人体改造ウマ娘   作:電動ガン

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入学、トレセン学園。

病院の検査から数日経った。その間俺はたづなの家にご厄介になっていた。が、それも今日で終わり。トレセン学園の寮・・・二つある寮の内、美浦寮に入る事になった・・・が。ここで問題が発生した。なんとタケミカヅチの名前の生徒がすでに在籍していたのだ。そこで俺は急遽学生証を返却。新たな名前を考える羽目になった。

 

「むぅ・・・」

 

「申し訳ない・・・確認不足だった。」

 

「いや、仕方ない。まさか被るとは・・・」

 

「ミカちゃんって呼べなくなってしまいましたね・・・」

 

理事長室で困った困ったと唸る俺たち3人。病院の方は名前はどうにか出来ると言われたが、早くしないと行けないだろう。ウマ娘の名前というのは普通被る事は無いそうだ。外国等で遠く離れた場所なら被ることもあるそうだがそれもかなり稀。不要な衝突を避けるためにも改名だ。決めてから日が浅くて良かった。

 

「もうミカでいいんじゃないか?」

 

「いちおう命名法則として二文字以上、九文字以内という法則があると研究されているが・・・」

 

「今調べたんですが・・・ミカさんも在籍してます。」

 

「まじか・・・」

 

まいった。ウマ娘の名前ってめんどくさ〜〜〜降りてこないと被る可能性はすごく高い。

 

「もうイセカイクローンでいいんじゃないか。」

 

「それは問題だろう。君の素性は隠さなければならない。」

 

「そうか・・・」

 

「うーん・・・」

 

本当にまいった。どうすりゃいいんだ。名前を考える度に被ってないか確認しなきゃならない。

 

「・・・コタツデミカン・・・と言うのはどうだろうか・・・」

 

「コタツデミカンさんも在籍してます・・・」

 

「嘘だろ・・・」

 

ウマ娘の名前なんでもありかよ。そんなの親も困るだろ。

 

「・・・わかりました。ミカちゃん。男の人だった時の出身地はどこですか?」

 

「え・・・確か、福島だが・・・」

 

「・・・。」

 

たづなはカチカチとパソコンを手繰る。

 

「よし。フクシマミカンにしましょう。これなら被ってません。」

 

「ええ・・・」

 

「すまないが・・・これでいいか?」

 

「わかった・・・これ以上手を煩わせたくない。俺はフクシマミカンだ。」

 

「申し訳ない・・・」

 

タケミカヅチから大きく変化したが致し方ない。しっくりもこないが、これ以上2人を悩ませるよりは良い。

 

「とりあえず愛称は引き続きミカで行く。もし、来年度や、再来年度、新入生でフクシマミカン君が現れたら・・・」

 

「・・・俺が名前を変えよう。少なくとも降りてきた名前である方を変えろと言うよりは良い。」

 

「すまない・・・」

 

ウマ娘の名前を神では無くヒトが付けるとどういう弊害が出てくるか、という実例が出来た。これが今後に生かされれば良いと思う・・・生かされる事なんてあるのか?

 

・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・

 

・・・・・・・

 

・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・・

 

・・・

 

・・

 

 

 

「ふ、フクシマミカンだ。よろしく頼む。ミカと呼んで欲しい。」

 

わーーーっとクラスのみんなに拍手で迎えられ、俺は中学生になった。2度目の学生生活は・・・先行きが不安だ。まぁ・・・いいか。ホームルームが終わると俺はすぐさま囲まれてしまった。

 

「ミカちゃん!ミカちゃんはどこ出身なの!」

 

「ねぇミカちゃん良い匂いするーシャンプー何使ってるのー」

 

「ミカちゃんは足速いー?」

 

「うわああああああ」

 

囲まれて質問攻めにあっているとこらーーー!!!と鶴の一声でみんなが引いていく。

 

「オホン!フクシマミカンさん。私はアップルシードル、クラス委員長です!!!」

 

ババーンと自己紹介したアップルシードルはつかつかと俺の前までやってきてみんなに一言申した。

 

「ミカさんが困ってるからみんな散りなさい!」

 

はーいとかうぇーとか言いながら後でまた話そーねと散っていく。助かった。

 

「助かったアップルシードル。」

 

「いえいえ。困ったらいつでも私を頼ってください。委員長なので!」

 

「ああ。頼らせてもらおう。」

 

そうしてすぐに予鈴が鳴り授業が始まる。さぁ何年振りの授業だ?まぁ俺はクローンなので何年振りとかは関係無いんだが。まぁ適当に頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

問題が発生した。お昼を食べようと食堂に向かっていたところ、スマホ・・・じゃないウマホにやよいからLANEが来た。なんとフクシマミカンは、過去在籍したらしい。俺は頭を抱えた。

 

「・・・。」

 

「どうしたのー?」

 

「ミカちゃん頭痛い?」

 

「大丈夫ー?」

 

俺は仲良くなったウィズカスパール、パールと、オネストワーズ、ネスとスイートキャビン、スイと昼食を取ろうしていた時だった。中学生と仲良くなる30代男性・・・と脳内に浮かんだが俺はまだ生まれて0歳と言うことで納得した。それにしてもまじかよ・・・また名前変えなきゃいかんのか。

 

「なんでも無い・・・」

 

「なんでもなくない顔してるよー」

 

「とりあえずご飯食べない?」

 

「お腹空いたー」

 

とりあえずは食べよう。俺はモツ煮込み定食大盛りを頼んで受け取り、テーブルに座る。もそもそと食べながら今後どうするか考える。

 

「それでミカちゃんどうしたの?」

 

「ご飯美味しいよ。」

 

「お好み焼きウマー。」

 

「いや・・・」

 

どうする・・・名前が変わる事、言っても良いか?特殊な事情がある事を話して良いだろうか・・・まぁどっちみち変わったら告げる必要があるのだ。それが先になるか後になるかの違いだろう。

 

「あのな・・・俺は名前が変わる可能性がある。」

 

「ええー!?」

 

「なんで!?」

 

「ミカちゃんじゃ無くなっちゃうの!?」

 

「俺は・・・ちょっと特殊な事情があってな・・・名前が降りてくる前に、親の元を離れたんだ。だから本当の名前がわからない。だから今まで誰かと被る度に名前を変えてきたんだ。」

 

「そ、そんな・・・」

 

「ええー・・・」

 

「酷すぎる・・・」

 

「まぁ・・・なんだ。名前が変わったからって俺が変わる訳じゃない。大丈夫だ。」

 

「そうなの?」

 

「もうパールそれは当然でしょ。」

 

「ミカちゃん大変だねー」

 

「まぁ慣れっこだ。もう。」

 

「ねねね。今までどんな名前だったのー?」

 

「知りたーい!」

 

「待った2人とも。それは・・・」

 

「大丈夫だスイ。例えばな・・・」

 

「へー・・・」

 

「面白いね。」

 

「いいのか・・・」

 

まぁ・・・良いだろうこれくらい。午後はやよいの所で新たな名前を考える必要があるな。ご飯を食べたらすぐ行こう。

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・

 

・・・・・・・

 

・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・・

 

・・・

 

・・

 

 

「やよい、来たぞ。」

 

「おお、ミカ君。」

 

「ミカちゃんすみません。」

 

「いや、良い・・・もう慣れた。」

 

名前。これはもうどうしようもない。やよいに聞いたら学生証を作ったくらいで戸籍等は止めている為本決まりにはなってないという。それは助かるがそれはそれで問題だ。

 

「どうしましょう・・・もう手が無いですよ。」

 

「今から3女神に頼るのも・・・」

 

「その神に頼るというの、そもそも母体から生まれてない俺を祝福してくれるのか?」

 

「してくれる・・・と嬉しいが・・・」

 

「というかそんなに神との距離が近いものなのか?」

 

「近いな・・・よく神託もあるし・・・」

 

「信じられないな・・・」

 

「代理母の存在があれば・・・」

 

「代理母?」

 

「ああ。ウマ娘が生まれた時、出産に耐えきれず母親が死んでしまったりした時に、代わりに母となるウマ娘に名前が降りてくるのだ。そのウマ娘は親族だったり、全く知らないウマ娘であったりで誰の子供の名前かわからず当てにはならないんだが・・・」

 

「そういうのもあるのか・・・」

 

「うむ。しかし・・・」

 

「理事長。逆転の発想です。」

 

「なんだたづな。」

 

「人間の名前を付けましょう。」

 

「え?」

 

「人間の名前なら被っても問題ありません。」

 

「・・・確かに。」

 

「良いのか?」

 

「問題無い。それに君はレースに出すつもりは無いからな。」

 

「前もチラッて聞いたんだが・・・レースってなんだ。」

 

「ウマ娘はな、遅かれ早かれレースに身を投じるものなのだ。」

 

「は・・・?」

 

「己の足の速さを競い、頂点へ。目指すものなのだ。」

 

「・・・そうか。」

 

「そういうものだ。」

 

正直、俺にそんな競う根性は無いから出さないというならそれに越した事は無い。

 

「まぁ・・・ウマ娘に人間の名前というのは・・・大人になってからが普通だ。結婚、その他事情で人間の名前を名乗る事になる。」

 

「そうなのか。」

 

「そうです。私もそんな感じですよ?」

 

「ふむ・・・」

 

「どうだ・・・?」

 

「良いかもしれない。」

 

「そうか!では姓は秋川、名をミカにしよう!!!」

 

「は?」

 

「いいですね。」

 

「ちょ、ちょっと待て。」

 

「なんだ?」

 

「良いのか。秋川ってやよいの家の名前だろ。こんな出自不明の不安定で怪しい奴に名乗らせて良い訳ない。」

 

「大丈夫だ。君を保護しているのは秋川家だ。そこの家の姓を名乗ることは何も問題無い。」

 

「だが・・・」

 

「私は秋川家当主だ。問題があってもねじ伏せられる。」

 

「・・・。」

 

「大丈夫ですよミカちゃん。」

 

「・・・わかった。」

 

もうなるようになれ。どの道みなしごなのだ。家に入れてくれるというなら乗った方が良い。

 

「改めて・・・世話になる。やよい。」

 

「うむ!もし気が変わってレースに出たくなった場合はウマ娘の名前を考えよう。」

 

「じゃあ戸籍の方もこれで通しましょうか。」

 

「だな。任せろ。」

 

「はい。」

 

トントン拍子で決まった。秋川ミカ。爆誕。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

名前が決まったので、校庭へ赴く。校庭と言っても、コースだ。一周1600メートルのコース。トレセン学園の午後は全部体育らしい。ウマ娘はレースに出るためトレーナーと契約し、トレーニングする。それ以外、未契約のウマ娘は教官と呼ばれる教員になんとも画一的なトレーニングを受け、選抜レースと呼ばれるトレーナーが観に来るレースで実力を見せつけ契約に備えるらしい。

 

「パール、ネス、スイ。」

 

「お、おー!!ミカちゃん!」

 

「大丈夫ー?」

 

「お話し終わった?」

 

「ああ。名前はなんとかなった。」

 

木陰で休んでいた3人を見つけ合流する。俺もどんだけ走るかはわからんが体育は出といた方が良いとやよいに言われたからだ。

 

「今何してるんだ。」

 

「模擬レースの順番待ちー」

 

「休憩だよ。」

 

「ミカちゃんも混ざる?」

 

「いや。俺が混ざっても・・・」

 

「きょうかーん!!!」

 

ネスが教官を呼びに走るそして教官を連れて来ると教官はにこやかに話しかけてきた。

 

「ようフクシマミカン!遅かったな。大丈夫か?」

 

「大丈夫・・・です。遅くなって・・・すみません、です。」

 

「大丈夫だ!模擬レース混ざるか?」

 

「いえ、見てる、ます。」

 

「そうか。良いぞ。無理するな。」

 

「ありがとう、ございます。」

 

そうして教官は戻っていった。そしてすぐに模擬レースが始まる。すごいな・・・これがウマ娘のレースか。

 

「すごい・・・」

 

「えー?そーかなー?」

 

「私たちまだへっぽこだからね。」

 

「本物のレースとは程遠いよ。」

 

「本物・・・」

 

本物のレースか・・・こないだ、府中競馬場・・・いや府中レース場で感じたあの熱気。あれは本物のレースの熱気だ。見てみたいものだな。

 

「いけー!!ぶっ差せー!!」

 

「前に出ろー!!!」

 

「ぶちかませー!!!」

 

3人は結構過激な応援をする。なんだぶっ差せって。午後の体育は他クラスとの合同なのでこの模擬レースでは他のクラスの名前の知らない子が勝ってた。すごいな。

 

「あーマルちゃんかー」

 

「マルちゃんよく勝ったな。最初出遅れてたよね。」

 

「マルちゃん出遅れ癖なければなー安定するのに。」

 

「ふむ・・・」

 

どうする・・・?やっぱり出てみるか?でもな・・・普段運動なんかしてなかった。それにこの体になってした運動は窃盗して追いかけられたことだけ。どうみても走りきれない。やめとこう。

 

「じゃーミカちゃん行って来るわー」

 

「応援よろしく!」

 

「見ててねー」

 

「ああ。」

 

3人を見送り、一応ストレッチ等をしておく。まぁまだ俺はなんも指導を受けてないしな。模擬レースなんて出ても惨敗するだけだ。レースに出走しないという方針の俺は出る意味も無い。

 

「あら・・・?」

 

「ん?」

 

「どうも。お隣よろしくて?」

 

「ああ、構わないぞ。」

 

ちょっと小柄な・・・茶髪?ウマ娘では栗毛と言うんだったか。それに右耳に白いリボンの耳飾りをつけたウマ娘が立っていた。そのウマ娘はそっと俺の隣に座ると模擬レースを眺め始めた・・・ちょっと汗の匂いする。さっきまで模擬レースに出ていたのかもしれない。流石にそれを指摘するほどデリカシーがないわけではない。

 

「あなた見ない子ですわね。」

 

「ああ。今日から来たんだ。」

 

「そうだったんですの。私はメジロマイヤーですわ。あなたは?」

 

「俺か・・・?俺は・・・」

 

咄嗟にフクシマミカンと名乗ろうとしたが・・・それはもうマズイんだと思い、さっき決めた名前を伝えた。

 

「秋川ミカだ。」

 

「えっ?」

 

「まぁなんだ。ちょっと事情があってな。ウマ娘としての名前は無いんだ。」

 

「まぁ・・・そうだったんですの・・・なんとか心中お察ししますわ。」

 

「すまないな。」

 

「いえいえ。事情があろうともトレセン学園にいらっしゃるんですもの。あなた適性は?」

 

「適性?」

 

「ええ。バ場適性とか距離適性とか・・・」

 

「ああ・・・すまない、それもわからないんだ。」

 

「そうなんですの・・・」

 

メジロマイヤーはうむむと唸ってしまった。申し訳ない・・・俺は自分のこと何もわからないんだ。

 

「ミカさん、と言うことは自分がどれだけ走れるかもわからないのでは?」

 

「そうだな。だから、教官に早く指導してもらいたいが・・・初日から呼び出しでつまづいてしまってな・・・」

 

「とことんついてないですわね。お察ししますわ。」

 

「いやすまんな・・・はは・・・」

 

「いえいえ。そういうツイてないというのはままありますわ。」

 

「そうだな・・・」

 

「ならわたくしと向こうでちょっと走りませんこと?軽くでも体を動かした方が良いですわ。」

 

「いやでも勝手には・・・」

 

「あらあなた見てないんですの?別トラックでは体を動かしてる子はいますわよ。」

 

「え?」

 

そう言って指差した方を見ると小さなコースで走っている子たちが。なるほど。

 

「ほんとだ。」

 

「ね?行きましょう?」

 

「そうだな。少し動きたい。」

 

そうしてメジロマイヤーと一緒に別トラックへ向かった。走ってる子達に混ぜてとお願いし、少しスペースを開けてもらう。

 

「軽くジョギングしましょう。」

 

軽くと言ったがメジロマイヤーは結構速い。なるほど。10分ほど走り、休憩。

 

「どうですミカさん。」

 

「良い感じだ。運動はあまりしなかったがやってみると気分が良い。」

 

「でしょう?全力疾走するともっと気持ちいですわよ!」

 

メジロマイヤーはほんと察しが良い。運動をしてなかったのにアスリートの学校であるトレセン学園になぜ入れたかなど聞いてこない。助かるな・・・

 

「このコースは一周800メートル。向こうの本コースと比べるとかなり短いですが私達のような新入生にはちょうどいいですわ。」

 

「なるほど。」

 

「皆さーん!ちょっと走りますわー!!開けてくださいましー!」

 

メジロマイヤーがそう叫ぶと走り終わった子たちが開けてくれる。よし、ものは試しだ。

 

「それではスタートお願いしますわ。」

 

はーいと近くの子にスタートを頼む。そしてヨーイドンの掛け声で駆け出した。

 

「ふっ・・・!!」

 

「うお・・・」

 

メジロマイヤーはすごい。あっという間に前を走る。すごいはやい・・・

 

「よぉし・・・」

 

俺も負けじと加速する。少ししてメジロマイヤーに追いつくと前に出る。あれ?なんか思ったより俺速いな。どうなってる?

 

「・・・。」

 

「えっ・・・!?」

 

「・・・。」

 

あっという間に俺とメジロマイヤーの差が開いてゴール。みんなが拍手で出迎えてくれた。

 

「すごーい!」

 

「はやーい!」

 

「あ、ああ・・・すまない。」

 

「あ、あなた・・・」

 

メジロマイヤーはキラキラとした目でこちらを見ている。な、なんかやばそう。

 

「ミカさんあなたすごいですわ!!物凄く速いんですのね!!!」

 

「あ、ああ・・・いや・・・自分でも驚いてる・・・」

 

「すごいですわ!!!」

 

「いやーマイちゃん待った待った。」

 

「そうでもないよー。」

 

「ちょっと待ってくださいまし!!!それじゃわたくしが遅いって言うんですの!?!?」

 

「そうじゃないよー」

 

「ミカちゃんだっけ?フォームめちゃくちゃだしー」

 

「コーナーも物凄く膨らんでたし、直線以外遅かったよ。」

 

「あ、え・・・?」

 

メジロマイヤーのクラスメイトと思わしき子達の感想を聞く。まぁそうだよな。まっすぐ走るのは速くてもそれ以外がダメじゃ話にならない。

 

「そんな・・・じゃあなんでわたくしは負けて・・・」

 

「そりゃ直線はめちゃくちゃ速かったし。マイちゃんそれだけで負けてたよ。」

 

「きー!!!」

 

メジロマイヤーは地団駄踏んで悔しがっている。まいったな・・・

 

「ミカさんッッッ!!!」

 

「お、おう・・・」

 

「今度はちゃんと指導を受けて!ちゃんとした状態でもう一回勝負ですわ!!次は負けませんわ!!!」

 

「あー・・・うん。」

 

「ふー!!!ふー!!!」

 

「もーマイちゃん落ち着いてよー!」

 

「これでメジロのお嬢様なのおもろいよね。」

 

「ははは・・・」

 

メジロのお嬢様というのは何か知らないが・・・まぁいい。そこで遠くでミカちゃーんと呼ぶ声がした。あ、マズイ。パール達のレース見てなかった。

 

「あ、いたーミカちゃん。」

 

「なにしてんのさー見ててねって言ったのにー」

 

「いや、すまない。ちょっと誘われてな。」

 

「マイちゃんミカちゃんは私達のものだぞー」

 

「ぞー」

 

お前達の物になった覚えは無い。だがメジロマイヤーのほっぺをぷにぷに突きながら文句を言うクラスメイトを止める気には何故かならなかった。

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・

 

・・・・・・・

 

・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・・

 

・・・

 

・・

 

 

 

寮。今日から寮生活だ。荷物はキャリーケース一個だけ。なのだが・・・

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

同室が、いるのだ。2人部屋だとは知らなかった。恐らく先輩だ。厳ついリーゼントとポンパドールの先輩。その先輩に、睨まれている。

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

ごくり・・・思わず唾を飲む。固まっていると先に動いたのは先輩だった。

 

「よう。まぁ・・・座れ。」

 

「は、はい。」

 

ゴゴゴと凄みが増す音にギクシャクしながらベッドに座る。

 

「おめー・・・」

 

「は、はい。」

 

「荷物はそれだけか?」

 

「はい・・・」

 

「なんでだ?」

 

「あ、いや、その・・・」

 

ギラっと先輩の目つきが鋭くなる。

 

「買って・・・もらえなかったのか?」

 

「あ、あの・・・」

 

「いや・・・良い。他人の家庭環境に突っ込むのはロックじゃねぇ・・・」

 

「はい・・・」

 

「アタシはリーゼントロック。高等部1年だ・・・主なレースの勝ちはダートだ・・・」

 

「は、はい・・・俺は・・・秋川ミカ、です・・・」

 

「ッ・・・お前・・・」

 

「えっ・・・」

 

「そうか・・・そういうことかよ・・・」

 

次の瞬間、リーゼントロック先輩はぶわっと大粒の涙を流しながら嗚咽を漏らし始めた。

 

「そうかよ・・・そうかよ・・・!!!」

 

「あ、あの・・・」

 

「おめー・・・苦労してんだなぁ・・・!!!」

 

ボロボロと涙を流す先輩、どうやら悪い先輩では無いみたいだが・・・ちょっと癖が強いな・・・

 

「うぐ・・・ぐす・・・おめー・・・」

 

「は、はい・・・」

 

「飯は食ってるか?夜は寝れてるか・・・?」

 

「ごはんは・・・食べてます・・・夜も一応・・・」

 

「そうかよ・・・!!そうかよ・・・!!」

 

鼻水を袖で拭う先輩。様になってるなぁ・・・

 

「もう一度言う。アタシはリーゼントロック・・・」

 

「はい・・・」

 

「ミカ・・・困った事があったら・・・何でも言え。アタシは・・・なんでも協力する。」

 

「あ、ありがとう・・・ございます・・・?」

 

「ぐす・・・まずは飯行くぞおらぁ。」

 

「は、はい。」

 

こうして先輩とご飯に食堂へ向かったんだが・・・先輩は俺の分も取ってくると言ったりご飯粒の付いた俺のほっぺを拭ったりと・・・なんかオカン!みたいなウマ娘だった。

 

「飯食ったな。風呂行くぞミカ。」

 

「はい。」

 

ずんずんと風呂に進むロック先輩の後ろを着いて歩く。最初はリーゼントロック先輩と呼んでいたが長ったらしいから短くして呼べと凄みと共に言われたのでロック先輩となった。そして風呂。脱衣所には洗濯機が大量に設置されていた。なるほど洗濯は自分でか。

 

「おっしゃ行くぞミカ。」

 

「はい。」

 

風呂へ突撃。戸を開けて入ったのだが。ロック先輩が着いてこない。なんだと振り返ると、ポカンとしたロック先輩が佇んでいる。

 

「ど、どうし、ました?」

 

「ミカ・・・おめーその、ケツのどうした?」

 

「ケツ?」

 

自分の尻を見る・・・そこには58とアラビア数字の刺青のような物。なんだこれは。

 

「おめー・・・おめー・・・!!!」

 

「え・・・なんだこれ。」

 

ロック先輩は風呂の入り口で男泣きを始めた。邪魔にならない・・・?そこ・・・

 

「うぐ・・・ぐす・・・ミカ・・・!ミカ・・・!」

 

「は、はい・・・」

 

「おめー・・・苦労してんだなぁ・・・!!!ぐす・・・!!!」

 

それさっきも聞きました。それよりもお風呂入ろうとロック先輩の手を引いて洗い場に向かう。ロック先輩は頭洗ってやる、背中流してやると世話を焼き始めたので大人しく従う事にした。代わりに背中流してあげたらまた男泣きしていた・・・癖が強い・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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