Re Take of Evangelion   作:Air1204

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第13話 漢の戰い 後編

先程の衝撃により臨時として開放されたNERVの職員達は各々のコンソールの前に腰掛ける。

状況が理解出来ぬままにモニターに広がるWARNINGの文字。モニターに映し出されたモノはもはや使徒とも呼べぬ形相になっていた。

先はエヴァを乗っ取りはしたもののエヴァ本体ではなかった…。だが、モニターに映るのはエヴァそのもの。だが異様なのはその背面に背負われた、覆い被さるような多数の鰭が蠢いている。

 

「状況は?」

 

モニターを睨む冬月の額に汗が滲む。なにせ、最強の拒絶タイプが人々が生み出したエヴァという偽物に姿を寄せているのか、収斂進化と言うものがあるが、まさにそれとも取れるその姿に焦りを隠すことができなかったのだ。

 

「旧小田原防衛線を突破!」

 

「衝撃波がここまで届くとは…さすが最強の拒絶タイプだな…。」

 

汗を拭う。4号機と8号機と零号機による迎撃。あそこまで進化した機体であればどうにかなるとタカをくくっていた冬月だが、その圧倒的に暴力に足が竦む。

 

「第4地区を直撃!地表全装甲システム融解!」

 

「24の特殊装甲を一撃で…。」

 

「エヴァはどうなっている!?」

 

「現在マリが待機中!レイちゃは…。まだ更衣室な模様!鈴原くんは病室に!」

 

「そこよりマシだ!4号機へ搬送急げ!」

 

「聞こえるかね、マリくん。」

 

「ん?なぁに?センセイ?」

 

小馬鹿にするようなマリの声。構わずに言葉を繋げる。

 

「出撃だ。」

 

「えー!?どうしよっかなぁ?行きたくないなぁ?」

 

わざとらしく駄々を捏ねる、その姿に一同がゾッとする。

 

「…。何を言っているのかね?」

 

「命令違反、私もしてみようと思って。わざわざシンジくんを焚き付けて幽閉したんだから…ね?」

 

今まで見たことがないような悪鬼の如き表情を見せるマリ。何せ1番信用がならないということでずっと誰かしらがついて回っているマリはシンジのことを助け出したくても助け出せないのだ。

 

「イスカリオテのマリア…。相変わらずだな…。」

 

「センセイこそ、本物のイスカリオテのユダだったじゃん?人の事悪く言っちゃあ嫌だなぁ?」

 

「マリ!?緊急時なのよ!戯言は後にしなさい!」

 

「煩いっ!やりゃあいいんだろやりゃあ…。その後ここがどうなっても知らないよ。」

 

ぶつりと切れた通信。

ジオフロント内に飛び出したマリは持てるありったけの兵装を持ち出していた。アズマテラス、マゴロックスⅡ、婆娑羅に袈裟羅、ありったけの兵装をリツコが最後に託した『エヴァンゲリオン8号機type∑戦闘特化型装備ケルト』に詰め込んで…。

 

 

「良し…。」

 

その頃レイは身支度を整えた。この戦いで自分が居なくなっても良いようにと手紙を書き残して。

母であるリツコに、恋敵で良き姉であるミサトに、戦友で親友のアスカに…そして恋人であるシンジに。

悔いは無い、自分が出来るだけの事はした。決意を胸にエントリープラグへ足を運ぶ。だが、誰かが自分を呼び止めた気がした。誰だかわからないけれどその声は確かに自分を呼んだ、気がした。

 

「ごめんなさい…。見知らぬ人、私は碇くんが、皆がエヴァに乗らなくていい様な世界にしたい。だからここで引く訳にはいかないの…。」

 

そう言い残して後ろを振り返ることなく前へと歩みを進めた。

 

 

ここはどこだろう?真っ暗だ。何も見えない…。

疼く左目、ああ、そうだった。アタシは使徒になってシンジに助けられたんだ。

じゃあここは?さながら実験動物ね…。

体に巻き付く使徒封印紋様の描かれた包帯が怪しく光っている。ここがどこだかも分からないけれど、シンジがみんなが危険にさらされているということだけは嫌という程にわかった。

あの、忌まわしき私の四肢をもぎ取った使徒。

誰がアレを倒すというのか、またシンジに頼って不甲斐ない思いをするっていうの…?そんなの嫌だ、隣に立つって決めたんだから。アイツ1人がニアサーの罪を被る必要なんてない。アタシも一緒に…。一緒にッ!

 

「…ッ!負けてらんないのよォ!あんた達なんかにィッ!」

 

閃光が迸り閉じ込められていたであろう棺を吹き飛ばした。

様々な機器が立ち並ぶその部屋、思い出した…。ココはアタシが生まれた場所、シキナミシリーズが生まれる場所…。ドイツだ。

 

「勝手なことしてくれちゃって…。日本まで何時間よ…。」

 

「おいっ!お前!どうやってそれから抜け出したッ!」

 

爆発に気づいたであろうドイツ支部の連中がサブマシンガンを構えて威嚇してくる。使徒であるアタシに効くわけ無いのに…。

 

「撃てば?アタシは…使徒よ?」

 

「急に搬送されてきたと思えば!貴様は何を言っているんだ!代わりなんぞいくらでもいるッ!シキナミシリーズの換えなどな!」

 

もうウンザリなのよその言葉…。シンジはアタシに言ってくれた。アスカの代わりなんて居ない。その言葉を信じてる。

アイツにとってのアタシはアタシだけ。もう世界がどうなっても構わない。エヴァに乗れなくたって構わない。シンジの隣に居るのがアタシ達ならなんだっていい。ただ、今だけは、どうかワガママなアタシに力を貸して!ママっ!

 

同刻、NERV本部内の2号機と3号機の残骸がATフィールドを失いLCLへと還元。赤い粒子となり天へと登って行く。

だが、その力の一端はアスカの元へ集う、それこそ人のままに扱えるほどのサイズとなって…。

 

赤く燃えるように光り出すアスカの髪の毛。周囲を渦巻くのは2号機と3号機から生まれ落ちた新たなるエヴァ。シンジと同じく人ならざるものに堕ちたアスカの新たなる力。第11の使徒よろしくその力はアスカへと集約されやがて…アスカ自身のデータをエヴァへと書き換えた…。

 

「な、何が起きている!ヒトではないのか!」

 

「何度も言ってるじゃないの、人じゃないって、聞き分けないのね貴方…。」

 

さながら他作品を借りるのであればバスターマシン7号のような出で立ちのアスカ。

展開したATフィールドが容易く銃弾を悉くたたき落とす。

 

「構ってらんないのよ…あんた達に…じゃあね…。他のシキナミシリーズによろしく。」

 

そう言い残して最初の初号機よろしくディラックの海へと姿を消すアスカ、もといエヴァ2+3号機。

続々と集う役者達、残るは碇シンジただ1人となった。

 

 

「やっぱりダメか…。流石にL結界密度が高すぎる…。」

 

何度も―号機を呼び出そうと試みるが中々上手くはいかない。

どうにか誰かここをこじ開けてくれれば助かるのだが…。

 

「シンちゃん!」

 

おっと、聞こえもしない幻聴がバンバンという音ともに聞こえだした。僕も終わったな…。願望がよもや幻聴に聞こえるとは…。

 

「何おかしなこと言ってるのよ!早く!出るわよ!」

 

…?幻聴じゃ…ない?じゃあ本物のミサトさん?でも指名手配されてるって言ってたのに…どうやって?

 

「扉から離れててね!今爆破するからッ!」

 

狂気的やすぎないかなぁ…。

 

「え、あ、心の準備が!待って!ミ…。」

 

時すでに遅し。僕が名前を言いかけたところで扉が吹っ飛んで僕の横を通過した。危うくぶち当たるところだったんだけどねぇ…。爆炎が晴れ徐々にその姿が見えてくる。あぁ、怪我してるけど…やっぱりミサトさんだ。

 

「ミサトさぁん!」

 

「シンちゃん!」

 

熱い抱擁、なりふり構ってられるか、感動の再会だぞ?離反したって聞いた時にゃどうなるかと思ったよ…。

 

「よかった…無事だったんだね。」

 

「ピンピンしてるわよ!それより、使徒上に来てる。」

 

「わかってます。これでようやく僕も戦える…。」

 

「今、8号機と使徒が交戦中、マリでも…苦戦してるみたいなの…。」

 

不安に満ちた表情のミサトさん、誰の手引きかは知らないけれど僕は僕のやれることをする迄だ。

 

「おいッ!貴様!」

 

振り返ると戦自の奴らが銃を構えこちらを睨んでいる。全く…血の気の多い奴らだ…。

 

「ミサトさん…掴まっててね?」

 

「な、何する気?」

 

おかしな質問だ。ミサトさんだって勝手に初号機が出てくる様見てたはずなのにね。

 

「何ってそりゃあ…僕のエヴァを呼び出すに決まってるで…しょ!」

 

撃ち放たれる弾丸、だがそれが僕たちに届くことはなかった。ズドンと床下から突き抜けるように出てきた拳に掴まれる。

そのままメキメキと音を立て―号機の全容が露になる。

気がついた時にはもうエントリープラグのインテリアの上だ。

 

「ふぅ…間一髪。」

 

「え、あ…。シンちゃん…ここって…。」

 

「エヴァの中。」

 

「ぇぇぇぇ!?ちょ…私乗ってて平気…なの?」

 

「なんにも問題はありはしませんよ、動くも動かぬも僕の意思次第、エントリーできるヒトも僕次第、ですからね。」

 

ニッコリと微笑む僕、シリアスな展開だっただろう!って?

んなもんぶち壊してなんぼなんだよ!

 

 

「第5次防衛戦を突破…。速攻で片付けないとこの世界パーじゃん!」

 

アズマテラスを引き絞り何度も撃つ。何故8号機にそれが成せるのか、それは言わずもがな前世の影響か、少なからずフォーインワンの状態を再現出来ていると言っても過言では無いのだろう。その最強のエヴァを以ってしても12の使徒のATフィールドを破ることは叶わない。

 

「ここまで強いんか!そんなら!」

 

ケルトを換装し『悪魔の背骨』へと変形させる。

 

重粒子を侵食型ATフィールドに乗せ従来のATフィールドの反発性によって射出、文字通り百発百中の必殺武器となるそれだ。

この世界、この時間にこれだけの武器が完成したのが不幸中の幸いか、打ち出されたマイクロブラックホールは先程まで傷つけることの叶わなかった第12使徒の鰭を1枚引きちぎった。

絶対的自信のある第12の使徒は吹き出す血飛沫と地に落ちた鰭を交互に見やる。

激昂。よもや知恵の実を持たぬ生命体とは思えぬほどの怒り。

周囲のビル群を無差別にたたき落とし。眼から放つ光線はなりふり構わず打ち出されている。

 

「んな…。子供の…癇癪よりタチ悪いよ…。」

 

迂闊に手は出せない。まるで3歳ぐらいの子供か…。自分の思い通りにならないと癇癪を起こす様は子供の駄々にもよく似ていた。

だが、そう思ったのも束の間。ただ目の前に立ち弱々しい攻撃を此方に続けるタダの玩具では無いと認識したのかしっかりと8号機を見据えて此方に降りてくる。

 

「そ。こっから本番って訳ね…。んなら!」

 

再度ケルトを変形させ、スカートの様なウェポンラックを広げ、マウントされている袈裟羅、婆娑羅を手に取る。

 

「やっぱり〜獲物はこうじゃなきゃ♪」

 

使徒を目掛け駆け込む。大振りな二刀を振りかぶりながら。

 

「せぇい!」

 

強大なATフィールドによって弾かれる。だが刃に展開されている侵食型ATフィールドとATフィールド、何層にも重なったATフィールドを叩き割るように何度も振るう。

 

「あと少しぃー!!!」

 

だが、マリは気づかなかった。

それが囮であると、丁度8号機の右大腿部に当たる死角とも取れる場所に収束された何重ものATフィールド。最後のATフィールドが割れ。「良し!」と意気込むマリを嘲笑うかの様に細く鋭く収束したそれを一気に打ち出す。

足が吹き飛ぶことは無かったにしろ繋がっているとも言えぬ大きな穴が開いている。

 

「ぐ…うぁ……。」

 

不覚。支えを失い崩れ落ちる8号機。それを嘲笑うかのように見下すソレはまだ遊び足りないと言わんばかりに上からATフィールドを収束し落とす。

 

「ヤバっ!」

 

マリであったからその攻撃に反応することが出来た。だがコレもこの使徒からすれば遊びでしかないのである。先程の攻撃でさえもスグに壊すのは勿体ないと、幾らかの慈悲があった。

 

「完全に遊ばれてんなぁ…。しゃあない…8号機でするこたァ無いとは思ってたよん…。」

 

「モード反転。裏コード777!」

 

カシャンとエントリープラグ内のモニターが落ち赤く染まる。

8号機のウェポンラックが吹き飛び制御棒が次々と身体から突き出す。追加装甲であるケルトも8号機に纏わり着くように姿を変えた。まるで獅子のような出で立ち。先程開けられた風穴もみるみるうちに塞がってゆく…。

 

「まったく…。我慢してよぅ8号機ィ…。ここで壊れちゃあ元も子もないんだからね…。」

 

苦痛に歪むマリの顔、8号機もその身を攀じる。そして…。

 

「身を…捨ててこそ…浮かぶ…瀬も…あれ!ってね!」

 

ヒトは面白い。こんな子供騙しのおもちゃでも我々と同じ土俵に立つのだから。感慨深そうに目を細め変態する8号機を眺める第12の使徒。

咆哮、そして地を蹴り眼前まで瞬時に飛び込んでくる8号機。幾重にも張ったATフィールドを叩き割り噛み砕く。

流石に身の危険を感じたのか使徒も黙ってはいない。鰭ではなく、そのエヴァめいた腕で8号機を掴むとそのまま地に叩き伏せる。

 

「がっはぁ!」

 

過度のシンクロはパイロット自身の体にも影響を及ぼす。

何よりもあれだけの巨体が叩きつけられた時のGはLCLをもってしても衝撃を吸収しきれない。

血反吐を吐き肩で息をするマリに追い打ちをかけるかの様に鰭を纏め前へと突き出す。避けようと試みるも左腕がそれによって押しつぶされ弾ける。上がる血飛沫。

 

「万事…休す…か。」

 

突如として射出されたのはエヴァ4号機。息も絶え絶え、モニターに映るトウジの姿は満身創痍と言っても差し支えない。

 

「トウジ!?なんで出て来たんだよ!」

 

「ワシかてエヴァんパイロットじゃ。シンジが居らんかったら出んわけにはいかんやろ…。」

 

首に巻かれた保護用のギブスが痛々しい。それでも戦場に立つのは友との約束が故か。

 

「死んでも助けてやんないからね…。」

 

「死んだら元も子もないわ…。それよりマリ…。なんやその姿。」

 

「裏コードってやつさ。」

 

「ほーん…なんて言えばいいんや?」

 

「裏コード777って…って!まさか!」

 

鈴原トウジ、所謂普通の14歳だが…。人と違うのは極度の負けず嫌いであることだろう。マリに出来て自分にできないはずがない。シンジやアスカには遠く及ばないにしてもその心構えは誰よりもしっかりと未来を見据えている。

 

「おっし!気合い入れたらァ!ここで負けちゃあ全てがパーや!ワシも漢や!裏コード!777!」

 

「トウジッ!止めろ!人に戻れなくなるッ!」

 

激しい痛みが身体を突き抜ける。装備されていたラピッドボーラーが弾け翼へと変化する。顎部は開き荒々しく息を吐く。

制御棒が飛び出し翼竜とでもいうような姿に変わる4号機。

 

「うぐ…思ってたんより…きっついのぅ…。」

 

何とか耐える4号機トウジ。ヘイフリックスの限界値はとっくに過ぎたというのに頚椎も失われていた左腕も回復した。

 

「やけぇ…。綾波ぃ来るまでん繋ぎ位の活躍せんとなぁッ!」

 

上空に高く舞い上がり自重を乗せた滑空攻撃。

痒いところに手が届かぬというのはこういうことか…。何度狙えど空を自在に飛びまわる4号機はヒラリと身を躱し自分への攻撃の手を緩めることは無い。次第に苛立ちが募る、しっかりと狙いを定めて打ち出していた鰭も杜撰になる、デタラメな方角に打ち出すことさえもあった。

だが…。ふとしとは気付く。ヒトというものは群れで暮らしていると聞いた。なら…地上でこちらを攻撃しているものを一方的にやってしまえば自ずと当たりに来るのではないかと。

 

「このままなら行ける!トウジ!押せぇ!」

 

「言われんでもやるわ!真希波ィ!」

 

息の合う2人の攻撃。ヒットアンドアウェイを繰り返しチクチクとダメージを受ける。8号機に食いちぎられ、4号機に食いちぎられ鰭の数も減っている。だがその瞬間を見定めた使徒による一撃は最悪の事態を招く。

刹那、時が止まったかのようにも思えた、鋭く研ぎ澄まされた鰭が8号機の首を目掛け打ち出された、間に合わぬ防御、避けることのできぬ一撃。そのまま8号機の首は弾け飛びその活動の一切を終了した。

 

「ま、真希…波…。」

 

一瞬の出来事で脳の処理が追いつかないトウジ。神経接続されたままであればきっとマリの命も無い。そう仲間を守れなかったのだと絶望しきった時。狙いを定めた使徒の鰭が4号機の両腕、もとい翼を撃ち抜いた。

宙を舞う両腕、そして地に叩きつけられるトウジ。

4号機もそこで内部電源が落ちただの木偶に成り下がった。

動かぬものに興味なし。次の狙いを本来のNERV本部へと定めた使徒はその眼より光線を放つ。融解する本部の地上設備。

 

「まずいな…メインシャフトが丸見えだな…。」

 

額の汗を拭う冬月。だが、もくもくとした煙が晴れ、そこに佇むのはエヴァ零号機。ライフルも持たずに…。

腕に抱えられているのはN2誘導弾。

 

「くっ…!」

 

悲しみはない。さっきあそこに手紙とともに置いてきた。

 

「碇くんが、皆がもうエヴァに乗らなくていいようにする…!だからっ!」

 

未練もない。さっきあそこに思い出と共に置いてきたから。

 

背部に立たれ気付かぬ使徒。それをいい事に誘導弾のジェット噴射を利用して推進力をつけ一気に懐に潜り込む。

だが、願い叶わず。寸前気づいた使徒によってATフィールドで防がれてしまった。

拮抗する両者のATフィールド。

だが、力負けか誘導弾の先端が徐々に潰れ始めた…。

 

「零号機のATフィールドだけでは…。この使徒のATフィールドを破れないッ…。」

 

苦悶の表情を浮かべるレイ。だが最後の力を振り絞ったトウジ。もとい4号機が活動限界を超えATフィールドに食らいついた。

 

「鈴原くん!?」

 

「おぉ、綾波ぃ…遅かったのう…。ワシの最後の仕事や。邪魔ぁせんでくれや…。気張れや!4号機ぃぃ!あと1枚ッ!」

 

最後のATフィールドが食い破られる。零号機に掴まれ後方に投げ飛ばされる4号機。

 

「逃げて…。鈴原くん!」

 

「は…。」

 

トウジはレイと共にその命を捨てる覚悟であった。だが図らずも零号機、レイによってその命は助けられてしまう。

 

「ありがとう…。」

 

その一言を呟くと走馬灯のように彼の笑顔が脳裏を過った。

溢れ出る涙、後悔が無いわけなんか無い。本当なら自分もシンジやアスカたちと笑って暮らせる世界に生きたかった。

巨大な爆発と轟音が響く。真っ白になった本部のモニター。

その轟音を爆風をその身で感じながら。少年がモニターに映る悲惨な状況に一人静かな怒りを燃やしていた。

 

 

「…ミサトさん。すみません…。ちょっと冷静には居られないかもしれないです…。」

 

「無理はしないで…。マリも、レイも鈴原くんも生体反応は残ってる。まだ生きているのよ。」

 

「それでも…ここまでの惨劇。シェルターに逃げ込んだ人々は逃げるまもなくあの鰭に、あの光線に何人死んだんでしょうか…。僕が…守ると決めたこの街で…一体、何人の犠牲者が出たんでしょうか…。」

 

「それは…。」

 

ふぅと大きなため息を吐く。徐々に爆煙が晴れ健在な使徒の姿が露になる。無傷。流石は最強の拒絶タイプと称されるだけの事はある。真黒に炭化した零号機を見下ろすように佇んでいる。

 

「綾波…。マリさん…。トウジ…。」

 

3機を順番に見つめ名前を呟く。

轟々と唸りをあげる背部のリアクター。中心ではマイクロブラックホールが渦巻いている。僕の感情に呼応し出力を上げるそれがことの深刻さを表していた。

突如、その顔と思しき部分の口が開く。中から幾重にも折り重なった口が伸びる。待てよ…何する気だ…。

そいつが徐に伸ばした口先は大きく開き、そして…。

 

「おい…止めろよ!何するんだよ!やめろぉぉぉお!」

 

僕の叫びも虚しく零号機はそのパイロットである綾波ごとひと口で膝まで捕食されてしまった。

 

「使徒が…エヴァを食べている…?」

 

「…。綾…波…?」

 

「識別信号が…零号機に書き変わってる…。」

 

ミサトさんが驚愕して呟く。モニターに映るtype:BLUE=EVANGELIONtype00の文字。

 

「これで…苦もなくリリスにたどり着けるって事か…。」

 

「レイ…レイは…。どうなっちゃうの…。」

 

怒りを抑えるのに必死だった。でももう限界なようだ。爆発的な怒りが引き起こしたのは背部のパイロンより吹き出る光翼が虹色から真紅に変わり、―号機の体表の緑色の部分も同じく真紅に怪しく光りだす。頭上には二対のエンジェル・ハイロゥが現れて…。

 

「ミサトさん…もう、僕は…。黙ってられません。いい子じゃ居られません…。優しく居られないかもしれません…。」

 

「…いいのよシンジくん。行きなさい…貴方自身の…願いの為に…。」

 

怒りに任せて操縦棍棒を押し込もうとする。もう後戻りは出来ない。この力をきっとリリンは第13の使徒と恐慄く。それでも構わない。綾波を助けるためなら…もうどうなったって構わないから…。

 

「シンジィィイ!待ちなさいよォ!」

 

刹那、轟く懐かしい叫び声。どこからともなく聞こえたその声は僕のもう1人の愛してやまない少女の声。

空を引き裂き使徒の横っ面を蹴り飛ばすその姿は。余りにも人とは言えず、さもエヴァとも言い難い。でも明らかに人ならざる域に達したアスカの姿、髪は赤く輝き元々プラグスーツであろうそれには赤と黒が入り交じった装甲が所々と並んでいた。それを繋ぐ青い粘菌は第11の使徒由縁のものであろうか…。

計器が示すのはtype:BLUE=EVANGELIONtype2+3≒11th Angeleの文字。エヴァであり…アスカであり、使徒ってコト…?

 

「アスカァ!無事だったんだね!?」

 

「無事ィ?無事なわけないでしょうが!なんだかわかんないけど!とりあえずコイツを締める!それでレイを救い出す!それが先でしょうが!」

 

混乱しているミサトさんを他所に絶望の淵に立たされていた僕は希望を取り戻す。うん。アスカと2人なら…。きっと。

 

「待ってなさい、綾波レイ。必ず、あたし達がアンタをッ!」

 

「僕とアスカの二人で君を必ずッ!」

 

「「助け出してみせるッ!」」

 

 

「ウラァァ!」

 

アスカ、もといエヴァ2+3号機は首に巻かれたマフラーと思しき物を鷲掴み大きく振るう。刹那、大刀と化したそれは幾重にも重なった使徒のATフィールドをなぎ払いその顔面へと叩き込まれる。大きく吹き飛んだ使徒、だが追撃の手を緩めることは無い。『ナイツオブラウンド』を全て集約して僕もエヴァの巨躯を遥かに凌ぐ大剣を突き立てる。防御反応か、光線を放ち退こうとするが、物理法則すら無視したアスカの強烈な蹴りがその光線の軌道を容易く折り曲げた。

 

「ああぁ!」

 

巨剣の切っ先が頭部に深々と突き刺さる。だが活動を止めぬ使徒は鰭を円柱型に纏め前へ突き出した、脇腹をかすり血が吹き出る。

 

「ぐっうぅ…。」

 

「キャッ…ぐ…。シンジくんや皆がこんなものに乗っていたなんて…。」

 

僕の意志によって強制的にシンクロ状態にあるミサトさんにもダメージが及ぶ。痛みに堪え額に汗を滲ませた顔を見て不安に駆られる。だが、すぐににっこりと僕に微笑み返す。

 

「いいのよ。私達の願いは…一つだもの。レイを助ける。だから3人で戦ってるのよ…。」

 

動きを止めた僕にアスカの喧騒が突き刺さる。

 

「ちょっとぉ!何手ぇ緩めてんのよ!アンタも手伝いなさい!よっ!」

 

「アスカ!おかえりなさい。」

 

「は?え?ミサト!?何であんたがそれに乗ってんのよ!」

 

「幽閉されていた僕を助けてくれたんだよミサトさんが。でもあの場に置いていくことは出来なかった…だから今僕の後ろに乗ってもらってるんだよ。」

 

「あぁ…そういうこと…。なら別にいいわよ!エヴァ乗るの痛いでしょ!」

 

幾度となく放たれる蹴りが鰭、光線、光弾全てを弾き返しそのまま腕に持つその大刀で幾重にも切り裂かれる使徒。

 

「えぇ…。とっても…、でも嬉しいわ。」

 

さすがに嬉しくは無いだろうよ…と驚愕している僕とアスカを尻目にニコニコと話を続けるミサトさん。

 

「貴方たちの痛みを知ることが出来た。それだけで私は嬉しいの。もう、本当に貴方たちは独りじゃないわ。」

 

「ハン!たかだか1回!大きく出たわねぇ!?キャッ!」

 

「アスカッ!?」

 

意趣返しとでも言わんばかりに鰭によってグルグルと丸め込まれたアスカ。

 

「ああ!もうじれったい!」

 

ググッと身を屈め力を込めると鋭く尖った物が鰭を突き破って何本も飛び出した。

 

「そんなに簡単に拘束されるほどヤワじゃないのよ…。大体アンタはアタシの仇。傷物にしてくれたアンタを許すわけないじゃないッ!の!よッ!」

 

鰭を掴み手繰り寄せ膝蹴りを顎に食らわせる。その勢いにガツンと上を向きバキバキと音をたてる脊椎。だらんと腕を垂らした様子から首から下が動かない様だ。

それでも鰭、と言うよりもバックパックか。そこから生えている物はお構い無しに動き続けている。しまいには動かなくなったその体躯を投げ捨てるかのように切り離し真の姿を現した。

よく知るその仮面、それでもその巨体は変わらず。切り離したエヴァらしき部位を貪り食うと女性らしき身体が生えてくる。

 

「うげ…共食い…?いや…自分を食ってるから…。なんでもいいか…。ようやくそっちも本気ってわけね…。シンジ。なりふり構ってらんないわ。持てる力全部出すッ!」

 

「僕もだッ!ミサトさんッ!掴まってて!」

 

「えぇ!」

 

激しく繰り広げられる攻防、有利なのはこちらで変わりは無いがやはり強化使徒。想像以上に成長が早い、スポンジの如く吸収されていく僕らの戦術、先程まで届いていたアスカの蹴りも当身を取って威力をかき消される。

だがいくらS2機関があるとはいえほころびが見えてくる。吸収しきれなくなった情報量に一瞬体の動きが止まるのだ。

 

「シンジ!いい!?1回しか言わないわよ!呼吸合わせなさい!」

 

「わかった!」

 

すっと瞳を閉じて何かに集中するアスカ。赤い粒子が渦巻きやがてそれは大きな螺旋を描く。

初めて見せた大技に対応しきれなかった使徒はその螺旋に巻き込まれ体表がズタズタに切り裂かれた。

 

「今ァ!」

 

僕も集中するように瞳を閉じる。思い描くのはかつて僕が生み出した哲学の槍。―号機から溢れ出る黒い粒子がアスカの赤い粒子と折り重なり形になる。

 

「シンジ!投げろ!」

 

「穿て!『ルクレティウス』!」

 

手に持たれた槍を音すらも超える速度でうち放つ。一直線に光の道筋を作り出しそれは使徒のコアを撃ち抜いた。

光の先には零号機のコアが怪しく輝く。

 

「引けぇぇえ!」

 

コンソールをしっかりと握り込み手前に引っぱろうとする。その瞬間、ミサトさんの手が僕に重なり聖母のような笑みでうん。と頷く。グッと手間に引き込む。

 

「「帰って(きなさい)来い!綾波ィ(レイ)ッ!」」

 

ぐぐぐと引き抜かれたそのコアを形象崩壊せぬようにATフィールドで押しとどめる。

 

「綾波ィ!」

 

「碇…くん?」

 

まるで幻にでも会ったような顔の綾波をそっと抱きしめる。

 

「ごめん…無理をさせてしまったね…。」

 

「いいの。私、なんにもできなかった。ごめんなさい。」

 

「良いんだ…もう…いい…。」

 

ぎゅっと力強く抱きしめる。いつの間にかエントリープラグに入ってきているアスカも一緒に…。

 

「ったく…全員無茶しすぎ!」

 

「茶化すなよ…。」

 

「私の事忘れてなぁい?」

 

後ろからドンッと抱きつかれる。

 

「いいのよ。ふたりが生きていてくれた…それだけで私はいいの…ありがとう…シンジくん…。」

 

 

エントリープラグで繰り広げられる感動の再会、だがそれは地上の人々にとっては終焉を意味していた。

 

第一始祖民族と1つになったエヴァ初号機と使徒の一部となった零号機のコアの融合は即ちサードインパクトの引き金となった。

 

「数も揃わぬうちに…。君の意思で…引き起こすとはね…碇シンジくん…。」

 

巨大な戦艦の上で佇む加持がボソッと呟く。

 

「トウジィ?大丈夫?」

 

「アカン…死ぬぅ思いやったわ…。」

 

手を取りエントリープラグからトウジを引きずり出すマリ。眼鏡をクイッと上にあげて独り言を呟く。

 

「シンジくん…ここまでは君の知った物語だ。これから先は私もゲンドウ君も渚カヲルも知らない物語だよ…。君に…どうにかできるかな?」

 

「副司令!外で…外で何が起こってるんですか!?」

 

「セカンドインパクトの続きだよ。古の生命は滅び新たな生命が生まれる。その儀式だ…。」

 

絶句するNERVの職員。慌てふためく彼等だが周囲の黒服達によって尽く射殺されていく。青葉、日向は幽閉中、そしてマヤだけが騒がずに自分のコンソールを見つめていた。

 

「いつか必ず…このデータが先輩の役に立つと信じてます…。」

 

震える手を押さえながらその事象を計器のデータを記していた。

 

 

ガフの扉が開かれいよいよかと皆が落胆した時。遥か上空から『カシウスの槍』が―号機を貫いた。

扉は閉まり―号機は地へと落ちる。

 

人口の光が灯らぬが故に満点の星空と満月が浮かぶ空より舞い降りたEVANGELIONmark.6その背面には煌々とエンジェル・ハイロゥが輝く。

 

「さぁ、約束の時だ…碇シンジくん…。」

 

以前にも増して苦悶の表情を浮かべる白髪の少年、渚カヲルは―号機を睨むように言い放つ。

 

「今度こそ君だけは…。幸せにしてみせるよ。」

 

「カヲル…君。」

 

―号機に座す少年はそこで事切れた。

アスカによって救出されたミサト、レイ、そしてマリ、トウジ。アスカは初めて対面したmark6を睨みつけ言い放つ。

 

「シンジを幸せにするのはアンタじゃない…。アタシ達よ。このナルシスホモ使徒もどき…。」

 




破篇クライマックスです。

やりたいことはやってやりました…。
以後筆が続かんのですよ…。

アスカ、男前ですね…。グレンラガンにトップ2詰め込みまくってますよ。

やっぱり男心擽るのはああいう作品なんですよ。

すみません。あとの話は頑張って書きますので…。お待ちください…。
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