Re Take of Evangelion   作:Air1204

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第13話 漢の戰い前編

NERVに戻るなり軍服姿の男たち数名がゲージに集う。わざわざ自衛隊とは…日本政府にもほとほと愛想が尽きる。

 

「碇シンジだな?同行願おうか。」

 

何度目だ。国連に連れ去られ自衛隊に連れ去られ…辟易するよ。

 

「末端のパイロットである僕が何か知っていると思ってるんですか?」

 

「ある筋からでな…。君が先程の核よりも強大なエネルギーを発生させる兵器の使用者だと聞いてな…。」

 

わざわざリークする奴がいるなんて驚きだが…それにしてもシナリオが大きく変わりすぎている。現状、僕はアスカをこの手で傷付け国連軍に連れ去られた哀れなロミオ。愛したもう1人の女性は国家の叛逆物として追われている。さらに同パイロットである綾波レイは戦闘によって負傷はしNERVの病院にて入院中…困ったものだ。

トウジやマリさんの動向も気になるが何よりも僕が拘束されてしまえば十中八九第12の使徒であるあれには勝てない。何より次はどのような姿に変貌を遂げているのか…。

 

「…大人しく応じるほど僕も出来ちゃいないですよ。内部電源の問題は無い。操作系は僕の元にある。戦自だろうと国連だろうとこの機体があれば壊滅させるのなんて容易いんだ。」

 

「!?やめろ!少年ッ!そんなことをして!何になるというのだ!」

 

いずれ倒すことになるのは目に見えている国連と戦自ならいっそここで倒してしまっても…。

 

「流石は食えぬ碇司令の息子と言ったところか…。お前の父なら我々が突入した時にはもうその姿はなかったがな…。お前を捨てて逃げでもしたのだろう…。」

 

目の前の部隊長であろう恰幅の良い男が嘲笑うように告げる。

 

「…知ったことか…。なら尚更冬月副司令がお前らの暴挙を許すとは思えないけどな…。」

 

「…どこまでも子供なのだな。その副司令が貴様を売ったと言ったら?」

 

 

その声に戦慄する。今までの世界でも大抵は陰に隠れていても味方でいてくれた冬月副司令が…。

 

「すまないな。少年。」

 

余りにも軽い謝罪の言葉。その言葉に僕は驚嘆を隠せないでいた。

 

「…なんで!」

 

「君や…碇と同じでな、私も何度も世界を巡ったのさ…。その度君ら親子の影で支えさせてもらったがね…。だがこの世界では彼奴はユイくんと会うことを諦めたのだ、あまつさえその存在は遥かマイナス宇宙の彼方へと消えてしまった。ユイくんに会いたいのは…君ら家族だけでは無いのだよ。」

 

「だからといって!ここで僕が拘束されれば勝てる戦も勝てなくなる!」

 

「それで構わないだろう?こんな世界無くなっても誰も悲しまないさ。どうせどこだかも分からぬ世界にまた放り出されるだけだがな…。ほとほと愛想が尽きたさ…君ら家族にはね。」

 

「副司令…。SEELEの犬にでも成り下がったか!」

 

「使えるものは使うだけだ…。マヤくん、LCLの圧縮濃度を限界まで上げろ。」

 

「え、でも…」

 

「やれと言っているんだ!今ここで死にたくは無いだろう!?」

 

「は、はい!」

 

「ぐっ…。ちくしょう…。ちくしょう…ちく…しょ…。」

 

もうNERV本部なんて構うものか、と暴れ出す寸前、LCLの圧縮濃度を上げられ呼吸がままなら無くなる。強く拳を握りしめたまま僕の意識は闇へと沈んで行った。

 

 

見飽きた夕暮れの電車。ガタガタと揺れる車内にて目を覚ます。目の前に座るのは幾度も巡り会った最後のシ者。

 

「やぁ、久しぶりだねシンジくん。」

 

いつも通りの笑顔、軽やかな口取りで挨拶を投げてくる。

 

「今回は君か…。わざわざ人の夢に介入してくるとは…。」

 

うんざりした表情の僕を見かねてか、カヲル君が口を開く。

 

「まぁ、今回は色々と事情が違ってね。何よりもイレギュラーがすぎるんだよこの世界は…。」

 

ニコニコと微笑む顔の奥には何か不安なものを感じさせるなにかか潜んでいるみたいだ。

 

「傷心仕切った僕の心に付け込むのが得意だったからね君は。」

 

「そういうタイミングでの登場に慣れているからね。」

 

「とか言いながら目の前で猫を絞めてみたり、僕に口付けてみたり散々じゃないか。」

 

「仕方ないじゃないか。生まれたばかりの僕がリリンの気持ちを全て察している訳じゃないんだから…。」

 

ニコニコと笑っていた顔はいつの間にかムッとする表情に変わっていた。意地悪はこれくらいにしておこう、なにせこんな夢に出てくるということは何か伝えなければならないことでもあるのだろう。

 

「それで?話って何さ、ここに出てくるんだから話の一つや二つあるんだろう?」

 

「今回のシナリオは全て…SEELEの手の内さ。冬月副司令すらもね…。君がエヴァ初号機をアダムスと同位の存在まで進化させてしまうのさえも予想の範囲内だと言うことさ。」

 

「この後に僕が起こすサードインパクトすらも?」

 

「君は避けては通れないだろうね。それに関しては僕が止めるよ、心配しないで。」

 

「はぁーあ嫌になるなぁ…結局僕は13の使徒か」

 

「この世界ではあと何体使徒が来るんだか予想もつかないだろうけどね…。そろそろ終わりは近いと思うよ。」

 

「終わったあとは戦自、国連、エヴァシリーズ全9機。骨折れるよ?」

 

「うーん…。勘違いしてやいないかい…?ここは君の知る世界では無いんだ。倒すべき敵はエヴァシリーズだけじゃない…。」

 

「えっと…他にも…居るって…こと?」

 

「あぁ…。エヴァンゲリオンMark4、エヴァンゲリオンMark9から12まで。まだ生まれ落ちていないが…厄介なのは…エヴァンゲリオンMark7だね。」

 

「第13号機の時点で薄々思ってたけど…何体居るんだよ…」

 

「うーん…ざっと万は軽く超えるかな?」

 

満面の笑みで言うことでは無い。どう対処しろってんだよ…。

 

「死。普通に無理!」

 

「そんな悲しい顔しないで…。君なら大丈夫さ!」

 

あーあ、この顔だよ。僕と君ならできるよみたいなこの顔。まったく…何度これに騙されたことか…。

 

「…ほんとに責任感ない奴だなぁ…。よっと!」

 

ぽんっと跳ねるように立ち上がる。

 

「もう行くのかい?」

 

「まぁね、いつまでもここに引きこもってんのも良くないでしょ。マリさんやトウジがどうなってるかもわっかんないのにさ!」

 

「自分よりも他者を思う気持ち、君は本当に…大人になったんだね…シンジくん。」

 

なぜそれで悲しい顔をする。そりゃあ僕だって大人になるさ1978回も同じ世界を繰り返してたら嫌でも精神だけは大人になっていくよ…。

 

「じゃあまた。時が来たら。」

 

電車の乗降口に立ちしみじみとしているカヲル君に別れを告げる。彼もニッコリと微笑み返し。

 

「うん。時が来たら必ず…今度こそは…幸せにしてみせるよ。」

 

「そんときは期待してるよ。」

 

停車した電車から降りる。まったく…でもきっと頼りになることは間違いない。僕がもしニアサーを起こして拘束された時にきっと助けてくれるのはカヲルくんだ。

ハッと目を覚ますといつもの天井。だが四肢はベッドへと拘束されている。

 

「またいつもの天井…か。そんなに監視されていたって僕はなんにも出来やしないよ…。」

 

「…。」

 

黒服達が僕を取り囲む。さしずめ冬月副司令の司令だろうが…。

そのうちの一人が電話をしているようだ、どうやら今から僕は拘束されたまま副司令に会うことになるらしい…。

 

 

「うーん…しっかし…。シンジくん凄いよねぇ。アスカもほぼ無傷、3号機も目立った損傷なし。細胞の侵食痕は完全に消えて無くなってる。」

 

3号機の回収現場に立つのはマリ。

8号機を使い瓦礫や3号機を解体したパーツやらを運搬する作業を手伝っているのだ。

4号機に比べ損傷が軽微出会った8号機は軽く補強を施され、そのままに先の現場にたっているようだ。

 

「トウジとレイちゃんは入院。ゲンドウくんは行方不明。シンジくんを含む元NERVの職員たちは戦自によって幽閉。こりゃ次来るアイツにゃ勝てないんじゃないのーん?」

 

8号機から降り辺りを見渡しながら呟く。防護服を着た連中が傷つけるなだなんだかんだと声を上げながらその四肢を徐々に解体し運んでいるようだ。

 

「コラ!マリちゃん!いつまでサボってるの!」

 

「あいたっ!」

 

ポコンと頭にファイルをぶつけられ思わず声が出る。

伊吹マヤ中尉だ。エヴァの管理をできる人間が居なくなるという事で1人現場に残されてしまった彼女。

同僚たちの安否は確認しているがそれでも腑に落ちない事ばかりなようだ。

 

「3号機の回収さっさと終わらせて!」

 

「へいへい…。ったく…昨日の今日だっつの…。すこしゃあ休む時間が欲しいべよ。」

 

「わがまま言わないのー。今やまともに動かせるエヴァマリの8号機しか無いんだから…。」

 

「こーんなときに使徒が攻めてきたら本部がおジャンだよんどうしたもんかねぇ…。」

 

「…素直に来ないことを祈るしかないわよ私たちは…。」

 

「言えてるぅ…。」

 

周りに人が居なくなったからかそそくさとマリに近づき耳打ちをするマヤ。

 

「ねぇ、赤木センパイの居場所知ってるって言ってたけど…ホント?」

 

「さぁ?敵も味方も分からない人にゃあ教えらんないね。」

 

ツーンとそっぽを向き意地悪く返すマリ。以前とはWILLEもNERVも関係値が違いすぎる。とはいえ、NERVはほぼSEELEに乗っ取られたも同じ。

例え前の世界でマヤがWILLEのクルーであったとしても今回そうなるとは限らないのだ。

 

「そこをなんとか…。」

 

「ま、いずれ姿を見せるよっと!んじゃ伊吹中尉殿?作業に戻らせて頂きますにゃあん。」

 

「え、ちょっ!」

 

食えぬ女、真希波・マリ・イラストリアス。彼女は相も変わらず飄々と吹く風のごとく。必ずシンジの味方ではあるが全員の味方では無いのだ。

 

 

「…ここは?」

 

意識を取り戻したミサトは自分が医務室らしき場所で手当てを受けていたことを知る。同様に隣のベッドにはリツコの姿も確認できた。

だが国連に、戦自に追われる身となった自分がまともな医療機関で治療を受けられるとは到底思わない。では誰が…。

 

「お、目を覚ましたな葛城。」

 

ニヒルな笑みを浮かべた加持リョウジがそこに立っている。

 

「っつつ…。ここは…一体どこなのよ。」

 

「まぁ俺らWILLEの隠れ蓑みたいなもんさ。日本海洋生物保護機構、覚えてるだろ?あそこの地下さ。」

 

「なんでんなとこの地下にこんな設備が…。」

 

全くもって状況の呑み込めないミサトが混乱していると、隣で眠って居たリツコが目を覚ます。

 

「いっつつ…。全く人が久々に眠れていると思ったらそんなに騒いで…。さしずめ、NERVとSEELEの目を欺くための隠れ蓑としてこの組織を作り上げたんでしょ。赤い海を浄化できるなんて普通の技術じゃ到底出来もしないし、海洋生物の保護や管理なんて尚更、どれだけ莫大な資産がかかると思ってるのよ…。」

 

「じゃあ…。最初からその為に建てられた施設だったってこと…?」

 

「そういうことだ。先日L結界浄化システムの構築が終わってな…。それと同時に使徒封印柱の正規実用化の目処も立った。」

 

まだ素っ頓狂な表情を浮かべるミサトに呆れ顔のリツコだったが、その2つのシステムが使用可能と分かるやいなや驚愕の表情を浮かべる。

 

「完成していたの…。人類では到底及ばないと言われたそのシステム…。」

 

「あぁ、4割はマリの証言、残りはシンジくんの経験から導き出されたよ。」

 

「あの二人が…。」

 

「そうよ!アスカは!3号機はどうなったの!?」

 

掴みかかるように加持の胸ぐらを掴み睨むかのように詰め寄るミサト。不安に駆られたその眼をじっと見つめ真面目な顔で口を開く。

 

「4号機と8号機と交戦後、使徒。として初号機に…。いやシンジくんの為に新たな姿に変化した真のエヴァンゲリオン―号機によって目標は処理されたようだ。」

 

「そんな…。」

 

ガックリとうなだれ 力なく腕を垂らすミサト。

 

「だが、シンジくんの尽力によってアスカは救出。命に別状は無いみたいだが…国連によって誘拐、その後の消息は不明、だそうだ。肝心のシンジくんだが…。戦自によって拘束、NERV内で幽閉されているようだ…。」

 

「そんな…。まだ14歳の子供たちなのよ!?碇司令や冬月副司令はなんて言ってるのよ!」

 

「碇司令は蒸発、どこに消えたかも誰も知らないようだ…。そして…冬月副司令だが…。」

 

苦悶の表情を浮かべる加持。

 

「勿体ぶらずに教えなさいよ!」

 

「戦自に情報を売ったのは彼のようだ…。全く…腹の中が窺い知れるよ。」

 

やられたと言わんばかりの表情の加持。マリやシンジの情報通りならば縁の下の力持ち的ポジションだったはずの冬月、だが今回は寝返っているとなると…。NERVの協力は得られない。

計画が全て白紙に戻りかねない事態なのだ。

さらに何となくで話を察せるリツコとは違いミサトは中途半端な情報が故に誰が善で悪なのかイマイチ理解が追いついていないようだ。

 

「仕方ない…。プランBだな。NERVが秘密裏に建造している戦艦4機の内1機奪わせて貰おう。いいかな?りっちゃん。」

 

不敵な笑みを浮かべる加持に首をすくめ、やれやれと言った顔つきで逆に質問を投げるリツコ。

 

「…私がその情報持っていると思ってるの?」

 

「モチロンだとも、赤木博士。NHGシリーズ。『ヴーセ』懺悔、『エアーレーズング』贖罪、『エルヴズュンデ』原罪、『ゲベート』祈り、全てドイツ語で名付けられた4隻の戦艦さ。そのうちの1隻『ヴーセ』を俺達の手中に収めたい。隠し場所知ってるだろう?」

 

先程の不敵な笑みとは打って変わって真面目な顔の加持に、降参と旗を振るアクションをして眉を顰める。

 

「なーんでもお見通しね。リョウちゃん。いいわ、教えてあげる。」

 

我慢の限界か、ここまでずうっと置いてけぼりであったミサトが音を上げる。

 

「ち、ちょっと!説明してよ!リツコも加持も2人ともなんでも知っているようだけど…私なんにも知らないのよ!?」

 

顔を見合わせる2人。ああ、そうだったと言わんばかりの反応を見せた2人にムッとするミサト。致し方ない、いくら幹部とは言えど限られた上層部の人間にしかその事実は伝えられていない。

 

「葛城。わかった、俺の口から真実を告げよう。リッちゃんも知りえない話、シンジくんやアスカ、マリ、碇司令、何度もこの世界を巡っているモノたちから聞いた話でもあり、彼らの正体でもある話を…。」

 

いつもヘラヘラしている男の真面目な表情は場を凍りつかせるには効果覿面であった。

 

 

病室

 

トウジとレイはベッドに伏していた。先に目を覚ましたのはトウジの方である。

 

「なんや、病室かいな…。シンジ…シンジはどないしたんやろ…。」

 

「トウジ!目を覚ましたのね…。」

 

隣に座るヒカリは目を覚ましたトウジの呟きを聞いてハッと目を丸くする。期間にして3日ほどだろうか…。

 

「なんやヒカリおったんけ…。シンジはどないしたんや…。」

 

「……碇君は一足先に退院したみたい。」

 

「なんや…。ゲージん中であないな事になったさかい、もうちょい長引く思うとったけど軽傷で済んだんかい…。」

 

「…でも黒いスーツの人達に囲まれて…手錠されてたの…。彼は一体何をしでかしたの…?」

 

深刻な表情でクラスメイトであり彼氏の親友であるシンジを憂うヒカリ。そんな彼女からそっぽを向き窓の外を眺めながらトウジは答える。

 

「自分彼女守る為に身ぃ張ったんや。すごいやつやでホンマに…。」

 

「何事もなければいいのだけれど…。」

 

「なぁ、綾波ぃ…。これからどないなるんやろ…ワシら。」

 

狸寝入りを決め込んでいたレイもたまらず声を出す。なぜ、バレていたのか、彼女にも声を掛けた本人にも分からなかった。

 

「…知らないわ。私がすべき事は一つだけだもの…。」

 

「…お前の決意も固いっチューこっちゃ…。んなら…ワシも寝とるわきゃあいかんな…。」

 

重い体を起こす。たかがシンクロ、されどシンクロ。思った以上に高いシンクロ率を出すトウジは4号機が頚椎を締めあげられた際にトウジの首にもヒビが入ってしまったのだ。

あまり無理な事をすれば深刻なダメージが残る。それこそ歩くことができなくなる可能性だって有り得る。

それでも、トウジはその身を起こす。自分の親友のため、守るべき家族の為に。

 

「ダメよ!トウジ!安静にしてろって言われてるんだから!」

 

「いっちゃん苦しいんはシンジや。ワシがNERVに入ったんはアイツを支える為や…。あいつが1人戰こうとるんならワシも一緒になってそいつをシバき倒すって決めとるんや。それが男の約束じゃけぇ…。」

 

「私は!…トウジ…貴方が心配なのよ…。」

 

「それはわこうとる!それでもワシは引かへんで!」

 

「…鈴原くん。もういいの、私がもうあなた達がエヴァに乗らなくていいようにするから…。」

 

「…綾波…お前何言うとるんや…。」

 

「私が全部終わらせるから…。」

 

そう言うと笑みを浮かべる。だがトウジには分かっていた。

その笑みが悲しくて苦しい笑みだと言うことが…。

今のレイならやりかねない最悪の手段、刺し違えてでも使徒を倒す、そんな意思が。

そして、最悪な時に最悪なことは重なるものだ…。

鳴り響く非常事態のサイレン。トウジは頭を抱えた。

 

「綾波、一人で行くつもりなんか?」

 

「うん。ありがとう、鈴原くん。碇くんと仲良くしてくれて、ありがとう、私と友達になってくれて…。」

 

また悲しい笑を浮かべるレイ。だがトウジはその体が動かなかった、と言うよりも動かせなかった。少なからず、普通では無い綾波レイの生い立ち。碇ユイのクローン。そしてリリスの魂。記憶こそは受け継がれなくても何度も転生を繰り返したリリスの魂は綾波レイに順応、人の身であれ、その強大なATフィールドを遺憾無く発揮した。その結果である。

 

「綾波ぃ…!待たんかい…。」

 

動かぬ体を起こそうと身を捩るがそれでも動くことは叶わない。悲しい笑みの綾波は最後にとびきりの笑顔を見せると…。

 

「ごめんなさい…。さよなら…。」

 

そそくさと立ち去るレイ。止めることの叶わないトウジ、何が起きているのかもわかっていないヒカリ。その状況は最悪そのものであった…。

 

 

同時刻。司令室

 

「碇シンジ。前へ。」

 

ドンッと突き飛ばされて前につんのめる。腕には何個も手錠をされている。

 

「…君がしたのは…。命令違反、それにエヴァの私的占有。恫喝、全て犯罪行為にあたるが…何か弁明はあるかね?」

 

淡々と告げる副司令、いや今や司令代理か…。

 

「いいや、弁明することは何も無い。」

 

「なるほど…潔いな。では逆に聞きたいことはあるかね?」

 

ほう?と不思議そうに顎に手を当て考える姿に心底腹が立つ。

 

「…有りませんね。」

 

「第2の少女や綾波レイの事も聞かぬのだな…。」

 

嘲笑されているかのように告げられるその言葉、まだ我慢しなくてはならない。

 

「聞いたところで嘘の情報を告げられてはこっちの身も持たないですからね…。」

 

「はは…。成程、数多の世界を渡る上で身につけた処世術か…。君も大人になったんだな…。」

 

こいつの腹の中が分からない。何を思ってこのような口振りなのか、何故そのように笑っていられるのか…。

 

「葛城ミサト及び加持リョウジ、赤木リツコの3名は今や指名手配犯となった。お前を支えてくれる大人はもうおらんよ。」

 

「勝手に言ってろ…。全員僕が救い出す。」

 

睨みつけるように返したその言葉を反芻するかのように噛み締め一瞬の笑みを浮かべる。どういうつもりなのか…。

 

「ふむ…。もう良い。下げろ、独房にでも入れて置いてくれないか?無論、使徒封印紋様を施し、L結界の中でな。」

 

「御意に…。」

 

繋がれた鎖を思い切り引き寄せられる。タダでここをさる訳にはいかない。

 

「結局貴方が一番の化け狸だったわけですね…。冬月副司令…。信じていた僕が馬鹿でしたよ。」

 

「そうでもしなければ我々は生きてはいけんよ…あの人とも言えぬ老人たちの元ではな…。」

 

強引に手を引かれ司令室から連れ出される。最後に見たその表情は怒りよりも悲しみが満ちているようにも見えた。

 

「大人しくしているんだな…。周りのものが危険にさらされたく無ければな…。」

 

押し込まれた独房、粗暴なその男は僕を一瞥すると吐き捨てるようにそう言い残す。しかし厄介なものだ。まさか、L結界浄化システムと使徒封印システムのど真ん中に放り込まれるとは…。自分とマリさんの技術によって作り出されたそれがまさか僕に仇なすとは…。

 

「たかたが、こんなガキ1人に何を手こずるっていうんだ…。今すぐにでも殺しゃあいいの…。」

 

ドンッという強い衝撃、グラグラと揺れる照明。とうとう現れた、最強の使徒…。因縁の使徒。僕の手で無ければ葬り去れぬ使徒が…。

 

「早く逃げた方がいい…。きっと上には使徒がやってきたんだ…。君たちも早く逃げないと巻き込まれちゃうよ…?」

 

引き攣った表情の黒服たちはそそくさとその場を離れていく。

現状、ここまでの封印システムの中僕が何かをすることは叶わない訳だけど…。

 

 

月面

 

「さぁ、時が来たね、碇シンジ君。」

 

手首のスイッチを入れる。プシュッと言う音ともに抜ける空気。

 

「一筋縄ではいかなくなってしまったけれど…。せめて、君の役にたてるように…ね?」

 

見上げる赤く染まった地球。睨むかの様な鋭い視線がことの深刻さを物語っている。

各々の思惑が交錯する中繰り広げられる第12の使徒との戦い。その戦いはどこへ向かうのか…。




いよいよ次章で破篇クライマックスです。
というかとうとう追いつきました。
ダラダラ書いているので追いつかれてしまいました…。
これからどうなるのか…。シンジは?綾波は?さてさて…。では次の話でお会いしましょ。
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