Re Take of Evangelion   作:Air1204

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原典通りニアサーを引き起こしたシンジは初号機に囚われたまま眠りに付いた。
だがその眠りはシンジを新たな世界に誘ったようで…?



僕の知らない14年後って…コト!?
RE:EVANGELION:3.33 YOU CAN (NOT) REDO その1


少年は夢を見た。

広がりゆくガフの扉、崩壊した第三新東京市。そして零号機を取り込む先程戦った第12の使徒。

違う。アスカがいない。彼はアスカと共にその使徒を打ち倒したのだ、結果同じことが起きたとはいえ余りにも経緯が異なっていた。しかもなんならこちらの世界の自分は打たれ弱い。

まるでかつての自分を見ているようなそんな気分にさえ陥った。

3号機に乗ったアスカを助けようともせず父に激昂。あまつさえミサトの手を振りほどきNERVから第三新東京市からの逃走。

違う、違う違う違う!自分ならこんな事にはならない、むしろならなかった。

アスカを愛しレイを愛しミサトを愛した自分は第三新東京市を捨てるなどという選択は絶対にしない。

ギリギリと奥歯を噛み締める。

割れるように痛い頭。あぁ、成程、と。今自分に起きている事象を理解し得る。

 

ココはきっと。少年自身が不甲斐ないが故に滅んだ世界だ。と。

 

 

「…肺機能は正常値。四肢の麻痺も確認できません。え?目…ですか?あぁ、気がついたみたいです。目は開いています。」

 

聞き覚えのない声によって目を覚ます。ストレッチャーに縛り付けられているようで身を捩る事もままならない。

 

「あの…。」

 

「言語機能は問題ないようです。日本語をしっかり発しています。」

 

ガラガラとストレッチャーを押され何処かに運ばれているようだ。

 

「あの…第12の使徒は…。吸収された…綾波を助けるのに…。」

 

「ん…んん…まぁ一応記憶の継続性はある模様。」

 

何故だろう苛立ちが募ってきた。目の前の女は僕の発する言葉を尽く無視している。しかも自分は僕の言葉を拾い通信機器で誰かに伝えているのだ。

 

「ねぇ…綾波は…。」

 

「これ?誰だか分かります?」

 

3度僕の発言を遮った上での会話にもならぬ会話。

 

「誰って…僕ですけど…。で、あや…。」

 

「自己認識もあります。問題は無さそうですね…。」

 

4度目だ…。どういう教育受けてんだよこの女。腹が立ってきたぞ…。

 

「だから…あや…。」

 

「尿意やくうふk…。」

 

「いい加減にしろよ!?なんで僕の言っていることを遮ってまでアンタの話を聞かなきゃならないんだよ!せめて人の話は聞けよ!お前の親頭ねぇんか?あ?どういう教育受けてきたらそんな性根が腐るんだよ…。」

 

「あ、いや…その…。」

 

ほんとに腹が立つ。徹底的に無視を決め込んだくせに僕がキレればたじろぐ。マトモじゃねぇやこの女。

 

「説明もクソもできねぇんなら黙ってろ馬鹿女!」

 

エレベーターが地下のフロアへ到着して、僕が載せられているストレッチャーは巨大な空間へと運ばれる周囲には、何らかの作業を進めるスタッフの声が飛び交っていた。

 

『補給作業、搬入リストの86パーセントまでクリア』

 

「稼働中のN2エヌ・ツーリアクターは出力で90パーセントを維持、圧力便は手動で解放してくれ」

 

「半径1200以内に艦影なし。未確認飛行物体も認められず」

 

「乗員の移乗は、Dブロックの船を最優先」

 

「食料搬入作業の人手がまるで足りない! 至急手当してくれ」

 

「艤装作業、ロードマップをチェック。武装タンクが予定より3パーセント遅れています」

 

どうやらなにか大きな船のようだ…。

 

「あの…。艦長…。検体…BMー03、拘引しました…。」

 

あまつさえこの女僕の事を検体呼びかよ…。人扱いすらして貰えないとは…。ビクビクと僕に脅えているようでしきりにその視線は上部に佇む赤い服の女と僕を行き来している。

 

「ご苦労。拘束を解きなさい。」

 

聞き覚えのある声、でもこんなに張り詰めたような声を出すような人ではなかったはずだ。もっと朗らかとしていて優しい…そんな女性だった人のはずの声。

 

「え…でも…。」

 

「命令よ。」

 

「はい…。」

 

カチャカチャと音を立てて拘束を外される。よし…。これなら…。女性に手を挙げるのは本来ならやりたくは無いけど致し方ない。

一応礼儀として、拘束を外した憎きベレー帽を被った女に笑顔を向ける。

 

「うん、ありがとう。」

 

「え、あ…はい…どういt…。」

 

刹那強烈な平手打ちを頬にぶち当てる。その勢いでコンソールと思しき所にドンとぶつかる女。当たり前だ、人の話を無視しあまつさえ検体扱い。到底許すべきではない。

何が起きたか分からない顔、だが強烈な痛みが走る頬を抑える涙目の女を睨みつけ言い放つ。

 

「さっきの礼だよ…。さっさと失せろ。」

 

「ひっ…あ、ああ…。」

 

みっともない…大人ともあろう女が公衆の面前でおもらしとは…情けないにも程がある。

 

「…碇シンジ君…で本当に合ってるのかしら?」

 

冷たく突き刺さるその言葉が更に自分のよく知り得た人物だと言うのを確信させる。

 

「…ミサト…さんですよね?」

 

「えぇ。艦長、物理的情報では、コード第3の少年と完全に一致。生後の歯の治療跡など身体組織は、ニアサー時を100パーセント再現しているわ」

 

目の前の女を叩いたからか視線が痛い。というか…ニアサー時?

あぁ、確かマリさんが言ってたっけ…。君はそれから14年後に目覚める云々…。じゃあココは…。別の僕が経験した14年後って…コト!?

 

「なお、深層シンクロテストの結果は分析中よ。」

 

「ねぇ、みs…。」

 

「DSSチョーカーは?」

 

またしても遮られる。ここにゃ人権ってもんが無いのかね?

 

「頚部に装着済みよ。葛城艦長。」

 

やっぱりミサトさんじゃん。自分が行けっつった癖にニアサー起こしたからってシカトかよ。

 

「なんだよこれ…。ミサトさんこれはずしt…。」

 

「絶対に外すわけ…ないじゃないですか…。」

 

さっきのベレー帽の女が恨めしそうにコチラを睨みつけボソッと呟く…。どうやら教育が足りなかったようだ…。

と、言うよりもここの大人はろくな奴らが居ないのがよくわかった。初号機の反応も、自信に眠る第一始祖民族としての力も残っていることは既に確認済み。さて…どうしてやろうか…。

 

 

 その時、正面のモニターが〝EMERGENCY〟の文字で赤く染まり、場内にアラーム音がけたたましく鳴り響いた。

 

「デコイマルイチとマルゴが消滅。波長も補足」

 

 状況を読み上げる女性スタッフの声が場内に響く。

 

「何だろ、これ……?」

 

 女性オペレーターのひとりがモニターに映ったアイコンを指で触れる。

 

「パターン青だよ!」

 

 日向さんが、彼女のとぼけたリアクションに大声をぶつける。…あんなに禿げるんだな…。元の世界にもし帰れたら教えてあげないと…。

 

「目標を識別! コード4C。ネーメズィスシリーズです」

「また来たか……」

 

 ミサトさんは招かれざる客の知らせに奥歯を噛む。

 

「深層が立体的よ! まず、私たちをここに封鎖するつもりね」

 

 リツコさんはモニターから得られる情報を的確に読み取っていく。

 

「まだここを動くわけにはいかない。主機関連作業のみ続行」

 

 ミサトさんは徹底抗戦を敷く事を決断して前を向く。

 

「全艦、第二種戦闘配置! 目標、全ネーメズィスシリーズ」

 

ミサトさんが乗組員であろうバカ達に号令をかける。

 

「了解。全艦第二種戦闘配置」

 

 それを受けたリツコさんはモニターの表示を切り替える。

 

「対空・対水上および水中戦用意!」

 

 続いて、日向さんが作戦の進行を引き受ける

 

「補給作業を中断。乗員移乗を最優先!」

 

 青葉さんは受話器を手に取って指示を出す。いやロン毛は変わらず髭だけ生やすんかい!

 

というかここはぶっちゃけ何も面白いことは無かったので端折る。

 

とりあえず2号機はよくわからんサイボーグになってて8号機はなんか身体がごつくなってた…。あれで…利便性って上がってるのかな…。ともかく、なんだかよく分からないパターン青の従来はなんだかよく分からない人達によってなんだか分からないデッカい船で駆逐された。

…うん。如何せん説明不足すぎる。そりゃなんに語れないよ。

 

次に通されたのは個室とは名ばかりの面会室付きの独房。

なに?僕は犯罪でも犯したのかな?

 

「検体・BMー03『碇シンジ』さん。艦長から説明があるみたいです。」

 

ようやっとまともな会話をさせて貰えるようだ。

つか、あれだけ引っぱたかれてんのに未だに検体って呼べるこの女の神経も伺いしれないけどな…。

 

ドスンっと椅子に腰をかけ足を組む。

まともな大人なら大人しく座るのが筋だが、コイツらはマトモじゃない。故にこの態度だ。

 

「んで?何から説明してくれんの?」

 

ベレー帽の女を睨みつけるように鋭く言い放つ。

 

「…私たちの知り得る碇シンジは貴方のような粗暴さは無かったのだけれど…。」

 

ふんっと鼻を鳴らす。説明しろと言ってるのにまず質問から入る当たり相当オツムがパーな様だ…。

 

「いいえ?そりゃあこうなるでしょう?14年間お蒼空に放置、必要になったら呼び戻されて勝手にサルベージ。僕を初号機から引っ張りあげる意味はあったんですかね?」

 

ある程度話を知ったふりはしておく、舐められては敵わない。

 

「貴方がエヴァに残ったままでは初号機の覚醒リスクを抑えられない。一時の感情に任せてまた覚醒でもされてしまえば元も子もないもの…故にそのチョーカーを付けさせるためにサルベージさせて貰ったのよ。」

 

「あー…。成程?14年前は使徒を倒すことを押し付けた挙句次は覚醒したら怖いからお首チョンパで黙らせましょうねってことですか。」

 

「…否定はしません。」

 

強い面持ちのミサトさん。まぁ14年もありゃ人は変わる。それでもまぁ美人なのは変わりないのが凄いよ。でも眉間にしわ寄せちゃって…。台無しだよ。

 

「深層シンクロテストの結果は…。言いたくは無いのだけれど測定不能。残念なことに下限であれば良かったものを上限が…ってこと。」

 

「…まぁ僕の1部みたいなものですからねぇ…。それで、僕が今疎まれている理由ですけど…。」

 

その言葉にうんざりしたような表情になるベレー帽の女。

ホントにムカつく女だなぁ…。

 

「その説明は鈴原少尉」

 

「はいっ!」

 

鈴原ァ?ってことは…このいけ好かない女は…トウジの妹ってことかよ…。ごめん…トウジ…お前の教育が悪いわ…。

 

「はぁ…また君か…。なに?その恨めしそうな目、なんかした?僕。」

 

「さっき私を打ったやないですか。」

 

「そりゃあ、頭が悪いから叩きゃ治ると思ってね?兄ちゃんのトウジも頭は固かったけどもっと僕の気持ちは汲んでくれていたよそれでこそ、多分この状況ならシンジが何したと言うんですか!ってブチ切れるぐらいにはねぇ…?」

 

「っ!昔のテレビやないんですよ!?自分が何したかも知らんくせに!!」

 

睨みつけられ侮蔑の言葉を投げられる。本当にこの世界の僕、よく自殺しなかったなぁ…。

 

「知らないよ?だから説明しろって言ってんのに尽く無視したのはアンタら大人たちだ。あれでも我慢した方だよ。」

 

渋々と嫌な顔をしながら説明を始めるベレー帽。何がそんなに気に食わないのか…。マトモに会話ぐらいすりゃいいんだよ。

 

「…碇シンジさん、貴方が起こしたニアサー、その後にそれが引き金となって起きたサードインパクトの本流で…。」

 

「ちょっとまて、そこだよそこ。僕が起こしたのはニアだサードじゃない。恨まれる理由無くないか?人が多く死んだのはサードインパクトのせいだろ?使徒との戦いで死んだ人には申し訳ないが…。目の前でニアサー見てた奴らは生き残ってんのに一体誰に迷惑を掛けたんだよ。」

 

「ッ!」

 

「ニアサーが引き金になったんじゃない。しかもそれを起こさせたのはあのクソ髭だろ?僕に何の非があるの?使徒を倒した、綾波を助けた。それ以外何か?何よりそれで幽閉でもされたアンタらは僕というパイロットと健在のエヴァを手放した結果サードインパクトを止められなかった。止められなかったから初号機を封印させる結果を作った僕を責めてるそうだろ?」

 

「…。」

 

「何よりなんであんたたちが被害者の振りをしてるんだかよく分からないけれど、あの時あの場に居合わせた葛城ミサト、アンタが行けって命令したんだろ?そのケツ拭いは誰がするんだよ。」

 

「…あの時貴方がエヴァに乗らなければ全人類が滅んでいたのは事実だわ…。」

 

参りましたとでも言うかのように口を開くミサトさん。

 

「んで?使徒を殲滅して世界を救いましたー。でもあらぬ代償で起きそうになったサードインパクトはニアとしてカヲル君が止めました。僕のどこが悪いんだよ!」

 

「「…。」」

 

「都合が悪くなったら黙りゃあ良いのか?ハッ。大人ってのは狡くて良くていいですね?」

 

入口が突然開き見知ったプラグスーツの少女がカツカツと足音を鳴らしてコチラに向かってくる。その瞳は恨めしそうに僕を睨みながら…。仕方ない1発は貰ってやろう…。

ドンッという鈍い音が辺りに響く。それもそのはず、そこにあるはずの強化ガラスは消え去りアスカの拳が僕の頬にめり込まんとする勢いで突き刺さっているのだ。

 

「…よく避け無かったわね。」

 

「避ける必要ないだろ…。怒ってて当然だからね。」

 

ぷッと折れたか砕けたであろう奥歯をその辺に吐き出す。カランという音が響き一瞬の静寂が流れる。

帽子を深く被り表情を隠したままのアスカ。その静寂を破るように最初に口を開いたのはアスカの方だった。

 

「…おかえりバカシンジ。」

 

「ただいま。アスカ。ごめん…。僕が不甲斐ないばかりに君をそんなにさせてしまって…。」

 

手を伸ばしアスカの左目に触れる。嫌がりもせずに目を瞑りその身を預けている。

 

「助けられなかったのは僕の落ち度だ。今更許してくれとは思わない。なにせ、ボクは君を傷つけたくなかった。」

 

それはこの体を借りている僕自身の記憶ではない。この体に残った記憶。意識はきっとまだ残っているであろう彼の為に蟠りが無いようにアスカに思いの丈を伝える。

 

「好きだったんだ。君が。いや、今も…かな?僕は君が、アスカが好き。」

 

「…今更なのよ。もう、アタシにその資格は無い。ねぇ、3人とも、一旦席を外してもらってもいいかしら?あんた達がろくに説明しないからコイツは怒ってる。だったらちゃんとアタシが説明してやるわ。」

 

そう言うと、ゾロゾロとその3人は退室していく…。どんだけ責任感無いんだよ…。

 

「悪かったわ。代わりに謝る。」

 

「気にしなくていいよ。アスカが悪いわけじゃない、何も出来ない大人が悪いんだから。」

 

「アタシもその大人の1人なのよ。」

 

ベッドに腰かけて話をする。帽子を脱ぎさり顔を現したアスカであったが、その顔は何処か曇っている。

 

「あぁ、そっか…14年だもんね…。」

 

「そ、14年、エヴァの呪縛のせいで身体はチンチクリンのまんまだけどね…。」

 

ふっと嘲笑するかのようなアスカの笑み。でもやっぱり楽しそうじゃない。

 

「アンタ、さっきアタシのこと好きって言ってたわよね?」

 

そう言うと立ち上がり手首の圧縮解放スイッチを押す。と、同時に左目の眼帯も外していく。

顕になったその身体は使徒の侵食痕かそれともロクでもない大人たちの研究材料にされた成れの果てか酷く傷跡が残り所々蚯蚓脹れのような縫い跡が目に留まった。

 

「こんな体でもそんなこと言えんの?」

 

アスカの左目が怪しく光を放つ。そして首に光るあのDSSチョーカーとかいうやつも首に付いている。

だからといって怯んだり、目を背けたりはしない。これは僕が不甲斐ないばかりに残してしまった傷跡だからだ。

 

「モーマンタイ。アスカはアスカだ。外見を好きになったんじゃあないからね。」

 

「はっ…。つくづくウルトラバカね。でもありがとう。」

 

そう言うともう一度プラグスーツのスイッチを押して身に纏う。

 

「艦内着とか無いの?」

 

「あたしがそんなの着て歩いてたんじゃ後ろ指差されて笑われてるわ。使徒が人の真似事してるってね。」

 

そのセリフにカチンとくる。アスカは紛れもなく人だ。その体に使徒を飼っているだけで、それ以外は正真正銘人だ。僕とは成り立ちが違う。ムッとしているとあすかが身を寄せてくる。

 

「そうやって怒ってくれるのはあんただけ。良かった、助け出せて。」

 

ことんっと差し出されたマグカップにはコーヒーが注がれている。わざわざ作ってくれるなんて…。どんなになってもアスカは優しいんだな。

 

「ありがとう。アスカが入れてくれるなんて思いもしなかったよ。」

 

「まぁ、アンタは客人みたいなものだしね。で、どこまで覚えてんの?」

 

「正直槍が刺さった以降は覚えてないんだよね。あとはさっきアスカの何とかしなさいよ!バカシンジ!って呼ばれた時くらい?」

 

「そっか…。アタシの声ちゃんと届いてたんだ…。」

 

嬉しいような悲しいような表情を浮かべるアスカ。先程までの刺々しい表情は鳴りを潜めている。本来のアスカはやっぱりこうなんだ。

 

「しっかりね。良かった。アスカが怪我しないで。」

 

「ホンットにいっつも他人の心配ばっかりしてんのね?たまには自分のこと労りなさいよ。」

 

ふふっと零れる笑みは天真爛漫なアスカそのもの。本来のアスカを殺してしまう程に疲弊しきってしまったこの世界、いや、大人達のことが心底恨めしくなる。

 

「はは…。労ったからこそさっきの言葉だと思うよ?」

 

「言えてる。サクラのこと引っぱたいたって聞いた時には何してんのよこのバカ!って思ったけど…当の本人が最初からあの調子だったんじゃ仕方ないわよね。」

 

「トウジには悪いけどあの女、本当に性根腐ってるよね…。あんな妹を怪我させたからって僕はぶん殴られたのかよ…。」

 

「でも、サクラ、アンタに感謝してるみたいよ。助けてもらった事には変わりありませんから。って言ってた。」

 

そんなことを今更言われても後の祭りだろう?

 

「だったら最初っから自己紹介して、あの時はありがとうございます。すみません、拘束してしまってて…って一言入れるだけでも僕の対応は変わると思うよ。」

 

「この船のクルーにそんな余裕無いもの。自由にブラブラしてられんのは非戦闘時のアタシらくらいよ。」

 

「あぁ、マリさん…。」

 

確かにあの野良猫みたいな彼女だったらずっとフラフラしててもおかしくは無いか…。

 

「?面識あったっけ?」

 

「学校の屋上に極秘入国してきた時とアスカの2号機ぶっ壊した時。」

 

「…あー。納得。だからアイツもシンジのこと知ってんのか…。」

 

クルクルとマグカップを回すアスカ、コーヒーはあまり減っていないように見える。

 

「…。アスカブラック苦手だったよね?」

 

「うっ…。よく覚えてるわね…。」

 

「僕には昨日のことだからね…。」

 

「…ミルクも貴重になっちゃったからね…。こういう嗜好品楽しむには何か我慢しなきゃなんないのよ。」

 

「だからって僕にわざわざ…。」

 

そう言いかけて気づく。アスカは自分だけ別のものを飲むという選択肢を取らなかったのは僕と同じものを飲みたかったからだと言うことを…。

 

「あぁ…。そういう事か…。」

 

「な、何よ!変に納得なんかしちゃって!」

 

「最期までは語らないよ。ありがとうアスカ。」

 

「な、何の礼だか分からないけれど一応受け取っておく!」

 

本来ならば年相応とも取れる反応につい、頬が緩む。それを見たアスカも僕を見つめて微笑み返す。

 

「アンタを独り悪者にするのは反対だったのよ。でも、エコヒイキを助けるために覚醒したのには変わりなかった。アタシを助けるよりエコヒイキなんだって思ったらなんだか怒りが湧いてきちゃってね…。」

 

「その通りだと思うよ。でも僕は好きなのはアスカだったんだよ。綾波も大切だった、だから2人も失うのは嫌だったんだ…。ごめんね。」

 

「良いわよ。許してあげる。それにアンタの告白も…その…。」

 

なんだか初々しい。そりゃそうか…この世界では何にも無かったんだから僕らは。黙ってその言葉の先が紡がれるのを待つ。

 

「受けて…あげても…いい。」

 

「受けてあげてもいい?さっきアスカが言ってた資格がないってのは…?」

 

「うっ…なんでそう事細かに会話を覚えてるのよ…。」

 

「アスカとの会話だから。」

 

「ッ!なんでそんなに恥ずかしげもなく真顔で言えるの!こっちは十年来の片思いだと思ってたのに…!」

 

しっかりと口を滑らしたアスカ、そのことに気づいてか耳が赤く染まる。微笑む僕を見てあうあうしてるアスカは可愛いものだ…。

 

「あー!もう!分かったわよ!アタシも好き!好きだった!だから貴方の告白は受けます!受けさせてください!これでいいの!?バカシンジ!」

 

「ふふっ…。よく言えました。ありがとうアスカ。」

 

「ったく…帰ってきて早々こんだけ組織の内情引っ掻き回した挙句アタシの心まで引っ掻き回すとは…。笑ってんじゃないわよ!」

 

僕はニコニコと微笑ましいアスカの恥じらう姿を見て一人悦に浸るのであった。

 

 

「ま、そんなところかしら。」

 

落ち着きを取り戻したアスカから大体の話を聞いた。

加持さんの死。ミサトさんの出産。色々と。トウジやケンスケも無事で、委員長と結婚したトウジには娘も生まれているとの事だった。

 

「こんな世界でも命って紡がれていくんだね。」

 

「地獄に産み落とされて可哀想よ…。」

 

憂うアスカは、大きくため息をつく。だが、僕はそうは思わない。故に母さんの言葉を借りる。

 

「ヒトは生きていこうとする心があればどこだって天国になる。だって…生きているから…。幸せになるチャンスなんていくらでもある。月と太陽と地球があれば…大丈夫。」

 

ハッとした表情を浮かべるアスカ。ふっと微笑む。

 

「そうね…。」

 

途切れる会話。だがさして不平不満がある訳では無い。

会話を切り出す。この世界に終止符を打つために。

 

「アスカ、僕はNERVに行くよ。」

 

先程から頭に響く綾波の声が次第に大きくなってきている。

どれだけ強いATフィールドで弾き返そうと試みてもズブズブと侵食され脳に何度も響くのだ。

 

―碇くん…どこ?―

 

 

「…何しようってんの?」

 

「ケリ付けてくるよ。アスカを1人にはしない、それは約束する。」

 

「…一人で行く気?」

 

「…あぁ。僕のケジメだからね…。」

 

大きく息を吸い込む。割れるように痛む頭を押さえながら声を張上げ叫ぶ。

 

「綾波ィ!ここだ!」

 

崩れる外壁、伸びてくる巨大な掌、それは正しくエヴァンゲリオンのもの。

零号機によく似たそれはぎょろぎょろとその単眼を回しながら僕を補足する。

その一大事に先程退出した3名も戻ってくる。

 

「碇さん!?何しようってんですか!?」

 

ベレー帽の女、サクラが告げる。その顔は憎悪に満ちている。

 

「あんた達には関係ないよ。」

 

「シンジ!…必ず助けるから…。」

 

アスカの声が響く。その声に一同は驚愕の表情を浮かべている。

 

「うん、その時は…待ってるよ。」

 

「碇シンジくん!それ以上は止めて。」

 

「…。葛城ミサトさん。僕は僕のケジメを付ける。優しかった貴方をこうしてしまったダメな大人達を締めて来るだけさ。」

 

手に握られるDSSチョーカーのスイッチ。その手は震えながらも僕に向け差し出されている。今にもスイッチを押してやる、と言わんばかりに…。

 

「…。そうしてしまったこの世界が憎い。貴方なら僕を庇うことだって出来たはずだ…。でもそうしなかったのは…。貴方は守らねばならないその命をその身に宿していたからだ…。だから貴方は…。」

 

「もうそれ以上言わないで!…お願い…。このスイッチを…押せなくなってしまう…。」

 

涙をこらえ僕を見つめるその顔は悲痛に塗れている。震えている手を抑えるようにもう片方手を添えている。

 

「ミサト!やめなさい!アイツはアイツのケジメを付けるって言ってる。それを看過できないと言うんだったら…あたし一人でもNERVに乗り込んでやる。良いわね!?」

 

ぐっと前のめりになるアスカ。その瞳は真っ直ぐにミサトさんを見据えている。

 

「式波大佐!?何を…。貴方彼を庇うのがどういう意味だか分かってるの!?」

 

「リツコ…。本当に変わったわね…。アタシは人ならざる身、同じ人ならざるシンジを庇って何が悪い?さっきシンジが言った通りコイツは何にも悪くはない。アタシを助けなかったことにアタシは怒ってただけ。謝られたら許すつもりだったのよ。」

 

「貴方…。くっ…。」

 

「勘違いしないで。こいつが逃げたのはコイツの責任。深追いしたところでいいこた無いってだけ。だからってアタシを拘束するのは筋違いよ。」

 

アスカの怒号が響く。流石はアスカ、と言ったところか…。

上手く自分の立場を利用している。

 

「…分かりました。式波大佐、そして碇シンジ君。この事は私は黙認します。良い?ここにいる私を除く3名、全員、敵機によって碇シンジは連れ去られた…。それだけよ。」

 

「葛城艦長!?…。」

 

張り詰めたミサトさんの声。そしてリツコさんの驚嘆の声、まさか許可するとは…。

 

「…忘れないで。シンジくん。貴方がエヴァに乗りまた覚醒してしまえば…そのDSSチョーカーは作動する。」

 

「…分かりました。ありがとう。ミサトさん。」

 

そう言い残しそのエヴァの掌に包まれる。

背部のスラスターの形を変えたそれは早々に船から飛び立つ。

こうしてNERVへと進路を進めるのであった。

 

「ふふん♪姫もシンジくんもやり手だなぁ…。独りでケジメつけるって出てっちゃった…。んならアタシは大人しく時が来るまで待ってよっと♪。」

 

1人8号機で呑気にレーションを飲むマリは去っていくMark.9を眺めながら呟く。

 

「でも彼は…本当に今までのワンコくんなのかにゃあ…?」

 

訝しむマリ。それとは裏腹にアスカはシンジを信じている。たとえこの世界のシンジではないと頭で理解していたとしても。

 

「シンジはシンジ。たとえ中身が変わって居ようとその心にアイツがいる。あいつの言いたいことをあのシンジは全部言葉に変えただけよ…。」

 

立ち入り禁止のテープが張られた先程までシンジと共に居た部屋に一人佇み置いていったSDATを手に取る。

 

「…刺し違えてでも碇司令を止める…そういう事ね。」

 

怪しく光るアスカの左眼、その瞳はシンジが、Mark9が飛び去っていった方角をしっかりと見定めていた。

 




はい、新章突入出来ました。

1978回も世界をやり直したシンジくんならきっとこう言ってくれるだろうと…。
しかし腹が立ったからと女に手を挙げていいものでしょうか?
サクラちゃん…。不憫な子。
このシンジくん男らしすぎるが故、強化ガラスを消し飛ばしてアスカに自分をぶん殴らせました。強化ガラスにヒビが入るくらいだから…人じゃないシンジでも奥歯くらい折れるよね?

一応この世界観はシン完結まで走ります。その後にどうなるかは…。また読んでからのお楽しみということで…。
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