退院して翌日。俺は距離適正を測る・・・筈だったんだが、一周走って、走り方がなってないと測る前に指導が入る事になった。マイとバクシンオー先輩にみっちり扱かれている。
「はっ・・・はっ・・・はっ・・・」
「良い感じですミカさん!!!そのまま前傾姿勢で!!!」
「ミカさん足運びを注意ですわ!!!」
コースを直走りフォームを身につける。
「はっ・・・はっ・・・ふぅー」
何周くらい走っただろうか。今まで無かったほど汗をかき、バッグの元へ戻ってタオルで汗をふく。水分補給も。
「ごく・・・ふぅ。」
「ミカさん大丈夫ですか?」
「ああ・・・マイ。汗をかくのは気持ちいい。」
「そうでしょう!もっと走るともっと気持ちいいですわよ!」
マイと話していて・・・無視していたんだが・・・結構ギャラリーがいる。コースの周りを取り囲み、俺の走る所を見ている。まぁ・・・時折声援が飛んでくるくらいなので気にしなくていいか。
「ミカ。」
「青木、どうした。」
「かなりフォームが身についてきた。飲み込みが早いね。もう少し走ったらもう一度測ろう。」
「わかった。」
少し休んだら、スタートラインに着く。やるぞ。
「よーい!はじめ!」
⏰
かなり走った。ちょっと飛ばし過ぎなのでは?と思ったが全然体調が崩れる様子がない。すごい。
「ミカ、どうだ。」
「そうだな。体調の変化は無いし気分が良い。」
「そうか。じゃあ次は1時間休憩しよう。そうしたら距離適正を測る。」
「わかった。」
1時間休憩か。まぁいいか。日陰に移動し、スポーツドリンクをごくり。軽食も食べておこう。ドーナツを持ってきてるんだ。
「よーミカちゃん!」
「ミカ〜」
「ミカちゃん!」
「パール!ネス!スイ!」
「かなり走ってるね〜」
「大丈夫〜?」
「元気?」
「ああ、大丈夫だ。気分いいぞ。」
「そっか〜」
「思ったよりすぐ走れる様になったね。」
「だな〜」
ドーナツをもふもふ食べていたら青木がこっちにやってくる。何かあったか?
「やぁみんな。」
「こんちは〜」
「どうも〜」
「ども〜」
「君たち、良かったら距離適正測るのに協力してくれないかい?」
「え?」
「何するの〜」
「ん?」
「なに、簡単さ、大勢で走った方が適正も見れると思ってね。」
「おー!!」
「早速ミカちゃんと走れるのか!」
「やるー!」
「お願いね。じゃあ着替えてきて。」
はーいと3人は駆け出していく。早速か。
「なんで3人を誘ったんだ?」
「まぁ距離適正を測るのと得意な戦法の確認・・・というのもある。だが。」
「だが?」
「ミカの、本気を確認しなければならない。」
「・・・。」
俺の・・・本気・・・
「ミカをどれだけ走らせていいか確認しなきゃならない。その上で本気を見ておかなきゃいけないんだ。」
「そうなのか。」
「ああ。もし、本気を見誤った場合・・・ハリボテエレジーの二の舞になる。」
それは確かに御免だ。
「わかったかい?まぁ本気と言ってもミカはまだ十分なトレーニングを受けて無いし、それほど、という場合もある。でも全力だ。全力を出してくれ。」
「わかった。」
そしてストレッチをしておくようにと託けられて青木はマイの所に戻っていった。
「俺の・・・本気・・・全力・・・」
黄麻が言ってた。俺の最高速度はウマ娘の最高速度を遥かに超えると・・・まぁそれはトレーニングを積まないと出ないというし。
「気楽に行くか。」
そうしよう・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
1時間後。十分に休憩を取って、準備が整った。が。
「青木トレーナー、とりあえずマイルからかい?」
「青木トレーナーようダートは試さねぇのか?」
「青木トレーナー、計測器の準備出来たであります。」
どこから聞きつけたのか、生徒会長と、ロック先輩とフェノーメノ先輩が集まってきたのだ。こわい。
「ミカ君準備は出来たか。」
「ミカ、シューズ大丈夫か?」
「ミカ、一応もう一度水分補給するであります。」
「あ、はい。」
パール、ネス、スイもいるのだが、この3人走る気満々。敵うわけがない。
「あ、青木ぃ・・・」
「まぁまぁ。大丈夫だよ。多い方が良い。」
「で、でも・・・」
「まさか先輩達は全力で潰しには来ないよ。」
そうだとしても。そうだとしても!!!
「こわい・・・」
「大丈夫だ。ミカ。レースじゃないんだ。距離適正を測るのが目的だよ。」
「うう・・・」
「まぁ・・・とりあえずやるよ。1600メートルから。」
震えながらスタート位置に着く。パール達はまだしもスタート位置に着いた先輩達はかなりの威圧感だ。やばすぎる。青木からの指示は、自分の感覚に従って走ること。
「・・・よし。」
「じゃあ行くぞ、ミカ君。」
「おいミカ。なんかあったらすぐ走るのやめるんだぞ。」
「ミカ。頑張るでありますよ。」
「おっしゃー!!!いくぞー!!!」
「パールあんまはしゃがないで。」
「うぃー」
ゲートが運ばれてきて、7人でゲートに入る。このゲート、初めて入る時は閉塞感に暴れ出すウマ娘もいるというが俺はなんともない。
「ミカ、ゲートから出る訓練でもありますよ。」
「は、はい・・・」
隣のフェノーメノ先輩が話しかけてくる。でもどうやるんだ?
「・・・。」
ドキドキだ・・・そして。
ガッシャン!
開いた!だが俺はワンテンポ遅れた。流石に初めてのゲートはわからないな。
「おらおらおらぁぁぁあああ!!!」
「パール!!!飛ばし過ぎ!!!」
「うおおおお〜〜〜」
「スイはなにしてんの!?」
パール達が前を走り、生徒会長たちは俺の周りを走る・・・うん。うん?
「ミカ君!!!よく見ておけ!!!」
「ミカァ!!!アタシはダート専だが負けねぇぞぉ!!!」
「ミカ!!!スパートであります!!!」
スパート・・・スパート・・・本気で・・・本気で!!!その時、フェノーメノ先輩が俺の後ろに着いた、その瞬間。
「!!!」
ドクン。と胸が高まった。そして体の中を巡るなにか。なんだ・・・なんだこれ!?!?
「どうしたでありますミカ!?」
「ミカ君!?」
「ミカァ!?」
足に力が巡る。腕が震える。そして・・・なにか燻る、なにか。
「ッッッ!!!!」
足の回転が・・・速くなる。歩幅が大きくなる。体が・・・熱い!!!
「ミカ君!!!」
「ミカ・・・!?」
「ミカ!!」
「えっ!?」
「何!?」
「どうし・・・」
先輩達から離れ、前を走るパール達に肉薄する。そして・・・
「ゴール!!!」
「はぁッ・・・はぁ・・・はぁ・・・!!!」
「ふぅーーー」
「はぁ・・・ふぅ・・・」
「ほぉ・・・」
「ミカ。おかえり。」
「青木・・・」
「どうだった。」
「わからない・・・」
「そうか・・・まぁー・・・見ていた側からするとだな。」
「・・・。」
青木はファイルを見ながら話し始めた。どうだった?というか・・・なんだ、あの感覚は・・・
「そう、マイルは、ミカの距離ではないらしい。」
「そう、なのか?」
「ああ。まぁスタートが出遅れたのはゲートが初めてだったし仕方ない。だが途中。明らかに加速が足りて無かった。そしてフェノーメノが後ろに付いた時、明らかに掛かった。戦法は差しみたいだったが囲まれたりすると前に出たがるみたいだ。」
「なる・・・ほど?」
「うん。次は中距離。2400メートルだ。」
「わかった。」
「30分後にやるからね。」
「ああ。」
そうして、芝生に座ってさっきの感覚を反芻する。
「さっきのは・・・」
「ふはぁーーーミカちゃんどうだった?私速いでしょ。」
「ああ、パールなかなかやるな。」
「まぁでも私達は中距離以上が得意距離なんだけどね。」
「だからクラシックディスタンスに行くんだー」
「3人で三冠を分け合うのも楽しいね。」
「そうか・・・」
「じゃ私スポドリ買ってくるね。」
「あ、ネス。私のもお願い。」
「私のもー」
「あいよー」
「・・・。」
足に力が沸る感覚・・・まるで・・・ウマ娘・・・?ウマ娘は・・・あんな感覚がするのか・・・?青木は・・・掛かってた、と言っていたが・・・
「・・・。」
「ミカ君。」
「生徒会長・・・」
「ふふ。初めての感覚に戸惑っているようだな。」
「ええ・・・」
「ミカぁ大丈夫かぁ?」
「そう、ですね。何ともないです。」
「ミカ。ちょっと足を見るであります。」
フェノーメノ先輩は俺の足を触り始めた。ちょっとくすぐったい。
「ふむ・・・」
「マメちんどうだ。」
「少々・・・いや・・・これは・・・?」
「おいどうしたんだマメちん。」
「どういうことでありますか・・・?」
「おいマメちん?」
「フェノーメノ、どうした。」
「あ、ああ・・・生徒会長・・・ちょっと触ってみてもらえるでありますか?」
「私もか?」
「はい。私もちょっと詳しくはないので・・・」
「どれ・・・」
生徒会長も俺の足を触る。そしてしばらく触ると・・・ハッと何かに気づいたようだ。
「これは・・・」
「生徒会長もわかったでありますか。」
「ああ・・・青木トレーナー!!!」
生徒会長達は青木トレーナーの元へ行ってしまった。どうしたんだろう。
「生徒会長どうした?」
「いや・・・青木トレーナーは知っているか?ミカ君の体の事を・・・」
「え、あ、ああ・・・一応・・・」
「私は・・・詳しく、知っている。」
「生徒会長も・・・」
「どれほどの物か確認してなかったが・・・ミカ君の足は・・・」
「ああ・・・どうしたんだ・・・?」
「異常だ・・・あの足は・・・」
「・・・だろうな。」
ああ、俺の足についてか。まぁ違法改造足だもんな。
「・・・。」
「え?え?」
「おう青木トレーナー、ミカどうしたんだよ。」
「ああ、いや、なんでもない。ちょっとな。」
「ああ、フェノーメノ、大丈夫だ。気になったが、平気だ。」
「ええ・・・?」
「おう・・・?」
パール達が戻ってきた俺の分も買って来てくれたようだ。ありがたく飲む。
「それじゃ・・・2400メートル始めるぞ!!!」
またゲートに入り、スタートを待つ・・・だがまたもやさっきと違った。研ぎ澄まされたのだ。感覚が。加速した時間中にいるように引き伸ばされる。なんだ・・・!?この感覚!?
「・・・!?・・・!?!?」
ガッシャン。
「!!」
「えっ・・・!」
「ええ!?」
「嘘!!」
「おお!!」
「上手い!」
「なるほど・・・」
俺は、ゲートの開く瞬間を完全に読み切ってスタートした。そして先頭に躍り出る。
「うっひょーーーー!!!」
「パールったら!」
「うぉぉぉ〜〜〜」
だが、生徒会長達がすぐに追いついてきて俺を取り囲む。
「・・・!!!・・・!!!!」
「ミカ!!!ミカ!!!」
「ミカ君!!!落ち着け!!!」
「ミカァ!!!」
わからない!!!わからないわからない!!!体が熱い!!!まるでカンカンに石炭を投入した蒸気機関車の用に走る。速く!!!速く!!!もっと速く!!!
「ミカァ!!!落ち着け!!!スピード落とせ!!!」
「ミカ君!!!速度を落とすんだ!!!」
「ミカ!!!くっ・・・周りが見えてないでありますか!?」
熱い!!!熱い熱い!!!だが・・・心に渦まくこの感覚!!!足りない!!!足りないんだ!!!
気がつけば・・・俺は生徒会長達を置き去りにして先頭を走っている。だがそんなものお構い無しにまだ走る。これが・・・これが!!!ウマ娘の見てる景色!!!
「はっ・・・はっ・・・!!!はぁあああああああ!!!!」
ゴール・・・!?だが俺は止まれず、生徒会長に飛び付かれ転がりながら芝にもんどりうった。
「はぁっ・・・!!はぁっ・・・!!はぁっ・・・!!」
「ミカ君!!!落ち着け!!!落ち着くんだ!!!」
「はぁっ・・・!!!はぁっ・・・!!はぁっ・・・!?!?」
「青木トレーナー!!!」
「ああ!!」
青木にバケツで水をかけられる・・・
「はぁッッッッ!!!」
「ミカ君!」
「ミカ・・・!」
「ミカ・・・」
「ミカちゃん!」
「ミカちゃん大丈夫!?」
「ミカちゃん・・・?」
みんなが抱き抱えらえた俺を覗き見る・・・俺は・・・
「青木トレーナー、今日はもう止めよう。」
「そうだな・・・」
「ダメだ!!」
「ミカ!?」
「後少しで・・・後少しで何か掴めそうなんだ!!もう一回!もう一回やらせてくれ!!!」
「ミカ・・・だが、我を失うほど掛かってしまうのであれば、レースは危険だ。」
「でもッ・・・!!」
「ミカ、ミカは・・・残念だが、今のでわかった。体はどうあろうと、メンタルがレース向きじゃない。」
「ッ・・・!!!」
「青木・・・」
ダメだ。あの感覚を、完全に手に取るまで、俺は止まれない。あの感覚は・・・あの感覚は俺に必要なものだ。」
「青木。」
「ッッッ!?!?!」
「青木、俺はやる。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「ミカ・・・!」
「やるんだよ!!!!今!!!!ここで!!!!」
我ながら大きな声が出たと思う。やらなければならないんだ。絶対、手に入れなければ。俺は進めない。この世界で、生きられない。
「わかった・・・」
「青木トレーナー!!!」
「おい青木ィ!!!」
「なんででありますか!!!」
「・・・。」
「みんな・・・頼みがある。」
「どうしたんだミカ君・・・?」
「みんな・・・次は全力で来てくれ。」
「!?」
「無茶だミカァ!!!おめーは限界だ!!!これ以上走るなんて・・・」
「ロック先輩。」
「!?」
「俺は・・・やらなきゃならない。全力で・・・本気で勝負して・・・ウマ娘にならなきゃいけない。」
「うっ・・・!」
「・・・リーゼントロック、フェノーメノ。パール君達も・・・準備をしろ。」
「生徒会長!?」
「生徒会長・・・!!」
「嘘・・・でしょ・・・?」
「ミカちゃん無理だよ・・・!」
「ミカちゃんトレーニング受けてないし・・・!」
俺は立ち上がり、頭を下げた。
「頼む。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「頼む。」
「顔を上げろミカ君。」
「生徒会長・・・」
「いいだろう。それこそ公式レースの様に、全力で相手をする。」
「ありがとう・・・ございます・・・!!」
再度ゲートに入る。十分休憩は取った。2400メートルを、もう一度。
「・・・。」
ガッシャン。
抜群のスタート。もう、わかった。
「・・・!!!」
周りから音が消える。俺だけの世界。それが今ここにある。
「・・・!!!!!!」
今ハロン棒・・・だったか?が素早く通り過ぎた。少し、周りに目をやる。いや・・・
「・・・!?」
周りに・・・誰もいない!?俺だけ1人スタートしたのか!?いや・・・!!
「・・・後ろ・・・!!!」
後ろを向く。そこには離れた場所にいる生徒会長達・・・いや・・・来る!!!
「ミカ君!!!」
凄まじい気迫だ。行った通り全力らしい。だが・・・さっきより冷静だ。頭は冷えてる・・・だが。
「ミカァ!!!アタシは芝得意じゃねぇんだよぉ!!!」
「ミカ!!!勝負であります!!!」
「無理ィ!」
「嘘〜!」
「ひぃ〜!」
パール達はさておき生徒会長達は物凄い勢いで迫ってくる。さっきは俺が抜群にスタートを決めすぎたらしい。
並んでくる・・・並んでくる・・・!!!並んでくる!!!!俺は得体のしれない感情に支配される。いやだ・・・いやだいやだいやだ!!!!
「はぁああああああ!!!!!」
「ミカ君私を・・・本気にさせたな!!!」
「うおおおおお!!!!」
「ミカァァァァァ!!!!」
来た!!!!来た来た来た来た来た!!!!並ぶな・・・・!!!私に並ぶな!!!来るんじゃない!!!
「・・・!!!」
「な・・・に・・・!?」
「嘘だろ・・・!!!」
「どうなって・・・!!!」
心に火が焚べられた。一瞬で火山の様に燃え上がり、私の体にエネルギーを巡らせる。そして・・・加速した。
『示したな。』
『示したな。』
『示したな。』
『見せた。』
『見てた。』
『見れた。』
『祝福は出来ない。』
『未来も上げない。』
『血は巡らない。』
『だけど。』
『だけど。』
『だけど。』
『体をやろう。』
『力をやろう。』
『そして・・・何より・・・』
『『『心をやろう。』』』
『『『ようこそ。ウマ娘の世界へ。』』』
「ゴール!!!・・・嘘だろ。」
「はぁ・・・!はぁ・・・はぁ・・・!!!」
「ミカ・・・」
「あ、あお、青木・・・」
「ミカ、すごいぞ・・・上がり3ハロンが・・・26秒・・・生徒会長を・・・置き去りにしたな・・・」
「あ、青木・・・私・・・」
「ミカ・・・?」
「ごめん吐く。」
「え?」
ごばっ。私は吐血した。ちゃんちゃん。
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
はっ。気がついた。私・・・どうなった?
「・・・?」
保健室・・・?いや違う。病院だ。それもロイヤリアグネス医師のいた病院。この小物。覚えてる。するとガラガラと扉を開けて看護師が入ってくる。
「・・・!?」
「あ、おはようございます。」
「ちょっと待っててねぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
ドップラー効果を伴いながら看護師は撤退していった。なんだ?そしてしばらくしてロイヤリアグネス医師が慌てて入ってくる。
「ミカさん・・・信じられない事が起きています。」
「はぁ・・・?」
「とりあえず。やよいさんを呼びます。」
「はい。」
なんだ・・・?何が起きたんだ・・・?
⏰
「何ぃ!?ウマムスコンドリアが確認されたぁ!?」
やよいがたづなさんとやってきて医師から説明を受けた。そんな事が起きてたのか・・・
「信じられません・・・ウマムスコンドリアは・・・外的要因で現れるものではありません。自然発生はありえないんです。それが・・・まだウマ娘として十分な量とはいえませんが。血中と口粘膜に確かに存在しています。」
「どういうことなのだ!?私もわずかながら知識があるからわかる。自然発生はありえないと!!!ミカ君は・・・ウマ娘じゃない!!母親が存在しない、クローン人間を改造した改造人間なのだぞ!!!ウマ娘由来の物質が宿るなど・・・!!!」
「え、ええ・・・私も何が起きてるかわかりません・・・ですが・・・数字は嘘を吐きません。間違い無いです。」
「え、ええ・・・」
「あの・・・理事長・・・そんなに不思議なんですか?私浅学で・・・」
「そうだな・・・私では上手い説明が・・・」
「私が説明します。ええっとですね・・・例えば・・・ええと・・・」
「うーん。」
「そうです・・・食べ物を放置しておくとカビが生えますよね?それは食べ物の中や空気中にカビ菌が存在するからなんですが・・・ミカさんの場合生えるカビが体内に存在しないのでカビが生えない。それどころか滅菌室の中にいる様なもので外からカビが入ってくるような事もありえないんです。なので今回の場合・・・無から、カビが発生して腐敗したんです。」
「ええ・・・?」
「ありえないんです。ウマムスコンドリアは無から出てくるなんて・・・ウマ娘は連綿と繋がれてきた・・・歴史があるんです。いわば先祖が一緒でみんな親戚みたいなものです。ミカさんは・・・そこから外れる、真祖なるウマ娘になったんです。」
「えええ・・・?」
「どういうことかさっぱりわからない・・・」
「ミカ君は正真正銘の・・・新生物になってしまったんだ・・・新種の・・・ウマ娘に・・・」
「・・・え。」
「ええ・・・え・・・」
「・・・。」
とんでもない事になってしまった。というか・・・頭に残るあの声。あの声は・・・いったい・・・
「はぁ・・・やよい。」
「なんだ・・・?」
「私は私だ。変わらない。」
「そうだな・・・ん?」
「ん?」
「私・・・?」
「・・・え?」
「一人称が変わってるぞミカ君。」
「え?・・・え?」
「え・・・?」
・・・?・・・???
「私・・・?あれ・・・え・・・?最初からこうだったような・・・」
「いや・・・違うぞ・・・変わってる・・・何が起きた。」
「私・・・いや・・・あの・・・声・・・」
「声・・・?」
「声が・・・聞こえたんだ・・・レース中に・・・」
「・・・。」
「不思議な・・・声だった・・・頭の中に響いて・・・」
「・・・神託だ。」
「え?」
「神託が来たんだ!!」
「はぁ・・・?」
「ミカ君は!!!3女神に認められたんだ!!!そうか・・・そうか!!!」
「そうなの・・・か・・・?」
「そうか・・・だから・・・!!ロイヤリアグネス医師!!!これは神の奇跡だ!!!」
「そう・・・かもしれないですね・・・もうそうとしか考えられない。」
「わはははははは!!!!ミカ君!!!!今日は祝杯だ!!!!帰って美味しいもの食べに行くぞ!!!!」
「ダメです。」
「え。」
「まだ入院です。どれだけ出血したと思ってるんですか。」
「しょんぼり・・・」
「まぁまぁ理事長・・・退院したらお祝いしましょうね。」
そうしてやよい達は帰っていった。そうか・・・私・・・ウマ娘になれたのか。ふふ・・・そうか、だから俺じゃなくなったのか。
「ふふ・・・あはは!」
さよなら、俺。おはよう私。
完