Re Take of Evangelion 作:Air1204
用意されていた13αと記されたプラグスーツに身を包む。もう後戻りは出来ない。兎に角使徒と地下のリリスの殲滅が最優先だ。
「行こうシンジ君。」
「うん。カヲル君。」
呼吸を合わせ2人で言葉を揃える。
「エヴァンゲリオン第13号機。起動!」
四つの眼に光が点る。
一方、WILLEでは…。
――New EVA-Unit。
「信号来ました! 新型エヴァの起動を確認!」
WILLEヴィレのモニターが赤い警告に染まった。青葉の報告を聞いてミサトが顔を上げる。当然その知らせは前線に立つアタシたちの耳にも届く。この本と爆薬に塗れた個室とも言えぬ独房に。
「あんの!バカ!エヴァに乗っちゃって!」
「でも姫、ぶっちゃけNERVに行く理由出来て嬉しいっしょ。」
アタシの言葉にニヤニヤといけ好かない笑みを浮かべたコネメガネがちゃちゃを入れてくる。
「…一々そんなことにツッコミ入れてたんじゃアンタもたないわよ?」
「だってぇ〜。姫最近人間らしくなって来ちゃってさー?前まで髪、切るのだって面倒くさがってたのに整えてくれだなんて言い出すし、食べる必要が無いって言って口にもしてなかったレーションだって食べてるし、それもこれもワンコくんのおかげかねぇ?」
「…よく見てるわね。少なからずアイツに会う時に別人みたいになってたんじゃ示しがつかないでしょうよ。」
「そりゃあ、わざわざ好きだ大好きだと14年越しに言われちゃあね…。自分でぶん殴っておいて折れた歯、必死になって探してお守りにしてくるらいだもんね。」
「げ、なんで中身まで知ってんのよ…。ヒトのもん盗み見るなんてやってることサイアクなんだけど。」
「ふふん。それでも構わんよ…。はい、これ」
「えっと…何コレ…?」
三つ編みに結われたアタシの髪。綺麗に整えられストラップのような形になっている。
「何って…姫の毛だよ。ワンコくんに渡せるようにね?」
「!?何言ってんのよ!渡すわけないでしょ!?」
「髪は神だよ。煩悩も穢れも宿る。だからこそ呪いに身代わりに使われたりもするんだよ。何があっても姫がワンコくんを守りますよっていう意思表明だね。」
「…アンタがワンコワンコ言うから犬のしっぽにでも見えてきたわ。仕方ない貰ってやるわよ。」
「素直じゃないにゃあ…。んじゃそろそろ迎えに行こっか!」
そう言うと立ち上がりストレッチを始める。
第13号機、NERVはなんでそんなものを生み出したのか…。
嫌に左眼が疼く、これから先どうなるのか…。
それにあのシンジの事だ、何の考えもなしにエヴァに乗るとは考えられない。考えられるとするなら…。
「ドグマの爆心地か…。勢いでシンジのこと迎えに行くとか言っちゃったけど大丈夫かな?」
マリが出ていった部屋で1人新しく支給されたプラグスーツを手に取り物思いに耽る。
『式波大佐、何しているの?真希波中佐は既にエントリープラグの中よ。』
ミサトの不機嫌な声が放送で流れる。急かしたって良いことなんて何も無いのに…。
「わかってるっちゅーの…。」
プラグスーツを着替え誰にも聞こえぬ声で悪態を吐く。何せ、自分の家族よりも世界を、民間人からの栄誉を望んだ女だ。
家族ごっこという絆を捨ててまで加持さんとの子供の未来を望み、アタシやシンジを悪だと捨て去った女の言葉。
「…。腹の中なんて知れたもんじゃないわよ。いくらこの先、NERVを倒して敵が居なくなったとしてもこの赤い大地と生命のいない赤い海は変わりは無い。世界が平和になったからって家族ごっこを再開って訳にはいかないわよ…。」
吐き捨てるように言い捨てる。当にアタシはヒトとして暮らすことは諦めた。家族を求めることも諦めた。何せアタシは第9の使徒でヒトとは相容れない存在だからだ。それでもアタシが好きだと言ってくれたアイツをもう一度失うようなマネだけは絶対にしたくはない。
「あたしが先に死んでも碇ゲンドウを止めてやる…。アンタの幸せの為にね…。」
「しかしまぁなんで本部をあんなに高い所に移したのかねぇ…。長くて堪らないよこのメインシャフト…。」
「仕方ないさ…。迫り来るインフィニティと生き残った連合軍の手から逃れるには空がいちばん安全だったからね…。」
「まぁ父さんが考えそうなことではあるよね…。それで…あれは…何?」
「mark9の事かい?彼女は護衛さ。僕とシンジくんの邪魔をする者から護ってもらうためのね。」
「あぁあれがアダムスの器…。他の3機は出さないんだね?」
僕の発言にギョッと目を丸くするカヲル君。
「すごいね…そこまで知っているだなんて…。」
「大体は自分の世界にいる時にマリさんに聞いたよ。」
上のmark9を眺めながら呟く。しかしあんだけでっかい大鎌持ってて動きづらくはないのだろうか…。
「真希波君か。彼女には世話になったなぁ…。元気そうかな?」
「この世界の彼女とは会ってないから知らないけれど僕の世界では一応感謝はしてるみたいだよ?ニアサーの事もサードインパクトの事も。」
「あれが僕には限界だったからね…。さ、見えてきたよ。」
カヲル君の声で目線を上から前に変える。
赤いエヴァみたいな首無し達がひしめき合いモゾモゾと蠢き何かを探すようにしている。
「うわぁ…これだけ数がいると流石に気持ち悪いね…。元人とは言えど…さすがに見るに堪えない…。」
「リリスによる強制進化の最中、同化している最中にmark6によってリリスの首を撥ねられてしまったからね…。強制的に知恵の実を奪われてしまった彼らは足りなくなってしまったそれを求めてさ迷い続けているのさ。」
なんともまぁ悲惨な話だ…。蠢くそれらの腹部、コアがあるであろう所をよく目を凝らし見てみると何人ものヒトの顔のようなものが幾重にも折り重なって悲痛の表情を浮かべている。あんまりマジマジと見るものでは無さそうだ…。
ゲンナリとし始めた頃直下には黒い何かが張られている事に気づく。
「あれが…結界?」
「そうだよ。リリスが自分の身を守る為に張った結界さ。シンジくん、テンポを合わせよう。」
魂の波長。誰しも各々の波長があるがこの機体は―号機と同じくそれを増幅する力があるようだ。インテリアが動き光の線が五線譜を描く。呼吸を整えピアノの連弾を思い浮かべる。気持ちのいい音を奏でればいい…か。つま先が触れる。甲高い音が辺りに響き、ガラガラと音を立てリリスの結界は崩れ始めた。
「よし…。」
「さあ、着いたよシンジくん。セントラルドグマの最奥、サードインパクトの爆心地さ。」
ドグマの中心を見下ろすと無数の髑髏、インフィニティの頭蓋だろうかそれが数え切れぬほどに積まれ丘を作り出している。
その中心にはリリスとMark6が融合した骸が天に向け手を伸ばしたまま静止している、所々表皮や肉はは腐り落ち骨が剥き出しになっている所さえあるようだ。
「あれが…目標物…。ロンギヌスとカシウス?」
「そう、僕と君の槍さ。」
「でも…変だよ形状が変化して形が揃ってる。」
「あぁ、本当だ…。嫌な予感がする…。」
「兎に角、近くに行って確認しないことには始まらな…!?」
すぐ真後ろが大きな爆発を起こす。何が起きたのか、一瞬分からなかったが爆煙の中から姿を現した2号機を見て理解する。
「WILLE…。アスカとマリさんか!」
「シンジ!?ダメよ!あの槍を抜いちゃ!」
「ッ!何でさ!僕らの希望の槍なんだろ!?あれがあれば全部やり直せるッ!」
「ダメなものはダメ!あの槍は使徒を殲滅する為に投げられた物じゃない!ただその機能を封じて止まっただけなの!」
「そうか…!そういう事か…。だから2本の槍の形状が揃っているのか…。」
ハッとしたように槍を睨みつけ何かを察したカヲル君が呟く。
「だからって!攻撃しなくても良いじゃないか!」
「NERVのエヴァは漏れなく潰す!大丈夫!アタシが何とかするから!絶対に助けるから!」
「せめてシンクロしてる時は止めてよ!がっ…。」
急に胸が締め付けられる。体の自由が利かない…?なんで!
「か、カ…ヲル…君。」
「ロンギヌスの槍、あれは元より使徒の生命活動の一切を終わらせる絶望の槍。言うなればアンチATフィールドの塊。それに対を成すカシウスの槍はその逆…。言わば行きたいと願う生命の希望の槍…。だからあれは…形象崩壊せずに今も残っているのか…。第12の使徒に堕とされたMark6によって汚染されどちらもロンギヌスの槍へと成り果てたのか!」
何を…。勘弁して欲しい。というか体が動かない。指一本でさえも…。そこまで深々度までシンクロしてないはずなのに…何故!?
「操作系が…!」
僕とカヲル君両方の操作系の一切が制御不能に陥る。この感覚はダミーシステムのそれとよく似ていた…。それにこの匂い…。僕はこの匂いを知っている…?アスカ…?
「きゃ!?」
突如として攻撃性を示す第13号機、2号機の首根っこを掴み骸の群れの中へと叩き伏せる。
「君が…シキナミtypeのオリジナルって…事か…。第13号機の制御システムの為にダイレクトエントリーとは…。」
画面が暗転する。奥より現れたのは…アスカ。
「貴方が碇シンジ?残念ね。悪足掻きはこれでお終い。」
身を捩る。動くことさえままならないが無理やり手を伸ばしそのアスカの右腕を掴もうと手を伸ばすが透けて通ってしまう。
「君は…インパクトの為に使い潰されるんだぞ!?それで構わないのか!?」
「おバカさん。元より私達はその為に生み出された…。貴方は愛と共にそれを受け入れるだけよ。」
「知るか!僕は僕のしたいようにする!誰も父さんのしたい事なんて望んじゃいないんだよ!だから止めに来たんだ!」
持てる力の全てを引き出す。構うものか。あるはずのない13番目に僕が堕ちたところで構わない!
「カヲル君!操作系を引き戻す!手伝ってくれないか!?」
叫ぶようにカヲル君に伝える。だが神妙な面持ちのままこちらに目を向けるカヲル君。
「すまない…シンジ君…。これは君の望む幸せでは無かった…。」
首元のDSSチョーカーが怪しく輝く。爆発こそはしないだろうがそれがエヴァが覚醒しつつあることを告げている。
「僕が何とかするしかないか…。アスカ!ごめん!」
「シンジ!?どうしちゃったの!?さっきと様子が…。」
「操作の一切が利かない状態だ!このままじゃロンギヌスの槍を2本引き抜くことになる!そうはならないように何とかしてみせるから!ごめん!浮気になるかも!」
「はい!?今なんて!?」
「だから浮気になるかもしれないって!第13号機の制御システムに君のオリジナルが使われている!僕は今からそれを懐柔する!だから浮気になるって言ったんだよ!」
「…それアタシの許可いる!?」
「彼女だろ!?君は!でも、同じ顔だから安心して!」
「そういう問題じゃ…!ちょ!シンジィ!?」
通信を切りモニターに目をやる、表示されているpattern:BLUE Angel13thα&βの文字。それが指し示すのは僕とカヲル君が13番目の対となる使徒に堕とされたという事だろう。
「さ、後は君と僕だけだ。槍を抜かせるつもりだろうがそうはいかないよ…。ギリギリまでランデブーと…いこうか!」
「きゃっ!」
操作系を奪い返しリリスの骸から遠ざける為に頭蓋骨の丘を転げ落ちる。傍から見たらおかしな光景だろうが致し方あるまい。
「カヲル君!君はどうするべきか考えてて!僕は僕でやるべき事をするから!」
プラグの透過をオフに切替える。さて…どうしてやろう…。
「さて…ココには君と僕だけ。隣からも見えないよ。」
「莫迦ね。アタシはエヴァそのものよ…?」
「何を言うかと思えば…。そんなの関係ない、君は今僕の目の前に居るじゃないか。そしてこうして触れている。」
右手首を掴む腕に力を込める。ぐっと無い実体を掴む。
「んな!なんで!?触れることなんて出来ないはず…。」
「13番目の使徒であり、あるはずのない3人目の第一始祖民族である僕に出来ないことなんてないよ。君より高次の存在だからね…。」
握りしめた手を引きこちら側に引き込む。暴れる第13号機、そりゃあ取り込んだアスカを引き剥がされそうになったら痛いに決まってる。ごめんね第13号機、そしてアダムスの生き残り…。
そっとアスカの体を抱きしめる。
「君は…。僕が4歳くらいの時にドイツにいた子だよね。」
「…覚えていたの?」
「羨ましそうに僕ら家族を眺めていたのを覚えているよ。身寄りのない君にとっては僕がさぞ羨ましそうに見えたんだろうなって思えた。だからこそこの世界を恨んでいる。」
「ッ!だからなんだってのよ!私は私のやりたいように…!」
「本当に君がやりたいことなの?世を憎んでヒトを憎んで君はそれでいいの?」
「僕はねアスカ、何度も世界を憎んだしヒトを憎んだよ。それこそ1500回目の世界まではね。残りの400回強は自分の願いの為に奔走したさ。」
「碇シンジ…貴方は…。どれだけこの世界を繰り返しているの…?」
「もうこの世界で1979回目かな?けど、分かるんだ。まだこの世界の碇シンジは死んじゃいない。心の殻に閉じこもりさえしてはいるけれど…。ことが終われば僕が消えて彼が帰ってくるんだと思う。」
「…。」
「抵抗…しないんだね。」
「しないだけ、したってもう変わらないから。」
「違うね。君は人の温かさに飢えている。初めて抱きしめられた人の温もりから抜け出せないだけだ。」
「勝手に言っていればいいわ…。どうせあの人には逆らえない。この世界もいずれ終わるもの。」
「そうはならないさ。僕が必ず止めてみせる。君を使い潰させたりなんてしない。」
「なんで貴方はそんなに…私を必要とするの…?貴方が欲しいのはあの子、2号機にいるあの子でしょう!?」
「関係ない、アスカはアスカだ。どっちもアスカなら僕には大切だ。それ以上に理由がいるかな?」
「本当に…おバカさんね…。」
そうアスカは言うと僕の温もりを確かめるように僕を抱き締め返す。もう少し過激なことしないと折れないと思っていたから少し拍子抜けだけど…。良かった。
「僕が欲しい槍はカシウスとロンギヌスの槍の2本だ。形状が揃ってしまったあれをどうにかする術はあるのかな?」
アスカに予備のプラグスーツを着せ膝の上に乗せ操縦棍を握り直し再度シンクロを始める。
「使徒と同化してしまったリリスを止めるために使われてしまったから1度そのエネルギーを消費しなければならないわ。それこそ膨大なエネルギー、フォースインパクトを起こさなければ…槍は二度と元の姿には戻らない。」
第13号機の体を起こしリリスの方へ顔を向ける。
「結局、父さんの手のひらの上ってことには変わりは無いのか…。わかった。カヲル君、槍を抜こう。フォースは起きてしまうけれどどうにか僕の手で止めてみせるから!アスカ!マリさん!」
「やっほー。ワンコくん、その調子だと…なにか打つ手が出来たっぽいねぇ?それまでの時間稼ぎは任せて!Mark9は私で足止めするよん!」
相変わらず、どの世界でもマリさんはマリさんだ。頼りになる。
「シンジ!?その様子だと上手くいったのね!?」
「うん、上手くいった。アスカを悲しませるような事はせずに済んだよ…。」
「…どうしてやろうかと思ったけどそれならいいわ。それで?打つ手はあるの?」
「致し方ない。父さんの手のひらの上だけど、フォースを起こさないと現状先には進めないようなんだ…。」
「フォースを起こす!?ねぇそれって大丈夫なの!?」
「大丈夫。こっちには僕もカヲル君もアスカも居るから。」
「私はこっちに居るわよ!」
ああ、そうだややこしいなぁ…。どうにか区別をつける方法を作らないと…。
「別に呼び名なんて私は気にしないわ。オリジナルとでも呼べば少しは楽なんじゃないかしら?」
「それはダメだ。君を人扱いしないのは僕の流儀に反する。なにかいい案は…。惣流…。なら君はソウリュウだ。」
「…?」
「僕の大切な人の名前だよ!」
「そんな大層な名前…。良いわ好きに呼んで…。2号機のおバカさん、良い?1度しか言わないわ。」
「おバカさんって!アンタだってアタシなんだからおバカでしょうよ!ったく…。自分自身との会話って…頭おかしくなりそうだわ…。」
「碇シンジと私をトリガーにフォースを起こす。隣の第13の使徒である渚カヲルを贄にしてしまえばそれこそあの男の思う壷になってしまう。混乱に乗じてMark9はヴーセ、いえ、AAAヴンダーの主機を乗っ取るつもりだわ、貴方は全力でそれを阻止して。8号機の貴方は、制御の利かなくなった第13号機をお願い。それじゃ。」
なんというか口調こそ大人しくてもアスカはアスカだな…。
言いたいこと全部言って一方的に通信切ったよ…。
「渚カヲル?いい?貴方は何もしなくていい。ただ貴方の持てる力を使って第13号機を押しとどめて。2本の槍は必ずこの腹に突き立てる。」
「…わかった。でも…作動してしまったこれは…止まらないだろう?」
「それに関しては既に僕が細工してあるから首は飛ばないよ…。じゃあ…。作戦開始…。」
リリスの骸に向けて進路を切る。兎に角あの槍を抜いて12の使徒を殲滅してからだ…。
しかし…近くで見ると…やけに大きいな…。Mark6も…リリスも…。
「目標物を確認。一気にいきましょ。躊躇う必要は無い…。貴方が私を何とかしてくれるって言ったように私も貴方を何とかしてあげるから。気兼ねなくやりなさい。」
ふふんと鼻を鳴らすように得意げなソウリュウ。しっかしやったら首周りに抱きついて頭を擦り付けてくるのは…。髪がふわふわと鼻腔を擽ってむず痒いしなんならちょっとアスカとは違ういい匂いもするし…。いかんいかん…プラグスーツのままアレすると死ぬほど痛いんだった…。我慢しなきゃ…我慢…。
「…ねぇ?碇シンジ、貴方…変なこと考えてない?」
「はぅあ!?そそ、そんなことないよ!」
なぜバレる。まだ起っちゃ…。うん…。流石にする暇も無かったというか…なんというか…我ながら元気なものである…。
「ふふ…可愛い人。ことが終わったら私がシてあげるから…」
クスクスと微笑むアスカ。同じアスカなのにこんなにも挙作が違うと…。新鮮だなぁ…。ずいっと首を掴まれ耳元で囁かれるように…。
「それまではお預けよ?お・ば・か・さ・ん?」
うん…。違った性癖に目覚めそうだよ…。ごめん、ミサトさん、綾波、アスカ…。もしそっちの世界に帰れた時には…。誰にお願いしようかな…。
「その約束違えるなよ!うぉぉぉ!」
胸部に隠されていた2対の腕が展開し槍を掴む。
「いけぇぇえ!!!!」
2本が引き抜け形状が二股に別れた槍へと揃う。足元のリリスはぶくぶくと水死体がガスで膨れるように膨らみ始め形象崩壊を起こし弾ける。
膨大なLCLに辺りは血の海と化す。解き放たれたMark6はビクビクと痙攣しながらエンジェル・ハイロゥを浮かべクルクルと宙を舞っている。
「ごめん!ワンコくん!弾切れ!Mark9止めらんない!」
「あたしが止める!何しでかすつもりか知らないけどぉ!邪魔するってんなら容赦はしないわよ!」
手に持つソニックグレイブを大きく振りかざしMark9へ押し迫る2号機。だが、寸前、Mark6の首を切り落としMark9のパイロットであるアヤナミは呟く。
「…これが命令。」
流石は関係値ZEROの綾波!平然とこっちを裏切ってくれる!そこにシビれるゥ!憧れるゥ!
なんて冗談を言ってる場合ではない。2号機と8号機に殲滅してもらう予定であった第12の使徒がそのMark6の亡骸から飛び出してくる。その姿はさながら光ファイバーのような…アルミサエルのような…。まぁなんというか…。全身がコアだよね?という様相だった。
「ぐぬぬ!こんのぉぉぉ!」
「姫ぇ?無駄打ちはよしなよー?ありゃ全身がコアだよ。一気に殲滅しないと意味ないよん…。それにあれを野放しにして…鬼が出るか蛇が出るか…気になる…ジャン?」
「まったく…しっかり邪魔してくるなぁとは思ってたよ?でもさぁ…あんまりだよ…。」
「仕方ないわアヤナミシリーズはそうインプットされてる。シキナミシリーズよりも感情の起伏が少ないのは命令に従わせるためなの。」
「なるほどね…。しっかしここまで勝手に動かれちゃあどうしようもないや…。カヲル君、そっちはどう?」
「何とかなりそうだ…それで…シンジくん君はなんで…これに細工を…?」
「隣で死なれちゃ寝覚めが悪いだろ?それに、キミがいればこの先楽だと思って…ね?…うわぁ!?」
エンジェル・ハイロゥが2対展開され第三新東京市であった成れの果ての上空に飛び出た時に背部からあのでっかい戦艦が突っ込んできた。
「ぐぅぅ!ミサトさんか!」
「A・T・フィールド最大! このままエヴァを封じ込めて! 主砲斉射用意! 極射弾装填! なんとしてもフォースの発動を食い止めるのよ!」
なんとまぁ無鉄砲なミサトさんが考えそうな作戦だ事…。
ともかくこっちの作戦を伝える手立てはない。アスカやまりさんに頼るしかないが…。
「ミサト!ストップ!あんまりめちゃくちゃやらないで!シンジが乗ってるの!」
「!?シンジくんが…!?ッチ!なら尚更!覚醒状態のエヴァを放置できない!このまま封じ込める!」
「わからず屋!自分でどうにかするってケジメをつけるって言って出てったシンジのこと信用出来ないってわけ!?」
「…このままフォースインパクトを起こされるよりはマシです。全砲門用意!撃てぇ!!」
一撃目、砲撃がATフィールドを跳ね返り第13号機に直撃する。ATフィールドが無いから痛いってなもんじゃない…。
「ぐぅぅ…!」
「続いて第2射いそ…きゃ!?」
明らかに制御を失ったことが見て取れるMark9が戦艦の砲門へと的確にその光線を飛ばしている。
山吹色であった体表は色を変え漆黒へと染まり単眼であったその相貌は9つの眼の異形とも取れる姿へと変貌を遂げた。
「成程ね…ゼーレはここまでしてインパクトを起こしたかったって事か…。」
「碇シンジ…気を抜かないで…。あれは…普通とは違う!ヴンダーに取り付かせてはダメよ!」
「言うのが遅いよ…!アスカ!頼む!」
「言われなくてもぉ!モードチェンジ!裏コード!777!」
あ〜。アスカがここで使ったのかぁ…。だからマリさんも知ってたんだ…。いやいや、納得してる場合じゃない。
とりあえずMark9のおかげっていうのは良くないけれどヴンダーの拘束からは離れられた…後は…。
「カヲル君…どうなってるの!?」
「大丈夫…心配しないで。ガフの扉は僕が閉じるよ。」
「そんな死にそうな言い方しなくても…君は死にやしないんだからさぁ…?」
「そうはいかないさ…。僕と君の2人が第13の使徒なんだ…。どちらかが消えなければ…この儀式は終わらない…。だから僕がケジメを付けるよ…。魂が消えても、願いと呪いはこの世界に残る。意志は情報として世界を伝い、変えていく。いつか自分自身の事も書き換えていくんだ。」
いやいや…。そんなに重く捉える必要ないだろって…。何とかするって言い張ったんだからさ…。仕方ない…カヲル君が槍を2本これに突き立てた時点でダメ押しにもう一本刺しておこう…。
「君は…安らぎと自分の居場所を見つければいい。縁が君を導くだろう…。」
右手に掲げられた槍が腹を穿つ。
「がっ…。」
貫かれる痛み、肺の中の酸素が絞り出される。
「そんな顔しないで…また会えるよ…。シンジくん。」
もう1本左手に掲げられた槍が腹を貫く。
「ぐぅぅ!カヲル君…歯ぁ食いしばれ!」
「へ!?」
あるはずのエントリープラグの壁をすり抜け隣に移動し眼前に立つ。そのままに頬を拳で殴り抜け胸ぐらをつかみあげる。
「何でもかんでも説明不足で勝手に世界を任せて死のうとしないでよ!説明が足りない!いくら世界を何巡もしているとは言えどこの世界の知識は無いんだよ!わかる!?」
「あ…いや…。」
思いっきりこっちに胸ぐらを寄せ、D!SSチョーカーを掴む。
「細工だけじゃ生ぬるいとは思っていたけど、よもやまた君が書き換えているとはね…最初からこうすべきだった!」
外れるロックそして基盤のシステムの所を握りつぶす。それこそ起爆システムやらなんやら残られては困るから粉微塵にだ。
「これで何があっても君は死なない。死なせやしないよ。悪いけどこの地獄最後まで君には付き合ってもらうからな!」
そう言い残し自分のインテリアへと戻る。まったく…。ほら見ろよソウリュウでさえ何が起きたか分からなくて僕とカヲル君の顔交互に見回してるじゃないか!可哀想に!
「でも…!ガフの部屋が!」
「それなら大丈夫…。ごめん、―号機。これ1回限りだと思うから…力を貸して…。あんまり頼りたくはないけれど…。こればっかりは仕方ないからさ…?」
ぐっと胸の当たりを掴む。祈るように言葉を捧げて僕の本来のエヴァを思い浮かべる。
刹那、空間を引き裂き現れた悪鬼の如きそれは手に携えた僕の槍『ルクレティウス』にて第13号機を穿つ。
完全に機能を停止したそれは地に落ち始める。赤く染っていた空は青に戻り、舞い上がっていたインフィニティの群れは地に落ちた。
後は…。
「ワンコくん!ごめんお待たせ!」
「マリさん!とりあえず2本エントリープラグ出してください!」
「ガッテン!まさか私を覚えててくれてるとは思わなかったよ…。」
「母さんに隠れておっぱいでちゅよーって自分の乳僕に押し当ててたのも忘れてないですよ。」
それはさっき思い出した。この世界のシンジの記憶だ。
帰ったら僕にもしてないか問いたださないといけないな…。
「うげ…あんな幼児だったのに覚えてるとか…さてはおっパイ大好きだなぁ?無事帰ったら触っていいよん?」
「え、マジですか…。うーん…でも。見た目15くらいでも…生きてる年数は母さんと同い年くらいだと思うと…僕のカシウスが反応しないんd…。」
「シャンなろー!年齢の話はすんじゃにゃいよ!」
その勢いのままに射出されたエントリープラグ。でもまぁ…あのでっかい乳…触っていいって言うんだったら…触らないと…損だよね…。
「…おばかさん?」
おっと…膝にソウリュウが座ってたのを忘れて興奮したのはご愛嬌ってことで…。アスカには誰も伝えないでくれよ…?
「ひどい有様だな。ほとんどがゼーレどころかあの少年の目論見通りだぞ?」
と冬月は言った。
「第13号機も覚醒へと導いた。葛城大佐の動きも計算内だ。今はこれでいい。だが、気になるのはシンジ、アイツの動向だ…。アイツが一瞬呼び出したあれは…なんだったのだ…?」
ゲンドウは隠しきれない動揺と額に滲む汗、徐々に歪みつつある自分の計画を憂い1人落胆するのであった…。
『全鑑、第二次警戒態勢を維持』
『パターン青、反応なし。警戒空域に機影を認めず』
『中央部損傷箇所の応急処置完了』
損傷した8号機を乗せたヴンダーは、青さを取り戻した空を進行していた。戦闘が終わった後も、艦内は慌ただしくオペレーターの声が飛び交っている。
「最後のコンマ1秒あるはずの無い新型のエヴァンゲリオンの反応が確認された。あれが最後に突き刺した槍のおかげでフォースは止まった…。何よりもあれは…このヴンダーの主機であるエヴァ初号機と同じ波長を示していたわ…。ミサト…彼は…私の憶測通り私たちの知っている彼じゃない可能性が高いわ…。」
とリツコが言う、ミサトは無言で前を見つめていた。
突如吹き飛ぶハッチ。良かったぁ…。このハッチ内側から開けるの苦労するんだよねぇ…。
「シンジ!良かった!」
駆け寄って抱きしめてくるアスカ。それを見て少々不機嫌な顔をするソウリュウ。
「ありがとうアスカ…。でも2号機あんなになっちゃって…いいの?」
「仕方ないわよ…。それの改修はWILLEがリツコが何とかするわよ。それで?これが例の?」
「そ、君のオリジナルで第13号機に封印されていたソウリュウだよ。」
「あらあら〜?裸で出てきたらどうしようかと思ってたけど…まーさかシンジとペアルックとはねぇ?いいどきょうしてるじゃなぁい?」
「あら?じゃあ全裸の方が良かったのかしら?おバカさん?」
「最初から喧嘩腰たぁいい度胸ね…。あ・た・しのシンジが世話になったみたいね…?そこだけは感謝してあげるわ。」
同じ顔の女の子がお互いに嫌味を言い合うのはちょっと頂けないんだけど…多分止めに入ったらどっちが好きなのよとか言って責め立てられそうだから黙ってた方がいいんだろうなぁ…。
「あら?貴方だけの碇シンジなの?彼、私にも大切だって言ってたけど…?」
「あら?それは便宜上そういっただけでは?アンタがあれに残ってたんじ仕事しづらいからそういった迄よ?」
「そうかしら?にしては…抱きしめ方も優しかったしぃ…。エントリープラグが射出された時も私を抱き締めて守ってくれてたしぃ?どうなのかなぁ?」
嫌なこと言うなよソウリュウ。なんでそんなに同じ顔なのに顔つきがそんなに変わるんだよ。
「シ〜ン〜ジ〜?」
「あの…えっと…。アスカ…?弁明…していい?」
「弁明になるなら!」
「うん。アスカはアスカだ。それは間違いない。僕が大好きなアスカだ。でも、このソウリュウもアスカだ。アスカの一部って言った方がいいかな…。だから…片方を幸せにして片方を不幸にするなんてこと…出来ないよ…。それじゃ…だめ?」
「う…。その本能に訴えかけるような子犬みたいな顔止めなさいよ…。あんたの言い分はよくわかったけどさぁ?そんなに器用なことできんの?アタシ物足りなかったらすぐ怒るからね?」
「それは勿論。どっちも平等に愛してみせるよ…?何せどっちもアスカだ。」
「変なの〜ま、良いわよ許してあげる。オリジナル、あんたもそれでいいの?」
「私は碇シンジがいいっていえばそれで構わない。なにせ終わりを待つばかりの命を拾ったのは彼だから…。」
「…自分の乙女の顔を見るのって嫌なもんね…。でもアイツからしたらアタシもそうか…。っし!歩くわよ。」
え?なんて?歩く…?何処まで…?
「えっと…何処まで…?」
「知らないわよ!とにかく!ここじゃL結界密度が高過ぎる!だからリリンが近づけるところまで歩くの!」
…マジかよ。ちょっと疲れたから休ませて欲しいんだけど?
兎に角とりあえずエントリープラグからは出よう…。カヲル君と…。アヤナミさんはっと…。あ、いたいた。
「Mark9のパイロットとアンタが例の…」
「カヲル。渚カヲルさ。」
何が起きたか整理が出来てなさすぎて逆にすんごい笑顔うかべてないか…?カヲル君…。
「そ、着いてくるなら勝手になさい…。さ、行くわよ。」
そう音頭をとったアスカの後ろをソウリュウ、カヲル君、アヤナミ、そして僕がくっついて歩く。5人かぁ…いやまぁ良くここまで生存ルートを保ててるよ…。
マリさんの話よりは上々だね…。
「アスカさん!?もう少しゆっくり!」
「だあらっしゃい!さっさと歩けぇ!バカシンジ!」
思った以上に怒ってるなぁアレ…。困った…。
「ねぇねぇ…碇シンジ?」
とんとんと肩を叩き悪い顔をして耳打ちをしようとするのはソウリュウ。
「さっき言ってたヤツ。どこかに二人でふけてヤっちゃわない?」
「馬鹿言え…アスカにそれこそこれだよ…。」
指でハサミを作って動かす。つまらなーいと表情を浮かべたソウリュウは僕の隣を離れない。その後ろを着いてくるカヲル君とアヤナミは何か心ここに在らずって感じ?
でもまぁともかく、死人も出ずに大団円ってこと…。
てか…この世界に必死だったけど…向こうは…大丈夫なのかな…?アスカ、綾波…ミサトさん…元気でいてくれればいいけど…。
Q編堂々たる完結ですね。
いかんせんこのシンジくんメンタルバケモン過ぎませんか?
第3村で何させたらいいか…分からないんですけど?
何がともあれ全員生存してます。
早く続きを書かなくては!
次回はシンジの世界。
眠ってしまったシンジを回収すべく動くWILLEの面々。
だがそうは問屋が下ろさない。旧劇同様攻め入る戦自。集うエヴァシリーズ。
アスカやトウジ達の命運は…。
ところでゲンドウさんは…どこに拉致られてしまったのでしょうか…。
乞うご期待。
追記
最初にこの話の続きから書くことに決めました。期待されていた方ごめんなさい。