Chancellor   作:ちま

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第三話 再会

 

 

それから数日間。天候にも恵まれ、家の修復と整地は着々と進んでいった。そして…

「宰相様、家が完成しやした。」

「おお。これなら孤児たちも喜んでくれるだろう。」

ヨハンの報告にハーディンが満足そうに微笑む。畑の整地も着々と進んでいた。だが。

「まだ家具の修繕が残ってやす。幾つかは新たに造らなければなりやせん。」

とヨハン。

「そうであったな。畑も作物が育つかどうか種を蒔いてみねばな。」

「おっ、そう言えば…」

ヨハンが思い出したように懐から冊子を取り出した。

「家屋の修理をしているとき見つけたものでさぁ。料理のレシピのメモ書きのようなんですが…」

「レシピ?」

ハーディンがヨハンから冊子を受け取り、中に目を通す。

「ふむ。これは作物を使った料理のレシピが多く載っているな。孤児たちのここでの生活の役に立つかもしれぬ。ヨハン、これは私が預かっても良いか?」

「もちろんでさぁ。……あー…、それで、宰相様。」

ヨハンがどこか言い難そうに、遠慮がちに口を開く。

「うん?」

「誰かあっしの家具作りを手伝ってくれる人がいたらありがてえんですが。」

「ふーむ。…ならばその役はザガロが適任であろう。よく道具の整備をしているからな。ザガロ、よいか?」

「はっ。」

「よし。みんなよくやってくれた。これからは孤児たちにも手伝ってもらうことにしよう。ここでの生活に慣れてもらわねばな。」

「それがいいと思います。」

「だがその前に。明日は一日休みとする。皆しっかり休んで英気を養ってくれ。明後日から作業再開だ。では今日はこれで帰還する。」

同意したウルフにハーディンが頷いて見せ、ヨハンに別れを告げると一行は農場を後にした。途中ギルドに寄り孤児たちに農場のことを話し、パレスへの帰途に就いた。

 

 

「カタリナ!戻ったのか!」

空が昏くなり始める頃。ハーディンたち一行が宮殿に着くと城門の前にカタリナが佇んでいて、ロシェは思わず笑顔で下馬して駆け寄った。ネーリングの隊のほとんどの者も彼女を見て顔が緩む(カタリナは密かに人気がある)。

「ロシェ殿。ハーディン様、皆様…」

「カタリナ。昔そなたを救ってくれた恩人を闇から救うことはできたのか?」

ハーディンが馬上で問う。

「は…はい!」

「そうか。よかった。後で詳しく聞かせてくれ。」

ハーディンは微笑みかけ、一団とともに城へと入って行った。

 

 

「…そんなわけで、光のオーブがエレミヤ様に憑りついた邪悪な怨念を焼き尽くしたのです。」

ネーリングの兵士たちと別れ、兵舎の休憩室に移動したオレルアンの四人はカタリナが話すのを興味深く聞いていた。

「光のオーブというのはすごいのだな。」

「何はともあれ、君の恩人のシスターが元に戻ってよかったよ。」

「それにしても彼女に憑りついた邪悪な怨念とは何だったんだろう?」

狼騎士三人が口々に言い合う中、ハーディンは何かを思案しているようだったが、皆の会話が途切れた時、ついに口を開いた。

「カタリナ。そのエレミヤという女性、孤児たちの農場に来てもらうわけにはいかないか?」

「えっ!?」

「子どもたちだけだと心配ゆえに、農場で暮らせる目処が立った暁には、定期的に様子を見に行こうと考えていたところだったのだ。そなたを奴隷市場から救ってくれた彼女なら適任だと思う。」

「え…ええ!エレミヤ様が引き取った孤児たちは私も含め皆、成人しています。来てもらうのに何の支障もありません。」

カタリナが興奮気味に答える。

「では、カタリナ。足労だが、再びエレミヤ殿を迎えに行ってくれぬか。」

そう言ってハーディンは微笑んだ。

 

 

翌日。ハーディンは目立つターバンを外し、市井の服を着て単身パレスの城下町へと向かった。

――確かこの辺りのはず…

ハーディンが身の回りの世話をしてくれている侍女に尋ねたところ、品ぞろえが街一番だという老舗雑貨店がこの辺りにあるということだった。侍女は気立てが良くてすこぶる器量よしだと評判の看板娘のことを殊更熱心に語っていたが、ハーディンにとって農場で蒔く種や苗が手に入ればそれでよかった。

「おお、あれだな。」

“パレス雑貨店”という看板を見つけ、ハーディンが歩を進める。

「いらっしゃいませー!」

ハーディンが店内に足を踏み入れると明るい女声が出迎えた。思わず声のした方を見て…

「シ…シーマ王女!?」

思いもかけぬ人の姿を見とめ、驚く。暗黒戦争が起こる前、パレスでの式典に赴いた際、宮殿で幼い彼女を見かけたことがあった。

――面影がある。間違いない。

キョトンとしてハーディンを見返した娘も驚きのあまり両手を口に当てた。

「ハ…ハーディン王子!?」

そのとき店の中に他の客がいなかったのは幸いだった。

 

 

「母に対する仕打ちが許せなくて父ジオルの許を去り、パレスに居る祖父を頼ったんです。」

店番を祖父に任せ、奥の部屋にハーディンを通すとシーマが話し始めた。

「そうだったのか。」

「近所の人もお客さんもワケアリの私たちに親切にしてくれて…母はもう亡くなってしまいましたが…いたらきっと王子に会いたかったと思います。」

シーマはにっこりと笑い、懐かしそうな顔をする。

「昔、パレスの式典で…慣れないドレスの裾を踏んでしまい転びそうになった母を貴方は咄嗟に支えてくれました。」

「はは…そんなこともありましたかな。」

ハーディンは若い頃の昔話を面映ゆく感じ、軽く咳払いをすると本題に入った。

「今日、私が店を訪ねたのは作物の種や苗を買うためです。まずはこれを見て欲しい。」

ハーディンが懐からヨハンが廃屋で見つけた冊子を取り出しシーマに手渡した。

「これは…料理のレシピですか?」

「ええ。どうやら畑で収穫できるものを使った料理のメモらしい。これを基に種苗を見繕ってくれませぬか。」

「ええ、もちろん。ですが…なぜ宰相様がそのようなものをお求めなのですか?」

シーマは不思議そうに首を傾げた。

「実は…ノルダに奴隷市場から救い出した孤児たちが暮らしていくための農場を整備している最中なのです。作物を育てれば彼らは自分たちの食べるものを確保できるし余分は売ることもできると。」

「まあ!孤児たちのために?」

「そうです。…まあ、本来ならば公的機関がどうにかすべきなのですが、アカネイアの役人どもは動いてくれませぬ。それでもネーリング将軍のご尽力で種苗を買う資金は得られた。これで…買えるだけ買いたい。」

とハーディンは銀貨の詰まった小袋をシーマの前に置いた。

「これだけあれば季節の種が十分買えますわ。余った分で農具や肥料も買われますか?」

「おお。そうですな。」

小袋の中身を見たシーマが提案するとハーディンが頷いた。

「ではすぐにご用意を…」

とシーマが席を立って行こうとするが、ハーディンはそれを押し止める。

「いや、明日までに用意してもらえれば。明朝、ノルダに向かう時に寄ります。今受け取っても私一人で城まで持ち帰るのは無理ゆえ。」

「……えっ!?」

「?」

「てっきりお供の方たちを外で待たせているものだと…まさか、ハーディン様、お一人でいらしたのですか?」

「ええ、私一人です。」

平然と答えたハーディンにシーマが絶句する。アカネイアでは宰相よりずっと身分の低い役人でさえ供もつけずに一人で外出など聞いたこともなかった。

「も、もし、何かあったらどうするおつもりだったのですか?」

驚愕のあまり、シーマの声が震えてしまう。ハーディンが臨時の宰相としてパレスに来てからというもの、復興は順調に進み、人々の暮らしは格段に良くなっていった。曲がりなりにも“ニーナ王女が招聘した”宰相だからこそ、享楽に溺れて政治に無関心だった先王の佞臣たちも宰相のやり方に口出しできずにいることは容易に想像できた。そのハーディンが城に帰る途中で不運な事件・事故に巻き込まれでもしたら、またあの頃の腐敗政治に逆戻りしてしまうだろう。そんな事態を想像してシーマは血の気が引く思いだったのだが…ハーディンは笑って。

「護身用の剣くらい持っています。…それに。よしんば暗殺されるようなことがあるとしたら…それは我が不徳の致すところでしょう。」

と事もなげに答えた。

「………お城まで私がお送りします。」

シーマは暫く二の句が継げなかったが、漸くそう申し出た。が、今度はハーディンが驚く番だった。

「ご婦人に送らせるわけにはまいらぬ。」

「ですが…」

「必要ありません。…私はもうお暇します。それでは、明日。」

ハーディンはきっぱりと言って席を立ち、帰って行った。

 

 

「なぜ、我らに声を掛けて下さらなかったのです!?」

翌日、パレス雑貨店で種苗と農具、肥料を受け取りノルダへと向かう最中、昨日の単独での外出を知り、馬上でウルフがハーディンに声を荒げたのだが。

「ここ数日そなたたちはずっと働き詰めだったではないか。昨日は公休日。しっかり休むことも仕事のうちだぞ。」

「ですが…」

「無事だったのだからもうよいであろう。この話はもう終いだ。」

ハーディンは前方を見据え、もはや彼の方を見ようとはしなかったので狼騎士は嘆息して馬の歩を遅らせ、主君の横から後ろへと下がった。

途中で一行はギルドに立ち寄り、明るい顔で待っていた孤児たちを連れ、農場へと向かう。孤児たちにまずこれから彼らが住む家屋を見せると皆が顔を輝かせた。

「男の子と女の子、大体半々くらいでやすかね。そんならこの二つの大部屋を男女それぞれの部屋にしやしょう。」

「うむ。農場主の部屋は後からエレミヤというシスターが来るから、そのつもりで準備を頼む。」

「へぇ。わかりやした。」

ハーディンはヨハンと簡単な打ち合わせをした後、皆がそれぞれの仕事にとりかかった。

 

 

数日後。アカネイア辺境の山岳地帯にある修道院からエレミヤがカタリナとともにやってきた。

「ハーディン様。エレミヤ様をお連れしました。」

「おお。あなたが。お会いできて光栄です。シスター・エレミヤ。」

執務室を訪ねて来た二人を見て、ハーディンがデスクから立ち上がった。

「こちらこそ。お会いできて光栄ですわ。」

憂いを含んだ嫋やかなシスターはぎこちなく微笑みながら挨拶を返した。

「……既にアイネ…カタリナからお聞き及びでしょうが、私は大変な罪を犯してしまいました。」

応接用ソファにカタリナと共に座ると、ハーディンを前にエレミヤが伏し目がちに口を開いた。

「子供たちを…光のない地下に閉じ込め、暗殺者として洗脳してきました。」

「エレミヤ様。」

「エレミヤ殿。」

ハーディンが気遣うようにエレミヤの貌を覗き込む。

「あなたは元は優しい女性です。邪悪な怨念があなたに悪い夢を見せていただけなのです。あまりご自身を責められぬよう。」

「宰相様…」

「…楽なことではないでしょうが、生きて罪を償っていただきたい。そのために…ノルダで孤児たちの面倒を見てはいただけませんか?」

「孤児たちの…」

「ええ。明日そこへお連れします。」

ハーディンが微笑み、エレミヤと同じように許されてここにいるカタリナの頬に一筋の涙が伝った。

 

 

「わぁっ、ハーディン様!」

ハーディンが狼騎士四人(ビラクは命のオーブを無事にアリティアに届けて帰って来た)、そしてカタリナと共に久しぶりに農場を尋ねると孤児たちが口々に歓声を上げて駆け寄って来た。畑には様々な作物が実り、子供たちの笑顔も明るく、すべてが上手くいっているようだった。

「困っていることはないか?」

「いえ、何も。」

下馬したハーディンの問いに最も年長の少年がはっきりと答える。

「そうか。よかった。」

「シスターに知らせてきます。」

子供の一人が家屋へと駆け出した。

 

 

家屋の共同スペースで、農場経営が軌道に乗り、すべてが順調であるという近況を話す中。

「シーマという女性をご存知ですよね?」

エレミヤはふと思い出してハーディンに尋ねた。

「何でもハーディン様のお知り合いだと仰って、時折ここを訪れては寄付金や要りようなものを持って来て下さいます。」

「シーマ殿が?」

本来ならば政府がしなければならないことを(今は)民間人の彼女がしてくれていることに驚き、ハーディンが訊き返す。

「彼女はパレスの老舗雑貨店の娘ごです。以前こちらで使う作物の種などを買い求めたことがあります。」

シーマは出自を明かされるのを好まぬだろうと思い、ハーディンはそうとだけ言った。

「まあ。シーマ殿はお美しいだけでなく、気高く慈愛にも満ちていらっしゃる。きっと彼女の呼びかけだからこそ、あんなにも寄付が集まるのですね。」

純粋な感謝と敬愛に満ちた眼差しでエレミヤが話すのを見てハーディンの脳裏にもしグラ王国がシーマによって治められたら、という考えが過るが、それは儚い幻想だった。今はアカネイアの統治下にあるグラは当然の如くアカネイアの高官が赴任し治めていた。

「ええ。とても…素晴らしい女性です。私からも必ずお礼を言っておきます。」

ハーディンはエレミヤの言葉にただ微笑み、答えた。

 

 

シーマにお礼を言っておく、とエレミヤに言ったものの、アカネイアの復興が次の段階に進んで新たな計画や指示に追われ、毎日ノルダに通えていたのが今となっては信じられないほど多忙になり、ハーディンがあれ以来一度も店を訪ねられずにいる間、いつしか季節は移り聖夜祭の季節になっていた。

チラチラと舞う雪が薄く地面に積もる、聖夜祭が数日後に迫ったある日。公休日であるにも関わらず仕事をしていたハーディンはふとシーマに未だに農場への寄付の礼を言っていないことを思い出し、念のために執務室のデスクに『城下へ行く』とのメモを残すと自室に戻り、クローゼットの隅に隠すように掛けられていた市井の衣服を再び身に着け、通用門から城下町へと出た。今日が公休日であるためにハーディンが仕事をしていることを知らない狼騎士たちは護衛にもついておらず、一人で身軽に動けるのは幸いだった。

 

 

「ハーディン様!お久しぶりです!」

パレス雑貨店を訪ねるとシーマは変わらぬ笑顔で迎えた。

「お久しぶりです、シーマ殿。」

「今日は何をお求めですか?」

「いや、今日は買い物に来たのではないのです。貴女にお礼を言いたくて。」

「お礼?」

「エレミヤ殿から聞いたのだ。農場に寄付をしていると。」

「ああ…」

シーマは合点がいったように頷いた。

「私はお店に寄付を募る旨の貼り紙を貼って、集まったものを運んだだけですわ。」

「それでも。きっと貴女が呼びかけたからこそでしょう。」

「それを言うなら。貴方が市民の生活を豊かにした結果、人々は他人に施す余裕を持てたのです。」

「……」

「…ところで。せっかくいらしたのですから、少し寄っていかれませんか?」

まるで旧友に対するようなシーマの自然な申し出に、ハーディンの心が温かくなり、思わず微笑み頷いた。

 

 

「もうすぐ聖夜祭ですね。」

互いの近況を話した後、シーマが嬉しそうに言った。街はメインストリート中心に華やかな飾り付けがなされ、道行く人々もどことなくウキウキとした雰囲気を醸し出しているのを見て、否応なく聖夜祭が近いことを意識してはいたが――面と向かって話題に出されてより一層実感せざるを得なくなった。

「そうですな。」

当たり障りなくハーディンが答える。

「戦時中は途絶えていましたが…毎年、聖夜祭にはお城で盛大なパーティーが開かれていました。戦争に勝利した今年の聖夜祭はさぞかし盛大に祝われるのでしょうね。」

シーマが、それがいいことであると信じて疑わないような顔で話すと、ハーディンはそれが”苦笑”にならないように気をつけながら笑みを浮かべた。

「ええ。」

「ハーディン様とニーナ様の婚約発表も聖夜祭になされるご予定なのですか?」

「……」

とうとう、穏やかな笑みを浮かべていられなくなり、ハーディンは押し黙った。そんな彼の様子にシーマもハタとして眉を顰める。

「え…っと。まだご婚約まではお話が進んではいないのですか?」

「進むも何も…それ以前の段階にさえ。」

「……え?」

シーマが呆気に取られる。城下ではまことしやかに『ニーナ様がハーディン様を異国からわざわざ宰相として招いたのは自身のご夫君として相応しいか器量を見られるためだ。』と囁かれていた。そしてアカネイアの復興も着々と進み、その“器量”を判断するのに十分な実績をハーディンが示した今。てっきり聖夜祭恒例のパーティーで二人の婚約発表がなされるものと皆が思っていた。

「王女は私に話し掛けることも、お見かけすることさえ、ほとんどありません。」

自ら言うには辛過ぎる事実を淡々と、ハーディンは言った。数年前にオレルアン国境で亡命してきたニーナ王女を保護して以来ずっと、王女に想いを寄せてきた。戦後、宰相に招かれたとき――アカネイアの復興に尽くせばニーナ王女に認めてもらえると思わなかったと言えば嘘になる。だが王女はハーディンに無関心だった。どんな扱いを受けようと宗主国であるアカネイアとニーナ王女に対する忠誠心が揺らぐことなど考えられなかったが――あまりの報われなさにふとした瞬間、頽れてしまいそうな心地がするほど…苦しかった。それでも年若いシーマに自身の懊悩など悟られるわけにはいかないと何とか笑みを作る。

「民たちのために働くのは当然のことであって、王女の”見返り”を求めて復興に尽力してきたのではありません。」

パレスに来てからというもの、一日の終わりに、政務を終えて自室に戻ると毎日のように自身に言い聞かせてきた言葉だった。だがその言葉もどこか他人事のように、酷く虚しく響いた。

「ハーディン様。……そんな哀し気なお顔をなさらないで。」

ハーディンはシーマが痛まし気に自身を見つめているのに気づき、はっとする。

――しまった。私としたことが、感情が顔に出てしまっていたか。

「お見苦しいところを。私はもうお暇します。」

「待って下さい!」

慌てて席を立とうとするハーディンをシーマが咄嗟に引き留める。

「……その。差し出がましいとは承知しています。…ハーディン様は、聖夜祭のパーティーで誰か同伴する方はいるのですか?」

「同伴…」

問われて再びはっとする。皆がパートナーを連れて参加するだろうパーティーに、共に行く者が誰もいない。異邦人のハーディンにはここアカネイアに友さえいなかった。唯一”友”と呼べるネーリングは当然、妻と出席するだろう。騎士や軍師を連れて行けるような場でもない。

「……いや、誰も。」

「それなら、私をプラスワン(恋人や友達など同伴者)としてお連れ下さい。貴方は私たち民に多くのことをしてくれました。今こそ恩を返す時です。貴方を惨めな壁の花には決してさせません!」

「シーマ殿……」

真摯な彼女の優しさにハーディンは心打たれ――ありがたくその厚意を受けることにした。

 

 

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