小さな巨人”。

 

そのチームの名は――烏野高校。

 

翌年の春、波乱の出会いが訪れるとは、この時の誰も知らなかった。

 




次回はオリジナル高校出します
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