Re Take of Evangelion 作:Air1204
初号機がここから全く新たな姿へと変貌を遂げます。
これからの物語どうなっていくのか…。
「状況は!」
青葉さんの怒号が発令所に響き渡る。
「松代の実験場は3号機臨時ケージが爆心地と思われる大爆発に巻き込まれ死者及び行方不明者多数!零号機パイロットは救出済みです!葛城さんと赤木博士は不明! 」
「…。零号機の状況は!」
「松代にて爆発の寸前にATフィールドを展開。被害を最小限に抑えることには成功した模様!ですが…。松代よりこちらを目指し移動している目標物によって大破。予備も動かない模様。」
「ちっ…。おい碇。こんなこと我々のシナリオには無かったぞ。」
「…わかっている。目標物は」
「現在東御付近を移動中!モニター出せます!」
おぉと驚嘆の声が上がる。夕日に照らされ怪しく揺らめく3号機。目は血走り顎部は呼吸に合わせるように動いている。
「停止信号を発信!エントリープラグを強制射出!」
「ダメです!停止信号及びエントリープラグ強制排出コード認識しません!」
「エントリープラグ付近にコアらしき侵食部位を確認。」
「解析パターン出ました。」
日向さんが暗い声で呟くように告げる。
「青です。」
時は遡りリツコの研究室。アスカが飛び込んできた所に遡る。
「ねぇ。アスカ…?頼みって…。」
「私の権限、及び赤木リツコ博士、葛城ミサト三佐の権限で…3号機の起動実験を明日強行する。」
「「はい!?」」
「ダメと言われても聞かないわ。これは絶対。ダメというのであればアタシはエヴァで地下のリリスに接触する。」
ある意味脅迫とも取れるこの言葉。だがその決意は固くその眼差しはまっすぐむけられている。
「並々ならぬ理由があるみたいね…。そんなにシンちゃんがあれに乗るのが嫌なの?」
「そうよ。アレに乗るのはシンジじゃない。誰にも乗らせたくないの。」
「…理由は?」
「言えないわ。これだけは伝えられない。でも、アタシを信じて欲しい。何があってもシンジがアレに乗るのは絶対にダメ。」
「いくらアスカや私達の権限を使ってもそれは覆らないわ。大人しくあと3日待つしかないわ。」
「ダメ!絶対に嫌!それなら今から3号機を壊しに行くわ!」
「何言ってるのよ!アスカ!待ちなさい!」
「ダメと言われても止まる訳にはいかないのよ!」
今すぐにでも駆け出しそうなアスカの腕を掴み必死に止めるミサト。
「何がそこまで貴方を駆り立てるのよ!なんで説明出来ないのよ!」
「誰も信じてくれないからよ!」
アスカのここまでの拒絶はあの日ここに来た時以来のものだった。シンジと一緒に居て幾らか落ち着きを取り戻してきていたアスカだったが、ここまで半狂乱になるのにはやはり3号機の中の使徒の存在が大きい。それに加え、シンジがリリンでは無いと知ってしまった以上余計に乗せる訳にはいかない。
第三者だとして、そのシンジとあの使徒が物理的融合を果たしてしまえばサードインパクトが始まってしまってもおかしくは無いのだ。
「アスカ!」
「嫌よ!」
「2人とも落ち着いてくれ…。」
3人はアスカの暴動に手一杯で入室してきていた加持に気付いていなかった。
「話は聞いたよ…。な、レイちゃん。」
すっと後ろから現れたレイ。その表情は暗く曇っている。
「2人とも、落ち着いて。もし、真希波さんが言っていた話が本当なら…。碇くんもアスカも乗らせる訳にはいかないもの…。」
「っ!?あの女に何聞いたってのよ!」
「3号機使徒なんでしょう?」
ミサトとリツコがたじろぐ、それもそうだ。主戦力として迎え入れようとしていたハズのエヴァが使徒であると突き付けられてしまったのだから。
「!…えぇ、そうよ。3号機には使徒がいる。」
「アスカ!?」
「この際ぜーんぶ話してやるわよ…。アタシやシンジの事。マリや碇司令の事も。」
そうして開かれたアスカの口から衝撃の話が飛び出し始める。断片的に未来から来ているとだけ聞かされていたミサトとレイはその受け入れ難い話に頭を抱える。
「シンちゃんとアスカが…同じところから来ているって話は…聞いていたわ…でもそんな世界…あんまりよ…。」
「使い潰されたのはアタシだけじゃない。あのシンジもそうなの。今でこそあれだけ気丈に振舞っているわ、でもあの時のシンジは普通じゃなかったのよ…。四肢を切り落とされて男どもの慰みものになるしか無かった私を嬲って愉むくらいにはね…。」
「…3号機に乗っていた鈴原くんは…どうなったの?」
「片足すっ飛んであとは…NERVに消されたわよ。事故、としてね…。それを突きつけられたヒカリは…シンジを殺そうとした。でもそれは叶わなかったのよ。保安部がシンジを守ったからね…。その時のヒカリの顔、忘れはしないわよ。」
「「…。」」
「そんな悲劇繰り返させない。シンジがその役割を担うことも許さない。ならアタシが乗る。」
「そうもいかないんだよアスカ。」
「なんで?加持さん。」
ずいっと近寄り胸倉を掴みかかるアスカ。
「シンジが言っているからとか言ったらこのまま壁まで投げ飛ばすわよ。」
惣流・アスカ・ラングレーであった頃からは考えられない言動。その言葉は深く加持に突き刺さる。
「…マリと碇司令が通ってきた世界では…君が3号機に乗るんだよ。」
「…。」
「それだけじゃない。君は使徒に侵され第9の使徒となる。その上碇司令が引き起こしたファイナルインパクト。それの最後の贄として君が使い潰されるんだよ。」
「っ…。それを知ってたから…。シンジが乗るって…?」
「あぁ…君が犠牲になるよりは良い。ってさ」
「どう転んでも地獄じゃないのよ!そんなの!」
その悲痛にもよく似た叫びはミサトやレイにも突き刺さる。声を殺し泣いているミサトはどうしたらいいのかも分かっていない。
「それでも…どうしてもアスカが乗るというのなら俺に手がある。」
「え?」
「元は反SEELE、もしNERVが敵になるならと作った組織だ。名はWILLE。蒼きこの星を取り戻すための組織さ。」
「ねぇ…加持それって…!」
「目的は同じでもNERVに反旗を翻すって事さ…。表向きはSEELEの犬であるNERVにはできない芸当をやってのけることくらい出来るさ。その活動の黙認は司令に許可は取ってある。」
「名目は我々WILLEの戦力増強を目的とした3号機の奪取。もちろん司令には黙ったままだがね。」
「そこまでしてでも彼を守るかい?式波・アスカ・ラングレー大佐?」
「やるわ。それでシンジが幸せになれるなら。」
「アスカ!?」
「もちろんタダで食われる訳にはいかないわよ。この身はシンジの物。それを一時でも犯すってんならそれなりのリスクは背負ってもらうわよ。」
ニヤリと不敵に笑うアスカ。どうやらその決意は固そうだ。
「あーあ…。ここまで聞いちゃったのに断ること…出来ないわよ。わかったわ。アスカやシンちゃんの幸せのため。彼の保護の為だものね。」
「だからって…!ミサト!」
「レイは?リツコは反対みたいだけど?」
「私は…。碇くんや皆の笑顔を守りたい。それはお母さんの笑顔も。」
「レイ…。」
「力を貸してお母さん。」
「…分かったわ。仕方ない。私の方でやれることはやる。加持君もアスカやミサト達の動向の操作頼むわよ。」
くしゃくしゃと頭を掻き、やれやれと言った表情を浮かべたリツコ。だがその表情は穏やかであり子を思う母の顔。というのが1番わかりやすいのかもしれない。
「決まりだな。レイちゃんは被害を最小限に食い止めるために起動を確認したら即座にATフィールドを展開。葛城やリッちゃんには悪いが…2人には前線に立っていて貰いたい。怪我させてしまうが、そうでもしないとこの作戦、不自然なものになってしまうからな。」
「わかったわ。アンタの案だから乗りたくはないけれどシンちゃんの為だもの。」
「すまない…。」
こうして作戦は明日、強行されることとなった。この事はマリにも伝えられ真実はシンジに伏せられることとなった。
「父さん!」
「…。4号機と8号機を出せ。」
「なんでだよ!アスカが乗ってるんだぞ!?緊急事態だろ!?」
「…だからといってお前や初号機があの使徒に侵食されるのは得策では無い。」
「そんなっ…。作戦課長である僕の意見はどうなるんだよ!」
「冬月…。後を頼む。」
「また逃げるのかよ!卑怯者!」
そそくさと司令室に戻る父さん。この状態じゃゲージに走ったところで初号機に乗れる保証は無い。遠隔で呼び出そうにも何故かピクリとも動かない。どうして…。
「父さんも…母さんも…なんで僕の気持ちを理解してくれないんだよ!」
僕はその場で地団駄を踏むことしか出来なかった。
「マリ、鈴原くん。指揮は私が代わりに執り行う事になった。」
「「はい。」」
「初号機は凍結、零号機は大破しパイロットも重体だ。頼れるものは君たちしか居ないのだよ。」
「…でもアレには式波が乗ってるんとちゃいますか?」
「…すまないね。それでもあれが使徒だ…君達には殲滅してもらう他ない。」
「…気後れするけどやるしかないんでしょ。先生。」
「マリ君…すまないね。」
「せやかて!式波はどないなるんですか!?どうにか助けんといかんとちゃいますか!?」
「あれだけ強大な使徒だ。殲滅しながら救出しろなどと大層なことは命令できないのだよ…。」
「んなけったいな!シンジは!?シンジの気持ちはどないなるんや!」
「…トウジ…。」
「シンジ!?シンジか!?なんとか言ってやってくれへんか!?作戦課長やろ!?」
「…殲滅。」
「あぁ!?シンジ!?」
「…現時点をもってエヴァンゲリオン3号機は廃棄…。目標を使徒として殲滅…。」
「馬鹿野郎!」
「トウジ!これ以上は命令違反になる…。口を慎んでくれ…。」
そう言い残し4号機との通信を切る。
震えが止まらない。涙が止まらない。どうすることも出来ない。ひ弱な僕に戻ってしまった…。
膝から崩れ落ち地面を何度も何度も殴りつける。拳に血が滲んでいようが構わない。
「シンジくん!それ以上は…!」
マヤさんに腕を掴まれ力なく項垂れる。
僕はただモニターを見つめることしか出来なかった。
「8号機頚椎を侵食!このままではパイロットの生命維持に支障をきたします!」
「いかん!神経接続を28パーセントにカットだ。」
「ぐぅぅぅ…やっぱり思うように止めるのは出来ないぃ!」
8号機がその腕を引き剥がそうともがくがその手は離れることは無い。
「マリ!くっそ!式波ぃ!起きんかい!何しとんじゃお前は!」
4号機も腕を引き剥がしにかかる。徐々にその腕は頚椎を離れ始めるが、肩からさらに2本の腕が生え4号機の頚椎も締め上げ始める。
「マリさん…トウジ!」
ただモニターを見ることしか出来ない僕は2人が締めあげれる様を眺めることしか出来ない。何よりも初号機に合わせ強大になっている使徒の力は想像以上だった。
最新型の更に自己進化をしている8号機と4号機の2機を相手に善戦どころか圧倒さえしているのだから…。
「あああぁぁぁ!母さん!なんで!なんでなんだよ!動けよ!動いてよ!そうじゃないとみんな死ぬんだ!アスカも!マリさんも!トウジも!皆死んじゃうんだ!そんなのは嫌だ!動いてよ!」
発令所に響き渡る僕の叫び声。心から魂から絞り出すその声。でもそれは初号機に。母さんに届かない…。
「なんで…。なんでなんだよ!僕が、僕が守るって決めたんだろ!だったら手伝えよ!みんなを助けるのに僕に力を貸してよ!母さんッ!」
ドクンっと何かが跳ねる音が聞こえた気がする。はっと顔を上げる。
「第7ゲージにて高エネルギー反応!」
「初号機からです!鼓動が!強くなっていきます!」
「ソレノイドグラフ反転!?何が起きてるって言うの!?」
「碇…。ユイくんは自身の決意を固めたようだぞ…。」
冬月が独り呟く。
「第6の使徒の時よりも強大な…。アンチATフィールドが第7ゲージを包み込んでいきます!」
「よもや息子1人の願いの為にその身を神と同じく…。願望機になる…というのか…。」
額には大量の汗をかく冬月副司令、ドクンドクンと鼓動を刻む初号機を凝視している。
「第三の少年。今なら初号機の元へ苦もなく辿り着けるであろう…。行くといい…。君の母、碇ユイ君は君の為にその身を捧げる事に決めたようだ…。」
「え…?」
「よもやあの変化は初号機とは言えんな…。新造された新たなエヴァンゲリオン。我々が凍結したのは…エヴァンゲリオン初号機だ。今新たに生まれるエヴァンゲリオンは我々は凍結していない…そうだろう?早く行くといい。手遅れになる前に。」
それを聞いたシンジは一目散に第7ゲージへ向けかけ出す。
全てが手遅れになる前に、自分の過ちを正す為に。
「LvEEEより飛来物!?第7ゲージに直進しています!」
「…ロンギヌスの槍…か。」
「ダメです!第7ゲージ内部がアンチATフィールドによってモニターできません!」
「碇…。あの少年もユイくんもお前が思っている以上に世界を憂いているようだぞ…。」
「シンジ…。」
初号機上部の管制室。そこに父さんはやはり居た。
初号機より発せられる熱は相当な熱量になっている。
それに耐えている僕はやはりヒト、リリンとは言えないだろう。
「父さん!」
「なぜ来た……。」
「僕が用があるのは今この世界に生まれ落ちる新たなエヴァンゲリオンにだ!初号機じゃあない!」
ドロドロと融解する初号機の腕が僕を鷲掴む。
「…ユイ!?お前は何をしようと…!」
「母さん!僕はココだ!」
「ダイレクト…エントリー…?」
大きく顎を開きまるで嗤うかのような表情を浮かべる初号機、いや、母さん。
コア、心臓がある場所へと僕を押し込む。
「リリスの分身たるエヴァ初号機。そして3人目の第一始祖民族であるシンジの融合…。よもや…サードインパクトでは無い…。新たな…インパクト…。」
セントラルドグマより飛来したロンギヌスの槍が初号機を取り巻くようにぐるぐると周囲を回る。
「インパクト時のエネルギーの制御の為に槍を使うか…。」
次第に赤い繭へと姿を変えたロンギヌスの槍はグルグルと不規則に周り続けやがて収縮していく。
発令所ではそのエネルギーの正体の解析を急がれている。
「出ました…。」
マヤの悲しみに満ちた声が発令所に響く。
「パターン…青…。です…。」
感嘆の声が響く。
「!?反応消失…いえ!書き換えられていきます!MAGIが…MAGIが乗っ取られています!これは…新たな…エヴァンゲリオン…?」
「久しぶりね…シンジ。」
「心臓以来だね…母さん。」
「心臓…?あぁ、あれは私の意思ではないわ。初号機そのものの意思よ。」
「初号機の…意思!?」
「そ、貴方と同じく何度も世界を巡っている初号機には私じゃない心が宿っている。だって私が目覚めたの…さっきだもの。」
「シンちゃんそれに気づかないでずっと私の名前叫ぶんだもの…。いやでも起きちゃった。」
「いやでもって…。」
「もとよりこの世界は貴方とこの初号機の意思に任せようと思っていたのに…。親として黙っていること出来なくなっちゃったんだもの…。」
「…。」
「その顔怒ってる?」
「そりゃあ怒るでしょ!」
「まぁまぁ…。私、シンちゃんと初号機に任せてこの世界を去ろうと思うの。」
「…それ父さんが許すかな?」
「あぁ…ゲンドウさんは…許してくれるんじゃない?」
「軽いなぁ…。」
「いっそ今取り込んで説明しちゃおうか!えいっ!」
消える直前にロンギヌスの繭より飛び出た腕によって掴まれるゲンドウ。そのまま引きずり込まれてくる
「ぐはっ…。ここは…。」
「エヴァの中よ。」
「ユイ!ユイなのか!?」
その嬉々とした表情。そりゃあようやく対話が叶ったんなら…嬉しい限りだろう…。
「ゲンドウさんお久しぶりね…。ごめんなさいね?勝手に初号機に残ってしまって…。」
「いいんだ…いいんだよ。ユイ。こうしてまた会うことが出来た…。」
「でもこれでおしまい。私は初号機から去る事に決めたから。」
「…。ユイがそう決めたのなら…。私には止めることは出来ない。」
「あなた。シンジのことお願いしますね。あと、私以外にいいひと見つけなさいな。」
「…あぁ、善処する。」
「リッちゃんいい子じゃない?」
!?やっぱりしっかり見てたのか…。侮れないなぁ母さんは…。
「じゃあ…後はシンちゃんと私の話だから…元の場所に戻すわね。」
「え、ちょ…。」
…こんなにあっさりお別れしていいものなのだろうか…。
でも母さんも…少し寂しそうな表情を浮かべている。言いたいことだけ言って返される父さん…哀れなりってね…。
「あーあ、私もシンちゃんの晴れ姿見たかったなぁ…。お嫁さん3人も貰ったらさぞ幸せでしょうね?」
「まぁ…ね…。」
「…時間も惜しいわね、さっさと仕上げしちゃいましょうか…。心臓もちゃんとシンちゃんに返すわね。このエヴァンゲリオンは最終号機と同じくインパクトのエネルギーを封じ込めた機体。文字通り神にも悪魔にも成れる。これから来る使徒、そしてSEELEの最高の吠え面見せて頂戴。」
「うん。わかった。」
「じゃあね…シンジ。また会えるといいわね。」
「次会っちゃったら僕が失敗したってことじゃないか…。そうはならないように願ってるよ。」
「うん。」
すっと大きく息を吸い込む。そして最後の母さんとのシンクロ。
「「エヴァンゲリオン―号機。起動!」」
「ロンギヌスの槍形象崩壊を始めます!これは…セカンドインパクトと同等のエネルギー…。サードインパクトの始まりって事…?内部モニターできません!」
「ユイくん…。息子のためにその魂を贄に新たなるインパクトを引き起こしたか…。」
「エネルギー収束…。いえ、球状に圧縮されていく…。」
そして…。ロンギヌスの槍が形象崩壊すると同時に新たに生まれたエヴァンゲリオンは虚構の海へと沈んで消えた。
「反応ロスト!第7ゲージから反応無くなりました!」
「碇…。これで良かったのかね…?」
そう呟いた冬月の声は感嘆に包まれていた。
「ぐぅぅ!離せよぉぉ!」
ミシミシと締め上げてくる3号機、マリの声はアスカには届かない。
「式波ぃぃ!…はよ目ぇ覚ませや…!」
2機の抵抗虚しく締め上げる3号機。侵食箇所は増え機体に深刻なダメージを与えている。
なんとかエントリープラグを掴みかかろうとする4号機だが、それに気付いた3号機が首を伸ばし4号機の手首を噛みきった。
「ぐあああ!なんちゅーやっちゃ!」
もぐもぐと咀嚼してそれを地に吐き捨てる様は知性を持った人、と形容してもいいのかもしれない。
「…万事…休すね…。シンジくん…ごめ…ん。」
こと切れそうになりながらもシンジの名をつぶやくマリ。
「アスカぁあ!」
シンジの叫びが夕暮れの山中に轟く。虚構の海からぬるりと現れたソレは手にした新型のブレード型の兵器。『ナイツオブラウンド』で3号機の腕をたたっ切る。
そのまま全身を露わにする。その姿は夕日に照らされながらもその紫を強く主張している。差し色として入る蛍光色の緑とオレンジが今までの初号機とは一線を画するものだと言うのを示す。双眼より四眼へと眼を増やし深々とバイザーを下したその相貌は初号機と呼ぶには余りに凶悪であった。より刺々しく発達した顎部。肩に装備されているウェポンラックから伸びるのは4対のパイロン。その両中心には真っ黒な結晶が渦巻いている。
「シンジくん!そのエヴァは…!?」
「詳しい説明は後だ!アスカの救出が先だ!」
腰部に『ナイツオブラウンド』を収納するとそのバイザーが開く。眼の横より伸びた黄色いラインがまるで楽譜のような紋様を空に描く。甲高い音が鳴り響き紫色のATフィールドが展開される。それに沿うような形でシンジ本人のATフィールドが展開されその楽譜に音を刻み出す。
「見えた!」
ピーンという甲高い音が周囲に響き3号機がだらんとその4本の腕をブラリとだらしなく落とす。第11の使徒のATフィールドが崩壊したのだろう。
「アスカ!」
シンジは呼びかける。自分の愛してやまない少女の名前を。
夢を見ていた。エヴァの無い世界でシンジのいない世界で歩むアタシの姿。必死に覚えのない記憶を頼りにその少年を探す自分の姿を。
「これが…アタシ?」
―そ、エヴァのない世界でのアタシ。―
「アンタは?」
―3号機の中のアタシ。いいえ?第11の使徒のアタシ。―
「ってことは前の世界のアタシ?」
―そうね。きっと、そう。こうして使徒になってしまったアタシ。―
「ならアタシと同じね。」
―一緒じゃないわ。だって貴方は…独りじゃない。―
「いいえ?アナタはアタシよ。寂しがりでこうやって使徒になってもわざわざ会いに来るお人好しなアタシ。」
―…。―
「寂しいのね…。一人でいるのが。殲滅されてガフの部屋に帰るのが…。」
―そうやって全てを見透かそうとする。そういうところが嫌い。―
「嫌いでもなんでもいい。アタシはアタシ自身が大っ嫌い。この腕の傷も足の傷も。…左目の傷も。」
「でも、シンジが愛してくれるアタシは好き。シンジがアタシを好きでいてくれるようにアタシもアタシを好きでいたい。」
―…ここに居てもいいの?―
「ここに居るのはダメよ。みんなが困るもの。でもアタシと一緒にいればいいんじゃないの?なーに大事な2号機専属パイロットですもの殺されたりはしないわよ。」
スっと手を差し出す。恐る恐る伸びてくるその手がアスカの手を握る。
「捕まえたわ。シンジが心の壁とっぱらってくれたおかげでこうして話すことが出来た。それだけで充分よ。もう1人にしないから。」
優しく抱きしめると自分の身体に吸い込まれるように消えていく第11の使徒の心。
あとの仕上げは…。
現実世界ではもがき苦しむようにじたばたと頭を抱えて暴れ狂う3号機の姿。
「そろそろ仕上げか…。」
「シ…ンジ…。」
「アスカ!聞こえる!?」
「うる…さいわよ…。コイツの…心はアタシが喰った…。残るは獣に落ちた…コイツだけ…。さっさと殲滅しちゃって…。」
「でも…アスカが!」
「死ぬ気で耐えるわよ!たかがシンクロ率100%…。四肢をもがれるよりよっぽどマシよ!」
「…わかった。なるべく少ない手数で〆る!」
『ナイツオブラウンド』に手をかけもう一度取り出す。だがその刀身は先程よりも細く短くなっている。成程…そういう機構か…。
暴れ狂う3号機、だがアスカに頼まれた以上コイツの殲滅は変わりない。
「シンジ…。すまんかった…。なんもできひんかったわ…。」
よろよろと左腕を食いちぎられた4号機がコチラに寄ってくる。
「トウジ…。大丈夫。僕の方こそすまなかった…。変な命令をくだしてしまって…。」
「かま…へんわ…。それより…。ちと後退して…休ませてもらうわ…。流石に…身が持たへん…。」
「あぁ、ゆっくり休んでくれ…。」
再び3号機に向き直る。血走った眼は変わらず、割れるような痛みを抑え込むように頭を抱え、こちらを睨みつける。
「…君らも生きることに必死なのはよくわかったよ…。」
すんっと一瞬その細くしなやかになった刀身を薙ぐ。物を切り落としたという感覚すら危うい。気づけばボトリと地に落ちる第3、第4の腕、よもや3号機自身気づいていない。
そのまま鞘にもう一度収める。
「これならいくらか…やりやすい!」
滑るように地を移動し背面へ回り込む。侵食も気にせず、エントリープラグに掴みかかる。ゴボゴボと泡立ち掌を侵食するソレ。だが…。
「…。この機体に侵食が効くとでも思ったのか…。全身がアンチATフィールドに覆われたこの機体が…。」
触れた矢先、ボロボロと形象崩壊を起こす青い菌糸。異変に気付いた。もしくは生命の危機に晒されていると感じ取ったのか3号機が身を捩らす。
「他者と交わって個が消えるのがそんなに怖いか?」
逆に侵食を始めるエヴァ―号機。
「違うか…。他者を理解して心を譲渡してしまったから余計に怖いんだね…他人が…。」
ずぶりと腕がエントリープラグを掴む。
「捕まえたッ!」
一気にエントリープラグを引き抜く。神経のように繋がっていたそれが音を立ててちぎれていく、最後には脊髄に繋がっていたであろう太い菌糸だけが残る。
「アスカを…返返せッ!。」
腰に手をかけソレを引き抜きそのままその太い菌糸を両断する。使徒の悲鳴とも取れる悲痛な叫びが夕暮れの山中に木霊する。そして…。発令所からの声が響く。
「目標完全に…沈黙…。パターン青の消失を確認…。状況終了します。」
空には使徒の殲滅の合図とも取れる十字架と虹の輪が掛かっていた。
「アスカ!」
エントリープラグをこじ開け中のアスカを確認する。ピクリと身を反応させたアスカだが声を絞り出す元気は無さそうだ…。
「ごめん…遅くなって…。今助けるから…!」
カチャリと後頭部に硬いものが押し付けられる。すぐにわかった、それは…銃口だ。
「現在、式波・アスカ・ラングレー大佐はNERVへの謀反及び国連への反逆の罪の元にある。君がそれ以上介入すれば…この引き金は引かざるをえないだろう…。」
どこまでも姑息な奴らだ…。あまつさえ、NERVだ国連だと大層な組織の名前を上げて罪人へとさせるつもりなのだろう。
「…弾けばいいじゃないですか。それで僕が殺せるんならね…。」
強い視線で黒い装甲服に着替えたその男を睨みつける。
「…。私達とて君たちを殺害するのは…心苦しい。そこの大佐も我々の監視下の元だが…。研究と治療の為国連の病院に移送するつもりだ…。どうか引き下がってくれないか…。碇大佐。」
「…これ以上アスカを…ミサトさん達を苦しめるのなら…容赦はしない…。実験場に居たミサトさん達はどうなった?」
男はふぅと大きくため息を着くと
「綾波レイ中尉は現在零号機と共にNERVへ移送済み。今頃はベッドの上だろう…。後の葛城三佐、赤木博士だが…現場でその姿を確認、確保することは出来なかった…。きっと加持リョウジ監査官の手引きで何処かに雲隠れしたのだろう…。」
「…。分かりました。」
スっとエントリープラグから立ち上がり外に出る。
「アスカを…お願いします。」
「あぁ…すまない…。この様な真似を…少年少女にしてしまって…。」
感嘆の嘆きか、声色は微かに震えている。
後ろを振り返り目線を送る。
「アスカ…。僕が必ず迎えに行くからね…。」
そう言い残し、国連、いやSEELEが、差し向けたこの男にアスカの身柄を任せ僕は―号機に乗り込みNERVへと戻るに至った。
3号機戦。
結局アスカが乗ってしまいましたね。
本来であればシンジが3号機に乗り込みアスカが初号機で出撃する案で書いていました。
ですが、トウジをパイロットとして早々に登場させた結果やっぱりアスカが3号機に乗った方が面白いということで…。
次回更新、いつになるかな…?
一応書き終えてはいますが、読み直しと誤字脱字の確認があるのでもう少し先になる予定です。
エヴァじゃないじゃんっていう異論は認めます。訂正はしませんがね。