WHITE ALBUM2 ~永遠に続く幸せを~   作:藤原久四郎

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うーん……正直難しい。

なんだか原作の方が完璧すぎて切な過ぎて……


届かぬ思いは雪に解けて

 ただでさえ人のいなかった駅のホームだが、電車が過ぎ去った今では完全に無人となっていた。いや、正確には二つの影を残して、だ。

 

「北原……」

「冬馬……」

 

 結果として、北原春希は冬馬かずさに追いついた。そして、彼は電車が去る寸でのところで確認も取らずに彼女を引き下ろしたのだ。冬馬が引きずりおろした時と打って変わって今回は逆の立場であった。

 

「なんで……なんでいるんだよ……」

 

 目の前のかずさはいつもの強気で不遜な態度は全く見られず、ただただ俺がこの場にいるのと状況の整理で動揺を隠せないようだ。正直に言って俺ももう帰ったとばかり思っていたから、一分一秒でも早く冬馬の家に行こうとしていた。それがまさか、丁度駅で見つける事ができるとは。思いを伝えるのに今は一秒でもとにかくおしかった。決めたことにぶれがでないためにも、置いてきてしまった雪菜のためにも、だ。

 

「冬馬……色々聞きたいことはあるんだが、一つだけ俺の話を聞いてくれないか?」

 

 そうだ、そのためだけに来たんだ。誰にでも誠実で、誰にでも北原春希という人間でいるために。

 

「ふん……なんだよ改まって。一応聞いてやるよ」

 

 ボロボロの糸で張られた緊張に縋る俺とは違い、冬馬はいつも通りの様子で、俺の次の言葉を待っている。けど、よくみると少し震えてる。

 

「ちょっと例え話からで……あるところに、最低最悪の八方美人で、結局はエゴに固められた人間がいました」

「ふっ……やけに低い評価から始まるじゃないか」

 

 そうだよ。わかってたじゃないか。結局俺はこういう人間なんだって。周りから見ればよく見えるけど、実際のところ歪みに歪んだ最低な奴だったって。それも、きがついてしまったんだから、向き合うしかないだろ?

 

「でだ、諸々は省略するがソイツは二人の女の子の仲良くなった。身近にいた高嶺の花と、遠くにいた友達になりたいと思った奴だ」

「へぇ……花と奴か、随分と評価が違うようだな」

「まぁ聞けって。それでソイツは大層喜んだそうだ。高嶺の花が目の前に来て、自分と同じ目線に立ってくれたことを。同じように遠くにいた奴の事も」

 

 嬉しかったよ。冬馬のピアノが俺を導いてくれて。傲慢かもしれないけど、その音色がもう一人の、最後のパズルのピースを導いた事を。二人では埋めきれなかったパズルを埋めてくれる、それ以上に幅を広げてくれる大切な大切なピースだ。

 

「結局ソイツはすべきことを成すために二人に協力してもらった。成すべきことは終わり、それからも三人で居たいって考えた」

「……そっか」

 

 たぶん皆同じ気持ちだったと思いたい。いつまでもいつまでも、三人で永遠も刹那の時も共有していきたいって。

 

「それでもソイツには二人には言ってない秘密があったんだ。それも、三人の関係を無に帰すことになるかもしれないモノを」

「……うん」

 

 最初は本当にクラスメイトとして。気が付いてしまえば簡単な事だったけど。結局はそう言う事だ。俺の本当の気持ちは。口数の減りだした冬馬は、口を開く代わりに体を少しだまたしても震えさせていた。

 

「男女での隠し事なんて決まってた。ソイツには好きな奴がいた。ただそれだけだ」

「……その例え話、最近やけに近い場所で似たような状況を見た気がするぞ」

「気のせいじゃないか? 少なくとも、俺は最近まで……な」

 

「でな、ソイツは最低ながらも周りの事をしっかり考えてるつもりだったらしい。三人のウチの一人に……こ、告白されたんだがな」

「……へぇ」

「ソイツもソイツなりに、今までの数十年間自分なりに考えて生きてきたわけだ。だから勿論後悔しない様にその告白にも誠実に答えようとした」

「……もう……いいよ……北原」

「最後まで言わせてくれ。でもソイツは告白してくれた……遠くにいた友達になりたかった奴に誠実で居ようと考えたんだ。それは好きか嫌いかで言われればもちろん、好きだったから」

「……やめてくれよ……なぁ……」

 

 冬馬の震えは目に見て増し、俺もいつのまにか握っていた手のひらにじっとりとした汗が染みだしていた。

 

「返事はオーケ――」

「もういいって言ってるだろ!」

 

 冬馬は、耐えられないといわんばかりに声を張り上げ、俺の言葉を途中で遮った。その瞳はいつもの強気な意思を見せることはなく、ただひたすらに年相応に感じさせる弱気な光が灯っているだけだった。

 

「なんだよ、北原。お前は私に何が言いたいんだ? 正直に言えよ、回りくどい言いかたしないでさ! 本当は雪菜に告白されたから、自分も好きだったからオーケーしたって! 面倒くさいんだよ! まどろっこしいんだよ! あてつけかなにかかよ!」

 

 冬馬はその時確かに、泣いていた。

 

「違うんだよ、聞いてくれ」

「何が違うって言うんだよ!」

「いいから最後まで聞けって言ってんだよ!」

 

 泣かしてしまったのは仕方がない。仕方なくなんかないけど、少なくとも責任はとらなくちゃ、その涙を止めてやらないと。

 

「さっきも言ったろ? ソイツには好きな奴がいたって……それは他の誰でもない、高嶺の花の事だよ」

 

 その高嶺の花が俺の事なんか見向きもしてないってわかってても。元よりダメ元ですらないとしても。言わなくちゃ、伝わらないから。

 

「やめろよ……北原……」

「その高嶺の花ってのはさ――」

「やめろよ!」

 

 冬馬は聞きたくないといわんばかりに制止をかける。でも、もう止まらない。ようやく理解した、伝える事ができる。俺の初恋――

 

「お前だよ、冬馬」

「――ッ!」

 

 冬馬かずさに、告白した。今まで向き合っていなかった、向き合おうとしなかった、無理だって諦めてた、近くに居てくれたから意識しないようにしていた、それでも自分の中にずっとあった。

 

 その、告白を。

 

「は、ははっ……冗談はよせよ、北原。そんな事言うと雪菜が悲しむぞ」

「大丈夫だ、もうこれ以上ないくらい最低な男として悲しませてしまったから」

「そんな事したら三人で居られなくなるぞ?」

「もしも雪菜の告白を受け入れてたとしら、同じことになるな」

「別に私は北原の事なんか――」

「関係ない。告白することは相手が両想いじゃないとできない事じゃない」

「なんなんだよ……本当に……」

「俺はただ、自分を偽らずに三人でいたって思っただけだよ。誰も不幸にならず、ずっと幸せでいたいから」

「神様にでもなったつもりかよ……それとも自分がかっこいいとでも思ってんのかよ……」

「あぁ、今ばっかりは天狗かもしれないし、傲慢で自意識過剰で最低の屑野郎かもしれない。それでも絶対に、嘘だけはつきたくないんだよ」

 

俺は溜め込んできた全ての思いを言葉に乗せ、包み隠さず全て冬馬に吐き出した。その言葉を受けた冬馬は、何か考えるように下だけを向いて、消え入りそうな声でぼそりと呟いた。

 

「ならさぁ、もう一回言ってくれ……さっきの言葉」

 

 受け答えをしてから冬馬から要求がくる。もちろん、何度だって答えてやるとも。

 

「好きだ、冬馬」

「そう……か……」

 

 俺は少しだけ、無限とも思える短く果てしない冬馬との距離を縮める。冬馬はそれに合わせて一歩、二歩と下がる。俺は二歩、三歩と距離を近づける。

 

「やめようよ、北原。私は嫌だよ……」

「なら逃げればいい。全速力で」

 

 また一歩、一歩と近づいていく。

 

「駄目だよ北原……雪菜が悲しむ」

「……もう決めたんだ」

 

 気が付けば冬馬とは、距離にして一歩分だけの幅を残しているだけで目と鼻の先まで近づいていた。

 

「これが最後。逃げるなら今だぞ」

「……逃げられるわけあるか、バカ」

 

 俺は、逃げなかった冬馬に手を回してそっと抱きしめた。

 

「冬馬、好きだ……」

「バカだよ、本当に……北原の大馬鹿野郎……」

「聞かせてくれよ、冬馬。返事をさ……」

「今更聞くかよ……」

「……あぁ」

 

「私も、好き“だった”よ」

 

 含みのある言葉を漏らした冬馬の唇を、俺は無意識の内に塞ぎにいっていた。お互いを抱きしめ合う俺たちの遥か上の空からは儚くも愛おしい、粉雪がパラパラと降り出していた。でも俺たちはそれを意に介さず、まるで俺たちの熱で溶け始める雪と一緒にこの思いを消さない様に、無駄だとわかっていても、認めないと言わんばかりに足掻き、激しく唇を交わし合う。冬馬の唇は、『WHITE ALBUM』の季節の様に冷たくて、それに反して触れ合っているととっても温かかった。そして、酷く悲しい涙と、遅すぎて零れてしまった大切な思いの味がした。

 




やっぱり”届かない恋”って……いいなぁ……

原作絶賛プレイ中ですが、本編は胃に穴が開きそうです。
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