探偵フブキ   作:サワベ

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全力土下座します。投稿さぼってて本当に申し訳ございません。
これからもこんな調子かも知れませんが、よければどうぞよろしくお願いします。
あと私事ですが、デカグラマトンは全力でしばきます。みんなも神をボコボコにしよう!

今回リハビリがてらのサブ回です。




ゆるりと探偵フブキ お引っ越し推奨

 

 

シャーレの当番に当たった日のことだった。

何時も通りエレベーターでオフィスがある階に上がった。

エレベーターホールから図書室や視聴覚室を横目に廊下を進んでいくと、見慣れたガラス張りの扉が現れる。見たところ、先生は不在のようだった。

 

「…しばらく待ちかな」

 

そんなことをぼやきながら、生徒用の椅子に腰かける。机の上に目をやると、様々な色の付箋で貼り付けられた書き置きの中に、先生のメモ書きが残されていた。

 

"ラミニでトラブル 救援要請により出動。戻るまでゆっくりしててね。急用の場合は連絡先―――"

 

相変わらず律儀なことだ。緊急時にもこういうことをちゃんとやってくれる。

というか、ラミニタウンでトラブルがあったのにもかかわらず、私たちヴァルキューレにお鉢が回ってこなかったのが不思議だ。

 

「…ほんとは二人で、って思ってたんだけど…居ないなら、仕方ないよねぇ」

 

手土産として持ってきたマスタードーナツ。休憩時に食べようと思っていたが、こうなっては独り占めするほかない。ドーナツは足が速いのだ。(合歓垣調べ)

包みを開く前に、コーヒーでも淹れようと立ち上がる。シャーレには生徒も自由に使っても良い、インスタント飲料の類が常備されている。ありがたいものだ。

 

「えーっと、コーヒー、コーヒー…ラテとかもあるじゃーん。どれに…」

 

「……どれに………」

 

「……」

 

 

 

「おかしいな」

 

何か、違和感を感じた。

この階、オフィス全体が誰かに視られているような、そんな感覚。今まで不本意ながらに難事件を押し付けられてきたことで育った直感が、違和感をキャッチしている。

 

「…気持ち悪……誰かいるの..?」

 

呼び掛ける。返ってくるのは静寂だけ。

想定どおりと言って良い結果だった。実際、この空間に人の気配はしない。

 

「…じゃあ、外か」

 

シャーレオフィスは東側が大きな窓になっている。そこからなら視線が通るはず。

しかし、それは常識的に考えてあり得ない。

シャーレビルはこの区画では一番の高層建築物。オフィスはその高層階に位置していて、匹敵する建築物は無い。それこそ、空でも飛んでないと覗き込むことはできない。

窓際に立ってみた。飛んでいる人影は無い。海岸線の方角、D.U新第三空港から飛び立った旅客機が見えただけだった。

 

「…無理だよね。覗けるわけがない」

 

遠くのビルの屋上などであれば視線は通るだろうが、肉眼で中を視認できる距離じゃない。それこそ、何か望遠鏡のようなものでもなければ―――

そう思った刹那、目に一瞬だけ光が飛び込んだ。船乗りが使うような光信号のように、ほんの一瞬、遠くのビルの屋上が光った。

私は、キヴォトスに住む人々はその光を知っている。それは、スコープの反射光。

 

「……っ! やられ……!」

 

…るわけない。思わず窓から離れたが、このガラス、さすがに防弾性のものである。爆発には弱いらしいが、大口径対物ライフルをも弾くというお墨付きらしい。

だがこれは由々しき事態だ。もしあの場所に展開しているのがスナイパーなら、先生は命の危険に曝され続けていることになる。

 

「…通報が安牌かな…あ、対応するの私たちだった……」

 

どうにかしたい、が、今ここにはスナイパーライフルも、腕利きの射手も居ない。ただのお巡りさん一名以上終わりである。

 

「効果あるかわかんないけど…こういうときはハッタリに限る、かな」

 

もう一度、窓際に立つ。そして、精一杯怖い顔を作って、指鉄砲を光に向かって構える。

 

<<I see you.(私はお前を見ているぞ)>>

 

「ばーん、なんて」

 

少しは効果があれば良いのだが。

あとでカンナ局長に相談しよう、いや連邦生徒会管轄かな、なんて考えながら、もう一度デスクに戻って椅子に腰かける。

 

「…コーヒー淹れたいの忘れてた」

 

そうだ。私は元々、コーヒーを淹れたかったのだ。違和感から陰謀論じみた探偵ごっこやりに来たわけじゃない。

ふらりと立ち上がって、準備しかけのマグカップの元へ向かう。結局、飲み物はコーヒーにした。らしくなく頭を使ったので、直にカフェインをぶち込みたかったからだ。

 

「…あれ、コーヒーマシン、新しくなってる」

 

コーヒーを作ろうとした時、コーヒーマシンが新しくなっていることに気がついた。以前来たときは、もう少し古いモデルを使っていたはずだ。刻印されたロゴを見る限り、これはミレニアム製のようだった。

 

「えーと、これをこうして…こうか」

 

覚束ないながらに操作すると、問題なくマシンは動いた。前のよりも静かな駆動音で、こぽこぽとコーヒーがマグカップに注がれる。特有の香ばしい匂いが鼻腔をくすぐる。

 

「よぉし、ドーナツたーべよー!」

 

頭の中を切り替えるために、わざとらしくそう言ったときだった。またしても、違和感に気付いてしまった。

―――このコーヒーマシン、些か無駄が多すぎないか。

ミレニアムの発明品には、稀に合理性を欠いたものがあるのは知っている。だが、これはそういう類じゃなく―――

 

「――説明できないけど、なんか、気持ち悪いんだよね」

 

ただただ、誰かが聞き耳を立てているような、そんな気味の悪さを感じた。

マシンの裏側、おそらく基盤類が詰まっているであろう場所。コンセントを抜いたあと、そこをこじ開けてみた。

機械類に詳しいわけではなかった。だが、ミレニアムで解決した事件で機械を弄ったこと、それに加え、公安局の手伝いをした際によく"それ"を見ていたことが決定打だった。

 

「…うわ」

 

明らかに異質なもの。

基盤のようなもの。

所謂―――

 

「――盗聴機だ……」

 

なぜこういう時、私の直感は当たってしまうのか。こういうことで当たってしまうから、やりたくもない難事件の捜査を任されるのではないか。

 

「…ミレニアムの製品の中に、ってことは、十中八九やったのはミレニアムの…」

 

エンジニア部のウタハさんだろうか。ヒマリさんだろうか。もしくは交遊関係のない一般生徒か。

 

「…まさか、他にもあるってことは……」

 

嫌な予感がして、デスクに戻る。何を聞きたかったかにもよるが、ひとつだけということはないはずだ。

机の上のものを漁る。あるのはパソコン、書類、ファイル、置時計、差し入れであろうぬいぐるみ等々。

試しに置時計を分解した。やっぱり出てきた。

 

「…誰が何のために、こんなこと」

 

続いて、ぬいぐるみのファスナーを開いてみた。

 

「…うわ、うわあっ、うわああっ!ああ熱っつ!!」

 

驚きのあまり、熱々のコーヒーを思い切り右手にこぼしてしまった。

仕方がないだろう。だって、大量の盗聴機がぬいぐるみから出てきたのだ。驚くなと言うほうが無理がある。

 

「熱っ、ああっつ、あつっ!」

「呼びましたか!?」

「わあああああ!?!?」

 

後ろからかけられた声に驚き、愛銃を抱えて飛び退き、それに向かって銃口を向けた。

桃色の髪、白とピンクを基調とした看護服の少女が、そこにはいた。

いつからいた。どこにいた。今まで人の気配なんてしなかったし、ドアが開いた音も、廊下を歩く音さえ聞こえなかった。ならば、この人はどこからどうやって入った。

 

「…あれ、先生…ではなかったんですね。私てっきり――って、火傷してるじゃないですか!?」

「近づかないで!!」

「えっ!?」

 

怒号とも、悲鳴ともとれるような叫びが、私の口を衝く。

色んなことが起こりすぎている。頭の整理が追い付いていない。私は半分パニック状態だった。

 

「お、落ち着いてください!とにかく火傷を――」

「動かないで! 武装を解除して、所属、部活、学年と氏名を言って!!」

「あの、本当に怪しい者ではなくて――」

「武装解除! 両手を見えるように上げてよ!! お願いだから!!!」

 

"…二人とも、とりあえず落ち着こうか。ね?"

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

嵐が去った後。私は先生と2人、シャーレオフィスに居た。

 

「…いつものこと?」

"うん。どこからともなく来るんだよね"

 

先生は、自分でも不思議だというような様子でそう言った。彼が知らないのなら、誰が知っているというのだろうか。

 

「じゃあ、あの盗聴機は…?」

"…いつものことだよ"

「窓からの視線は…?」

"……いつものことだよ"

 

そういうと、先生は少し頭を抱えるような仕草を見せた。本人も、この現状には些か不満があるようだった。

 

「…あのさ、無理を承知で言うね」

"…どうぞ"

 

「連邦生徒会に頼んでさ、お引っ越ししなよ」

 

先生の苦悩は続いていく。

ちなみにこれは余談だが、後日レッドウインターのある生徒と、ミレニアムのある生徒から、私に関する問い合わせの電話がかかってきたそうだ。

…彼に心休まる日はあるのだろうか。

 

 






身勝手ではありますが、また次回の投稿予定作を変更します。

次回「復讐と矜持」
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