Chancellor 作:ちま
その日いつものように執務室で仕事をしていたハーディンはドアをノックする音に顔を上げた。
「どうぞ。」
「失礼します。」
宮廷女官のリンダだった。
「リンダ殿。私に何かご用ですか?」
「用と言うほどのことではないのですが……昨日ノルダ農場へ寄付を届けた際、シスター・エレミヤから貴方宛ての手紙を預かってきました。」
「おお……わざわざありがとうございます。忙しくて最近は訪ねることができずにいましたが、子供たちは元気でしたか?」
リンダが執務机に近づき手紙を差し出すと、ハーディンは微笑みながらそれを受け取った。
「ええ。みんな明るく元気に過ごしていますわ。」
「そうですか、よかった。」
「では私はこれで。」
「……リンダ殿。」
ハーディンは少し考えて意を決したように、会釈し退室しようとしたリンダを呼び止めた。
「聡明なあなたを見込んで、少々ご相談に乗っていただきたいのですが……」
「まあ。もちろん何なりと。私でよければ喜んで。」
「ありがとう。ではこちらへ。」
とハーディンは執務机から立ち上がり、リンダを応接用ソファへと導いた。
「……相談というのは、学校の改革についてです。」
「学校の改革、ですか?」
ハーディンが早速切り出すと、リンダは意外な顔で訊き返した。
「はい。ノルダ農場での生活が落ち着いたら、子供たちを学校に通わせようと思っていたのですが調べたところ、アカネイアではある程度裕福な家庭の子でないと学校で学ぶのは難しいことがわかりました。」
「ええ……まあ、それは。教員の給与に施設・設備費など、色々と掛かりますから。幾ら国庫から資金が出ているとはいえ……」
と学費を払うのはごく当然のようにリンダが説明したのだが。
「オレルアンでは無償です。子供たちは特殊な事情のある子以外はほぼ皆が学校に通っています。」
「え……」
ハーディンの言葉に呆然となった。
「衣食住が満たされているのは最低限のことで、教育は生きていく上で必要不可欠です。復興が最終段階に入った今、私は是非ともこの教育の無償化をアカネイアでも実現したいと思っています。そのためにはニーナ様始め政府お歴々の方々を納得させなくてはなりませんが、何分私は異邦人の身の上。貴国の詳しい情報を集めようにも勝手がわかりません。故に貴女のお力をお貸しいただきたいのです。」
「え、ええ。私にできることなら。」
――そんなことが本当に可能なのだろうか?
昔からずっと変わらない、誰も疑問に思ったこともない、学校の在り方。戸惑いながらもリンダは宰相の提案にパッと目の前が明るくなったような期待感が込み上げる。ハーディンはリンダの応えに安堵して。
「それでは次の定例会議までに……」
と彼女に幾つか調べて欲しいことを話し始めた。
*
数日後。政策決定のための定例会議が開かれると、ハーディンはニーナ王女始めボア司祭や多くの政務官たちの前に立った。皆を見回し、落ち着き払って口を開く。
「本日は私からアカネイアの教育制度について述べさせていただきます。貴国の教育は富裕層や貴族たちのものであり、庶民には固く門戸が閉ざされているのが現状です。教育は国の礎、国家百年の大計です。故に私はこの国の民ならば誰でも教育が受けられるように国立学校を無償化することを提案します。」
ハーディンの言葉に会場がどよめく。驚きと戸惑いにより皆がざわめく中、最初に問い返したのはニーナ王女だった。
「無償化、ですか?」
「はい。」
「い、異議あり!」
その時、副宰相であるフォスター卿が手を挙げた。
「そのような案は到底受け入れられぬ。ただでさえ復興に莫大な予算を投じているというのに、学校の無償化に回す金など……」
「その点はご心配には及びません。着実に復興も進み税収も上がっております。そして紛失せずに残っていた学校と政府の戦前の収支報告書を数年分チェックし、それを元に試算したところ、十分に今の税収で賄えるという結論を得ました。」
それを閲覧できたのはリンダの功績で、ハーディンは心の中で彼女に感謝した。
「………ぐっ…」
ハーディンの言にフォスターが言葉に詰まり、醜く顔を歪めたかと思うと次の瞬間にはやけくそでいきり立ち、
「我が国は今までこの制度の下で栄えてきたのだ。変える必要などない!」
と叫んだ。が、ハーディンは動じずに。
「パレス陥落の史実をお忘れか?あのようなことが二度と起こらぬためにも教育により国力を底上げするのです。第一、我が祖国オレルアンでは既に実現しております。貴国にできぬはずがありません。」
「ぐぬぬ……」
「フォスター卿。」
ハーディンに論破されても尚、言い返そうとしていたフォスターだったが、その時ニーナ王女が口を開き、はっとして王女の方を見た。
「わたくしは良い案だと思います。ハーディン宰相が予算的に施行できる目処が立っていると言うなら、試す価値があるのでは?パレス陥落はわたくしたちの努力不足に依るもの。やはり我らは変わっていかねばならないと思います。」
「………」
「私も賛成です。」
「反対する理由はないですな。」
とネーリング将軍とボア司祭も同調する。そしてどこからともなく躊躇いがちに拍手が起こり、それはフォスター卿以外の皆に広がった。
*
件の定例会議から暫く経ったある日。学校無償化に向けて着々と準備を進めていたハーディンだったが突如、
「放せ!放せ、ったら!」
執務室の外から切羽詰まった女の悲鳴が聞こえ、ハーディンは何事かと執務机から顔を上げた。次いでドアを強くノックする音。入室を許可するとドアが開いて20代後半と思われるメイドの片腕を後ろに捻ったウルフが彼女を前へと歩かせながら、険しい顔で入って来たためハーディンは驚いて立ち上がった。
「ウルフ。一体どうしたのだ?」
「この女、俺を籠絡しようとしてきました。恐らくハーディン様のことを探ろうとしたのでしょう。それで急ぎご報告に上がった次第です。」
ウルフの報告にハーディンは改めて女を観察した。美人の部類に入るであろう顔立ちの綺麗な女性だったが、些か粗野な印象を受けた。
「そなた。彼の言うことは本当なのか?」
「…バレちまったら仕方ない。ああ、そうさ。雇い主にあんたのことを探るように言われて、あんたの騎士に接近した。……ってのに、まさかこんなカタブツだとは思わなかったよ。」
女はチッと舌打ちしてブツブツと話していたが、顔を上げハーディンを真っすぐに見ると一転、
「どうか見逃しておくれよ?あたいが捕まったら子供が飢えちまう。なあ、頼むよ。この通り。」
悲愴な顔で懇願し始めた。
「そなた、名は?」
「……スーザン。」
「ではスーザン。そなたを雇ったのは誰だ?」
「副宰相のフォスター卿さ。」
見逃してもらうためにすべて包み隠さず話すことにしたらしい。
「フォスター卿が……私を陥れようとする理由はわかるか?」
「はん!そんなの決まってるじゃないか。あんたが邪魔なのさ。暗黒戦争の英雄の一人でニーナ王女の信頼も篤い……そんなあんたがお貴族様たちの特権を脅かそうとしているもんだから、宰相の地位から引きずり降ろそうと必死なのさ。」
「特権……とは?」
「ちょっと考えればわかりそうなモンだろ?金がないと学校には入れない、そして学校を出ないと然るべき地位や役職に就けない。それでずっとお貴族様たちは子々孫々に至るまで安泰だった。更に言えば、学生の成績や推薦書も学校への“寄付”と言う名の教師への”付け届け”で便宜を図ってもらっていた。それが根底から崩れちまう、って話だよ。」
「………」
「さあ、吐いたんだからあたいを解放しておくれよ。」
スーザンが再び訴える。ハーディンはウルフに頷いて見せ、ウルフは彼女を捕らえていた腕を放した。
「……スーザン。」
話しは終わったとばかりに部屋を去ろうとしていたスーザンをハーディンは呼び止めた。スーザンが怪訝な顔で振り向く。
「そなたはフォスター卿の依頼を果たすことができなかった。ひどい目に遭うのではないか?」
「おや。自身を陥れようとした相手にお優しいことだね。けれど大丈夫さ。あたいはノルダからパレスに出稼ぎに来ていただけで、報酬ももらってないし、このままズラかることにするよ。」
「そうか。もしそなたが困窮しているなら……定期的にパレスとノルダで炊き出しをしているから来るといい。そこでは生活に関する相談も受け付けている。」
「本当かい?」
「ああ。そして学校の無償化が実現した暁にはそなたの子も、学びたいなら通わせるといい。」
「………ああ。あたいは何て愚かなんだ。僅かばかりの金欲しさに貴方のような方を陥れようとした……」
ハーディンの言葉に呆気に取られたスーザンだったが、我に返ると打ちひしがれて頭を垂れた。
「もう、よいのだ。お子ともども、息災でな。」
ハーディンはスーザンに別れを告げ、彼女は静かに去っていった。
「ハーディン様。フォスター卿に対して何か手を打たれますか?」
スーザンが去るとウルフが尋ねたが、ハーディンは首を横に振った。
「いや。放っておけ。」
「御意。」
「……だが。」
ハーディンは少し思案し、顔を上げた。
「スーザンが消息を絶てばフォスター卿が再び裏で動くやもしれぬ。そなたたちもくれぐれも気を付けてくれ。」
「は。」
「…すまぬ。」
「は?」
「そなたを政争に巻き込んでしまった。」
「いえ、俺は……」
「どうやら潮時のようだ。味方のほとんどいない、敵だらけの他国にいつまでも居続けることはできぬ。復興の目処が立ったら……国に帰ろう。」
どこか諦めたような口調で、ハーディンがウルフに語る。
「ハーディン様……」
主君のニーナ王女に対する恋情は知っていた。戦争に依る被害が大きかったアカネイアの民たちを心配していた矢先、ハーディンは図らずも宰相として招かれて復興に携われることとなった。そして皆が――ハーディン自身も――復興を成し遂げることでニーナ王女が自身の夫君に相応しいと判断するのだと期待していたが、それが儚い夢だと王女を知る者はとうに理解していた。
「……春だ。そう、春になったら――…」
ハーディンが遠くを見るような目で、呟く。まるで何も映していないかのように見える主君の双眸を、ウルフは痛みを持って見守った。
*
ニーナ王女がその場に居合わせたのは、ほんの偶然だった。その日は探し物のため宮廷女官のリンダとともに宮殿の外庭を祖母の住んでいた離宮へ向かっていたのだが。
「くそっ、ハーディンめ!奴隷市場を解体しただけでなく、まさかこんなに早く教育改革を実現するとは……」
王女は声が聞こえてきた窓に危うく差し掛かろうとするところで辛うじて歩みを止めた。怒り声が続ける。
「フン!暗黒戦争の英雄だか何だか知らぬが、いい気になりおって。本来なら戦後、儂が宰相の地位に就くはずだったに、ボアが王女に余計な進言をしたせいで……ええい!お前たちもお前たちだ、何故あの時ハーディンの案に賛同したのだ!」
ドン、と机を叩く大きな音がした。
「フォ、フォスター卿。ですが会議の場で誰も、宰相殿の案に反論できるだけの持論を展開できる者はおりませんでした。何より、ニーナ様も賛同されていましたので……」
「むむ…スーザンも奴の弱みを探る前に姿を消してしまいよるし……」
気の弱そうな声が答えた後、忌々し気な声がブツブツと言った。そして暫し重苦しい沈黙が続いた後。
「……卿、ハーディンは所詮、異邦人です。当初はニーナ様の婿に相応しいか器量を測るために招いたと思われていましたが、王女にその気はなさそうです。いずれ自国に帰るはず。それまでのご辛抱です。」
「そうだな。奴さえいなくなればあとは如何様ともできる。幸いニーナ様は政治には無関心。奴が去った後は学校制度も元に戻し、奴隷商人たちにも恩赦を与え、奴隷市場も復活させてやる。さすれば出来の悪い儂の息子の将来も安泰、商人たちからは見過ごし料と言う名の献金がまた懐に入るわい。」
そんな会話が聞こえ、フォスターの醜悪な高笑いが響いた。
「「………」」
その場で立ち尽くし、ニーナとリンダは言葉を失っていた。そして漸く我に返るとニーナは青褪めた顔でリンダを振り返り、頷いて見せると城へと引き返した。
*
寒い冬が過ぎて何時しか暖かい春になっていた。その頃にはアカネイアの復興も終局に近づき、王国は以前と変わらぬ繁栄を取り戻しつつあった。ハーディン宰相からニーナ王女へ拝謁の要望があったのはそんなある日のことだった。
快晴である今日は謁見の間に明るい光が差し込み、ニーナの前に跪くハーディンの白い衣装を眩しく輝かせていた。
「どうかしましたか?ハーディン殿。」
玉座からニーナが問うと、ハーディンは顔を上げた。
「拝謁賜わり恐悦至極でございます。お話とは、私の帰国についてです。祖国を長らく留守にしている身故、アカネイアの復興がほぼ為った今、宰相の職を辞してオレルアンに帰ろうと思うのですが、お許しいただけますか?」
「………」
ニーナが戸惑いから暫しの間沈黙する。ハーディンを宰相としてアカネイアに招いた当初は確かにごく短い期間を想定していたが、彼が復興を着実に推し進め、国をより良く運営しているのを見るにつけ、何時しか彼がこのままずっと宰相を続けてくれるような気になっていた。
「……まだ完全に復興したわけではありません。」
やっと、そう答えた。とりあえず少しでもハーディンの滞在を引き延ばし、後から引き留める理由を見つけるつもりだったのだが。
「復興は計画通りに進んでおり、後のことは信頼できる官僚に指示してあります。私がすべきことはもうありません。」
「………」
理路整然と返されてまたしてもニーナは沈黙してしまう。
――ハーディンがいなくなれば学校も奴隷市場も元に戻ってしまう。
ニーナは以前に偶然耳にしたフォスター卿の言葉を思い出していた。
――そうなれば…ノルダ農場の子供たちのように幸せに笑うことのできない子がまた現れることになるわ。
「……ずっと宰相を続けてはくれませんか?」
それ故にごく自然にニーナの口からその願いが零れた。だが。
「続ける理由がありません。戦争により被害を受けた国を助けるのは人道的に当然の事ですが復興の目処が立った今、異邦人の私が貴国に宰相として居続けるのは不自然です。」
ハーディンは哀しみと苦しみが綯い交ぜになったような顔で答え、ニーナが三度沈黙する。言うべき言葉が見つからない。ニーナが言いあぐねている間にもハーディンは立ち上がって深く礼をし、
「……では、私はこれで。」
簡潔な辞去の挨拶を述べると背を向け立ち去ろうとした、その時。ニーナはオレルアン亡命の時に必死に呼びかけたが決して止まることのなかった男の背と彼の後ろ姿が重なって見えた。瞬間、ニーナの魂が激しく警鐘を鳴らす。
――このままハーディンを行かせてしまっていいの?
「待って。」
思わず呼び止めるとハーディンは立ち止まり、振り返った。亡命の時と違い、今は呼び止めることができたことにニーナは内心ひどく安堵する。もっとも宗主国の王女の言葉は命令に等しく、ハーディンがその場に止まったのは当然のことだったのだが。そして咄嗟に呼び止めたものの、言うべきことが用意できたわけではなかった。
――どうにかして引き留めたいけれど、何を言えばいいの?
こちらを真っすぐに見つめる、荘厳な白い光の中に佇むハーディンを無言で見返す。そしてふいに。
『ハーディンは所詮、異邦人です。ニーナ様の婿に相応しいか器量を測るために招いたと思われていましたが、王女にその気はなさそうです。いずれ自国に帰るはず。』
いつかのフォスター卿への文官の言葉を思い出した。
――そう。そうだわ。これしかないの。ハーディンを引き留めるにはこれしか。
ニーナは自分が王女で、今まさに国と民のために決断しなければいけないことを痛いほど意識した。
――そのために伝えなくては。想いは口にすることで初めて翼を持つもの。
そう自身に言い聞かせ、ニーナはゆっくりと口を開く。
「……ハーディン。わたくしの思いを伝えておきたいのです。数年前にオレルアンの国境であなたに助けてもらってから今日までずっとあなたはわたくしを助けてくれました。あなたの存在がどれだけわたくしを支えてくれたことかしれません。だから、これからもずっとわたくしの傍で支えてほしいのです。」
「……それは、つまり…?」
ハーディンが当惑して王女の真意を問うと、ニーナは再び口を開いた。
「わたくしの夫として。」
――これでいいの。ハーディンがずっとアカネイアにいてくれれば、国と民たちの幸せを守ることができるのよ。
ニーナは王女として国のために大きな決断をしたことに誇らしい気持ちになったが。ハーディンは苦悩に満ちた顔でかぶりを振った。
「それは……できません。」
「……え?」
「……貴女の心に私ではない誰かが居るのに伴侶となることはできません。それはとても……辛いことです。」
「………」
――彼はカミュのことを言っているのだろうか?
ニーナはハーディンがカミュへの想いを知っていたことを不思議に思った。
――あの時…グルニアの戦いにおいて、マルス王子にしか話してはいないのに。
だがすぐに、聖夜祭で倒れて目覚めたときにカミュの名を呼んでしまったことを思い出し、冷水を浴びせられたような心地になった。あの場にいたハーディンは当然それを聞いただろう。
――……ああ。わたくしは何故いつまでも…
急にニーナは過去に囚われ続けている自分自身が酷く不甲斐なく思えた。
――民たちも子供たちも辛い過去を乗り越えて前を向き、眩しく生きているのに。
ニーナはカミュと過ごしたパレスでの二年間に今一度思いを馳せた。互いの姿を目にする度、視線を合わせる度に、想い合っていることを確信できたものの、それは常に罪悪感を伴っており、許されず、希望もない、”国”というしがらみに捕らわれた関係だった。――そんな中で。幾度となくした”駆け落ち”という名の妄想。何もかも捨てて見知らぬ土地に行き二人で暮らす。かつて思春期の少女のような憧憬をもって夢見たこと。だがそれも、聖夜祭の時の民たちの歓喜の顔、子供たちの笑顔の眩しさの前に、今や朝起きたらほとんど覚えていない夢のように色褪せぼやけていくのを自覚した。
そして……ニーナは改めて光差す謁見の間において自身の視線の先にじっと佇むハーディンを見た。出会ってから今日まで、常にニーナとアカネイアのために尽くしてくれた。その事実が奔流となってニーナの魂を衝き動かし……王女は玉座からすっくと立ち上がり、階段を駆け下りてハーディンの真ん前に立った。王女の予想外の行動にハーディンだけでなくその場にいた衛兵や側近皆が驚く。
「ニ、ニーナ、様…?」
「私はあなたと!残りの人生を、生きて行きたいのです。陽の当たる場所で、祝福されて、喜びと希望に満ちて、この国の民たちと共に!」
呆気に取られるハーディンにニーナは夢中で叫んでいた。ニーナの涙を湛えた蒼瞳がハーディンを見上げ――そして彼の目にも涙が滲んだ。
「ニーナ、様……はい。もちろん、喜んで……」
その瞬間、謁見の間にどっと歓声が上がり、ニーナ王女ご婚約の報せはすぐに城中、城下、周辺の街や村へと広がり――国中が歓喜に包まれたのだった。
最後までお読みいただき、ブクマ・評価も、ありがとうございました!(^▽^)