俺は・・・何をしていた?今、俺は手術台の様な物に縛り付けられ、拘束されている。何か、薬を投与されたのか頭はぼんやりとしていて、声が出ない。
「・・・異世界人・・・」
「戸籍・・・問題無い・・・」
「人権も・・・からな。」
「あははは・・・・」
周りで白衣を着た男達が話ている。だが何を言っているかわからない。
「では・・・めよう。」
「おもしろ・・・なる。」
「歴史的・・・だ!!」
俺は、銃型注射器が近づいて来て、何も出来ずに・・・意識を奪われた。
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東京都、府中。日本ウマ娘トレーニングセンター学園。
「・・・。」
理事長室。
「・・・。」
「あら、理事長。どうしましたか?」
「む!?た、たづな!」
日本ウマ娘トレーニングセンター学園の理事長、秋川やよいは、入ってきた理事長秘書。駿川たづなに隠すように書類をしまおうとする。
「あ。何か隠しましたね。また私費で施設を追加する魂胆ですか?」
「ち、違う!!これはだな・・・」
「理事長〜〜〜!!!こないだプールにアイスバーを設置したばかりじゃありませんか!!!」
「だから違う!!!」
「本当ですか?」
「本当だ!!!」
「じゃあその書類、なんなんですか。」
「こ、これはだな・・・」
ゴニョゴニョと濁す理事長。これはたづなには見せられない。内容は、違法な実験施設を潰したという内容の極秘書類なのだから。
「見せられない・・・」
「ええ?」
「無理だ・・・たづなでも・・・これは秋川家に関係する書類だ。」
「そうなんですか・・・じゃあ仕方ないですね・・・」
「ほっ・・・」
やよいは書類を裏返しに机に置いた。しかし、すぐにたづなに書類を奪われてしまう。
「嘘です!その言い訳はもう春になって4回目です!!騙されません!!!」
「ああ!!!たづな!!!」
「どれどれ・・・」
「たづな!!!だめだ!!!返せ!!!」
「こ、これって・・・」
「たづな・・・見なかった事にしろ。」
「・・・そうですね。」
「だからダメだと言ったのに・・・」
「申し訳ありません・・・でも理事長の日頃の行いですよ?」
「猛省・・・」
たづなは書類をやよいに返し、こほんとひとつ咳払い。
「まぁこの世から悪意がひとつ無くなったと言うのは喜ぶべき事ですよね。」
「そうだな。だが・・・」
「だが?」
「廃棄物58号・・・これだけが未確認だ。私はこれが心配だ。」
「廃棄したのですから・・・見つからないのは普通では?」
「たづなは、全部読んだわけではないからな。この廃棄物、どうにも・・・惨たらしい現場だったらしい。」
「え・・・」
「ひどい有様だと・・・報告者から怒りの籠った報告を受けた。廃棄場所は奥多摩の山奥・・・廃棄物は58号以外は全部確認した。命を何とも思ってない・・・ただの実験道具として扱った地獄・・・この違法研究所を潰せて研究員を全員確保したのは。本当に良かった。」
「そうですか・・・」
「たづな。見たからには少し協力してもらう。」
「え?」
「廃棄物58号の詳細を読んでもらう。覚悟しろ。」
「わかり、ました。」
「これだ・・・」
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・・・
・・
・
冷たい・・・寒い・・・ここは?
「ここ・・・どこ・・・?」
俺はどうなった?あの白衣の男達に注射を打たれ・・・何をされた・・・?
「あ、え?」
声が高い。それに立ち上がると、視線が低い。それに全裸・・・俺の体じゃない。男の体じゃない。そして人間の体じゃない。
「え・・・え!?あえ・・・!?」
周りを見ると瓦礫やガラクタ・・・のほかに、何か、脳が見てはいけないと警告する物がある。
「あ・・・あ・・・・!!!」
瓦礫とガラクタに混ざって・・・あったもの。それは・・・少女の遺体だった。それも、いくつも。
「あ・・・ああああ!!!」
そして、悟った。後もう少しで、自分もここに朽ち果てる事になっていたということ。
「うああああああああ!!!!!」
気がつけば、走り出していた。ゴミ山から遠くに行こうと、なるべく遠くに行こうと。走った。
「はっ・・・はっ・・・はっ・・・はっ・・・!!!」
なんだか、周りの景色がどんどん早く流れていく。思ったよりスピードが出ている。この体・・・なんだ?
「はっ・・・はっ・・・はっ・・・・うあっ!?」
不意に砂利道の上で転ぶ。かなりのスピードで走っていた為、あちこち体を地面に擦りながら転がって止まる。
「うう・・・痛い・・・」
全裸だからもう全身傷まみれだ。あちこちから血が出てかなり痛い・・・良かった。血は赤いんだ。
「はぁ・・・はぁ・・・」
冷たい雨に打たれながら山道を歩く。誰も、いない。そしてしばらく歩くとフェンスに囲まれていた事がわかった。
「出られない・・・いや・・・」
入り口らしきところにロープで縛って閉じられている門。ロープを解いて、フェンスの外に出た。
「あれは・・・」
フェンスの外に出て少し歩くと軽トラとショベルカーが放置されていた。林業をしている人がいる!!!助けてもらえるかも!!と駆け寄るが、軽トラもショベルカーも放置されて数年では済まないという有様で。希望は無かったと項垂れることになった。
「あ・・・」
軽トラの中を見ると大きなジャンバーが放置されている。これドア開かないか。このまま全裸でいるのは雨が降っているせいで勘弁して欲しい。
「開かない・・・か?」
ドアをガチャガチャいじっているとガコという音と共にドアごと外れた。脆くなっていたらしい。
「よし・・・」
ジャンバーを着る。カビ臭いが、四の五の言ってられない。着てみたら、自分の股まで覆い隠すオーバーサイズだった。自分の体はだいぶ縮んでしまったらしい。このまま軽トラの中で雨宿りしよう。
「・・・。」
軽トラの座席に座り、冷えた体を擦りながら何が起こったのか考える。まず、俺の体は、女の子になった。よく読んだ、転生、という物なのだろうか。いや、どちらかと言うと・・・
「体を作り変えられた・・・?」
あの白衣の男たち、注射、途絶えた意識。俺は何をされた?いや・・・
「・・・ッ。」
ざぁざぁと降り頻る雨。座席に座っているが、どうにも収まりが悪い・・・不意に尻に手をやると、なにやらフサフサしている。尻に目をやると・・・
「尻尾・・・?」
自分の意思と違い、フッサフッサと揺れる尻尾。なんだこれは。何が起こっている!?と頭を抱えると、何やら頭頂部にも違和感。そしてあるべき場所に耳が無い。
「なん・・・なんだ・・・?」
頭頂部にある。ふわふわした・・・耳?にしては・・・
「これは耳・・・耳・・・か・・・」
軽トラのバックミラーで自分の顔を確認する。随分とまぁ可愛くなってしまったものだ・・・というか改造手術を施されたにも関わらず、手術痕など微塵もない。どういう技術だ?
「ああ・・・ッ!!!」
頭頂部にある明らかに人間の物ではない耳・・・ロバの耳か?なんだ・・・これは・・・改造手術をするにしてもこれは何を目的にしたんだ。わからない・・・
「腹・・・減ったな・・・」
俺は・・・少し休む事にした・・・
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・・・・
・・・
・・
・
「カイチョーーーーー!!!!」
「うお・・・どうしたテイオー。」
所変わってまた府中の、日本ウマ娘トレーニングセンター学園。生徒会室、そこでは生徒会長、シンボリルドルフとその補佐をするエアグルーヴとナリタブライアンが生徒会業務を熟していた。そこへ元気よくテイオーと呼ばれる、ウマ娘の少女が飛び込んできた。
「どうしたテイオー、半泣きじゃないか。」
「ふんトウカイテイオーが何かまたやらかしたのか?」
「違うよーーー!!!エアグルーヴ!!!強盗!!!強盗だよーーー!!!」
「は?強盗?」
「のっぴきならないな。詳しく話してくれテイオー。」
「うん!昨日日曜日でしょ?マックイーンと河川敷まで走りに行ったんだけどさ。橋の横にはちみーのキッチンカーが来てたんだ。」
「神出鬼没だな・・・はちみーのキッチンカーは・・・」
「今はそれはどうでもいいよ!!!そこでいつもの様にはちみーを買ったんだけどさ!!!強盗が出たの!!!」
「それが・・・?」
「はちみー受け取ろうとしたらさ!!!急に横からガバって!!!はちみー盗られちゃったの!!!」
「ええ・・・?大胆な犯行だ。それでどうなった。」
「犯人ははちみー盗ったら物凄い速度で逃げ出してさ。マックイーンと2人で追いかけたんだけど。ほんとめちゃ速いの。こっちは本気の全力で走ってたのにどんどん離されちゃって・・・逃げられちゃったんだ・・・」
「マックイーンと・・・テイオーが全力疾走で追いかけたのに離されるだけ・・・相当速いな。」
「うん!!これだけじゃないよ。」
「なにがだい?」
「僕たちは走りに行ってたから走れるシューズだったのに、犯人は裸足だったの。なのに離されちゃったんだよ?ヤバくない?」
「・・・まず、そんな状態でテイオー達から距離を取ると言うのは不可能だな。」
「でしょー!!!はちみー盗られるし!!!実力見せつけられるし!!!もう散々!!!」
「はははは・・・まぁちょっと窃盗事件として理事長に報告するよ。」
「お願いねカイチョー。」
「ああ。任せろ。」
「かいちょおおおおおおお!!!!」
「かいちょうさーーーーーーーん!!!!!」
「はぁ・・・今度はなんだ。」
「まぁまぁエアグルーヴ。」
テイオーが話し終わって入って来たのはギャルの様な風貌のウマ娘と、少し纏う雰囲気が高貴なウマ娘。そしてそれに付き従うスーツのウマ娘が生徒会室に入ってきた。
「トーセンジョーダン、ファインモーション。生徒会に何用だい?」
「聞いてよ!かいちょー!昨日泥棒にあったんよ!!!」
「私もー!!!」
「ええ・・・2人もか。」
「うん・・・もしかしてテイオーも?」
「そうだよ。」
「ええー!」
「昨日だけで三件も・・・どう言うことだ。」
「連続窃盗事件・・・と言うことかな、エアグルーヴ。」
「ふむ・・・」
「トーセンジョーダン、ファインモーション、詳しく聞かせてくれるか。」
「うん。昨日お昼に駅前のハンバーガーショップでテイクアウトしたんだけどさ。お店出た瞬間に後ろからドン!てぶつかられて、持ってたハンバーガーとポテトの袋盗られた!!!」
「犯人はどんなやつだった?」
「なんかデッカいジャンバー着てて・・・フード被ってて顔はわからなかった。」
「あ!ジョーダンもなの!?」
「テイオーもなのね。」
「私もだよー!」
「えー!ファインも!?」
「その犯人、めちゃくちゃ速かったかい?」
「そうなの!!裸足なのにめっちゃ速くてさ!!!あたしサンダルだったから追いかけられんかった!!!」
「ふむ・・・ファインモーションは?」
「私はね。昨日の晩にラーメン屋でラーメン食べて、寮でも作ろうと思ってチャーシューの塊買ったの。そして店を出たら、後ろから持ってた袋盗られちゃって・・・SPのピーさんが追いかけてくれたんだけど・・・」
「SPさんどうでした?」
「私たちは3人でした。ですが尋常じゃなく速く、不甲斐ない事にあっという間に撒かれて逃げられてしまいましたね・・・」
「わかりました・・・みな、警察には行ったか?」
「あー行ってない。」
「アタシも。」
「私も〜」
「どうして行かなかった?」
「いや怪我してるわけじゃないから・・・カイチョーに相談すればいっか〜と思って・・・」
「アタシは〜今言われるまで忘れてたというか・・・」
「私は大事にするわけではいかなくて。」
「ふむ、いいか。怪我は無くともかなり悪質な強盗だ。すぐ警察に行った方が良い。」
「は〜い。」
「ごめ〜ん。」
「すみませーん。」
「とりあえず、理事長に相談して、トレセンから被害届を出そう。エアグルーヴ、行ってくる。」
「はい会長。」
・・・・・・・・・・・
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・・・・・・
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・・・・
・・・
・・
・
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
軽トラで寝てしまってから起きたのは真夜中だった。暗い夜の中山を降りるのは危険だったが、いち早く人の気配のする所に行きたい。あの、瓦礫に埋もれた無数の少女の遺体の近くにいたら頭がどうにかなってしまいそうだったから。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
とりあえず、道っぽい所をしばらく走ったらアスファルトの道に出た、そこから坂を下った。そしてまた坂をしばらく下ったら奥多摩という看板が見えた。少なくともここは日本で、外国じゃない事に安心した。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
でも、俺は東京住まいだったが奥多摩なんて行った事無いし、地理は全くない。時折見かける看板を頼りに走り続けた。
「・・・ッ。」
車だ。俺は車が通る度に茂みに隠れた。ジャンバー一枚という服装を見られたらマズイと思うのもあるが、俺の容姿が問題だった。
「行こう・・・」
まず戸籍は意味を成さないだろう。俺が元のおっさんの戸籍を主張したとしてイタズラか何かだとあしらわれてしまう可能性が高い。それに、戸籍が無いと扱われて闇に葬られてしまう可能性も高い。警察や、誰かに見つかるわけにはいかなかった。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
走って走って・・・また走って・・・夜が明けて、また暮れて、また夜が明けた時、俺は府中に辿り着いた。
「はぁ・・・はぁ・・・あれ・・・?」
今は朝、陽が登った府中は美しい。が、ちょっと俺の記憶とは違った。
「府中って・・・こんな発展してた・・・?」
府中ってベッドタウンだった気がする。少なくとも、高層マンションらしきものがそんなに多く建ってる雰囲気では無かったし、交通量はあったものの祭りかの様に人気も多い。なんだこれは。
「はぁ・・・はぁ・・・それよりも・・・」
ぐぅぅぅぅ〜〜〜〜と腹の虫が鳴く。もう二日、いやそれ以上かも、何も食べてない。幸い水はここまでの道の駅や公園で摂れた。だが食べ物はどうにもならず・・・
「どうしよう・・・」
所持金ゼロどころか所持品ゼロ、戸籍も無し。ないないづくしでどうにもならない。どうする。
「くっ・・・」
ふと・・・甘い匂いがした・・・
「え・・・」
見ると、河の向こうにキッチンカーがいる。そしてそこで買い物をしている2人の陰。
「・・・やるしかないか。」
俺は駆け出した。
⏰
「はぁ・・・はぁ・・・ふぅ〜〜〜〜〜」
上手く行った。買い物してた2人には悪いが奪わせてもらった。悪事に手を染めてしまった事に罪悪感が伸し掛かる。だが空腹感には勝てなかった。
「でも・・・これ・・・」
どう見ても飲み物。俺はサンドイッチか何かのキッチンカーだと思ったんだが・・・仕方ない・・・
「んっ・・・」
んん〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!流石に奪って置いて捨てるなんてことは出来ず口を付けた。その瞬間、何とも言えない多幸感が体を駆け巡った。甘い!!!すごい甘い!!!!なんだこれ!!!脳がパチパチする!!!!
「ぷはっ・・・んっ。」
息継ぎをして一気飲み。ちゅ〜〜〜〜〜っと全部飲み、口を離す。幸せ・・・すごい幸せ・・・なにこれ・・・ヤバいものなんじゃない?
「えと・・・はち、みー・・・」
カップに書かれていた名前を見る。この飲み物ははちみーというらしい。すごい、何だこの飲み物。
「はぁ・・・・」
すごかった・・・まだ脳みそパチパチする・・・すごい・・・うお・・・
「ふぅ・・・」
いつの間にか河から離れていたので公園を見つけ、ゴミ箱にカップを捨てる。そしてぐぅぅぅぅ〜〜〜〜〜と主張する腹の虫。はちみーだけじゃ物足りないらしい。
「・・・。」
・・・一度悪事に手を染めてしまえば、二度目はそれほど抵抗無く出来る。俺は食べ物を求めて駅前に繰り出した。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「待て!!!!」
「くっ・・・!!!」
昼に駅前のハンバーガーショップから出てきた少女・・・俺と同じ耳と尻尾がある少女を襲い、ハンバーガーとポテトを手に入れた。そして夜、ラーメン屋から出て来た少女・・・これまた俺と同じ耳と尻尾があった。瓦礫の山に横たわっていた遺体や俺と同じ改造された少女なのかと思ったが、歩き回って見た看板やチラシにウマ娘とあった。この体はウマ娘らしい。確かにウマの耳と尻尾だ。ロバじゃなかった。話を戻して今、ラーメン屋の少女から袋を奪ったら物かげから3人も飛び出してきた。マズイと思い全力疾走で逃げたが・・・この体は身体能力が異様に高いらしく、パルクールもどきで逃げられた。もう追ってこないらしい。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
とりあえず・・・ラーメン屋からかなり離れた・・・河川敷のデカい橋の下にやってきた。ここで食べよう。ラーメン屋の少女の持っていた袋はなんだったのか。餃子とかだといいな。
「お・・・」
袋を開けると出て来たのはデカいチャーシューの塊。腹に溜まるな・・・よし。
「むしゃ・・・」
もぐもぐ。食いごたえがある。だがはちみーを飲んだ時のような感動は無い。あれは空腹時が見せた幻だったのか・・・まぁいい。
「はぁ・・・」
もう食べちゃった。だが満腹にはならず、腹三分目と行った感じ。全然足りない。
「・・・。」
今から食べ物を持っている人を狙うのはダメだろう。既に今日だけで連続窃盗をしている。警察に行ってるだろうし明日から警察のパトロールが増えるだろう。やりすぎたな。でも空腹には勝てなかった。
「はぁ・・・」
それよりも俺について・・・俺はおそらくウマ娘、という物に改造させられた。どうやってとかどうしてとかはもうわからない。だが不可逆な物だろう。体は完全に女だ。ここから男性に戻すと言うのは現実的じゃない。いや、俺の身に起こったことが現実的かどうかと言われたら唸るしかないんだけど。
「はぁ・・・」
このままウマ娘として過ごすしかない。だが今日みたいな生活は長続きしないだろう。あっという間に捕まって闇に葬られる。そしてこれは予想だがこの体、恐ろしく燃費が悪い。昼に食べたハンバーガーだが人間の3食分はあろうかという大きさのバーガーとボウル一杯分はあるポテトの山だった。それを食べたのにも関わらずまだ空腹。今もチャーシューのクソデカい塊を食べても腹三分目。ウマ娘というのは恐ろしく代謝する生物なのだろう。
「・・・。」
そして、身体能力。明らかに力も走る速度も高い。逃げている時、自動車も。もしかしたら電車も追い越していたかもしれない。尋常じゃない足だ。ウマと人間が合体したような生物なんだろう。ウマ娘は。
「ああ・・・」
どうなるんだ。俺は。神様なんていなかった。俺は普通に働いて、納税して、神社に参拝も欠かさなかった。嫁を取らなかったというのが罪にしても重すぎる。
「ぐす・・・」
体に引っ張られているのか涙が出て来た。男の時はこんな簡単に涙なんて流さなかったのに・・・まぁ家族を引き離されたんだ。涙くらい出てくるか。
「・・・。」
今日はもう、寝よう。明日から考えることは多いが、もう休みたい。
「・・・ぐす。」
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「ふむ・・・連続窃盗事件か・・・」
「物騒ですね。」
「まぁ・・・仕方ない。生徒に注意喚起しよう。」
「はい。じゃあ掲示物作りますね。」
「ああ、わかっ・・・」
トレセン学園、理事長室。そこでやよいとたづなは生徒会からの報告で新たな書類を作ろうとしていた。
「・・・理事長?どうしました?」
「たづな。警察への被害届提出は無しだ。」
「え?どうして・・・」
「廃棄物58号・・・」
「え?」
「たづな。秋川家の者に頼る。恐らく廃棄物58号の仕業だ。」
「え?なんで・・・」
「たづな、この資料の続きを読め。」
「はい・・・」
やよいはたづなに引き出しから書類を取り出し渡す。
「・・・。」
「例の廃棄場発見は三日前・・・調査後、何者かが放置されていた車を壊していた痕跡があった。おそらく廃棄物58号だろう。」
「その・・・廃棄物58号っていうのは・・・生きてるんですか?」
「その筈だ。」
「理事長は・・・その廃棄物58号を・・・どうしたいんですか?」
「・・・出来れば無事に保護したい。」
「出来るんですか?この資料が本当なら・・・相当錯乱してると思いますし、言葉が通じるとも限りません。」
「それでも・・・死なせてしまうよりは良い。」
「・・・わかりました。」
「うむ・・・ではちょっと私は家に戻る。」
「はい。」
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
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・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
マズイ・・・マズイマズイマズイ!!!
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・!!!」
「いたぞ!!!」
「待てッ!!!」
「ッ!!!」
「くっ・・・速いな!!!」
「だが・・・」
マズイ!!!状況は最悪だ。俺は今、追われている。警察に、じゃない。走りやすそうなスーツを来たウマ娘にだ。それも、かなりの大勢に。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・!!」
俺は朝起きて、河川敷の公園で水を飲み、空腹に頭を悩ませていた。仕方がないので今日も食べ物を狙うかと駅前に繰り出したんだが・・・途中から見張られている事に気づいた。最初は警察かと思ったが、警察ならすぐ声を掛けてくる。だがそれがない。それどころか着いてくる。それもかなりの人数が。俺は隙を着いて走り出した。だがあっという間に囲まれ塀を飛び越えたり、電信柱から屋根に飛び乗ったりなど直線距離走っても速いがパルクールもどきをした方が撒けるのでそれで逃げた。だが、本当に数が多い。30人近くに追われている。そして気づいた・・・
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・!!!」
「見つけた!!!屋根の上だ!!!」
「追いかけろ!!!」
こいつら、あの、俺を改造した白衣の男達の仲間だと。多分俺は目を覚まさないから、あの山の中に捨てられた。だが昨日食べ物を奪った少女達が警察に通報した事で白衣の男達に俺が目を覚まし、生きている事に気づかれたのだ。マズイ。捕まったらマズイ。今度こそ、また改造や実験をされて死ぬよりも惨たらしい事をされる。なんとしてでもにげなきゃならない。
「降りたぞ!!!」
「待てー!!!」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・!!!」
今は適当に逃げ回っているが・・・時間の問題だ。俺はこの辺の地理に弱い。うっかり行き止まりに逃げ込むなんて事もある・・・どうする・・・?そうだ・・・葉っぱを隠すなら森の中、人を隠すなら人の中だ!!!俺は人の多い方に向かった。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「くそ・・・人ごみで・・・!!」
「見失う・・・!?」
上手く行った。この人混みがどこに向かうかはわからないが・・・とりあえず流れに身を任せよう。
「はぁ・・・はぁ・・・ふぅ。」
大きな建物まで流れつき、その側のベンチに座った。逃げられたようだな。
「ふぅ〜〜〜・・・」
つ、疲れた・・・空腹で、全力疾走だから・・・ほんと疲れた・・・お腹空いた・・・ふとドワァーーーーーーーーー!!!!と大歓声が聞こえてきた。
「!?なんだ・・・」
そういえばここがどこかわからなかった。入り口らしきところまで移動すると・・・
「府中・・・レース場?」
思い出した。府中には競馬場があった。じゃあここは府中競馬場?今は平日か休日かわからないけど。すごい歓声だ。ぼーっと眺めていると・・・急に腕を掴まれ、引き倒され、組み伏せられた。
「ぐぅ・・・!?」
「見つけた・・・!!!」
「捕まえたぞ!!!」
あっという間に俺を取り押さえるウマ娘が増えた。しまった・・・!!!油断しすぎた!!!
「ぐぅぅ・・・!!!」
「暴れるな!!!」
「落ち着け!!落ち着け!!大丈夫!!」
「何が大丈夫だ・・・!!今度は何するきなんだ!!!」
「言葉が通じる・・・!?」
「ぐぅ・・・!!!」
「大丈夫。安心して。私たちはあなたを連れ戻しに来たんじゃない。保護しに来たの。」
「保護・・・?」
「そう、研究所とは何も関係無い。別な組織よ。あなたを保護して、安全な場所に送る為にあなたを追いかけたの。」
・・・ウマ娘になって、感覚が鋭くなった。気がする。その感覚で、このウマ娘が嘘を吐いてるとは思えなかった。
「・・・わかった。離して。」
「ええ。みんな、離して。」
「でも。」
「大丈夫。これじゃマトモにお話しも出来ないから。」
拘束を解いてもらい、話す体勢を取る。逃げる準備もしておくが。
「大丈夫?」
「うん。」
「じゃ、着いて来てくれる?」
「それもわかった・・・だけど。」
「何?」
「お腹、空いた。」
私を捕まえたウマ娘は携帯電話で連絡を取るとご飯を用意するからと言って、車に乗るよう促した。これで嘘だったら・・・そうだな。実験器具の一つでも壊してやるか。