江戸時代に封印された神様を現代娯楽漬けにしてみた   作:狐耳大すこすこすこてぃっしゅふぃーるど侍

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出会い

 ある日、俺の部屋の押し入れが光っていた。

 

 ──あ、ヤバいやつだこれ、と思った。寝起きで朦朧とする頭でもわかる。照明も消してたし、外は曇り。つまり、物理的に押し入れが発光している。

 

 やけに静かだったのも妙だった。アパートの薄い壁越しに聞こえるはずの隣の生活音が一切ない。空気が重いようで、それでいて異様に澄んでいる。不思議な気配。

 

 俺は恐る恐る押し入れを開けた。

 

 そこには──

 

 和装の女が正座していた。

 

 銀髪の長い髪。年齢不詳の美貌。どこか古風な目元と、柔らかく波打つ着物の布地。その下に収まりきらないほどの豊満な胸。まるで和風コスプレで迷い込んだグラビアモデルみたいな女だった。

 

 口を半開きにしたまま、じっとこちらを見つめている。動かない。呼吸はしている。目も合っている。でも反応が薄い。

 

「……うわ、すご……って、いや、どちら様ですか?」

 

 その声に、わずかに肩が揺れた。

 

「ワ、ワシ……は……じゃ。……神格……ええと……むかし……むかし……」

 

 喋るたび、唇がひくつく。言葉が引っかかる。まるで、何百年ぶりに口を開いたみたいな。

 

「ふう……いかん、言葉が……で、ぬ……」

 

 しばらく黙りこくってから、ぽつりと独り言のように呟いた。

 

「……これは……幻、か……? 妄想、か……? いや……まさかな……こんな……たわけた姿の幻影など……」

 

 俺は混乱しつつも、現実的に対応するしかないと腹を括った。

 

「いや、あの、普通に見えてますし。喋ってますし。幻っていうか……なんか実在してるっぽいですけど?」

 

「……そ、そう……なのか……? しかし……こんな突拍子もない状況で……封印が揺らぐなど……あり得る……のか……?」

 

「いや俺に言われても……」

 封印とか揺らぐとか……封印されたけど、なんか揺らいで? 封印解除された感じ? なんで俺の部屋の押し入れ? なんかよくわかんにゃい……

 

 まぁとりあえず相手は呆けてる感じだけど、反応が無いわけじゃない、もっと話を腰を据えて話を聞きたい所だ。

 とりあえず長丁場になりそうだ、お茶の一つでも入れてこよう。

 

 美女があっという切なげな声を上げて手を伸ばしてくるが、一旦置いといて台所に向かう。

 

お茶の葉……なんて来客が無いから用意してなかった……ので、2Lのペットボトルのお茶をコップに入れた。

 

 安物でごめんねと内心思いつつ押し入れの敷居を超えてお渡しして、さぁゆっくり話を聞こうと思ったら、謎の美女が押し入れを出ようとして、バチバチッっと凄い音を鳴らした後、後ろに後ずさった。

 

あー……今の凄いバチバチいったの何? 

ふむ……ワシは……出られ……」

 

なんか勝手に納得してる、彼女はなんかさっき言ってた封印で出られないという事だろうか? いやでも自分は特に何も考えてなかったけど、入ったし出られたよな? 

 

「ワシだけ……出られぬの……もういや……出し……」

 

 今度は泣き出してしまった、最初は声を押し殺して泣いていたが次第に嗚咽が大きくなる。

 

わんわん泣いてるのを見て、どうしていいかわからず、えーっと……とりあえず背中を擦って、何が大丈夫かわからないけど、大丈夫ですから、ね? 泣き止んで? と宥める。

 

くるりとこちらに振り向いて、俺の顔を見たと思ったら俺のお腹に抱き着いて、またもやわんわん泣き出した。

 

もうどうしていいかわからず、どうにでもな~れ! と思っていたら、そのうち泣き疲れて彼女は寝てしまった。

 

結局これはどういう状況なのかまったくわからなかったが、話を聞けそうにもないし、もう知らん! 俺も寝る! と思い、彼女を引き離して寝ようと思ったら、凄い力で服を握られていて、一切離れず、1時間程悪戦苦闘した挙句に、俺は諦めてふて寝した。

 

 これが彼女との出会いだった。

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