WHITE ALBUM2 ~永遠に続く幸せを~ 作:藤原久四郎
グランドエンディングなのだろうか、雪菜と結婚? でもあれってかずさも言ってたけど全員が幸せになれる平均なんだろうなぁって思いました。
雪菜はまぁ幸せなのでしょうが、春希さんは結局かずさ一筋ですし、かずさもそうですし……結局二人のどっちかとくっつくと幸せっぽくなりませんね。
あ、僕は浮気√派です!
冬は、あまり好きじゃない。降り積もる雪も、それらが運んでくる寒さも。結局、自分を満たしてくれるものは何もない。寒空の下、一人熱に浮かされながら歩き道すがら、北原春希はセンチメンタルな事を考えていた。
ブーッ、ブーッ
「ん……?」
そんな一人の退屈な時間を唐突に破壊したのは、携帯の着信音だった。その画面に踊る文字は、今もっとも……避けていた決断の渦中の人物だった。
「せつ……な」
小木曽雪菜、と表記されたディスプレイ。思わず自分のしてしまった事に足がおぼつかなくなるが、もう既にしてしまったことで、もう結論を出してしまった事だ。ならば、向かい合う必要がある。ずっと三人で居たいと願った彼女への、贖罪を。
「はい」
「あ、春希くん? って、私からかけたんだから当たり前だよね、はははっ……」
雪菜の声はいつも通りの、明るさと暖かさを孕んでいて、いつも以上にいつも通り過ぎた。それは勿論、原因がある。
「ごめんなせつ――」
「待って! 悪いのは……私だから」
「いや、悪いのは俺だ。俺、最低だ。雪菜のこ、告白……ほったらかしにして、逃げて」
「ううん、春希くんは悪くないよ。全部私が悪いの……」
「それは違う。雪菜は何も悪い事なんてしてない――」
「した……よ?」
「え……?」
それはいつも通りに近い、お互いの庇いあい。だが、唯一違ったのは、雪菜が先に退路を塞いでしまったという所だ。
「私悪い子だ……かずさを、春希くんを裏切った」
「な、何言ってるんだ雪菜……」
「だって、だって……私、ずっと三人で居ようって言ったのに……奪おうとした、春希くんを、かずさから」
「もういい! 雪菜、直接会って話そう。今どこにいる!?」
このままじゃ、雪菜は自分を責めすぎる。それは駄目だ。本物の罪人は俺なんだから。
「いいよ、春希くん。これ以上貴方に迷惑かけたくないよ……」
「迷惑なんかいくらかけたっていい! だから心配させるな! 俺は雪菜から離れていったりしないって言ったろ!」
「……っ。じゃあ、ヒント。私と春希くんの、思い出の場所」
「それじゃあ絞りきれないよ! だって雪菜と俺、それにかずさはどれだけ思い出を作ったと思ってるんだ!」
「ん……とっても寒くて、街が見えるよ」
「ッ! わかった、待ってろ!」
携帯の終了ボタンを押した後、全速力で雪菜の指定した『思い出の場所』まで駆け抜けていく。……雪菜、俺はやっぱり最低だよ。他の女……かずさと繋がった後も、こうして他の女……雪菜の事気にかけてなりふり構わず飛び出す、そんな男なんだよ。自分のエゴの為に他を切り捨てる、そんな最低な奴なんだよ。なのになんで、お前みたいな最高の女が俺みたいな釣り合わない最低な男を選んじまうんだよ。おかしいじゃないか、もっとお前に似合う男はそこら中にいるだろ?
「はっ、はっ……待ってろ、雪菜ッ」
また違う意味で温かくなりだした体を、更に熱くしながら、俺と雪菜の『思い出の場所』へ向かって全速力で道を駆け抜けていった。
「……届かない恋をしていても~」
空には星が瞬き、爛々と月が輝いている。冬も間近になっているのだろうか、空気も肌を覆う布一枚では寒いと感じられる。それもその筈、彼女の恰好は傍から見ても異常と思えるほどに薄着……まるでアイドルの様に煌びやかな衣装であったから。
ドンッ
「はぁっ……はぁっ……」
彼女は待っていた。何時間たったのかもわからないが、たった今駆け込んできた彼を。
「さっきぶりだね、春希くん」
「あぁ……はっ……雪、菜」
空は、少し陰りだして今にも泣きだしそうになっていた。
息が上がっている。体を焦がすのは体温だろうか、その気持ちだろうか。わからないが、それを急激に覚ましているのは、冬を前にした気温と……
「せ……雪菜?」
「ん……? どうかした? 春希くん」
雪菜の、その顔だった。心なしか一回り小さく見える全体像はともかく、少し離れた場所からでもわかる、目元から筋を見せる明らかに涙を流したであろう跡と、折角の美貌が台無しになっている腫れた目だ。
「もしかして、泣いてたのか?」
「あははは……夜だからばれないと思ったんだけど、やっぱりわかっちゃうかぁ……」
「わかるに決まってるだろ。どう見たって、変だから」
「変って……普通女の子にそんな事言うかなぁ」
「別にいいだろ。それより、どうしたんだよ? 呼び出したかと思えば、そんな泣きはらした顔……折角の美人が台無しだ」
本当はわかっていても、俺は卑怯だから相手が言ってくれるまでは、自分から踏み込んで行けない。じゃなくて、わかっているからこそ、自分からはいいだせないんだ。
「そんなの、春希くんに泣かされたに決まってるじゃない。折角の美人を放っておいたんだから」
「それは……ごめん」
「あやまらないでよぉ……今度は私が春希くんと同じ悪者になっちゃうよ」
「ごめん……」
わかっているから、今は謝ることしかできない。
「だから……顔上げてよ。春希くんは何も悪いことしてないんだから。ただ、いつもみたいに正しい事したんだから」
「俺、最低だよ。悪い事した。雪菜を……また一人にしてしまった。もう離れていったりしないって約束したのに」
「それは……あの時なら仕方がないよ。だから、春希くんは悪くないよ」
「どちらにしても、約束は破ったんだ。これが悪くなくて、他に悪い事があるもんか」
「だからぁ……やっぱり春希くんには勝てないなぁ」
「……ごめん」
してしまった事に、俺は謝ることしかできない。
「なら、今度は私から話させて? 春希くんの言ってる、約束なんだけど……私が先に破ったんだよ? 三人でずっと一緒にって言ったのに、かずさに内緒で抜け駆けして」
「そ、それは……俺だって、雪菜に返事もしないまま飛び出していったんだから、俺が悪いんだ。俺がちゃんと返事していれば、雪菜は約束を破った事にはならなかったんだよ」
「ううん、私は汚い子なんだ……親友って言ってた女の子裏切って、その女の子の好きな人奪おうとしたんだから」
「違う、雪菜は悪くない! 約束はまだ破綻してない! だって俺たち、友達だろ!」
そうだ、俺と雪菜は友達だ。……じゃあかずさは?
「そうだよ、私たちは友達。これからもずっと……春希くんが良いって言うなら。でもかずさは? 貴方と……好きあっている彼女は? 私は友達でいられるのかな。いつか二人の時間を私一人のせいで減らしてしまうかもしれない。そんなの、耐えられないよ……私……二人の邪魔をするなんて……」
とうとう、雪菜はまた涙を流し始めてしまった。いつだってそうだ、雪菜は自分のためを思ってい行動していたはずなのに、気が付けば相手を思いやってしまっている。今だって、結局自分の事よりかずさの事を心配しているじゃないか。そんな……優しくもお茶目で、強かな女の子を……俺は泣かせてしまっているんだ。
「雪菜……」
だから、俺は一歩を踏み出す。きっと少し遠くなっていた、その距離を縮めるように。
「こないでよぉ……こんなみっともない所、見せたくないよぉ……」
「ちっともみっともなくなんてない」
また一歩。少しずつ、距離を縮める。
「恥ずかしいよぉ……」
「俺はどんな雪菜も、気にしないから」
雪菜の、泣いている小木曽雪菜の、目の前まで来た。これからすることは、やっぱり最低な男の証。嘘で塗り固められた、北原春希という男の、相手の事を理解しているからこそする最低な行為。
「あっ……」
「雪菜ッ……」
俺は、雪菜を抱きしめた。
「大丈夫だ……俺は絶対に、絶対に雪菜から離れていったりしない……ッ」
「春希くん駄目だよぉ……こんなの、反則だよ……」
そうだ、反則だ。相手が、自分の事を好きだと知っているからこそする、最低の行為。相手の傷を塞ぐための、一過性の劇薬。傷は癒えてくれるかもしれないが、投与した自分には……そして自分と繋がっていてくれた人には、それと同じか、同等以上の傷をつける。そんな、普通なら選び取らない選択肢。それでも俺は、目の前の彼女を癒すために、迷わず選び取る。その選択が正しいと信じて。
「私、いてもいいのかな? 二人の輪の中にいても……」
「いいに決まってるだろ! 俺と雪菜、冬馬はずっと一緒だ……」
「っ……春希、くん……」
雪菜も、とうとう俺に体を預けてくれた。雪菜の傷は和らいでくれただろうか? なら俺にくる痛みは……冬馬くる痛みは……?
それも、癒えてくれる事を願おう。時間と言う、有限の痛み止めが。
ガタッ
「あっ、春希くん……」
「ん? あぁ……」
泣くのを堪えていた空は、とうとう耐えられなかったようだ。降り出して来た。まだ今年見られていなかった、雪が。
冬馬も見ているんだろうか。この雪を……。
「はぁっ……はっ……っ、はっ」
降り出した雪は、勢いを落とすことなく、誰にだろうとその存在を嫌でも刻み付けていく。残酷な現実と共に。
「……っ! うああぁああ! うああっ、あああああああっ!」
頬を撫でていく涙は、劇薬のもたらした副作用だった。
最後泣いていたのは、勿論あの方。
クリアしてからだと諸々計画ぶっ壊れてもう……
頑張りますが、なんか矛盾出てきちゃいそうです。